マンションの耐用年数は何年?長く住める物件選びのポイントは?

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マンション、とくに中古物件を購入する際、「どれくらい長い間住めるのだろう」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

建物は、いずれは構造躯体や設備の老朽化によって住める状態でなくなってしまいますが、築何年くらいで住宅としての寿命を迎えるものなのか、心配になりますよね。

この記事では、マンションの建物や設備は何年もつのか、また長く住める物件とそうでない物件を見分けるポイントを解説します。物件を選ぶ際の参考にしてください。

2016年4月26日初出→2023年5月11日更新

法律上の耐用年数

マンションの「耐用年数」は、税法で定められているものです。
減価償却の計算はこの耐用年数(法定耐用年数)をもとに行われます。

この年数は、通常の使い方をして住めば、新品から〇〇年使えるだろうという想定で決められたもの。

鉄筋コンクリート造のマンションは47年。
重量鉄骨造は34年。
なお、木造の戸建住宅は22年と定められています。

※法定耐用年数を用いた減価償却の計算方法については、こちらに特集記事があります。くわしく知りたい方は下記も併せてご覧ください。

実際の寿命は何年?

上記の「耐用年数」とは、あくまで税法上の定め。実際に住める年数とは異なります。
木造戸建は全て22年で住めないほど傷むか? と言われると、決してそうではないですよね。
同様にマンションも、47年で必ず寿命を迎えるわけではありません。

たとえばニューヨークのエンパイアステートビルは、1930年の新築時から100年経った現在も、立派に役目を果たしています。このように税法上で定められる法定耐用年数を超えて非常に長い期間、現役で活躍している建物は、世界各地に数多く存在しています。

また国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(平成25年)によれば、「RC造建築の寿命は117年」「マンションの寿命は120年で、メンテンナンスにより150年まで延命できる」という研究結果が出ています。

つまり、メンテナンス次第で物件の寿命は変わるということを覚えておきましょう。

法定耐用年数が短いのはなぜ?

なぜ法定耐用年数は実際の寿命より短く設定されているのでしょうか?

それは高度経済成長期に普及したRC造マンションの「配管」が原因です。

配管設備の平均寿命はおよそ30〜40年とされていますが、1960年~70年代に建てられたマンションの多くは配管設備をコンクリートの躯体に埋め込んでおり、取り替えが困難。
そのため、配管設備に致命的な問題が起こった場合には、建物ごと建て替える必要がありました。

最近のRC造は配管交換が容易な設計が多く採用され、そういった問題は起こりにくくなっています。

また耐震性の問題から、建て替えや取り壊しが決まった例もあります。

現行の「新耐震基準」がスタートしたのは1981年6月で、それ以前の古い建物は旧耐震基準が適応されているため、震度6〜7の大きな地震を想定していません。
そのため政府は、耐震診断と必要に応じて補強工事を行うよう奨励しています。

マンションの補強工事は大掛かりで、工事費用も高額。「いっそ壊してしまって、新たに建て直す方が効率的だ」という発想が生まれ、結果的に建て替えとなるケースもあるのです。

さらに、区画整理や再開発のために、取り壊しが決まった例もあります。

とくに古い建物が多い地域は、「地震や火災といった災害のリスクが高い」と行政から問題視されることも。建て替えや取り壊しの原因は建物の老朽化よりも、環境への適応度の低下が原因で起こりやすいともいえます。

寿命が長いマンションの特徴

では、寿命が長いマンションの特徴とはどんなものなのでしょうか。そうでないマンションとの違いはどこにあるのか、見極めるポイントは、次の3つです。

  • 管理状態
  • 建材
  • 立地環境

管理状態

建物の寿命は、管理状態によって大きく変わります。立地や建材が良くても、管理状態がずさんであれば意味がありません。

堅牢なコンクリート建築であっても、長いあいだ風雨や日差しにさらされ消耗するため、定期的なメンテナンスが不可欠です。

外壁塗装や屋上防水は、12~15年を目安に大規模修繕をおこなう必要があります。
鉄製器具の錆び止め塗装や扉の油差し、割れたガラスを交換するなど、その都度補修が求められる箇所もあります。

マンションの維持管理は、管理組合の仕事です。

国土交通省は「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドライン」を策定し、全国のマンション管理組合に対し、計画的に修繕を実施するよう推奨しています。
同ガイドラインでは25年先、つまり次回・次々回の大規模修繕を想定した長期修繕計画を立て、その計画に基づいて修繕を実施することを推奨しています。

ですが、中には修繕計画をもたず、過去の修繕履歴も記録していないなど、ずさんな管理体制のマンションも存在しているため注意が必要です。
これからマンション購入を検討している方は、必ずこの修繕計画と履歴の有無を確認するようにしましょう。

さらに、修繕資金が足りているかも重要なポイント。

建物の外壁や廊下といった共用部分の修繕は、毎月の修繕積立金でまかなわれています。
一度の大規模修繕に必要な金額は、一戸あたり100〜120万円ほど。
大規模修繕は12年~15年ごとにおこなうのが望ましいとされていますから、計算すると毎月の納付額は(余裕をもって)1万円前後が適正金額ということになりますね。

とはいえ塗料などはスケールメリットも大きいため、大規模マンションはそれより安くても充分という考え方もあります。

反面、小規模マンションは概してやや高めに設定されていることが多く、タワーマンションは足場を組むのに高額の費用がかかるため、中・低層マンションに比べ毎月の積立金額もより高額になります。

修繕積立金についてもう一つ、チェックしておきたいのが滞納の有無。
大規模マンションでは短期的な滞納は少なからず起こり得ますが、長期にわたる滞納が多数発生している物件は、いざ修繕時期を迎えたときに資金が足りなくなる恐れがあり、管理組合(または委託を受けた管理会社)の管理能力も疑われます。

修繕計画やその履歴、修繕積立金の滞納における有無については、ひかリノベではお客さまの代わりとなって専属コーディネーターが調査・報告いたします。疑問や不安があれば、何なりとご相談くださいませ。

※修繕積立金については、下記の記事でくわしく特集しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。

建材

建築に用いられている資材や設備が長持ちするものであれば、当然、建物の寿命も長くなります。
(前提として、メンテナンスが適切になされていることは言うまでもありません)

マンションに使用されているコンクリートの品質も、マンションの寿命に影響します。
セメントに対して水の比率が低いものを使用している。
鉄筋を覆う部分が分厚い。
このような鉄筋コンクリート造のマンションはコンクリートのひび割れも起きにくく、中の鉄筋が錆びるリスクも少ないです。

また、マンションの建て替えの原因となりやすいのは、建物そのものよりも給排水管であると前述しましたが、最近では従来の錆びやすいメッキ鋼管ではなく、腐食や詰まりに強い塩化ビニール管、架橋ポリエチレン管を採用するマンションが増えてきました。
さらに配管交換が容易なサヤ管ヘッダー工法の普及が進んだことで、良い状態を保ちやすくなってきています。

立地環境

立地環境が建物の消耗に影響する場合もあります。

たとえば、周りに背が高い建物がない場合は、雨・風・日差しをまともに浴びるため、外壁や屋上防水はダメージを受けやすくなります。
反対に日光が入りにくい環境でも、湿気がたまってカビやコケの温床となりやすいという問題があります。

また、海浜の近くでは、潮風が金属(鉄骨を含む)の腐食を招くことも。

もちろん外壁塗装や屋上防水の補修など、環境に合ったメンテナンスがおこなわれていれば劣化を防ぐことは可能です。
立地条件に見合った修繕計画が練られているならば「海の近くには住まない」など、極端に立地に対する制限を設ける必要はありません。

そもそも「ダメージを受けにくい立地条件」と一口に言っても、答えを出すことは非常に難しく、どんな環境も一長一短の特徴があります。

こうした事実を踏まえ、エリア選びはまず通勤アクセスや生活利便性、周辺環境など「どのように暮らしたいか」を中心に考え、その地域特性に適した管理が行われているか全体像を確認する――ということが重要になってきます。

寿命を迎えたマンションはどうなる?

法定耐用年数も過ぎ、さらに長い時を経て、住めないほど劣化したマンションは、建て替えもしくは解体して更地にすることになります。

建て替えの場合、居住者が費用を出し合うことになりますが、築年数が古いマンションは住民も高齢化していることが多いため、費用を捻出することができず、建て替えはなかなか進んでいないのが現実です。
劣化したまま放置されたマンションは耐震性の問題もあり、社会問題化しています。

そんな中、居住者負担0円で建て替える方法もあります。
もとの建物より大きなマンションを建設して、戸数を増やし、その売上で建て替え費用をまかなうという方法です。

建ぺい率・容積率に余裕のあるマンションでないとできませんが、古いマンションは広い敷地をゆったりとつかった設計のものも多く、現在進められている立て替え事業の多くがこの方法を採用しています。

※建て替えについてはこちらに特集記事がありますので、ぜひ併せてご覧ください。

住まいの健康診断「インスペクション」

建物の状態や性能は、専門家でなければ見極めが難しいところがあります。

とくに築年数を経た既存住宅については、内覧で現物を見ることはできますが、構造耐力上の問題や雨水の侵入など、一見しただけでは分かりづらい項目があるのも事実。

こうした課題を解決するため、2018年4月に宅建業法が改正され、不動産会社には以下の内容が義務付けられました。

  • 売主に対し、売却の媒介契約時にインスペクション(建物状況調査)業者を斡旋できるかどうか明らかにすること
  • 買主に対し、売買契約前の重要事項説明の際に、インスペクション結果を示すこと

「インスペクション」とは、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎や外壁など、建物の構造耐力上主要な部分および雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を調査することをいいます。

マンションではこのほか、長期修繕計画や管理規約の有無も調査対象となります。

安心R住宅とは

上記のインスペクションの結果、安全性が証明された物件は『安心R住宅』と認められ、良質な住宅を示すものとして、販売情報に所定のロゴマークを表示することができます。

安心R住宅のロゴマーク安心R住宅のロゴマーク

「あと何年住めるだろう?」という質問に回答するのは難しいですが、劣化・不具合の少ない物件は、相対的に長く快適な住環境を保ちやすい物件といえます。

つまり、物件を探している側としては、『安心R住宅』のロゴマークを目印として、安心・安全な既存住宅を選びやすくなったということ。

ただし、この『安心R住宅』制度はまだ発足間もないこともあり、広く普及しているとはいえない状況です。売主側としても、インスペクションによってもし瑕疵が見つかったら売りづらくなると考え、調査になかなか積極的になれない現実があります。

長く安心・安全・快適に住めるマンションを探すには、やはりコーディネーターと二人三脚で情報を集め、正しく判断することが大切です。

住宅性能表示制度とは

また、専門家のような知識がない人でも、安心・安全な住宅を選べるように制定された「住宅性能表示制度」というものがあります。

その中でも、劣化対策等級という項目があり、建物の耐久性を3段階に分けています。
数字が大きくなるにつれて、性能が高い住宅ということになります。

ただし、中古住宅の住宅性能表示制度は2002年、安心R住宅は2017年に開始した新しい制度です。
インスペクション(住宅状況調査)の告知が義務化されたこともあり、これから徐々に普及が進んでいくと思われますが、現状ではまだ専門知識をもつコーディネーターと個別に物件の管理状態をチェックする必要があります。

まとめ

マンションの耐用年数と寿命について解説しました。

建物の寿命はメンテナンスによって変わるため、一概に「マンションには何年住める」と断言することは難しいです。

ひるがえれば、長く住み続けられるかは、管理の良し悪しにかかっています。
中古マンションを購入するときは、管理状態をよくチェックしましょう。

当社ひかリノベは、中古マンションの購入とリノベーションをワンストップでご提供するリノベーション会社です。建築の専門知識をもって物件探しからサポートします。

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記事監修

坂田 皓基(宅地建物取引士)

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