
「リフォーム」と「リノベーション」。どちらも住まいの情報誌やTV番組などでよく見かける言葉ですが、何が違うのかピンと来ていない人も多いのでは?
どこまでがリフォームで、どこからがリノベーションを指すのか、言葉だけではそれぞれの範囲が分かりにくいのも実情です。
この記事ではリフォームとリノベーションの違いを解説しながら、それぞれの実例を紹介していきます。
2017/4/11 初出→2023/2/19更新
目次
リフォームとリノベーションの違い
そもそも英語でリフォーム(reform)が意味するのは、「制度や組織の改革・改善」です。
ですが、日本では「古くなった家の改装や改修、修繕」という意味で広まっています。
和製英語のひとつとして捉えることができるでしょう。
一方、リノベーション(renovation)が意味するのは、「修復・再生」。
つまり、日本で「リフォーム」とよばれている言葉の意味は、本来「リノベーション」が内包していたものであるといえます。
リノベーションは、リフォーム以上に「既存の施設に新たな価値を与える」という意味合いが強く、比較的大規模な改装や修復の際に用いられる場合が多いのです。
リノベーションもリフォームも、いまの日本では「住宅の改装・改修」という意味で浸透していますが、この二つの言葉の線引きは非常にあいまいです。
間取りの変更を含む大規模な改修は、上記の定義に照らしていえば「リノベーション」というのが正しいようですが、「フルリフォーム」と呼ぶ人もいます。
リフォームやリノベーションを提供する企業側も、それぞれの考え方によって呼び方はさまざまです。
リフォームは「古くなった部分を直す」
一般的にリフォームとは、壊れた設備の修繕、古くなった家屋の補修をいいます。
工事の範囲も、比較的小規模なものが多いのが特徴です。
色あせたクロスの張り替え、外壁の再塗装、畳とふすま紙の交換、水回り(キッチンやトイレ)設備の修復などが例にあげられるでしょう。
賃貸マンションやアパートでも入居者が退去した後、以前の状態に戻す(原状回復する)ことを目的に、内装や設備の入れ替えを行うことがあります。これもまた、典型的なリフォームの一例です。
たとえばトイレのリフォームの場合、下記の画像のように設備機器の取り付けや床材の交換など、限定的な工事を行うのが一般的です。
こうした事例では多くの場合、以下のような費用感でおおよその見積もりが決まっています。
- トイレの設備機器の増設+壁紙・床材の交換=20~60万円
- システムバスの交換=60~100万円
リノベーションは「住まいを理想の空間に作り変える」
リフォームが「古くなった部分に手を加えて新しい状態に戻す」のに対し、リノベーションはより暮らしやすく、より好みのデザインへ、住まいを理想の空間に作り替えるというプラスアルファの目的があります。
具体的には、間取りの変更、内外装デザインの一新、防音性や気密性といった住宅の性能向上、木造戸建住宅の場合は建物の耐震補強といった工事が例として挙げられます。
オーダーメードとなるため、工事に掛かる費用は希望する内容によって大きく異なりますが、一般的なグレードの建材や設備を使用した場合、15~20万円/㎡が目安となります。
下記は、ひかリノベも加盟しているリノベーション会社ポータルサイト『SUVACO』調べのデータです。
専有面積60㎡のマンションの一室を例に、800万円~1,500万円で「何ができるか」をまとめました。
工事内容 ※マンション 60㎡を想定 |
予算 | ||
800万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | |
水まわり設備の取り換え | ◎ | ◎ | ◎ |
内装(床、壁、天井)の一新 | ◎ | ◎ | ◎ |
間取り変更 | △ | ◎ | ◎ |
造作家具や素材へのこだわり | △ | △ | ◎ |
断熱工事 | × | × | ◎ |
同様に、戸建ての工事費用のめやすも表にしてみました。
下記の表は、延床面積30坪/木造二階建て物件を想定した、できること別の予算をまとめたものです。
工事内容 ※30坪/二階建て木造住宅を想定 |
予算 | |||
800万円 | 1,500万円~ | 2,000万円~ | 2,500万円~ | |
水まわり設備の取り換え | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
内装(床、壁、天井)の一新 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
間取り変更 | △ | ◎ | ◎ | ◎ |
外装材(外壁、屋根)の更新 | × | △ | ◎ | ◎ |
窓サッシ入れ替え | × | × | △ | ◎ |
外構(門扉、塀)の更新 | × | × | △ | △ |
耐震補強、断熱工事 | × | × | × | ◎ |
リノベーションを実例で紹介
辞書的な説明だけでは、すこしわかりにくいですね。
実際のリノベーションの施工事例をみてみると、いわゆるリフォームとの違いがわかりやすいのではないでしょうか。
スケルトンリノベーションの事例
スケルトンリノベーションの例は、下の間取り図を見ると分かりやすいでしょう。
平均的な2LDKのマンション空間を、大胆に間取り変更した事例です。
リビングに隣接する洋室をつぶして土間+畳コーナーに。
独立していたキッチンは中央に据えて、リビングとつながる間取りに変更しました。

スケルトンリノベーションの例。一部屋つぶして小上がり付きの広々玄関に(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0075/より)
壁には漆喰、床は無垢材のフローリングを取り入れています。土間から続く畳コーナーは小上がりになっていて、収納も兼ねています。
厚みのある壁をえぐって作ったニッチがあったり、土間床に屋根瓦を埋め込むなど、オリジナリティあふれる空間に。
各部屋のドアを取り払うことで、一体感のある空間が生まれています。
部分リノベーションの事例
リノベーションは、スケルトンリノベーションのように全体を変えるものだけでなく、部分的なデザインや機能の改良も含む、という概念です。
リノベーションは、スケルトンリノベーションのように全体を変えるものだけでなく、部分的なデザインや機能の改良も含む、という概念です。
このような場合は、古くなった箇所の修繕に留まるリフォームと区別するために、部分リノベーションと呼ばれています。
部分的な修復という点ではリフォームと似ていますが、ちょっとの工夫で部屋の印象全体がずいぶんと変わる、あるいは機能性が大きく向上するといった違いがあります。
こちらはキッチンとワークスペースを中心にリノベーションした事例です。

部分リノベーションの例。キッチンとワークスペースを中心にリノベーション(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
こちらのリノベーション事例では、システムキッチンの位置は変えずに、内装の変更やドアの塗装をグレーに統一するなどしています。キッチンの後ろの壁には古材を使用した棚を設置。お気に入りのグラスを並べるなどして、インテリアの一部にもなっています。

部分リノベーションの例。フレンチテイストのキッチンに(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
リビングの隣にあった和室は空間をひと続きにして、ワークスペースを新設。
L字に本棚とカウンターテーブルを設置して、二人並んでもゆっくり作業できる広さです。ワークスペースの天井にはフローリング材と同じ木材を使用して、リビングとは視覚的にゾーン分けされています。
本棚とカウンターテーブルにも無垢材を使用するなど、木のぬくもりや温かみが随所に感じられるワークスペースに仕上がっています。

部分リノベーションの例。和室が広々とした書斎に(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
リノベーションのメリット・デメリット
リフォームとリノベーションの違いが分かったところで、リノベーションを実行するにあたってのメリット・デメリットも確認しておきましょう。
リフォームよりも、工事の範囲が広くなることが多いリノベーション。一体どんな点に気をつければ良いのでしょうか。
リノベーションのメリット
リノベーションのメリット
- 住宅ローンとリノベーション費用をまとめられる
- 中古物件は資産価値が安定している
- 新築同様の仕上がりなのに費用が新築より安いケースが多い
- デザインの自由度が高い
- 中古物件には立地の良い物件が豊富
このあと詳しくご紹介しますが、中古住宅を購入してリノベーションをする場合、住宅購入にかかる費用とリノベーション費用を一つのローンにまとめることができます。(一部例外あり)さらに中古物件自体が安価なものが多いことから、金銭面でのメリットが多いのも特徴です。
さらに新築を希望する場合であれば、まずは理想的な土地を見つけるところから始まります。しかし、駅近など利便性の高い場所のほとんどは、すでに多くの物件が建っており、新しく土地を見つけるのは困難です。
その分、中古物件を購入してリノベーションすれば、好立地な物件が豊富。立地と建物のどちらも、理想的な住まいを実現できる可能性が高くなります。
リノベーションのデメリット
リノベーションのデメリット
- 売却したくなったとき買い手が付きにくくなる可能性がある
- リフォームと異なり住むまでに時間がかかる(長くて半年〜1年以上かかることも)
- 老朽化など、建物の状態によって費用が新築よりかかるケースもある
中古マンションを購入してリノベーションする場合、自分や家族が希望する間取りへ変更できるか、よく確かめてから購入する必要があります。前述のとおり、各住宅の排水管や給水管をつないでいるパイプスペースなど、共用部分には手を加えることができません。
また、戸建てはデザインの自由度が高いからといって安心はできません。
最近のブームでもある古民家リノベーションのように、築年数の古い物件を希望している場合、建物の老朽化がひどく進んでしまっている物件も存在します。
蓋を開けたら、「柱がすべて腐っていた」「配管がボロボロで使い物にならない」など、余計な工事が必要となるケースもあります。
購入の契約をする前でも、ある程度の劣化度合いはプロであれば予測することが可能です。その物件と同じくらい築年数の古い物件を施工した実績があるリノベーション会社に事前調査をお願いすれば、より安心です。
他にも、自由に設計できるからこそ、いざ売却しようとした時に買い手が付きにくくなる可能性があることもリノベーションのマイナス面と言えるでしょう。
リノベーションのデメリットに関しては、下記の記事で特集しています。興味のある方はこちらも併せてご覧ください。
リノベーションの進め方
実際にリノベーションをすることになったら、どんなスケジュールで計画が進んでいくのか、不安に感じている方へ。
この章では、物件探しから引き渡しまでのおおよその流れをご紹介します。
家探しからのリノベーションの流れと期間
リノベーションを想定して中古物件を購入する場合、まずは物件探しから始めることになります。物件が決まると、設計士や担当者とのリノベーション工事の計画へと入っていきます。
この間には、住宅ローン審査の期間も含まれており、ここまで約1〜2ヶ月かかるのが一般的です。
その後、リノベーション工事が完了して実際に生活するまでとなると、物件を探し始めた時から最短でも4〜6ヶ月みておく必要があるでしょう。
購入費用と工事費用のおまとめローン
リノベーションにおいて金銭面における最大のメリットは、ローンを一つにまとめることができる点でしょう。
物件購入とリノベーションを行う場合、住宅ローンとリフォーム専用ローンを利用する方法もありますが、金利が高く、諸費用も余計にかかることになります。
そのため、リノベーション費用も住宅ローンに組み込んで一つにまとめた方が、プラスでかかる諸費用の節約にもなります。
注意したいのは、融資事前審査の時点でリノベーションにかかる工事費用の概算が分かっていないといけないという点です。
とりあえず物件を購入して、後からリノベーションプランを立てればいい……という方法では、ローンの一本化できないため、気をつけましょう。
すでに所有している物件をリノベーションで新しくしたい場合は、現金もしくはリフォームローンを利用することになります。
リノベーション済み物件ってどう?
中古マンションの広告や物件情報のポータルサイトでは、「リフォーム済み物件」「リノベーション済み物件」という言葉をしばしば目にします。
注意したいのは、こうした文言がついている場合、工事の内容にそれほどの違いがない場合が多々あることです。
クロスの交換や水廻りを修繕など、ささいな内容でも「リノベーション済み」としている業者が非常に多く、これまで述べてきたような大掛かりな工事は行われていない可能性があります。
そのため、配線や配管の交換などが行われているのかは、個々に確認をとる必要があります。とくに築古物件は見えない部分こそメンテナンスが必要なため、 「リフォーム済み物件」「リノベーション済み物件」を選ぶ際は、その工事内容を必ず確認するようにしましょう。
リノベーション済み物件のメリットデメリットや選ぶ際の注意点については、下記の特集記事があります。よろしければこちらも併せてご覧ください。
中古住宅を買ってリノベーションをする場合は、リノベーションプランを自分で決められるので、このような心配はまずありませんが、購入する物件がそもそもリノベーションに向いているかどうかを判断することが必要になってきます。
下の記事では、物件の見抜き方から購入する際の注意点なども紹介されているので、事前にチェックしてみてください。
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