
「リフォーム」と「リノベーション」。どちらも住まいの情報誌やTV番組などでよく見かける言葉ですが、何が違うのかピンと来ていない人も多いのでは?
どこまでがリフォームで、どこからがリノベーションを指すのか、言葉だけではそれぞれの範囲が分かりにくいのも実情です。
この記事ではリフォームとリノベーションの違いを解説しながら、それぞれの実例を紹介していきます。
2017/4/11 初出→2019/11/22 更新→2021/11/11更新→2022/7/4更新
1.リフォームとリノベーションの違い
2.リノベーションのメリットとデメリット
3.リノベーションの進め方
4.部分リノベーションで「惜しい」を変える
5.リフォーム・リノベーション済み物件とは
リフォームとリノベーションの違い
そもそも英語でリフォーム(reform)が意味するのは、「制度や組織の改革・改善」です。
ですが、日本では「古くなった家の改装や改修、修繕」という意味で広まっています。
和製英語のひとつとして捉えることができるでしょう。
一方、リノベーション(renovation)が意味するのは、「修復・再生」。
つまり、日本で「リフォーム」とよばれている言葉の意味は、本来「リノベーション」が内包していたものであるといえます。
リノベーションは、リフォーム以上に「既存の施設に新たな価値を与える」という意味合いが強く、比較的大規模な改装や修復の際に用いられる場合が多いのです。
リノベーションもリフォームも、いまの日本では「住宅の改装・改修」という意味で浸透していますが、この二つの言葉の線引きは非常にあいまいです。
間取りの変更を含む大規模な改修は、上記の定義に照らしていえば「リノベーション」というのが正しいようですが、「フルリフォーム」と呼ぶ人もいます。
リフォームやリノベーションを提供する企業側も、それぞれの考え方によって呼び方はさまざまです。
古くなった部分に手を加えるリフォーム
一般的にリフォームとは、壊れた設備の修繕、古くなった家屋の補修をいいます。
工事の範囲も、比較的小規模なものが多いのが特徴です。
色あせたクロスの張り替え、外壁の再塗装、畳とふすま紙の交換、水回り(キッチンやトイレ)設備の修復などが例にあげられるでしょう。
賃貸マンションやアパートでも入居者が退去した後、以前の状態に戻す(原状回復する)ことを目的に、内装や設備の入れ替えを行うことがあります。これもまた、典型的なリフォームの一例です。
たとえばトイレのリフォームの場合、下記の画像のように設備機器の取り付けや床材の交換など、限定的な工事を行うのが一般的です。
こうした事例では多くの場合、以下のような費用感でおおよその見積もりが決まっています。
- トイレの設備機器の増設 + 壁紙・床材の交換 → 20~60万円
- システムバスの交換 → 60~100万円
この程度が相場とされています。(※機器のグレードによって金額は上下します)
住まいを理想の空間に作り変えるリノベーション
リフォームが「古くなった部分に手を加えて新しい状態に戻す」のに対し、リノベーションは住まいを理想の空間に作り替えるというプラスアルファの目的があります。
具体的にはより住みやすくするために、次のような工事を行う場合も。
- 間取りの変更
- 内外装デザインの統一
- 壁の遮音性の向上
- 建物の耐震性の向上
オーダーメードとなるため、工事に掛かる費用は希望する内容によって大きく異なりますが、一般的なグレードの建材や設備を使用した場合、10~15万円/㎡が目安となります。
スケルトンリノベーションの例は、下の間取り図を見ると分かりやすいでしょう。
リビングダイニング・キッチン・和室と、分断されていた部屋をひとつに統合して、広々としたLDKに変化しています。

スケルトンリノベーションの例。リビングダイニング・キッチン・和室と、分断されていた部屋をひとつに統合して、広々としたLDKに(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0047/より)
こちらは2LDKと平均的なマンションの間取りだった空間を、リビングに隣接する洋室をつぶして土間+畳コーナーに。独立していたキッチンは中央に据えて、リビングとつながる間取りに変更したリノベーション事例です。

スケルトンリノベーションの例。一部屋つぶして小上がり付きの広々玄関に(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0075/より)
施主様が「自然に逆らわないこと」を暮らしのテーマとしているということで、壁には漆喰、床は無垢材のフローリングを取り入れています。土間から続く畳コーナーは小上がりになっていて、収納も兼ねています。
厚みのある壁をえぐって作ったニッチがあったり、土間床に屋根瓦を埋め込むなど、オリジナリティあふれる空間に。
各部屋のドアを取り払うことで、一体感のある空間が生まれています。

スケルトンリノベーションの例。一部屋つぶして小上がり付きの広々玄関に(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0075/より)
リノベーションのメリットとデメリット
リフォームとリノベーションの違いが分かったところで、リノベーションを実行するにあたってのメリット・デメリットも確認しておきましょう。
リフォームよりも、工事の範囲が広くなることが多いリノベーション。一体どんな点に気をつければ良いのでしょうか。
以下にまとめた内容を、ぜひ参考にしてみてください。
メリット
- 住宅ローンとリノベーション費用をまとめられる
- 中古物件は資産価値が安定している
- 新築同様の仕上がりなのに費用が新築より安いケースが多い
- デザインの自由度が高い
- 中古物件には立地の良い物件が豊富
このあと詳しくご紹介しますが、中古住宅を購入してリノベーションをする場合、住宅購入にかかる費用とリノベーション費用を一つのローンにまとめることができます。(一部例外あり)さらに中古物件自体が安価なものが多いことから、金銭面でのメリットが多いのも特徴です。
さらに新築を希望する場合であれば、まずは理想的な土地を見つけるところから始まります。しかし、駅近など利便性の高い場所のほとんどは、すでに多くの物件が建っており、新しく土地を見つけるのは困難です。
その分、中古物件を購入してリノベーションすれば、好立地な物件が豊富。立地と建物のどちらも、理想的な住まいを実現できる可能性が高くなります。
デメリット
- 売却したくなったとき買い手が付きにくくなる可能性がある
- リフォームと異なり住むまでに時間がかかる(長くて半年〜1年以上かかることも)
- 老朽化など、建物の状態によって費用が新築よりかかるケースもある
中古マンションを購入してリノベーションする場合、自分や家族が希望する間取りへ変更できるか、よく確かめてから購入する必要があります。前述のとおり、各住宅の排水管や給水管をつないでいるパイプスペースなど、共用部分には手を加えることができません。
また、戸建てはデザインの自由度が高いからといって安心はできません。
最近のブームでもある古民家リノベーションのように、築年数の古い物件を希望している場合、建物の老朽化がひどく進んでしまっている物件も存在します。
蓋を開けたら、「柱がすべて腐っていた」「配管がボロボロで使い物にならない」など、余計な工事が必要となるケースもあります。
購入の契約をする前でも、ある程度の劣化度合いはプロであれば予測することが可能です。その物件と同じくらい築年数の古い物件を施工した実績があるリノベーション会社に事前調査をお願いすれば、より安心です。
他にも、自由に設計できるからこそ、いざ売却しようとした時に買い手が付きにくくなる可能性があることもリノベーションのマイナス面と言えるでしょう。
<参考記事>
リノベーションの進め方
実際にリノベーションをすることになったら、どんなスケジュールで計画が進んでいくのか…不安に感じている方へ。
この章では、物件探しから引き渡しまでのおおよその流れをご紹介します。
実際に生活できるまでは最短でも4〜6ヶ月
リノベーションを想定して中古物件を購入する場合、まずは物件探しから始めることになります。物件が決まると、設計士や担当者とのリノベーション工事の計画へと入っていきます。
この間には、住宅ローン審査の期間も含まれており、ここまで約1〜2ヶ月かかるのが一般的です。
その後、リノベーション工事が完了して実際に生活するまでとなると、物件を探し始めた時から最短でも4〜6ヶ月みておく必要があるでしょう。
リノベーション費用は住宅ローンに組み込める
リノベーションにおいて金銭面における最大のメリットは、ローンを一つにまとめることができる点でしょう。
物件購入とリノベーションを行う場合、住宅ローンとリフォーム専用ローンを利用する方法もありますが、金利が高く、諸費用も余計にかかることになります。
そのため、リノベーション費用も住宅ローンに組み込んで一つにまとめた方が、プラスでかかる諸費用の節約にもなります。
注意したいのは、融資事前審査の時点でリノベーションにかかる工事費用の概算が分かっていないといけないという点です。
とりあえず物件を購入して、後からリノベーションプランを立てればいい…という方法は取れないため、気をつけましょう。
すでに所有している物件をリノベーションで新しくしたい場合は、リフォームローンの利用がおすすめです。
ひかリノベでは、お客様のプランに最適なローンのご案内もしております。ローンの選び方や内容についてご不安な点があれば、当社に安心してご相談ください。
部分リノベーションで「惜しい」を変える
リノベーションは、スケルトンリノベーションのように全体を変えるものだけでなく、部分的なデザインや機能の改良も含む、という概念です。
リノベーションは、スケルトンリノベーションのように全体を変えるものだけでなく、部分的なデザインや機能の改良も含む、という概念です。
このような場合は、古くなった箇所の修繕に留まるリフォームと区別するために、部分リノベーションと呼ばれています。
部分的な修復という点ではリフォームと似ていますが、ちょっとの工夫で部屋の印象全体がずいぶんと変わる、あるいは機能性が大きく向上するといった違いがあります。
こちらはキッチンとワークスペースを中心にリノベーションした事例です。

部分リノベーションの例。キッチンとワークスペースを中心にリノベーション(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
こちらのリノベーション事例では、システムキッチンの位置は変えずに、内装の変更やドアの塗装をグレーに統一するなどしています。キッチンの後ろの壁には古材を使用した棚を設置。お気に入りのグラスを並べるなどして、インテリアの一部にもなっています。

部分リノベーションの例。フレンチテイストのキッチンに(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
リビングの隣にあった和室は空間をひと続きにして、ワークスペースを新設。
L字に本棚とカウンターテーブルを設置して、二人並んでもゆっくり作業できる広さです。ワークスペースの天井にはフローリング材と同じ木材を使用して、リビングとは視覚的にゾーン分けされています。
本棚とカウンターテーブルにも無垢材を使用するなど、木のぬくもりや温かみが随所に感じられるワークスペースに仕上がっています。

部分リノベーションの例。和室が広々とした書斎に(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0095/より)
リフォーム・リノベーション済み物件とは
中古マンションの広告や物件情報のポータルサイトでは、「リフォーム済み物件」「リノベーション済み物件」という言葉をしばしば目にします。
注意したいのは、こうした文言がついている場合、工事の内容にそれほどの違いがない場合が多々あることです。
クロスの交換や水廻りを修繕など、ささいな内容でも「リノベーション済み」としている業者が非常に多く、これまで述べてきたような大掛かりな工事は行われていない可能性があります。
そのため、配線や配管の交換などが行われているのかは、個々に確認をとる必要があります。とくに築古物件は見えない部分こそメンテナンスが必要なため、 「リフォーム済み物件」「リノベーション済み物件」を選ぶ際は、その工事内容を必ず確認するようにしましょう。
中古住宅を買ってリノベーションをする場合は、リノベーションプランを自分で決められるので、このような心配はまずありませんが、購入する物件がそもそもリノベーションに向いているかどうかを判断することが必要になってきます。
下の記事では、物件の見抜き方から購入する際の注意点なども紹介されているので、事前にチェックしてみてください。
弊社ひかリノベは、スケルトンリノベーションから表層の変更まで、お客様の「理想の住まいづくり」をサポートするリノベーション会社です。
「既存の部屋を丸ごと造り替えたい!」「気になる部分だけ変更したい」など、お客様一人ひとりのご希望に応じて住まいをアップデートいたします。
中古物件を買って自由にリノベーションしたいとお考えの方、現在のお住まいのリノベーションをお考えの方も、ぜひひかリノベにご相談ください!
【監修】三好 海斗(宅地建物取引士、賃貸経営管理士、既存住宅アドバイザー)