
「新築よりも安く、自由で思い通りの住まいをつくれる」と人気のリノベーション。
「実際に費用はいくらかかるのか? 」「予算内で満足のいくリノベーションができるのだろうか……」そんなお悩みを抱くあなたに。リノベーション費用の目安、予算に応じてかかるお金をおさえる方法をふまえ、理想の住まいに仕上げるコツを解説します。
リノベーション費用の目安、予算に応じてかかるお金をおさえる方法をふまえ、理想の住まいに仕上げるコツを解説します。
2015/6/11初出⇒2019/4/16更新⇒2021/4/1更新⇒2022/5/19更新(物価上昇を鑑み相場価格を更新)
そもそもリノベーションとは?
リフォームは「修繕」=古くなった家の内装や設備をもとの状態にすることを指します。
それに対し、リノベーションは「改修」=機能の改善やデザインの刷新など、新たな価値を与えることと定義づけられています。
したがってリフォームに比べると、リノベーションの方が大掛かりな工事になるケースが多い傾向です。
その代表的な例として、もとの部屋を構造体だけ残して解体し、内装や設備機器を一新するスケルトンリノベーション(フルリノベーション、フルリフォームとも)があります。
リノベーション費用の相場
マンションのスケルトンリノベーションにかかる費用は、1㎡あたり15万円~20万円が現在の相場です。
ただし、目安はあくまで目安。実は、住戸が小さい場合、1㎡あたりの単価はもっと高くなります。
これは、トイレ・バス・キッチンをはじめとする水回りには、広さに関わらずある程度の費用がかかるため。また「高機能のシステムキッチン」「床はこだわりの無垢材フローリング」というように、ハイグレードな設備・建材を使用すれば、価格もその分お高くなります。
また、リノベーションと一口にいっても、間取りは変えるのか、収納棚や家具を造作するか等、工事内容はケースバイケースで異なります。やりたいことが多くなればなるほど、予算も高めに見ておく必要があります。
下記は、ひかリノベも加盟しているリノベーション会社ポータルサイト『SUVACO』調べのデータです。専有面積60㎡のマンションの一室を例に、800万円~1,500万円で「何ができるか」をまとめました。
工事内容 ※マンション 60㎡を想定 |
予算 | ||
800万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | |
水まわり設備の取り換え | ◎ | ◎ | ◎ |
内装(床、壁、天井)の一新 | ◎ | ◎ | ◎ |
間取り変更 | △ | ◎ | ◎ |
造作家具や素材へのこだわり | △ | △ | ◎ |
断熱工事 | × | × | ◎ |
データ出典:SUVACO『予算別 リノベーションでできること』
一戸建てのリノベーション費用は、増築/減築する・外壁や屋根の塗装をするなど、建物の外観にも自由に手を加えられる分、平均的な費用や内訳がいくらと言い切るのは、マンション以上に難しくなります。まずは工事の範囲を決めて、お見積りをとってみるのが正確です。
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キッチンの設備交換・壁紙クロスの張り替えなど、部分ごとのリフォーム工事費用の目安は、こちらの記事をご覧ください。
実例からみる価格の目安
ひかリノベの施工事例から、実際にかかった価格を見てみましょう。
※リノベーション会社やデザイン事務所の多くが、このようにHP上やパンフレット等で施工例を公開していますが、中には施主支給(リノベーション会社を通さず、施主さま自身が購入すること)のタイル・クロス等の内装材や、キッチン等の設備機器の代金を差し引いた価格を表示しているケースもあるようです。ここではより実際的な数字が分かりやすいよう、家具以外の内装や設備機器に施主支給品を含まないケースを掲載しています。
①間取りを変えない場合
こちらは、壁式構造(壁で建物を支えるつくり)のため、間取りはほぼ変えられないという課題があったリノベーションの例です。
「リビングを広くとりたい」「家事動線をシンプルにしたい」というオーナー様のご意向を組んだ設計担当のプランにより、建具をなくして部屋の配置を工夫することで、暮らしやすさの向上を意識したつくりに変更。
二間をひと続きの空間とした広いリビング⇔クローゼット⇔廊下と、3つの生活スペースを自由に移動できる動線にしました。
費用 | 約800万円 |
エリア | 神奈川エリア |
家族構成 | 二人暮らし |
面積 | 69.09㎡ |
間取り | 2LDK⇒1LDK |
テイスト | ナチュラル,ヴィンテージ |
特徴 | 回遊動線 |
②マンションのフルスケルトンリノベーションの場合
こちらは、フルリノベーションの特徴を活かし、床や壁も以前のものから一新。
さらに、30㎡の大空間LDKを中心とした間取りへ変更しました。
一部、ドアを取り払った間取りを採用することで、家族の存在をお互いに感じ取れるような空間になっています。
間取りこそ以前の3LDKと変わりませんが、前のお部屋から大きく変わったのは「風がめぐる動線」を確保したこと。廊下からLDKへと通り抜けできる動線により、風のめぐりをコントロールできる設計へと変化させました。
ドアを目的に応じて開け閉めすることで、洗濯物が乾きやすくなったり、冬は暖かく、夏は快適に過ごせるようになったりと、メリットの多い構造へ。
キッチンの壁一面に貼られたお洒落なグレージュのタイルと床の無垢材、全体に統一感を演出する色の配置などは、フルリノベーションだからこそ実現できたデザインです。
費用 | 約1,500万円 |
エリア | 神奈川エリア |
家族構成 | ファミリー |
面積 | 100.3㎡ |
間取り | 3LDK⇒3LDK |
テイスト | ナチュラル,シンプル |
特徴 | 造作ダイニングテーブル |
③戸建ての場合
4K以上の部屋で構成されていた戸建て物件の部屋数を、あえて減らしたリノベーション事例です。総面積はそのままに、広々としたLDKを実現しています。大規模な工事ができる戸建てフルリノベーションのメリットを活かし、余計な仕切りは取り払い、和室と洋室、廊下を一室に集約することで広々とした空間を実現しました。
カーテンも窓枠ではなく、天井から床の高さと合わせることで縦のラインを強調し、広さを強調するデザインとなっています。
費用 | 約1,620万円 |
エリア | 千葉エリア |
家族構成 | ファミリー |
面積 | 98.67㎡ |
間取り | 4DK⇒3LDK |
テイスト | ナチュラル,北欧 |
特徴 | 造作棚,木の天井 |
予算内で理想の住まいをつくるために
予算に限りがないのなら、大幅な間取り変更・最新の設備機器・最高級の建材など、なんでも自由に取り入れることができます。
しかし、現実的には「大体〇〇万円ぐらいまでなら…」という予算感が、それぞれ決まっていらっしゃることが多いでしょう。
そんなとき、限られた予算内で理想の住まいをつくるためのポイントは、次の3点です。
- どんな住まいをつくりたいか」を明確にする
- やりたいことに優先順位をつける
- 設計担当(デザイナー)に予算を伝える
「どんな住まいをつくりたいか」を明確にする
1章でみたように、リノベーション費用は「どんな家をつくりたいか」によって変わってきます。「床は無垢材をつかいたい」「 流行のアイランド型キッチンが欲しい」というように、ご要望は人それぞれ。
また、設計から完成までにかかる時間や、住み始めたい時期の希望もあるでしょう。現在住んでいる物件をリノベーションする場合は、リノベーション工事中に生活する仮住まいの確保も必要になりますね。
それらを踏まえ、自分にはいくら位費用が必要かを知るためには、リノベーション業者に相談し、見積書を取ってみるのが一番かんたんで正確な方法です。
このとき大切なのは「どこを・どんな風にしたいか」を、遠慮なくすべて担当者に伝えること。
そのためには、まず取り入れたい設備や間取りなど、リノベーションでやりたいことを書き出してみるのがおすすめ。リストをつくっておけば、「どこを・どんな風にしたいか」を具体的に伝えられますし、伝え漏れの心配もありません。
やりたいことに優先順位をつける
やりたいことが多く、予算オーバーしてしまう場合には、「お風呂の追い炊き機能はなくてもいいかな」「水回りの位置はそのままで問題ない」というように、予定していたプランのうち、優先順位の低いものを省いていきましょう。
ここで重要なのは、「ココは絶対に譲れない!」というところと、「あったらいいなとは思うけど、既存のままでも困らないな」という箇所をハッキリさせることです。
優先順位がハッキリしないまま、値段だけでやりたいことをあきらめてしまうと、「キッチンはやっぱり多少無理しても欲しいものを選べばよかった……」と後悔する事になりかねません。
先ほどのリストに、やりたいことを全て書き出したら、優先順位を1・2・3……とメモしておくと分かりやすいですね。
担当者に予算を伝える
担当者には「予算は800万円以内で考えています」というようにお伝えください。
設備機器のグレードや、床・壁の素材によって工事費用は変わりますし、品質は同程度でも「このメーカーなら安く仕入れられる」という場合もあります。
予算内でご希望を叶えられるプランを提案させていただくためにも、はじめの打ち合せのとき「ご希望」と「予算」を合わせてお伝えいただけると、流れとしてもスムーズです。
また、一般的に見積りは2~3社を並行して取る、という方も多いことと思います。
大切な住まいのことですから、各社のプランや価格をよく比較して決めたいと考えるのはごく自然なこと。あらかじめ複数社に予算を伝えておくことで、「予算内で希望を叶えることができるか?」といった、設計力・提案力を比較できるというメリットもあります。
関連記事
リノベーションのお見積もり、お打ち合わせの流れやコツについては、こちらの記事でくわしく取り上げています。よろしければ併せてご覧ください!
リノベーション用ローンの選び方
フルリノベーション費用の目安は、広さ60㎡で、およそ600~900万円。
「支払いはローンを組もう」と、お考えの方も少なくないでしょう。
ご自宅をリノベーションされる方向けに、多くの銀行ではリフォームローンが用意されています。さらに、「物件を購入してリノベーション」をお考えの方には、住宅ローンとリノベーション費用をまとめて借入することも可能です。
ご自宅のリノベーションには、リフォームローン
リフォームローンは「有担保型」と「無担保型」2つのタイプがあります。
どちらを利用するかは、リノベーションの規模や借入希望額に応じて検討しましょう。
有担保型リフォームローンとは、リフォームやリノベーションをおこなう物件を担保として借入をおこなうもの。
1,000万円以上の高額の借入をおこない、長期間かけて返済する場合(最大35年間)を想定したローンです。その分審査も厳しくなり、金利の相場は、およそ1.5~2%です。
無担保型リフォームローンとは、担保をつけることなく借入をおこなうもの。
30万~500万円程度の借入を、短い年数で返済する場合(1~15年間)を想定したローンです。有担保型に比べると、金利はやや高めの3~5%となっています。
物件購入+リノベーションには、おまとめ住宅ローン
新たに物件を購入してリノベーションする方向けに、リノベーション費用もいっしょに借入できる住宅ローンがあります。
住宅ローンの方がリフォームローンよりも金利はうんと安いですから、物件を購入してリノベーションを検討する場合は、こちらを利用しない手はありません。
ローンを一本化することで、審査や手続きの面においても手間や面倒が少なくなります。
ただし、住宅ローンでリノベーション費用も借入するためには、銀行に融資を申し込む段階ーーーつまり物件を購入する段階で、あらかじめリノベーション費用も検討がついていないと審査に通ることが難しくなるため、注意が必要です。
「物件を購入してからリノベーションプランを考える」のではなく「物件購入とプランニングを並行して行う」ことが大事になります。
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リフォームローンの仕組みや審査のポイントについて特集した記事です。ご利用を検討されている方は、ぜひ併せてご覧ください。
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ただし、住宅ローンでリノベーション費用も借入するためには、銀行に融資を申し込む段階ーーーつまり物件を購入する段階で、あらかじめリノベーション費用も検討がついていないと審査に通ることが難しくなるため、注意が必要です。
「物件を購入してからリノベーションプランを考える」のではなく「物件購入とプランニングを並行して行う」ことが大事になります。
【記事監修】尾高 等(住宅ローンアドバイザー)
住宅ローンアドバイザーの有資格者。住宅購入が目的ではなく、その後も続く人生のファイナンシャルプランを、長期的な視点から提案する。「かつては頭金が2割ないと住宅購入は難しく、多額の現金投資をしなければ理想の住まいはつくれませんでした。しかし歴史的な低金利や、100%融資も可能となった現在、マイホーム購入のあり方は多様化しています。新築、中古、マンション、戸建、いろいろな住居の選択肢がある中から本当に満足できる空間とは何なのか。一緒に探していきましょう」

