
住宅ローンで住宅を購入すると、最長で13年間、所得税や住民税が減税される「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」。住宅を購入したらぜひ利用したい制度です。
しかし、控除を受けるには確定申告をする必要があり、ローン残高証明書や登記事項証明書・売買契約書のコピーなど、多くの書類も用意しなくてはならず、手間がかかります。
この記事では「住宅ローン控除」の申請に必要な書類とその入手先を、一目で分かる一覧表にまとめました! 申請前のチェックリストとしてお役立てください。
2016年5月17日初出→2020年10月02日更新→2021年4月8日更新→2022年8月31日更新
目次
1.住宅ローン控除とは
2.控除を受けるための要件
3.住宅ローン控除利用の流れ
4.住宅ローン控除の申請に必要な書類
5.住宅ローン控除の申請方法~初年度は『確定申告』を行う
6.2年目以降の手続き
7.借り換えをした場合の申請手続き
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除をざっくり言うと、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築、またはリフォームをした場合に「年末のローン残高の0.7%に当たる額を、所得税から控除する」制度です。所得税だけでは控除しきれない場合、住民税からも控除されます。
1年あたりの控除額の上限は、新築(買取再販住宅を含む)が21~35万円※、既存住宅(中古住宅やリフォーム)は14~21万円。認定の有無や省エネ性によって額が変わります。
控除期間は新築13年間※、既存住宅が10年間なので、トータルの控除額は新築273~455万円、既存住宅140~210万円となります。
※新築の控除額・期間は2022~23年の場合。2024~25年は1年あたりの控除額が21~31.5万円に。省エネ基準に適合していない住宅は、建築確認が2023年までに行われた住宅に限って10年間控除を受けられます(建築確認が2024年以降の住宅は対象外)。

出典:国土交通省「令和4年度税制改正概要」
(https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000172.html)
控除を受けるための要件
住宅ローン控除は、新築住宅以外に中古住宅やリフォームをするために借入をした場合にも適用になります。
それでは次に住宅ローン控除を受けるための要件について解説します。
新築住宅の場合の要件
新築住宅で住宅ローン控除を受けるためには、一定の要件があります。具体的には次の通りです。
要件 | 注釈 |
自らが居住するための住宅の購入であること | 投資用物件や別荘などは対象外 |
親や親族からの購入・贈与でないこと | 親や親族から取得した住宅は対象外 |
新築・取得から6カ月以内に入居していること | 登記簿と住民票で入居日を確認 |
住宅ローン控除の適用を受ける年の12月31日までに居住すること | 10月以降に金融機関から残高証明が送付 |
床面積が50㎡以上 | 新築で2023年までに建築確認の場合、40㎡以下に緩和(所得1000万円以下の世帯に限る) |
1/2以上が自分の居住部分であること | 店舗や事務所などとの併用住宅の場合 |
住宅ローンの返済期間が10年以上あること | 返済期間が10年未満の場合は対象外 |
住宅ローンを受ける年の所得が2,000万円以下 | 2022年度から変更。所得が2000万円超の場合は受けられません |
「3000万円の特別控除」や「10年超保有の税率の軽減」などの優遇措置を受けていない | 居住した年の前後各2年間(合計5年間)に優遇措置を受けていると対象外に |
中古住宅の場合の要件
中古住宅の場合には、新築住宅の要件に加えて次の要件を満たさなければなりません。
要件 | 注釈 |
築年数 | 昭和57年以降に建築された=新耐震基準に適合している住宅 ※2021年までの「RC造25年以内・木造20年以内」から緩和 |
耐震性 | 上記築年数の要件を満たさない場合で、以下のいずれかに該当する住宅 ・耐震基準適合証明書を取得 ・耐震等級1以上の性能評価 ・売買瑕疵担保責任保険に加入していること |
詳細は下記関連記事をご覧ください。
増築・リフォームの場合の要件
リフォームで住宅ローン控除(特定増改築等住宅借入金等特別控除)を受けるには、新築住宅の要件に加えて次のいずれかの要件を満たさなければなりません。
さらに、工事は100万円以上の費用であること、居住用部分の工事費用がリフォーム費用の総額の1/2以上であることも要件になります。
要件 | 注釈 |
100万円以上の工事であること | 100万円未満の工事の場合は認められません |
大規模な修繕・模様替え工事 | 建築基準法に規定による増築・改築であること |
床、階段または壁 | 半分以上のリフォーム |
リビング・キッチン・浴室・トイレ・洗面所・納戸・玄関・廊下の一室の床の工事。 | または壁全部のリフォーム |
省エネ改修工事 | 家の断熱性を高める工事と太陽光発電装置の設置にともなう工事 |
バリアフリー改修工事 | 高齢者や障碍者が不自由なく生活するための住宅機能の改善工事 |
耐震改修工事 | 現行の耐震基準適合のための工事 |
多世帯同居改修工事 | 出産や子育ての負担を軽減する目的のため |
住宅ローン控除利用の流れ
入居の翌年になったら、確定申告で住宅ローン控除を受けるための申請手続きを行います。
基準となるのはあくまで入居した年。2022年の1月1日から12月31日までの間に入居したなら、2023年に確定申告を行います。
税務署に確定申告書を提出した後、1カ月ほどで所得税からの控除額が振り込まれます。
住民税からも控除される場合、控除額を踏まえて住民税の額が決まります。会社員なら6月以降、控除された額の住民税が給与から天引きされます。
入居から2年目以降は、年末調整で控除されます。会社員なら勤務先に控除証明書を提出すればOKです。
住宅ローン控除の申請に必要な書類
住宅ローン控除の申請には、多数の書類が必要です。役所、勤務先、不動産会社など、入手先も多種多様。申請時に漏れがないよう、早めに準備しておきたいものです。
必要書類 | 入手方法 |
源泉徴収票 | 会社員の方は、年末調整後(12月~翌1月)に勤務先から交付されます。 年内に転職した方は、前職・現職の2枚必要 |
住宅ローン年末残高証明書 | 金融機関から11~12月(初年度は1月の金融機関も)に送られてきます。発行依頼が必要な場合あり |
土地・建物の登記事項証明書 | 法務局が発行。地域の法務局の窓口で手続きするか、オンラインで申請してください。 手数料:窓口600円・オンライン申請/郵送500円・同窓口受取480円 ※ペアローンを組んでいて、夫婦それぞれが確定申告する場合でも1通でOK |
土地・建物の売買契約書 | 契約時、売主からもらいます。提出はコピーでOK。 紛失したら、仲介した不動産会社に相談しましょう。 |
工事請負契約書 | 新築や、リノベーションの場合に必要。工事の請負契約を締結するとき、工務店やリノベ会社から渡されます。コピー可。 |
増改築等工事証明書 | リフォーム会社やリノベーション会社の有資格者(建築士など)が発行する書類。引き渡しの際に、施工会社からもらいます。コピー可 |
マイナンバーカード | ご自身のマイナンバーカードをコピーして添付してください。 マイナンバー通知カードまたはマイナンバー記載の住民票の写し+運転免許証・パスポート等の本人確認書類(コピー)でも可 |
確定申告書B ※Aは2023年1月に廃止予定 |
最寄りの税務署か、国税庁のWebサイトで入手してください。インターネット上で作成も可能。 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 |
最寄りの税務署か、国税庁のWebサイトで入手してください。申告書と同じく、インターネット上での作成でもOK。 |
昭和57年より前に建築された中古住宅は、新耐震基準に適合していることの証明として、次のいずれかの書類を用意しましょう。
必要書類 | 入手方法 |
耐震基準適合証明書 |
建築士か、国交省指定の検査機関による耐震診断を受け、合格すると証明書が発行されます |
既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書 | 既存住宅売買瑕疵保険に加入すると付保証明書が発行されます。加入には国交省指定の保険法人の検査に合格する必要があります。管路の有無・保証期間1年と5年で保証額の差があります。 保険料:5~19,4万円(検査料込) |
いずれの書類も、物件の引き渡し前に取得する必要があります。
なお、マンションの耐震診断は管理組合が行う(個人では不可)ため、耐震診断済みで現行の耐震基準に適合している物件でなくては、控除は受けられないことになるので要注意です。
また、耐震診断済み、または瑕疵保険に加入済みの物件を購入された方は、証明書の日付が2年以内かどうかをチェックしてください。もし2年を過ぎている場合は、証明書を再度取り直す必要があります。
認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の場合
中古物件ではまだ少数派ですが、認定住宅(認定長期優良住宅または認定低炭素住宅)、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅に適合する場合は、証明書の提出が必要になります。
必要書類 | 入手方法 | |
共通 | 住宅用家屋証明書 | 物件の引き渡し時に、土地・建物の登記書類として司法書士から渡されます。再発行不可なので紛失に注意 |
長期優良住宅 | 長期優良住宅建築計画の認定通知書 | 市区町村から長期優良住宅の認定を受けると、役所から送られてきます。再発行には手数料300円が必要 |
認定長期優良住宅建築証明書 | 建築士、または国交省指定の検査機関・評価機関が発行します | |
認定低炭素住宅 | 低炭素住宅建築物新築等計画の認定通知書 | 市区市区町村から低炭素住宅の認定を受けると、役所から送られてきます。再発行は手数料300円が必要 |
認定低炭素住宅建築証明書 | 建築士、または国交省指定の検査機関・評価機関が発行します。 | |
ZEH水準省エネ住宅 | 未定 | 住宅性能評価書などを想定 |
省エネ基準適合住宅 | 未定 | 住宅性能評価書などを想定 |
住宅ローン控除の申請方法~初年度は『確定申告』を行う
住宅ローン控除を利用するには、確定申告をする必要があります。
会社員であれば、所得税は源泉徴収によって納税し、会社が年末調整を行うので確定申告は不要ですが、住宅ローン控除を受ける場合は確定申告が必要です。
その住宅に入居した年の収入を申告するとき、つまり入居の翌年に、必要な書類を揃え、税務署に確定申告書を提出してください。
2022年に入居したなら、翌年2023年に確定申告を行います。
※2022年の確定申告期間は2月16日~3月15日
申告時には「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「確定申告書」を、ご自身で記入する必要があります。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書の書き方
住宅借入金等特別控除額の計算明細書には、入居日や土地・建物の価格、年末時点のローン残高を記入します。

出典:国税庁「令和3年分の住宅借入金等特別控除額の計算明細書」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r03/14.pdf)
計算書には、土地と建物それぞれの価格(取得対価)を記入しなくてはなりませんが、中古住宅では土地・建物の価格を区別せずに取引するのが一般的。
この場合は、物件価格を固定資産税評価額の比で按分して、土地と建物、それぞれの取得対価を計算してください。例えば「物件価格が4000万円で、固定資産税評価額が土地1800万円・建物1200万円」の場合、取得対価は「土地2400万円・建物1600万円」です。
そして計算明細書の案内にしたがって、住宅ローン控除金額を算出します。
確定申告書(B)
次は、確定申告書(B)に、給与所得や控除金額を記入します。2023年1月から、給与所得者などが使っていた申告書Aは廃止となる予定ですので、会社員の方も申告書Bを使用しましょう。

出典:国税庁「申告書B【令和3年分以降用】」
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r03/02.pdf)
住宅借入金等特別控除額の計算明細書、確定申告書は、税務署でも入手できますし、国税庁のWebサイトからダウンロードしてもOK。インターネット上でも作成できます。
住宅借入金等特別控除額の計算明細書、確定申告書を用意したら、必要書類を添えて、期限までに確定申告を済ませましょう。税務署に直接書類を提出する以外に、郵送やインターネット申請(e-Tax)でも受け付けています。
確定申告のシーズンには、各税務署が相談窓口を設置したり、国税庁は毎年、Webサイト上で特集記事を公開しています。申告書の作成で迷ったりしたときは、覗いてみるのも良いかも。
2年目以降の手続き
初年度に確定申告をすると、その年の10月中旬~下旬ごろに、税務署から「住宅借入金等特別控除申告書」が送られてきます。
会社員の方は、勤務先にこの控除証明書と、銀行から送られる「借入金の年末残高等証明書」を提出してください。会社が年末調整で手続きをしてくれます。
自営業の方は、1年目と同様、住宅借入金等特別控除額の計算明細書を作成して、年末残高証明書を添えて確定申告を行ってください。
住宅借入金等特別控除申告書は、2年目に残りの年数分の枚数がまとめて送られてくるので、10年後までなくさないように。e-Taxで確定申告をした場合、申告時に希望しておけば、e-Tax上で受け取ることもできます。
借入金の年末残高等証明書も、10~11月頃に送られてくるのが普通。ただ、依頼がなければ送付しない銀行もあるので、送られてこない場合は銀行に問い合わせてください。
借り換えをした場合の申請手続き
要件さえ満たしていれば、住宅ローンを借り換えても、引き続き控除を受けられます。
控除期間はそのまま引き継がれます。借り換え前、3年間控除を受けていたとすると、借り換え後の控除期間は7年になります。
借り換え時でも、特別な手続きは不要です。年末調整の前に、勤務先に住宅借入金等特別控除証明書と借入金の年末残高等証明書を提出するだけ。2年目以降の手続きと同じです。
お金が戻ってくると言っても、必要書類がたくさんあると準備も大変ですし、確認漏れが不安ですよね。
そんな方は、ぜひこの記事を申請前のチェックリストとしてご活用ください。
また、中古住宅は物件の条件によって控除や給付を受けられない場合もあります(新耐震基準に適合していない、瑕疵保険未加入、など)。「住宅ローン控除を利用したい!」とお考えの方は、物件探しの段階から、ぜひ担当コーディネーターにご相談ください。
【記事監修】櫨元宏(宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー)
宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザーの有資格者。中古リノベから注文住宅まで、13年間におよぶ建築業界での営業経験をもつ。プライベートでは料理をこよなく愛する一面も(クックパッドにてレシピ公開中!)「食と住は生活の“根っこ”だと思います。キッチンへのこだわりを口にされるお客様は非常に多いです。一方で水廻りのリフォームは、物件によって制約も生じやすい部分。知識と経験をもとに『リノベ向き物件』をご紹介します」