賃貸でもできる「理想のインテリア」まめ知識


インテリアコーディネートの例。ツヤのある木目調の家具で統一し、全体の調和を図っている。

「おしゃれなインテリアの部屋に住みたい!」、「もっと自分らしいスタイルにしたい!」。そう考えている人は少なくないと思います。今の住まいが持家なら、リノベーションで理想のインテリアにすることへの制約はほとんどありません。せいぜい、かかる費用ぐらいのものでしょう。 

一方、賃貸のマンションやアパートにお住まいの方々にとっては、理想のインテリアを実現するのは至難の業。あれはだめ、これもだめ……たくさんの禁止事項が契約書に書かれていますよね。また、退去時の原状回復も必要な場合がほとんど。インテリアを変えてみよう、と思っても、制約の多さにためらってしまい結局はそのまま、なんてパターンも。

インテリアにこだわった部屋を探す、という手もありますが、まずは今の部屋で、できる範囲でインテリアをコーディネートすることを考えてみるのもいいのではないでしょうか。 
本日は賃貸特有の制約の中でも「理想のインテリア」を実現するためのポイントを解説します。

「原状回復」の基礎知識

まず、賃貸マンション・アパートで、どこまでインテリアに手を加えることができるのかを知っておきましょう。
賃貸住宅で最も大きな問題は「原状回復」でしょう。ほとんどの場合、退去するときに、部屋を入居時の状態まで戻すことが求められます。しかし、貸主・借主のどちらが、何をどこまで負担するのか、範囲があいまいでトラブルに発展することも少なくありません。

「通常の使用」がキーワード

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(2011年再改訂版、以下「ガイドライン」)では、「原状回復」は次のように定義されています。

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下『損耗等』という。)を復旧すること」

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf

堅い言い回しですし、「通常の使用」がどのようなものなのか判然としませんが、普通の生活でも十分起こりうる経年劣化・変化(畳や壁紙の日焼け、家具による床のへこみなど)は、原状回復の範囲には含まれないということです。逆に、飲み物をこぼしたのに掃除怠ったためにできたシミや、換気扇の油汚れ、喫煙による壁紙の変色などは「通常の使用」を超えるとみなされる、ということです。
この概念を図で表すと、以下のようになります。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より原状回復の範囲

出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
http://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf

何を、どこまでなら大丈夫?

ガイドラインで提示されている事例から、インテリアに関連する要素を抜き出してみると、ポスターやカレンダーなどを壁に張るためについた「画鋲、ピン等の穴(下地ボード張替えが不要な程度のもの)」は「通常の使用」の範囲だとされています。

一方、「壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)」や、「天井に直接つけた照明器具の跡」(もともとある照明用のシーリングなどを使わなかった場合)は、「通常の使用」の範囲を超えた損耗とみなされ、借主が修繕費用を負担すべきとされています。

ガイドラインは法的な拘束力があるものではなく、必ずしもガイドラインの記述が通用するとは言えませんが、賃貸住宅のインテリアを考える場合には目を通しておいたほうがいいでしょう。

インテリアの鍵は照明と配色

ガイドラインを前提にすると、ネジやくぎは使わず、できるだけ部屋の各部を傷めない、かつ退去するときに取り外しや撤去が容易なものを活用するのがベター、ということになります。

空間の印象を大きく左右するのが、照明と、家具やファブリック類の配色です。
照明は、既存の天井に引っ掛けシーリングが取り付けてあれば、ワンタッチで取替が可能です。カフェ風のペンダントライト、レトロなランプシェード、間接照明を楽しめるダクトレールも、最近は天井に穴を開けずに取り付けられるタイプが市販されており、気軽に楽しむことができます。

また室内の広範囲を覆うカーテンやラグ、ベッドカバーといったファブリック類、ソファやテーブルセット、キャビネットといった家具の配色は、空間の印象を大きく左右します。
センスよくまとめるコツは、メインカラーとアクセントカラーを決めること。色を揃えることで、部屋に統一感が生まれます。
たとえばメインカラーを白、アクセントカラーをブルーと決めたら、ファブリックや家具の大半を白で統一し、ポイントとしてブルーのアイテムを差し入れる……ということです。

カラーコーディネートの例。ホワイトを基調に、ブルーのソファがアクセント。

カラーコーディネートの例。ホワイトを基調に、ブルーのソファがアクセント。

ひかリノベ事例:case47「5年後、10年後……この子が大きくなっても愛せる家」より
https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0047/

家具選びは材料にも注意

インテリアとしても、生活の道具としても必要なテーブルや椅子、ベッドなどの家具。引っ越しのタイミングで家具を買い替えたりすることも多いでしょうから、こだわって選びたいものです。

手ごろな価格でもおしゃれな家具が販売されていますが、ひとつ気を付けたいことがあります。それは、化学物質が体の不調を引き起こす「シックハウス」です。
建築基準法で、建材に含まれるホルムアルデヒドの量は規制されていますし、その他の化学物質についても厚生労働省が含有量のガイドラインを作っています。

しかし、家具にはこうした規制がありません。安い家具には、合板、接着剤や塗料など、有害な化学物質が多量に含まれている材料が使われていることが多々あるのです。東京都生活文化局が、インターネットの通販で販売されている安価な家具について調査したところ、15個中6個の家具で室内のホルムアルデヒドの濃度が、厚生労働省の指針値を超えていました。特に安い商品は、指針値越えのものが多いという結果が出ています。

東京都生活文化局消費生活部「家具から放散される有害物質」より家具の価格帯別ホルムアルデヒド濃度

出典:東京都生活文化局消費生活部「家具から放散される有害物質」
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/test/documents/60l4c102.pdf

すぐに悪影響がある、というものではありませんが、有害物質は長期間に渡って室内に放出されるので、使っていくうちに影響があらわれる可能性があります。気を付けましょう。

賃貸で使えるDIYグッズのポイント

最近は、原状回復が容易なDIYのアイデアグッズも市販されています。ここでは室内の印象を大きく変える壁紙の模様替え、身近な100均グッズを使った収納や家具アレンジのアイデアをご紹介します。

「はがせる壁紙」で印象を変える

部屋の印象を大きく左右する壁。賃貸住宅では、無難な白い壁紙が張られがちですが、もう白い壁には飽き飽き、もっと個性のある色や柄の壁にしたいという方も多いはず。

今は、簡単にはがせる壁紙が市販されています。お好みの色、柄の壁紙をはさみやカッターで切って、シールのように裏紙をはがして張るだけで、あっという間に壁の模様替えは終わりです。

壁紙は、貼る面積が広いので、空気が入ったりしやすいもの。カッティングシートのように、端の裏紙を切って、位置決めを慎重に行ったうえで、少しずつ貼っていくのがコツです。ヘラなどを使って、壁と壁紙の間の空気を追い出すようにしながら貼っていきましょう。

100均グッズで収納充実

あらゆる住まいに欠かせないのが収納です。キッチンなら調理器具や食器、カトラリー、リビングには本やCD、スマートフォンやパソコン、寝室にはふとんや枕、玄関には傘や靴、コート……それぞれの場所に必要なものがたくさんあります。特に、ワンルームなど狭い部屋にお住まいの方にとっては尽きない悩みでしょう。「もともとあった棚やクローゼットでは足りない!」という方も多いでしょう。使うときに便利で、かつ美しく収めたいものですよね。

世の中には多数の収納グッズが売られています。今やわたしたちの生活に欠かせない100円ショップでも、便利な収納グッズがたくさん売られています。

衣類ケースや、「CDが〇〇枚入る」ボックスなど、用途が明確に表示されているものもありますが、シンプルなカラーボックスやかごなど、多目的に使えるものもたくさんあります。
散らばりがちなキッチンの調理器具や調味料、あるいは机の上にいつも置いておきたいペンなどを、おしゃれなデザインのボックスやかごに入れ、全体の雰囲気を考えながら配置するだけでも、部屋の印象は大きく変わるでしょう。
もちろん、使うときにもしまう場所が決まっているだけで、ずいぶん便利になるはずです。

サイズやカラーバリエーションも豊富で、何と言っても安く、簡単に手に入れられるので、まずは100均グッズを活用してみるのも良いのではないでしょうか。

クローゼット内収納の例。市販のケースを活用し、スッキリと収納している。

クローゼット内収納の例。市販のケースを活用し、スッキリと収納している。

左:ひかリノベ事例case41「ずっと二人でいたいから……私の「好き」も、あなたの「好き」も。」より
https://hikarinobe.com/constructioncase/case_41/
右:ひかリノベ事例case46「お気に入りの家具に合わせて。インテリアが映える空間づくり」より
https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0046/

用途やサイズはばっちりだけど、気に入った色や柄がない――時にはそんなこともあるでしょう。そんな時にはカッティングシートの出番です。
木目調をはじめとしてさまざまな色、柄のものが市販されており、もちろん100均でも手に入ります。後ではがせるものもあるので、後で雰囲気を変えたくなったときでもOKです。

カッティングシートを貼るときは、裏紙を全部はがしてから貼るのではなく、端や中央を少し切って、まず貼る位置を慎重に決めてから、徐々に裏紙をはがしつつ貼っていきましょう。空気が入って見た目が悪くなってしまう失敗が減ります。空気が入ってしまった場合、針などで小さい穴をあけて空気を出し、平らにするといいでしょう。

全体の雰囲気を考えたコーディネートに

インテリアは、ひとつひとつの要素も大事ですが、トータルなコーディネートが部屋全体の雰囲気を左右します。「とにかく収納を増やせればいい」というような人はともかく、せっかくならば全体の雰囲気がいい部屋に暮らしたいですよね。

インテリアコーディネートの例。ツヤのある木目調の家具で統一し、全体の調和を図っている。

インテリアコーディネートの例。ツヤのある木目調の家具で統一し、全体の調和を図っている。

ひかリノベ事例:case46「お気に入りの家具に合わせて。インテリアが映える空間づくり」より
https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0046/

江戸時代、アメリカが開国を要求したとき、日本人は畳の部屋にテーブルと椅子を置いて交渉に臨んだというエピソードがあります。これはまだ海外の生活様式が全く入っていなかった時代だからこそのできごと。今、そんな部屋があったら、なんともちぐはぐな印象になるでしょう。

例えば、白いミニマルな印象の部屋の中に、派手な装飾を施した中世ヨーロッパの家具があったら、不釣り合いだと感じると思いませんか? 逆に、和を感じさせる畳の部屋に、北欧デザインの家具を置いたら意外と溶け込んで見える――そんな例もあります。
部屋のデザインにどんな家具や小物が合うかは、実際に置いてみないとわからないものです。思っていたのと違う感じになってしまうこともあるでしょう。

できれば、ご自身が理想とする、目指すインテリアの実例を探してから、自室のインテリアに取り組みましょう。
ひかリノベのHPでも、お客様のリノベーション事例を写真で公開しています。理想のインテリアの姿を考えるヒントに、一度ご覧になってみてください。

「DIY型賃貸」ならもっと自由に

これまで、一般的な賃貸住宅でインテリアを楽しむための工夫を説明してきましたが、最近「DIY型賃貸住宅」というものが存在することをご存知でしょうか?「カスタマイズ賃貸」などとも呼ばれますが、その名の通り、入居者がDIYで自由にカスタマイズできる賃貸住宅のことです。
まだ数が多いとは言えませんが、UR(独立行政法人都市再生機構)が「DIY住宅」の名でDIY可能な賃貸住宅を提供するなど、徐々にDIYがOKという物件は増えつつあります。

国土交通省が2016年4月に公表したガイドブック「DIY型賃貸のすすめ」では、借主が入居後に手を加えた部分の所有権が、貸主・借主のどちらにあるのかは「当事者間の合意により取り決める」としています(塗装など、建物から分離できない部分は貸主が所有権を持つ)。

原状回復については、退去時に残したままにするのか、撤去するのかで変わってきます。残したままの場合、基本的に原状回復の義務はないとされています。逆に、撤去する場合や、例えば新しく設置した設備が壊れている、といったケースのために、事前に原状回復の必要性や範囲、補修をどちらの責任でするのかを事前に決めておくことを推奨しています。

そのため、一般的な賃貸借契約のほか、DIYの申請書・承諾書、事前に取り決めた内容の合意書を、貸主と借主の間で交わしておくことが望ましいです。手続きが複雑にはなりますが、不要なトラブルを防ぐためにも、事前に決めるべきことをしっかり決めておきましょう。

国土交通省「DIY型賃貸借のすすめ」 よりDIY型賃貸の契約手続きと賃料の流れ

出典:国土交通省「DIY型賃貸借のすすめ」
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000104.html

いずれは住まいを持ちたいけど、今は賃貸住宅に住んでいる、という人も、ずっと賃貸でいいと考えている人も、インテリアへのこだわりは同じはず。理想のインテリアを実現するための工夫は、今後の住まい選びにもきっと参考になるはずです。

 

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【執筆】荒井 隆大(ライター)
【監修】櫨本 博之(宅地建物取引士)

 

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