日々の暮らしに欠かせない食事。
食事の時間には、家族との団らん・忙しい中での休息など、人間らしく暮らすための、さまざまな意味が込められている時間です。
それだけに、食事をするための空間である、ダイニングのインテリアにはこだわりたいところですよね。
雰囲気だけではなく、料理を運んだり、食べた後のお皿を片づけたりといった行動もしやすくなければ、せっかくの食事の楽しさも半減。
楽しく食事ができる雰囲気づくりと、家事に支障をきたさない機能性の両方が、ダイニングのインテリアには求められます。
どうやったら快適なダイニングを実現できるのか、インテリアの視点からポイントを説明しましょう。
2019年7月22日初出→2020年12月2日更新
目次
ダイニングの家具配置で気を付けたいこと
食卓スペースであるダイニングは、食事をゆったりと楽しめる余裕のあるレイアウトと、配膳の動線がポイントです。
テーブル周りには十分なスペースを
ダイニングには、「ダイニングテーブル・チェアを置いて、そこで食事をする」という方が多いのではないでしょうか。
チェアは、ソファと違って「座るためにチェアを引く」という動作が必要です。
加えて、配膳や片付けがスムーズに行えるように、ある程度のスペースを確保しなくてはなりません。
チェアに座るには、少なくともテーブルから400㎜ほどの空間が必要です。チェアの後ろが壁という場合は、チェアを引いて座るための余裕が、さらに200㎜は必要。
テーブルと壁の距離が600㎜以上になるように、テーブルを置きましょう。
部屋の大きさにあったテーブルを置こう
デザインや素材・色も気になるところですが、それと同じくらい大きさ(サイズ)も重要です。
ダイニングテーブルは家具の中でも大きいものですから、部屋の広さ(畳数)とのバランスを考慮した選択が大事です。もちろん、家族の人数に対して十分な大きさであるかも忘れてはいけません。
最近は、リビングとダイニングが一体になったLDKが主流ですから、LDK全体の広さ、そしてリビングに置く家具の大きさや配置も踏まえて、ダイニングテーブルの大きさを決めましょう。
例えば、一人暮らしで8畳から9畳程度の部屋にお住まいという方でも、2人掛けのカフェテーブルにすれば限られたスペースを広々と使うことができます。
マンションに多い10畳から12畳程度のLDKなら、1400㎜幅の4人~6人掛けのテーブルを。14畳以上の広めのLDKなら、1800㎜でも大きすぎるということはありません。
家事動線にも配慮
チェアの後ろを動線とする、つまり人が通れるようにするには、幅600㎜程度のスペースを空けておきたいところです。
チェアに座っているための400㎜と合わせて1000㎜あると、座っている人も動く人も安心です。
チェアではなく、背もたれのないダイニングベンチを使うなら、もう少し狭くてもOK。900㎜ぐらいで必要な動線を確保できます。
朝などすばやく食事したいときや、ひとりで軽く食事するというときに、キッチンのカウンターで済ませることもあるでしょう。
カウンターチェアを使う場合も、動線の確保に必要なスペースはテーブルと大差はありません。ただし、テーブルよりも高さがあるので、100㎜ほど広めにとると圧迫感を軽減するのに役立ちます。
カウンターに対してテーブルはどう置く?
ダイニングテーブルの置き方には、いくつかのパターンが考えられます。
長方形・正方形のテーブルを、カウンターに沿って直角に置く(短辺をキッチンカウンターに密着させる)レイアウトは、どんな空間にもマッチさせやすい、王道パターンです。コンパクトにまとまり、動線も確保しやすいので、迷ったらこのレイアウトを試してみましょう。
直角ではなく、長辺をカウンターに沿わせて平行に置くと、対面キッチンならキッチンに立つ人とのコミュニケーションも取りやすくなります。料理が好きで、作るのも食べるのも楽しみたいという人におすすめ。
直角の配置よりもさらに動線を広く取れるのも、このレイアウトのメリットです。
ダイニングソファも、狭いLDKを有効に使うために役立つアイテム。食事のあと、そのまま家族でくつろぐことが多い方にもおすすめです。
座面は奥行が浅い方が、食事しやすくなりますよ。
狭い部屋でも広く使えるテーブルは?
テーブルやチェアのデザインも、空間の印象に大きく影響します。
脚が太く、どっしりしたデザインのものは、広い空間に置くにはいいですが、狭い部屋に置くと狭さが強調されてしまいます。
アームなしのチェアや、背のないダイニングベンチは、圧迫感を与えません。
横からの出入りもしやすくなり、限りある空間でもスムーズな動線に。
T字型の脚やアイアン調など、細くてシャープな形状のものを選ぶと、視線が抜けるようになり、広々とした印象を与えてくれます。
あるいはガラス天板を使用したテーブルも、視線の抜けを感じさせることができますよ。
キッチンカウンターや壁から離して置くなら、丸型のテーブルも選択肢に。
座る位置が限定されないので、縦置き・横置きの両方の良さを共存させることができます。
ベンチを置く場合、手前側には圧迫感の少ない背もたれのないタイプを。
背もたれのあるタイプは、壁を背にした側に置くのがベターです。
もしくは、リビング空間がダイニング奥に広がっている場合は、ゾーニングの意味でリビングに背を向けて配置するのもおすすめです。
一人暮らしだったり、来客が少ないのであれば、思い切ってダイニングテーブルは置かないという選択も。
カウンターチェアを置き、キッチンカウンターをテーブルがわりに使うのも良いでしょう。
もちろん、ダイニングテーブルとカウンターチェアを併用してもOK。
ひとりで軽く済ませるときはカウンター、家族や友人とゆっくり食事を楽しむときはテーブルで。シーンによって使い分ければ、より豊かな暮らしができます。
ダイニングに適した照明って?
照明には「広範囲を照らすタイプ」と「特定の場所を照らすタイプ」の2種類があります。
前者のタイプは、人が集まるソファやダイニングテーブルの上部に設置するもので、シーリングライトが代表的です。
ダウンライトにように一つひとつは小さな照明ですが、組み合わせて空間全体を照らす方法もあります。
後者の代表が、ペンダントライトです。
装飾的なシェードや、インダストリアルな電球剥き出しのスタイルなど、インテリア性が楽しめる点も魅力です。
どちらを選ぶかは、LDK全体の一体感を意識したいか、ポイントをつくりたいかで決めるとよいでしょう。
下記の事例では、シャンデリア風のデザインライトをLDK空間のフォーカルポイントにしています。
個性的なデザインであっても、照明色がキッチンと統一すれば違和感なく馴染みます。
こちらの事例は、インダストリアルなアイアンシェードのペンダントライトを選択。
オレンジがかった電球色の照明が、木の温もり感じるダイニングカウンターにマッチして、まるでカフェのカンター席かのような空間に。
ダイニングに限りませんが、部屋に間接照明を設置することで、一気にムードのあるおしゃれ空間に変身させることができます。
こちらの事例のように、キッチンカウンターの上部に間接照明を設置すれば、ちょっとしたバーカウンターに大変身。
照明の色も暖かなオレンジ系の物を選ぶと、リラックス感を得られます。
スポットライトタイプの照明は、気分やそのときのシーンによって、光の向きなどを変えられる利点が。
お気に入りの置物や、ダイニングテーブルの上の花瓶にスポットライトを当てることで、「特別な日のディナー」などの演出をすることができます。
電球色と温白色
形やデザインだけでなく、電球の色も雰囲気を左右します。
電球色(約2700K)は、温かみのあるオレンジ色。リラックス感を与えてくれるので、くつろぎ空間におすすめの色です。落ち着いたダイニング空間を演出したいときに。
温白色(約3500K)は、日中に外から入ってくる日光の色に近い昼白色と電球色のちょうど中間くらいの色味。食事をする・寛ぐ・勉強する、全ての場面で使いやすい色です。やわらかい雰囲気のダイニングにしたい人におすすめ。
テイスト別・ダイニングインテリア実例集
ここからは、お部屋の内装テイストに合わせた、ダイニングのコーディネート実例を紹介します。
北欧風インテリア
北欧風のダイニングにするには、ホワイト系の家具やナチュラルテイストの小物も取り入れてコーディネートしましょう。
白をベースとした壁、メープルの突板、棚板・カウンター・キッチン腰壁にも無垢材をふんだんに使用することで柔らかな印象に。
キッチンのタイルや扉の色に、アクセントとなる色を持ってくるのもおすすめです。「ノルディックカラー」と呼ばれる、スモーキーな色調や淡いブルーの小物を加えることで、より北欧のような雰囲気を再現することができます。
モダンインテリア
モダンなエッセンスを取り入れたい場合は、デコラティブなデザインよりはシンプルな形のテーブルやチェアを。
色は、白っぽい空間には締め色となる黒や焦げ茶を合わせると、空間がきりりと引き締まります。
床や壁に統一感を持たせたダイニングの場合は、テーブルや照明の色で空間を引き締めて。
下記の事例では、シンプルなブラックのダイニングテーブル上に、アクセントとなるペンダントライトを配置しました。
ナチュラルインテリア
ダイニング入口からテーブルまでは何も物を置かないことで、すっきりとした印象に。
たくさんの植物を置いていても、圧迫感を感じさせないコーディネートになっています。
白い壁や木の温もりが感じられる床やインテリアは、植物との相性も抜群!作り付けの観葉植物専用の棚もとてもお洒落です。
インダストリアルインテリア
インダストリアルとは工業的といった意味で使われます。ユーズド感やヴィンテージ感が漂う雰囲気や、無骨なインテリアがお好みの方におすすめです。
こちらはまさに、コンクリート剥き出しで骨組みがわざと見えるようなデザインになっています。
賃貸など、「コンクリートの壁にするのは難しい」という方も、今はコンクリート風の壁紙なども販売されているため、それらを利用するという方法もあります。
相性が良いインテリアカラーは、ブラックやダークなブラウン・シルバーなど。ファブリックにはレザー風のものもおすすめです。
西海岸風インテリア
大きな窓から入る暖かな光と海を思わせるブルーのダイニングチェアで、西海岸風のコーディネートに。照明にシーリングファンを選ぶだけでも、お部屋の雰囲気をグッと西海岸風に近づけることが可能です。ダイニングチェアの他にも、キッチンタイルや小物にブルーを取り入れると、爽やかな印象にすることができますよ。
おわりに
食事は、生きていくのに必要な栄養を取るためだけの行為ではありません。好きなものを心行くまで味わったときの喜びや、家族と食事をしながら交わす会話の楽しみ、忙しい一日を終えてお酒やお茶を飲むときに感じるくつろぎーーーどれもわたしたちの暮らしに、潤いを与えてくれる要素ですよね。
ダイニングは、感情豊かな暮らしのためには欠かすことのできない場所。
使いやすく、落ち着いて食事の時間を過ごせるよう、ダイニングのコーディネートには気を配りたいものです。
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