住宅ローンを組んでマイホームを購入すると、一定期間、所得税や住民税が控除される「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」。
住まいを購入するならぜひ利用したい制度ですが、控除を受けるには確定申告の必要があり、ローン残高証明書・登記事項証明書・売買契約書のコピーなど、所定の書類を用意しないといけません。
2022年(令和4年)以降、住宅ローン控除制度は、利用条件や控除金額の上限などに大きな変更がありました。
この記事では、「住宅ローン控除」の申請方法、申請に必要な書類とその入手先、書類の書き方をわかりやすく解説します。申請前のチェックリストとして、ぜひお役立てください!
目次
住宅ローン控除とは
「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入すると、一定期間、所得税の一部が控除される(払い過ぎた税金が戻ってくる)制度です。
所得税だけでは控除しきれない場合には、住民税からも控除されます。
控除期間は、新築で13年間、中古で10年間です。
ただし、控除を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。
制度を利用するための条件
2024年度入居分からは、新築や買取再販(業者が売主のリフォーム済み中古物件)の場合、一定の省エネ性能を満たす住宅のみが控除の対象となります。
中古の場合は、省エネ住宅ではない一般住宅でも控除が適用されます。
上記の他にも、控除を受けるためには次のような一定の要件があります。
- 自ら居住する住宅であることこと
- 10年以上の住宅ローンを組むこと
- 世帯年収が2,000万円以下であること
- 住宅の床面積が50㎡以上であること(年収1,000万円以下の世帯は40㎡以上)
- (中古住宅の場合)新耐震基準に適合していること
- (リフォームの場合)工事費用が100万円以上であること
ポイントは、「所得が2,000万円以下」の部分。2021年までは3,000万円でしたが、2022年改正で要件が厳しくなっています。
もう一点のポイントは、中古特有の要件「新耐震基準」。21年までは「RC造は築25年以内、木造は築20年以内」と限定されていましたが、2022年改正で「新耐震基準の物件はすべて対象」に緩和されました。
このように、従来の控除制度からは要件が一部厳しくなったり、逆に緩和されたりしているので注意が必要です。
控除要件については別途特集記事もありますので、詳しく知りたいという方はぜひ併せてご覧ください。
控除金額の計算方法
控除率は、新築も中古も一律0.7%です。年末のローン残高の0.7%相当が、所得税から(控除しきれない分は住民税からも)控除されます。
住宅ローンの返済を続けて残高が減ってくると、それに伴い、控除額も年々少なくなっていきます。
控除の対象となる年末のローン残高の金額には上限があり、その額は入居した年と住宅の種類によって異なります。
下図は、上限額や要件といった住宅ローン控除の概要をまとめたもの。
新築は省エネ住宅のみが控除対象で、省エネ性能が高いほど上限額も高くなります。
中古は一般住宅も控除対象ですが、省エネ住宅のほうが上限額は高めに設定されています。
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除の申請方法は、1年目は確定申告を行います。
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日。
たとえば2024年11月に住宅を購入したケースだと、2025年2月16日~3月15日の間に確定申告をする必要があります。
「確定申告書」「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」に必要事項を記入し、所定の必要書類を添えて、最寄りの税務署またはe-Taxで申告します。
2年目以降の申請方法
あなたが会社員(給与所得者)の場合、2年目以降は確定申告の必要はありません。年末調整で手続きができます。
1年目に確定申告をすると、税務署から2年目以降の申告書がまとめて送られてきます。
年末調整の際、その年度の申告書と、住宅ローン残高証明書を提出しましょう。
住宅ローンの残高証明書は、毎年年末調整時期になると金融機関から送られてきます。
※自営業やフリーランスの方は、2年目以降も確定申告をすることになります。
申請に必要な書類
1年目に行う確定申告では、申告時に記入する「確定申告書」「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」のほか、所定の証明書類が必要です。
必要書類は複数あり、入手先も役所・勤務先・不動産会社など多種多様。
申請時に漏れがないよう、早めに準備しておきたいものです。
下表は、1年目の確定申告で必要な書類とその入手先・入手方法をまとめたもの。
申告前のチェックリストとしてご利用ください。
必要書類 |
入手先 |
入手方法 |
源泉徴収票 |
勤務先 |
年末調整後に交付。年内に転職した方は前職・現職の2枚必要。 |
住宅ローン年末残高証明書 |
金融機関 |
11月~翌1月(金融機関により異なる)に送られてきます。発行依頼が必要な金融機関もあるので注意。 |
土地・建物の登記事項証明書 |
法務局 |
地域の窓口、もしくはオンラインで取得できます。 |
土地・建物の売買契約書 |
売主(不動産会社) |
契約時に売主と交わしたもの。万一紛失した場合は不動産会社に相談を。 |
工事請負契約書 |
リフォーム会社 |
工事の契約時にリフォーム会社と交わしたもの。紛失した場合はリフォーム会社に相談を。 |
増改築等工事証明書 |
リフォーム会社 |
完工引き渡しの際にリフォーム会社から受け取ったもの。紛失した場合はリフォーム会社に相談を。 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
税務署 |
地域の窓口、もしくは国税庁HPで取得。インターネット上で作成できます。 |
確定申告書 |
税務署 |
地域の窓口、もしくは国税庁HPで取得。インターネット上で作成できます。 |
以前は住宅ローン控除の申告手続きを行う際に住民票の写しを添付する必要がありましたが、マイナンバー制度の導入により、原則として住民票の写しの添付は不要となっています。
昭和57年以前の中古物件を購入した場合
さらに、「昭和57年より前に建築された(旧耐震時代の)中古住宅ではあるが、耐震診断を受け、新耐震基準に適合していることが証明されている物件」を購入した方は、耐震性の証明として、次のいずれかの書類が必要となります。
必要書類 |
入手先 |
入手方法 |
耐震基準適合証明書 |
売主(不動産会社) |
引き渡し前に受け取る必要あり。物件の購入申込時に、不動産会社をつうじて相談を。 |
既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書 |
注意点は、この二つの書類はいずれも「物件の引き渡し前」に取得する必要があるということ。発行には時間がかかるため、場合によっては引き渡し日の調整が必要です。
調整は不動産会社がおこないます。この物件を購入しようと決めたら、そのタイミングで不動産会社に相談をしましょう。
書類をすでに受け取っている方は、証明書の日付が2年以内かどうかをチェックしてください。もし2年を過ぎている場合は、証明書を再度取り直す必要があります。
認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の場合
認定住宅(認定長期優良住宅または認定低炭素住宅)、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に適合する場合は、次の証明書が必要になります。
必要書類 |
入手先 |
|
共通 |
住宅用家屋証明書 |
司法書士(物件の引き渡し時に登記書類として渡されます) |
長期優良住宅 ※いずれかでOK |
長期優良住宅建築計画の認定通知書 |
市区町村役所(認定後に郵送で届きます) |
認定長期優良住宅建築証明書 |
リフォーム会社 |
|
認定低炭素住宅 ※いずれかでOK |
低炭素住宅建築物新築等計画の認定通知書 |
市区町村役所(認定後に郵送で届きます) |
認定低炭素住宅建築証明書 |
リフォーム会社 |
|
ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 ※いずれかでOK |
建設住宅性能評価書 |
リフォーム会社 |
住宅省エネルギー性能証明書 |
申請書類の書き方
税務署で確定申告をする場合には、その場で書き方を教えてもらうことも可能です。
また、自宅でe-taxを利用したい方向けに、国税庁HPに案内が記載されています。
「確定申告書」「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」の書き方については、住宅金融支援機構HPにも分かりやすい見本が記載されています。
まずは「確定申告書」。こちらは給与所得や控除金額を記入します。
2023年1月から給与所得者などが使っていた申告書Aは廃止となったため、会社員の方も申告書Bを使用します。
続いて「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」。こちらは入居日や土地・建物の価格、年末時点のローン残高を記入します。
おわりに
納めた税金が戻ってくるといっても必要書類がたくさんあると準備も大変ですし、確認漏れが不安という方も少なくないはず。そんな方は、ぜひこの記事を申請前のチェックリストとしてご活用ください。
また、中古住宅は物件の条件によって控除や給付を受けられない場合もあります(新耐震基準に適合していない、瑕疵保険未加入など)。
住宅ローン控除の利用をご希望される方は、ぜひ物件探しの段階でコーディネーターまでご相談ください。
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