
不動産投資をしている人はもちろん、投資目的でなくとも所有しているマンションを賃貸に出したり、売却して利益を得た場合には、減価償却費を計算し確定申告をする必要があります。
そのために必要な減価償却費計算は、ちょっと難しく感じてしまう方も多いはず。
「土地も建物もいっしょに減価償却していいの?」
「中古マンションの耐用年数はどう計算したらいい?」
「結局、いくら税金がかかるの?」
この記事では、簡単にできる中古マンションの減価償却費計算を解説します。確定申告の前に、おさらいしていきましょう。
2021年の確定申告でも、基本的には2020年までと計算方法は変わりません。新型コロナウィルスの流行により、確定申告の期限が例年より長い4月16日までとなっており、さらに17日以降であっても、税務署に申し出れば深刻可能とする方針を、国税庁が発表しています。
2017/05/31初出⇒2019/11/29更新
目次
1.そもそも減価償却とは?
2.マンションの減価償却費の計算方法
3.自宅マンションを賃貸に出す場合
4.実際に計算してみよう!
5.建物の取得価額が分からないときは
6.付帯設備も減価償却ができる
1.そもそも減価償却とは?
建物は基本的に、耐用年数が長いとされています。しかし、築年数の経過とともに徐々に経年劣化していくのも事実。
減価償却とは、経年による「価値の減少」を経費として計上する、会計上の仕組みのことを言います。
あくまで会計処理なので、単に自宅としてマンションを所有しているだけの場合は、関係ありません。
しかし、もし「マンションを売却して利益が出た」「賃貸に出して家賃収入を得ている」といった場合は、これらにかかる税金の申告をする必要があります。そのとき、減価償却を行う必要があるのです。
2.マンションの減価償却費の計算方法
減価償却費の計算式
建物の取得価額×償却率
建物の取得価額とは、物件価格だけでなく、仲介手数料(消費税込み)と固定資産税・都市計画税の精算分も含めた金額をいいます。
ただし、金額の対象となるのは建物の分だけ。土地の価格は含まれません。
償却率とは、1年にどれだけ価値が減少するかを税制上で定めたものです。
対象となる物件の耐用年数によって決まっています(国税庁|償却率表を参照)
例えば、下記の償却率表で耐用年数30年の定額法の償却率を見てみると、0.034となります。

出典:国税庁「減価償却資産の償却率表 」(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf)
建物の償却は「定額法」を用いる
減価償却費の計上方法には「定額法」と「定率法」の2つがあります。
建物はこのうち「定額法」で計算することが、税制上で定められています。
「定額法」とは、毎年決まった金額を償却するというやり方。
つまり賃貸に出している間は、毎年一定の金額を経費として計上することになります。
耐用年数の求め方
減価償却の計算に用いる償却率は、建物の耐用年数によって定められています。
RC造マンション(鉄筋コンクリート造のこと)の耐用年数は47年です。
構造 | 法定耐用年数 |
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 鉄筋コンクリート(RC)造 |
47年 |
れんが・石・ブロック造 | 38年 |
木造・合成樹脂造 | 22年 |
木骨モルタル造 | 20年 |
ただし、中古マンションを購入した場合や、新築であっても何年か住んだあと賃貸に出した場合には、残りの耐用年数を計算し直す必要があります。
残りの耐用年数は、以下の公式で計算します。
中古マンションの耐用年数
(47年-経過年数)+経過年数×0.2
3.自宅マンションを賃貸に出す場合
自宅を賃貸に出した場合、自分の居住中に減少した価値も償却する必要があります。以下が、その減少した価値を算出する計算式です。
居住中に減少した価値
マンション購入価額×0.015×居住年数
※ただし、2017年3月31日までに購入した物件については、旧法に基づき購入価額×0.9×0.015×居住年数と計算する
この金額を、あらかじめ取得価額から差し引いて、減価償却を行っていきます。
4.実際に計算してみよう
それでは、実際に例を使って計算してみましょう!
Q1.
建物部分1,000万円で購入した築10年の中古マンションを、購入してすぐ賃貸に出した場合の減価償却費は?
償却率を出すには、まず耐用年数を計算する。
(47年 − 10年)+10年×0.2=耐用年数39年となる。
耐用年数39年を、償却率表の定額法で参照すると、0.026となる。
これを減価償却費の計算式当てはめて計算すると……
減価償却費=1000万円×0.026=26万円となる。
Q2.
建物部分1,000万円で購入した新築マンションに5年住んだあと、賃貸に出した場合の減価償却費は?
この場合、自宅として住んでいた期間に減少した価値を求める必要がある。
住居中に減少した価値=1000万円×0.015×5年=75万円となる。
新築の状態からこの減少した75万円を差し引くと、1000万円−75万円=925万円。
この価格をもとに、減価償却費を算出していく。
また残りの耐用年数は、(47年 − 5年)+5年×0.2=43年。
耐用年数43年を、償却率表の定額法で参照すると、0.024となる。
これらを減価償却費の計算式に当てはめて計算すると……
減価償却費=925万円×0.024=22万2,000円となる。
5.建物の取得価額が分からないときは
新築マンションの場合、たいていは契約書に土地・建物の内訳が表示されています。しかし中古マンションの場合、土地・建物の内訳が表示されていないケースも多いのです。
そこで、マンション購入価額から建物分の金額を取り出す方法として、次の二つの方法があります。
- 消費税から建物価額を計算する
- 固定資産税評価額から土地:建物の割合を按分する
①消費税から建物価額を計算する
売主が不動産業者である場合は、マンション価格に消費税がかかります。
このとき、土地には消費税がかかりません。建物にだけ消費税がかかるのです。
したがって、もし契約書に消費税の表示があれば、消費税額からもとの価格を割り戻すことで、建物価額を算出することができます。
②固定資産税評価額から土地:建物の割合を按分する
売主が個人の場合は、契約書に消費税の表示がないこともあります。そのときは、固定資産税評価額から土地:建物の割合を按分します。
土地・建物の固定資産税評価額は、毎年4~5月に各市町村または都主税局から届く「固定資産税納税通知書・課税明細書」に記載されています。
「固定資産税納税通知書・課税明細書」が手元になければ、役所・都税事務所で「固定資産公課証明書」を取得しましょう。
そして、【土地の評価額:建物の評価額】の割合をもとめ、同じ割合でマンション価額を按分することで、建物価額を算出することができます。
6.付帯設備も減価償却ができる
住宅用建物は、給排水設備やガス設備、電気・照明などの設備が不可欠です。
これらも付帯設備として減価償却を行うことができます。
これらの設備は、建物の躯体そのものとは耐用年数が異なります。
給排水設備やガス設備、電気・照明などの設備は、耐用年数15年。
蓄電池電源設備(非常用電源バッテリーなど)は、耐用年数6年と定められています。
※計算方法は、建物の場合と同じです。
難しく考えがちな中古マンションの減価償却も、この記事の計算方法をおさえておけば、スマートに計算することができますね。
ひかリノベではマンションの売却もサポートさせていただいています。売却を検討中の方はぜひお気軽にご相談ください。
【記事監修】三浦 英樹(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー)
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーの有資格者。中古不動産購入からリノベーションの設計・施工、インテリアコーディネートまでワンストップで理想の住まいを提供する『ひかリノベ』代表。「住宅は立地や景観、環境のよい『場所』で選び、購入と同時にリフォームやリノベーションを施すことで、自分らしい暮らしをリーズナブルに取得することが可能となります。住宅ローンの返済に縛られることのない、豊かなライフプランの実現を、家探し、家づくりを通じてサポートいたします」
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