マンションが建て替えになったらどうする?費用はかかるの?

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中古マンション、とくに築年数が古い物件を購入するときに気になるのが、建物の寿命。購入直後、もし建て替え工事が行われることになったら、自分が負担する金額はいくらになるのか、工事は何年ぐらいかかるのか、など、購入者の不安要素は多くあります。

今回の記事では、マンションの建替えの現状や仕組みについて解説します。中古マンション購入時に考えておきたいポイントも合わせてチェックしてみてください!

(2017年9月10日初出→2022年8月18日更新)

マンションが建て替えられた事例は全体の0.27%

現在、マンションの建替えはほとんど実施されていません。 国土交通省の発表によれば、2021年4月1日時点で建替準備中および実施中のマンションは40件。これまでに工事完了したマンションを見ても263件と、建替えの事例は非常に少ないことが分かります。

一方、全国のマンションのストック戸数は2020末時点で675.3万戸超。1棟当たり60戸で計算しても、マンションの棟数は全国で約11.2万棟です。
つまり、マンションの建替え事例は、全体の約0.27%程度となります。

出典:国土交通省「マンション建替えの実施状況 令和3年4月1日現在」 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001411083.pdf)

出典:国土交通省「マンション建替えの実施状況 令和3年4月1日現在」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html


建替えが実施されない理由は高額な負担金

マンションの建替えがほとんど実施されないのは、高額な建築負担金がおもな原因です。
一般的に、建替負担金は通常60㎡の分譲マンションで1,000~2,000万円程度(グレードや大規模修繕積立金の積立額によります)。
国による建替補助制度や融資制度もありますが、依然として住人が大きな負担を負うことには変わりありません。
また、マンションの建替決議を可決するには「区分所有法」の法律に基づき、住んでいる世帯(区分所有者)の4/5以上の賛成が必要です。
そのため反対意見が多い場合、住民の支持を得られず保留や廃案になるケースが多いのです。

これまで建て替えられたマンションの多くは、物件の戸数を増やし、それらの分譲費用で建替費用をまかなうという方法で行われています。
しかし、この方法は立地容積率(敷地面積に対して、建てて良い建物の床面積のこと。建築基準法により、用途地域ごとに定められている)に恵まれた物件でなければ、実現は難しいでしょう。
高層化が可能であり、かつ建て替え後に増加した住戸が売れる見込みがあること。この二つの条件が揃わなければ、住民の負担金をゼロにすることはできません。
つまり建替えは、それによって利益が見込める場合に成功しやすい。そうでない場合は、非常にハードルが高いといえます。

煩雑すぎる建替えまでのプロセス

マンションの建替えは管理組合が検討するところから始まります。
築年数が40年…50年…と経過し、そろそろ建替えを考えるべきときが来たら、マンション再生の専門家を呼んだり、勉強会を開き「建て替えるべきか」「それとも修繕でこのまま維持できるか」を検討します。
意見がまとまれば、理事会を招集して「建替推進決議」を行います。

その後、どのようにマンションを改善するのか具体的な建替計画を作成して、建替決議を施行。4/5以上の賛成が得られれば、ようやく建て替えが決定されます。
いざ建替えを実施するとなれば、マンション建替組合の設立や、住民の権利関係の調整(新しい建物の所有権の持ち分決定や、住宅ローンの抵当権引き継ぎ等)が必要となります。

このように建替えの際は、マンションの住民同士での合意が各段階で必要となるため、計画から施行されるまでが長期化する傾向にあり、こうした事情も建替えが進まない原因となっているのです。


マンションの寿命と建替えのタイミング

東京カンテイの調査(2014年)によると、実際にマンションの建替えが実施されたタイミングは、平均して築33.4年。
一方、RC造建築の寿命は、諸説ありますが、国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(2013年)によれば、およそ120年。メンテンナンスにより150年まで延命できるということです。

なぜこれほど大きな差があるのかというと、一つには「建替えが成功しやすいのは、それによって利益が見込める場合である」という事情があります。
建替えによって高額販売が見込めるために、中にはまだ充分使用に耐えうるマンションを壊した例もあったのです。

二つ目の理由は、「黎明期のマンションは、現代よりもメンテナンス性が悪かった」こと。
建物構造それ自体は充分使用に耐えうる状態であっても、キッチンや浴室といった水廻りの給排水管は(当時、一般的だったメッキ鋼管の場合)30年程度で劣化が進み、つまりや水漏れが起こりやすくなります。
ところが、当時のRC造マンションの多くがこの配管をコンクリートに埋め込んでしまっており、交換が困難でした。
そのため給排水管の寿命とともに、建物ごと建て替えざるを得なかったのです。

先の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書でも紹介されている、早稲田大学 小松幸夫教授の調査(2013年)によれば、RC系住宅の平均寿命は68年

この調査は建物が実際に存続した年数(残存率が50%になる年数)を追ったもので、私たちの実感に比較的近いものといえるのではないでしょうか。
実際、近年話題となった築古マンションの建替え事例では、「日本最古の分譲マンション」宮益坂ビルディングは築63年、「日本初の民間分譲マンション」四谷コーポラスは築61年で建替えが決まっています。

しかし現在は配管交換が容易な設計が普及しており、当時のマンションに比べ、建替えを考えるべきタイミングはより長期化していると考えられます。
海外に目を向けると、築100年以上の石造りの建物がいまだ建て替えられず、修繕を繰り返しながら現役の住宅として活躍している例も珍しくありません。
マンションの住宅としての寿命、つまり居住可能な状態を保てる期間は、メンテナンスによって大きく変わります。

住戸の中、つまり専有部分の内装や設備機器が古くなって壊れたときは、リフォームやリノベーションで回復できます。
建物の外壁塗装の剥がれや、屋上やバルコニーの防水切れ、竪管とよばれる住戸と住戸をつなぐ給排水管のつまりや老朽化といった共用部分の維持管理は、管理組合の主導で行われます。
適切なメンテナンスによって建物の寿命は最大化できますが、マンションの維持管理には、長期的な修繕計画と充分な修繕資金が必要不可欠です。
中古マンションを購入する際は、この2点がどのように運用されているのかをよくチェックすることが大切です。

過去の建て替え事例の年数と費用

これまでに実施されたマンション建て替えの事例をいくつかピックアップし、建て替えが実施された時点の築年数や、住人が負担した金額がどれくらいなのかを見てみましょう。

建て替え後

建て替え前

建て替え時の築年数

負担額(推定)

オーベルグランディオ萩中(東京都大田区)

萩中住宅

築35年

0~1000万円

桜上水ガーデンズ

(東京都世田谷区)

桜上水団地

築45年

0円

アトラス押上
(東京都墨田区)

ビレッタ朝日

築45年

1000万円

ブランシエラ池田石澄
(大阪府池田市)

石澄団地

築46年

300~330万円

ブランシエラ千林大宮
(大阪府大阪市)

大宮第一コーポ

築49年

1600万円

※建て替え前後のマンション名および築年数は、マンション再生協議会の「建替え事例」を参照

負担額が少ないマンションは、建て替え時に戸数を増やせ、その売却利益が見込めたり、敷地の一部を売却できたことで建て替え費用を捻出できたケースが多いです。

また、建て替え後の住戸が従前より狭くなってしまい、それでも良ければ負担額はなし。従前と同等以上の部屋を求めるなら負担額あり、というパターンも見られます。

一方、法改正の影響に住戸を減らさざるを得ない、など、建て替え後の売却利益が期待できないと言った理由で、負担額が増えるマンションも。
こうなると、建て替え後も住み続ける人は減り、別のマンションを購入する選択肢を取る人も増えるようです。

また今後は、国際情勢の影響などで建材の価格や工事費が上昇し、当初想定していた負担額が、時間の経過とともに上がってしまう可能性もあるかもしれません。

建替えが決まった場合に利用できる支援制度

マンションを建て替えることになった場合、建物の解体や建築費用のほか、仮住まいの家賃や引っ越し費用といった諸々の費用がかかります。
建物の解体費用は、坪あたり5~8万円(1.5~2.4万円/㎡)、60㎡で90~216万円が目安です。
建築費用は坪あたり100万円(30万円/㎡)とすると、60㎡で1,800万円。
これに引っ越し費用を加えれば、総額で2,000万円程度となります。

また仮住まい中の家賃は、自己負担という場合が多いようです。もし住宅ローンが残っている場合は、二重の支払いが発生します。
さらに、往復の引っ越し費用も計算に入れると、一体いくら必要なのでしょうか?
これらの費用の負担については、住宅ローンの利用も可能ですが、購入時のローンが残っている場合は審査が難しくなります。
購入から20年、30年と経ったあとであれば年齢も重ねているため、長期のローンはなかなか組めません。

このように建替費用を十分に賄えない場合は、国や自治体の支援助成制度によって今後の負担を軽減するという方法もあります。
とくに60歳以上の方で建替費用を用意できない場合は、住宅金融支援機構の「まちづくり融資(高齢者向け返済特例)」を利用できます。
この特例制度は毎月の返済を利息分のみとするシルバー向けローンで、最大5,000万円(高齢者住宅財団の保証を利用する場合は2,000蔓延)まで借入できます。

それでも建替えの負担を負えない場合は、マンション管理組合に買取請求をして持分を買い取ってもらい、マンションを出ることになります。
また同様に建替えに参加できない住民が多い場合は、マンション1棟ごと売却する方法もあります。
2021年の「マンション建替え円滑化法」改正で、旧耐震基準の建物、または外壁が剥落する恐れがあるマンションであれば、住んでいる世帯の4/5の賛成で土地と建物を売却できるようになりました。売却した代金は、各世帯の持分に応じて分配されます。
また、このような建物が含まれる団地では、同じく4/5の賛成があれば敷地を分割することも可能に。

建替えにまつわる不安やトラブル、問題解決の相談は、地方公共団体の都市整備局やまちづくり住宅課、マンション再生協議会などの法人団体にも専門の窓口があります。
なかでもマンション再生協議会は、マンションの建替えや修繕・改修・敷地売却等を支援するために設立された専門の団体です。組合の協議でも客観的な視点で相談を受け付けてくれます。

「中古を買ってリノベーション」をお考えの場合、入居した時期によっては数年後に建替えにぶつかる可能性もあるため、購入することを不安に感じている方も少なくないのではないでしょうか。

今回の記事でご紹介した通り、建物は適切な管理によって長く維持することが可能です。ひかリノベは中古リノベの専門会社として、住居の価格や管理状況はもちろん「あと何年で建て替えの可能性がある物件なのか?」など管理状態の調査を徹底し、良質な中古住宅をご紹介しています。
物件探しからリノベーション、資金計画までワンストップでおまかせください。

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記事監修

三浦 英樹(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー)

宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーの有資格者。中古不動産購入からリノベーションの設計・施工、インテリアコーディネートまでワンストップで理想の住まいを提供する『ひかリノベ』代表。「住宅は立地や景観、環境のよい『場所』で選び、購入と同時にリフォームやリノベーションを施すことで、自分らしい暮らしをリーズナブルに取得することが可能となります。住宅ローンの返済に縛られることのない、豊かなライフプランの実現を、家探し、家づくりを通じてサポートいたします」

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