マンションの建て替え問題。いつか来る日にどう備える?


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中古マンション、とくに築年数が古い物件を購入する際に気になるのが、建物の寿命。購入直後の建て替えや多額な住民負担など、不安要素は多くあります。
マンションの建替えの現状や仕組みを解説するとともに、中古マンション購入時に考えておきたいポイントを紹介します。 

(2017年9月10日初出→2019年8月5日更新)

マンションが建て替えられた事例は全体の0.23%

現在、マンションの建替えはほとんど実施されていません。 国土交通省の発表によれば、平成28年時点で建替準備中および実施中のマンションは25件。これまでに工事完了したマンションも227件で、建替えの事例は非常に少ないと分かります。

一方、全国のマンションのストック戸数は平成28年末時点で633万戸超。1棟当たり60戸で計算しても、マンションの棟数は全国で約10万棟です。
つまり、マンションの建替え事例は、全体の約0.23%程度となります。

建替えが実施されない理由は高額な負担金

マンションの建替えがほとんど実施されないのは、高額な建築負担金がおもな原因です。
一般的に、建替負担金は通常60㎡のマンションで1,000~2,000万円程度(グレードや修繕積立金の積立額に寄る)。
国による建替補助制度や融資制度もありますが、依然として住人が大きな負担を負うことには変わりありません。

また、マンションの建替決議を可決するには「区分所有法」に基づき、住んでいる世帯(区分所有者)の4/5以上の賛成が必要です。
そのため住民の支持を得られず、保留や廃案になるケースが多いのです。

これまで建て替えられたマンションの多くは、物件の戸数を増やし、それらの分譲費用で建替費用をまかなうという方法で行われています。
しかし、この方法は立地容積率(敷地面積に対して、建てて良い建物の床面積のこと。建築基準法により、用途地域ごとに定められている)に恵まれた物件でなければ、実現は難しいでしょう。
高層化が可能であり、かつ増加した住戸が売れる見込みがあること。この二つの条件が揃わなければ、住民の負担金をゼロにすることはできません。

つまり建替えは、それによって利益が見込める場合に成功しやすい。そうでない場合は、非常にハードルが高いといえます。

煩雑すぎる建替えまでのプロセス

マンションの建替えは管理組合が検討するところから始まります。
築年数が40年、50年と経過し、そろそろ建替えを考えるべきときが来たら、マンション再生の専門家を呼んだり、勉強会を開いたりして、建て替えるべきか、それとも修繕でこのまま維持できるかを検討。意見がまとまれば、理事会を招集して「建替推進決議」を行います。

その後、どのようにマンションを改善するのか具体的な建替計画を作成して、建替決議を施行。4/5以上の賛成が得られれば、建替えが決定されます。
いざ建替えを実施するとなれば、マンション建替組合の設立や、住民の権利関係の調整(新しい建物の所有権の持ち分の決定や、住宅ローンの抵当権の引き継ぎ等)などが必要となります。

このように建替えの際は、マンションの住民同士での合意が要所ごとに必要となるため、計画から施行されるまでが長期化する傾向にあり、こうした事情も建替えが進まない原因となっているのです。

マンション建替えは、山登りのように大変です。 (一般社団法人マンション再生協会・マンション建替え事業の流れ)

出展:一般社団法人マンション再生協会 マンション建替え事業の流れ http://www.manshon.jp/docs/manshon_saisei/pdf/manshon_5.pdf

マンションの寿命と建替えのタイミング

東京カンテイの調査によると、実際にマンションの建替えが実施されたタイミングは、平均して築33.4年。
一方、RC造建築の寿命は、諸説ありますが、国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(2013年)によれば、およそ120年。メンテンナンスにより150年まで延命できるということです。

なぜこれほど大きな差があるのかというと、一つには「建替えが成功しやすいのは、それによって利益が見込める場合である」という事情があります。
建替えによって高額販売が見込めるために、中にはまだ充分使用に耐えうるマンションを壊した例もあったのです。

二つ目の理由は、「黎明期のマンションは、現代よりもメンテナンス性が悪かった」こと。
建物構造それ自体は充分使用に耐えうる状態であっても、キッチンや浴室といった水廻りの給排水管は(当時、一般的だったメッキ鋼管の場合)30年程度で劣化が進み、つまりや水漏れが起こりやすくなります。
ところが、当時のRC造マンションの多くがこの配管をコンクリートに埋め込んでしまっており、交換が困難でした。
そのため給排水管の寿命とともに、建物ごと建て替えざるを得なかったのです。

先の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書でも紹介されている、早稲田大学 小松幸夫教授の調査(2013年)によれば、RC系住宅の平均寿命は68年
この調査は建物が実際に存続した年数(残存率が50%になる年数)を追ったもので、私たちの実感に比較的近いものといえるのではないでしょうか。
実際、近年話題となった築古マンションの建替え事例――「日本最古の分譲マンション」宮益坂ビルディングは築63年、「日本初の民間分譲マンション」四谷コーポラスは築61年で建替えが決まっています。

しかし、現在は配管交換が容易な設計が普及しており、当時のマンションに比べ、建替えを考えるべきタイミングはより長期化していると考えられます。
海外に目を向けると、築100年以上の石造りの建物がいまだ建て替えられず、修繕を繰り返しながら現役の住宅として活躍している例も、珍しくありません。

マンションの住宅としての寿命、つまり居住可能な状態を保てる期間は、メンテナンスによって大きく変わります。
住戸の中、つまり専有部分の内装や設備機器が古くなって壊れたときは、リフォームやリノベーションで回復できます。
建物の外壁塗装の剥がれや、屋上やバルコニーの防水切れ、竪管とよばれる住戸と住戸をつなぐ給排水管のつまりや老朽化といった共用部分の維持管理は、管理組合の主導で行われます。
適切なメンテナンスによって建物の寿命は最大化できますが、マンションの維持管理には、長期的な修繕計画と、充分な修繕資金が必要不可欠です。
中古マンションを購入する際は、この2点がどのように運用されているのかをよくチェックすることが大切です。

建替えが決まった場合に利用できる支援制度

マンションを建て替えることになった場合、建物の解体や建築費用のほか、仮住まいの家賃や引っ越し費用といった諸々の費用がかかります。
建物の解体費用は、坪あたり5~8万円(1.5~2.4万円/㎡)、60㎡で90~216万円が目安です。
建築費用は坪あたり100万円(30万円/㎡)とすると、60㎡で1,800万円。
これに引っ越し費用を加えれば、総額で2,000万円程度となります。
また、仮住まい中の家賃は自己負担という場合が多いようです。もし住宅ローンが残っている場合は、二重の支払いが発生します。
さらに、往復の引っ越し費用も計算に入れると、一体いくら必要なのでしょうか?

これらの費用の負担については、住宅ローンの利用も可能ですが、購入時のローンが残っている場合は審査が難しくなります。
購入から20年、30年と経ったあとであれば年齢も重ねているため、長期のローンはなかなか組めません。

このように建替費用を十分に賄えない場合は、国や自治体の支援助成制度があります。
とくに60歳以上の方で建替費用を用意できない場合は、住宅金融公庫の「返済特例制度」を利用できます。
「返済特例制度」は毎月の返済を利息分のみとするシルバー向けローンで、最大1,000万円まで借入できます。

それでも建替えの負担を負えない場合は、マンション管理組合に買取請求をして持分を買い取ってもらい、マンションを出ることになります。
また同様に建替えに参加できない住民が多い場合は、マンション1棟ごと売却する方法もあります。
平成26年の「マンション建替え円滑化法」改正で、旧耐震基準で建てられているマンションであれば、住んでいる世帯の4/5の賛成で土地と建物を売却できるようになりました。売却した代金は、各世帯の持ち分に応じて分配されます。

建替えにまつわる不安や、トラブルの相談は、地方公共団体の都市整備局やまちづくり住宅課、マンション再生協議会などの法人団体にも専門の窓口があります。
なかでもマンション再生協議会は、マンションの建替えや修繕、改修、敷地売却等を支援するために設立された専門の団体です。組合の協議でも客観的な視点で相談を受け付けてくれます。

とくに「中古を買ってリノベーション」をお考えの場合、購入して数年後に建替えになってしまったら……と不安に感じている方も少なくないのではないでしょうか。
建物は適切な管理によって長く維持することが可能です。ひかリノベは中古リノベの専門会社として、管理状態の調査を徹底し、良質な中古住宅をご紹介しています。
中古住宅の購入、リノベーションをお考えの方は、下記の相談会よりお気軽にご相談くださいませ。

【監修】櫨本 博之(宅地建物取引士)

 

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