
不動産投資をしている人はもちろん、投資目的でなくとも所有しているマンションを賃貸に出して利益を得ている人もいるでしょう。
また売却によって利益を得た場合には、減価償却費を計算して確定申告をする必要があります。
しかし、減価償却費計算は難しく感じてしまい、苦手意識をもつ方も多いはず。
「土地も建物もいっしょに減価償却していいの?」
「中古マンションの耐用年数はどう計算したらいい?」
「結局、いくら税金がかかるの?」
そんな疑問にお応えして、今回は簡単にできる中古マンションの減価償却費計算を解説します。
次の確定申告に向けて、ポイントをおさらいしていきましょう!
2017/05/31初出⇒2023/3/22更新
目次
そもそも減価償却とは?
建物は基本的に耐用年数が長いとされています。ですが時間の経過に伴って、徐々に建物は古くなり経年劣化していくのも事実。
減価償却とは、経年による「価値の減少」を経費として計上する会計上の仕組みのことをいいます。
あくまで会計処理なので、単に自宅としてマンションを所有しているだけの場合は関係ありません。
例え、「マンションを売却して利益が出た」「賃貸に出して家賃収入を得ている」といった場合は、これらにかかる税金の申告しなくてはいけません。
このとき、築年数や、取得から売却までの年数におうじて、減価償却をおこなう必要があります。
マンションの法定耐用年数
建物や機械設備などの固定資産は、「この資産は通常の使い方をすれば、新品から〇〇年使えるだろう」という年数が税法上定められています。これが法定耐用年数です。
減価償却は、この法定耐用年数から逆算し「1年間でどれだけ価値が減少したか」を確定申告時に経費として計上する仕組みになっています。
マンション(SRC造、RC造)の法定耐用年数は47年。
木造・合成樹脂造のものは22年、木骨モルタルのものは20年です。
同じ住居用の建物であっても、マンションは木造住宅に比べ2倍以上も耐用年数が長いことがわかりますね。
構造 | 法定耐用年数 |
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 鉄筋コンクリート(RC)造 |
47年 |
れんが・石・ブロック造 | 38年 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
ただし、中古マンションを購入した場合、もしくは新築であっても何年か住んだあと賃貸に出した場合には、単に47年から築年数を引くのではなく、次の式で耐用年数を計算し直す必要があります。
中古マンションの耐用年数
(47年-経過年数)+経過年数×0.2
付帯設備も減価償却ができる
減価償却の対象となるのは、建物それ自体に限りません。
住宅用建物には、給排水設備やガス設備、電気・照明などの設備が不可欠。
これらの付帯設備も、減価償却をおこなうことができます。
おもな付帯設備の法定耐用年数はつぎのとおり。
設備 | 法定耐用年数 |
給排水設備やガス設備、電気・照明などの設備 | 15年 |
蓄電池電源設備(非常用電源バッテリーなど) | 6年 |
付帯設備の減価償却費は、建物本体と分けて計上しても良いし、分けずに一体として計上してもOK。
分けて計上すれば、一年あたりに計上できる償却費が多くなりますが、15年(蓄電池等は6年)で償却は終了します。
分けずに形状すれば、一年あたりの金額は小さくなりますが、建物の耐用年数に合わせ長期間計上できます。
いずれにせよ、最終的な金額は変わりません。
なお、土地は経年により消耗するものではないため、減価償却はできません。
償却対象となるのは、建物と付帯設備のみです。
マンションの減価償却費の計算方法
減価償却費の計算式
建物の取得価額×償却率
建物の取得価額とは、物件価格だけでなく、仲介手数料(消費税込み)としてかかった費用と固定資産税・都市計画税の精算分も含めた金額をいいます。
ただし、減価償却の対象となるのは前述のとおり建物と付帯設備のみ。
したがって取得価額に含まれるのは、物件価格のうち建物の分だけ。土地の価格は含まれません。
償却率とは、1年にどれだけ価値が減少するかを税制上で定めたものです。対象となる物件の耐用年数によって決まっています。
たとえば、耐用年数30年の資産の償却率を見てみると、『0.034』となっています。

出典:国税庁「減価償却資産の償却率表 」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf)
上記の表を見ると、『定額法』『定率法』と記載があり、償却率がそれぞれ違っていますね。
ここでは『定額法』の欄だけ見て、『定率法』については無視してOKです。
というのも、減価償却費の計上方法には『定額法』と『定率法』の2つがあります。
建物は、毎年決まった金額を償却するというやり方の『定額法』で計算することが、税制上で定められています。
つまり、賃貸に出している間は、毎年一定の金額を経費として計上することになります。
自分で住んでいた期間の減価償却費
自宅として何年か住んだマンションを賃貸に出した場合、自分の居住中に減少した価値も償却する必要があります。
以下の計算式が、減少した価値を算出する計算式です。
この金額を、あらかじめ取得価額から差し引いて、減価償却を行っていきます。
居住中に減少した価値
マンション購入価額×0.015×居住年数
※ただし、2007年3月31日までに購入した物件については、旧法に基づき購入価額×0.9×0.015×居住年数と計算する
減価償却シミュレーション~実際に計算してみよう
それでは、例を使って実際に減価償却費を計算してみましょう。
中古マンションを購入し、賃貸に出した場合
CASE1
建物部分1,000万円で購入した築10年の中古マンションを、購入したあとすぐ賃貸に出した場合の減価償却費は?
償却率を出すには、まず耐用年数を計算する。
(47年 − 10年)+10年×0.2=耐用年数39年となる。
耐用年数39年の資産の、定額法における償却率は、先程の償却率表を参照すると0.026。
これを減価償却費の計算式当てはめて計算すると……
減価償却費=1000万円×0.026=26万円となる。
新築マンションを購入し、自宅として5年住んだあと賃貸に出した場合
CASE2
建物部分1,000万円で購入した新築マンションに5年住んだあと賃貸に出した場合の減価償却費は?
この場合、自宅として住んでいた期間に減少した価値を求める必要がある。
住居中に減少した価値=1000万円×0.015×5年=75万円となる。
新築の状態からこの減少した75万円を差し引くと、1000万円−75万円=925万円。
この価格をもとに、減価償却費を算出していく。
また残りの耐用年数は、(47年 − 5年)+5年×0.2=43年。
耐用年数43年の資産の、定額法における償却率は、先程の償却率表を参照すると0.024。
これらを減価償却費の計算式に当てはめて計算すると……
減価償却費=925万円×0.024=22万2,000円となる。
2024年(令和6年)から変わる確定申告のルール
不動産売買や賃貸によって得た利益やかかった経費は、毎年2月~3月に確定申告をおこないます。この確定申告のルールが、2024年(令和6年)から一部変更されることはご存知でしょうか。
2022年(令和4年)に改正・施行された『電子帳簿保存法』。これにより、インターネットや電子メールを介してやりとりした領収書や請求書は紙に印刷するのではなく、電子データのまま保存することになりました。
(紙でやりとりされた書類は紙のまま保存でOKです)
印刷保存から電子保存への移行は、2023年(令和5年)12月31日までは猶予期間となっていますが、その後は完全移行となります。
つまり、次回2024年(令和6年)の確定申告のときには、電子データでやりとりした領収書や請求書は、すべて電子データのまま保存しておく必要があります。
データの書式や保存方法は、国税庁が定めたルールにしたがいます。
電子帳簿保存法は、業種を問わず法人にも個人にも適用されるものです。
いわゆるサラリーマン大家のかたで、家賃の領収書は紙ではなくPDF等のデータで発行している、というかたも多いのではないでしょうか。次回確定申告に向けて、準備をしておきましょう。
おわりに
難しく考えがちな中古マンションの減価償却も、この記事でご紹介した計算方法をおさえておけば、スマートに計算することができます。ぜひスマートフォンやPCにブックマークして、確定申告の際にご使用ください。
住宅リノベーションのひかリノベでは、マンションの売却もサポートさせていただいています。ご自宅や所有物件の売却をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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