マンションの耐震基準、旧耐震は危険?新耐震なら安全なの?

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中古マンションの購入にあたって物件を選ぶとき、「耐震性が気になる」という方も多いのではないでしょうか。

建築物の耐震性をチェックする際によく使われるのが、1981年以降に耐震基準となった「新耐震基準」です。

補助金や減税でも新耐震基準が条件となっている制度が多いため、「新耐震基準に適合しているか?」というのも中古物件の購入を検討している方にとっては重要なポイントです。

今回は、マンションの耐震性を総合的に判断するための注意点や知識をお伝えします!

2020年6月22日初出→2023年1月25日更新

新耐震と旧耐震、何が違う?

建物の耐震基準について、「旧耐震基準」と「新耐震基準」のふたつの名称を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

1981年に、建物の耐震基準が大幅に変更になりました。そして、変更後の耐震基準を「新耐震基準」、変更前を「旧耐震基準」と呼ぶようになりました。

では、新旧の違いには一体どんな内容の変更があったのでしょうか。その違いから解説しましょう。

新耐震は震度6以上、旧耐震は震度5を想定

1981年の改正より前の耐震基準(旧耐震基準)では「震度5程度の地震が起きても倒壊しなければ良い」という点が基準となっていました。

それに対し新耐震基準は、許容応力度計算(構造部材がどれだけの力に耐えられるかを計算すること)、保有水平耐力計算(水平方向の強さの計算)を行ったうえで、以下の2点へと基準内容が変化しました。

  • 震度5の地震ではほとんど損傷しない
  • 震度6~7の地震が起きても倒壊しない

このような耐震性を持たせることが、新耐震基準には要求されています。
旧耐震基準と比較して、震度5の地震に対する要求性能が高いこと、そして震度6以上の地震が想定されていることが、最大の特徴です。

実際に私たちに降りかかる危険度で考えてみても、震度が上がるにつれて地震で建物が倒壊し、建物の中にいる人が閉じ込められる、がれきの下敷きになるなど、命の危険に晒される危険性は大きくなります。

大規模災害によって基準が見直された

1978年(昭和53)6月12日には、宮城県沖地震(最大震度5)で、7400戸の建物が全半壊する事態が発生。
とくに仙台市内では、全半壊4385戸、一部損壊8万6010戸と甚大な被害が発生しました。
被害の大きさから、当時の基準では耐震性が不十分だと判断され、1981年(昭和56)6月1日に建築基準法が改正されるに至りました。

「新耐震基準」とは、この1981年改正によって定められた基準。
現在も同様の基準が用いられており、例えば「現行の耐震基準」といった表記も、新耐震基準のことを表しています。

震度5程度の揺れはしばしば起こります。
阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、震度7を記録するような巨大地震も、実際に起こっています。
歴史を振り返っても、新耐震基準は地震国・日本では必要なレベルの基準として考案されたことがわかります。

新耐震と旧耐震の分かれ目

前述した通り、新耐震基準が適用されるようになったのは1981年6月1日から。
耐震性の目安として「1981年以降は~」や「昭和56年以前の~」といった表現が使われることもありますが、正確を期すなら「1981年6月1日以降」と表記することになります。

ただ、この「6月1日」には大きな落とし穴が潜んでいます。

建築基準法に適合しているかどうかは、着工前に行う建築確認(確認申請)でチェックされます。
建築確認では届け出た時点の建築基準法に基づいて審査を行うため、1981年5月31日以前に建築確認を行っていれば、旧耐震基準でも建築して良いと判断されていることになります。

つまり、旧耐震基準で設計された上で建てられた可能性も高いということ。
1981年6月以降に竣工したマンションであっても、実は旧耐震基準の建物かもしれない……ということになる訳です。

また、税制上は1982年1月1日以降に登記された建物を新耐震基準とみなすことになっています。
税制で考えるときも、建築確認から竣工・登記のタイムラグには注意が必要です。

とくに鉄筋コンクリート造のマンションは工期が1年以上と長く、規模が大きければその分工期が伸びます。
当然、確認申請の段階では旧耐震基準であった可能性もあるのです。

購入したい物件の建築確認がいつ行われたのかを毎回調べるのは現実的ではないかもしれませんが、築年数や竣工した年月日だけでは完璧に判断できないこと、法律(建築基準法)上の定義と税制上の定義が異なっていることは覚えておきましょう。

築古でも新耐震基準並みの耐震性。「耐震基準適合証明書」付き物件

また、1981年以前に建築された建物で、新耐震基準並みの耐震性を満たしている建物も存在します。
耐震基準は「最低限満たすべき基準」です。基準より堅牢につくられた建物もたくさんあります。

1981年以前に建築された建物でも新耐震基準を満たす物件を示す目印として、「耐震基準適合証明」という制度があります。
築古物件であっても、下記いずれかの条件を満たす場合には、「耐震基準適合証明書」という書類を取得できるという制度です。

  • 耐震診断を行い、新耐震基準を満たしていると認められた物件
  • 必要な耐震補強工事を行い、その上で耐震基準を満たしていると認められた物件

耐震基準適合証明を受けた物件は、物件情報にその旨が記されます。

この証明書を取得した物件を購入する場合、築25年以上であっても住宅ローン控除が利用できるというメリットがあります。

旧耐震は危険、新耐震は安全?

中古マンションを探していて、良いなと思う物件を見つけたら旧耐震時代の物件だった――そんな経験のある方もいるのではないでしょうか。

建物自体の耐震性だけを考えるなら、新耐震基準であることは確かに重要です。
しかし、もっと視野を広げてみると、他にも重要な要素はたくさんあります。

そもそも大前提として、建築基準法は最低限のレベルを示す基準です。
さらにいえば、基準以上の建物をつくることは何ら問題はないのです。
旧耐震基準の建物でも耐震性に配慮した設計がされていて、新耐震基準以上の耐震性を持っているマンションも存在します。

 たとえば、築古マンションの代名詞となっている「団地」は、旧耐震時代に建てられたものも多いですが、阪神・淡路大震災や東日本大震災でも大きな被害は受けませんでした。

古いマンションは現在主流となっているラーメン構造(柱で支える構造)ではなく、壁構造(壁で支える構造)でつくられた、堅牢な物件も多いということを覚えておくと、物件選びの選択肢も広がるでしょう。

旧耐震の中でも異なる基準

建築基準法は1981年以外にもたびたび改正されており、耐震性に影響する部分が変更されています。

たとえば2000年(平成13年)には、木造一戸建て住宅の接合部の基準が明確化され、より耐震性の高い木造住宅が建てられるようになっています。
実際に2016年の熊本地震では、2000年築を境に建物の被害率が大きく変化しました。

鉄筋コンクリート造の場合、旧耐震基準では1971年(昭和46年)がひとつのポイントになります。
柱に入れる鉄筋(帯筋)の間隔が、300㎜から100㎜に狭まり、耐震性能が大きく向上しています。

出典:(公財)全国宅地建物取引業保証協会「建物の耐震性に関する基礎知識」 (https://www.hosyo.or.jp/realpartner/080809kensyu.pdf)

出典:(公財)全国宅地建物取引業保証協会「建物の耐震性に関する基礎知識」 (https://www.hosyo.or.jp/realpartner/080809kensyu.pdf

逆に、新耐震基準の鉄筋コンクリート造の建物でも、1階がピロティ(柱のみの空間。マンションの場合、駐車場や店舗に利用されている場合が多い)になっていたりすると、被害が大きくなることも。
実際に、阪神・淡路大震災や熊本地震では、ピロティのある建物の被害が報告されています。

一方で、ピロティは水害に比較的強いため、東日本大震災では多くのピロティ建築が津波に耐え切りました。
そのため「新耐震基準だから崩壊はしない」とも「旧耐震は地震に弱い」とも、一概に言い切ることはできません。

築年数や、完成した年月日だけに捉われていると、あなたにぴったりな物件を見逃してしまう可能性もあるのです。

地震への強さは立地も影響

もうひとつ、大規模地震時の安全性に大きく影響するのが「立地」です。
立地といっても、駅まで何分、近くに学校や病院がある、という生活の利便性に関することではありません。
建物が建っている土地が、地震でどのような影響をうけるのかが鍵です。

2011年の東日本大震災では、関東地方で液状化現象が発生したことは記憶に新しいですね。
阪神・淡路大震災や熊本地震でも、液状化現象は発生しています。

液状化した道路

液状化した道路

液状化とは、水分を多く含んだ地盤で地震の揺れが加わると、地中の水分が地表に噴き出す現象です。地盤が大きく変動するので、地面の上にある建物が沈下したり、傾いたりします。

1964年の新潟地震では、鉄筋コンクリート造の県営住宅が横倒しになる事態も発生しています。
新耐震の建物でも、液状化のダメージは免れないでしょう。
建物自体のダメージが少なくても地面が大きく傾いてしまえば、当然倒壊の危険性は高まります。

液状化は埋め立て地や砂地、川や沼、水田があったところで起こりやすいといわれます。

最近では、自治体がハザードマップの整備を進めており、液状化のリスクが高い地域も公表されているので、物件選びの際には希望エリアのハザードマップを確認して物件周辺の地盤に関する情報収集をしておくことをおすすめします。

東京都の液状化予測図 出典:東京都建設局「東京の液状化予測図 平成24年度改訂版」 (http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/pdf/ekijyouka_panf.pdf)

東京都の液状化予測図 出典:東京都建設局「東京の液状化予測図 平成24年度改訂版」 (https://doboku.metro.tokyo.lg.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/top.aspx

自治体ごとの液状化ハザードマップの公表状況は、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でチェックできます。
同サイトの「わがまちハザードマップ」から、都道府県・市区町村名を入力して調べてみましょう。また朝日新聞社のHPでも、地域の揺れやすさや、地形の特徴を調べられるシミュレーターを公開しています。お住まいの地域や、購入予定のエリアを入力して調べてみましょう。

新耐震の物件には税制上のメリットが

建物の安全性だけでなく、節税の観点から新耐震を選ぶ人も多くいます。
新耐震基準に適合した物件を購入すると、住宅購入の負担を軽減してくれる各種制度が利用しやすくなります。とくに中古住宅の購入では、新耐震かどうかによって利用の可否が決まることも多いです。

代表的なものとして、住宅ローン控除(住宅ローン減税)制度があげられるでしょう。
住宅ローン控除とは、年末の住宅ローンの残高の0.7%が、10年間ないし13年間、所得税から控除される制度です。

控除を受けるには、住宅の面積やローンの返済期間、収入の条件がありますが、中古住宅で一定の築年数が経過している場合(鉄筋コンクリート造は25年以上、木造は20年以上)は、新耐震基準への適合も条件になります。
初年度の確定申告の際に、2章でもご紹介した「耐震基準適合証明書」(住宅性能評価書〈耐震等級1~3〉、既存住宅売買瑕疵保険付保証明書でも可)の提出が必要です。

新耐震基準がスタートしたのは1981年ですから、たとえば築35年のマンションは新耐震基準の物件となります。
ですが築25年を超えているため、この場合耐震基準適合証明書が必要となります。

逆に築40年以上の旧耐震基準の物件でも、耐震補強を行うなどして新耐震基準に合致していれば(耐震基準適合証明書を取得していれば)、住宅ローン減税の対象となります。
この場合も、耐震基準適合証明書が耐震性の証明となります。

なお、耐震基準適合証明書は原則として、売主(元の所有者)が専門の機関に発行してもらわなくてはなりません。
購入の際は、この証明書が手元にあることを必ず確認しましょう。

もし引き渡しまでに耐震補強工事が終わらないなどの事情がある場合は、買主が発行の仮申請を行っておけば、工事終了後に発行してもらうことができます。
なお耐震基準適合証明書は、住宅取得日から2年前までに耐震診断がなされている(耐震補強が必要な場合は工事も済んでいる)場合のみ有効です。

おわりに

1995(平成7)年、新耐震基準に適合しない建物の耐震診断・耐震改修と進めると定めた「耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)」が施行されました。
さらに、2005(平成17)年の改正では、都道府県が具体的な数値目標を決めることも義務付けられています。

国土交通省によると、2013(平成25)年時点の住宅の耐震化率は約82%。旧耐震基準の住宅1500万戸のうち、約900万戸は「耐震性なし」と推計されています

出典:国土交通省「住宅の耐震化の進捗状況」 (https://www.mlit.go.jp/common/001093095.pdf)

出典:国土交通省「住宅の耐震化の進捗状況」 (https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html

耐震性が低い住宅は今後、建て替えや耐震改修が進んでいくでしょう。
今、耐震性がある住宅を選ぶことは、あなたや家族の安全を守るためにも大切ですが、将来も残り続けられる物件であることも意味しており、資産価値の面でも優れた物件と言えます。

一方で、本当の意味で「地震につよい住宅」を見極めるのは簡単なことではありません。
築年数だけでは判断材料として不充分なのはもちろん、不動産の知識を持って建物構造や強度、立地も含めた調査をする必要があります。

今後は首都直下型地震の発生も予想され、耐震性については、住まい選びの中で重要な要素となっています。

購入にあたって疑問や不安がある方は、リノベーションのひかリノベまで遠慮なくお問合せ下さい。
耐震に対する知識が豊富な建築士をはじめ、スタッフ全員で安心な住まい選びをお手伝いさせていただきます。

現在、ひかリノベのサービス概要をまとめたパンフレットと施工事例集のPDFデータを無料で配布中です。下記ダウンロードボタンより、どうぞお気軽にご覧ください。

記事監修

香月 祐(宅地建物取引士)

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