「省エネ住宅」へのリフォームで補助金も!認定の基準は?

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本年2024年は、省エネリフォームの補助金政策がとくに充実しています。2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡)実現を目指し、住宅の省エネ化を政府が推進しているためです。

また、住宅を省エネ化することで、冷暖房効率が向上したり、光熱費が抑えられたりと、生活上の利点もあります。リフォーム・リノベーションを計画しているなら、この機会に省エネ化も検討しませんか。

この記事は、「省エネ住宅」についての特集記事です。補助金や税制優遇を受けるための認定基準や、気になる補助金や税制優遇制度について解説します。

省エネ住宅とは? 認定の基準

省エネ住宅には、さまざまな基準や定義が存在します。
補助金や税制優遇の対象となる主だった基準は、

  • 省エネ基準
  • 低炭素住宅
  • ZEH
  • LCCM住宅
  • 長期優良住宅

このうちもっともハードルの低い基準が「省エネ住宅」で、下にいくほど省エネ性能が高くなります。それぞれの概要や性能について、解りやすく紹介します。

省エネ基準

省エネ基準」は、日本の省エネ住宅の基本となる基準です。

窓や外壁の断熱性・気密性(外皮性能)と、給湯器や換気設備など設備機器類の一次エネルギー消費量、二つの面で一定の基準が設けられています。

2025年4月からは、すべての新築住宅にたいし、この「省エネ基準」の適合が義務付けられることが決まっています。

低炭素住宅

低炭素住宅」は、省エネ基準から20%以上、エネルギー消費量を削減した住宅のこと。
省エネ基準に加えて、エネルギーマネジメント・節水対策・建築物の低炭素化・ヒートアイランド対策・V2H充放電設備の設置のうちいずれか一つを満たすことで、行政から認定を受けることができます。

低炭素住宅と認定されると、「リフォーム減税(投資型減税)」の対象となるほか、「フラット35S」の金利引き下げを受けることができます。

※都市計画法上の“市街化区域”などにある住宅でなければ認定は受けられないため、注意が必要です。

ZEH(ゼッチ)

ZEH(ゼッチ)」は、太陽光発電などの創エネ機器を備え、発電量≧消費エネルギー量となる住宅(エネルギー削減率100%以上)を指します。認定には、省エネ基準よりも高い断熱性(強化外皮基準)が求められます。

ZEHと認定されると、「戸建住宅ZEH化等支援事業」などの補助金制度を利用することが可能です。

マンション版の基準「ZEH-M」もスタートし、エネルギー削減率75%以上100%未満の「Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)」と呼ばれる基準も存在します。

経済産業省では、ZEHの「ブランド化」の一環として「ZEHビルダーマーク」を、またZEHの普及に取り組んでいる企業に対し「ZEHプランナーマーク」を発行しています(企業側の申し込みが必要)。

ZEHビルダーマーク・ZEHプランナーマーク 出典:経済環境省資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」

ZEHビルダーマーク・ZEHプランナーマーク
出典:経済環境省資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」

LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)

LCCM住宅」は、ZEHをさらに発展させた考え方で、居住中だけでなく建材の製造や住宅の建設・解体の過程でも含めた『住宅のライフサイクル』全体を見て発電量≧消費エネルギー量となる住宅をいいます。

住宅の建設・解体の過程における省エネとは、具体的には、建材の使用量を抑制し、廃棄物を削減したり、CO2排出量の少ない建材を採用したり、といった取り組みが考えられます。

※今のところ戸建て住宅のみ対象。

長期優良住宅

長期優良住宅」とは、省エネ性能のほか耐震性や可変性・劣化対策などの要件を満たした住宅のことです。ポイントは、省エネ特化の基準ではなく、「長期にわたり良好な状態で使用可能な住宅」を目指すものである、という点。

長期優良住宅に認定されると、「住宅ローン減税」でより有利な優遇を受けられるほか、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」などの補助金の対象となる、「フラット35S」の金利引き下げを受けられる、といったメリットがあります。

省エネ住宅の補助金・税制優遇

本年2024年は、住宅の省エネ化を支援する補助金や税制優遇制度が数多く用意されているので、うまく活用できるよう計画しましょう。
ここでは、リフォームやリノベーションで利用できる制度を紹介します。

子育てエコホーム支援事業

子育てエコホーム支援事業」は、省エネ性能が高い住宅の新築や、省エネリフォームを対象とした補助金制度です。2023年11月2日以降に着工した住宅が対象。

リフォームの場合、補助対象となる工事は下記の3つです。

  • 開口部(ドアや窓)の断熱改修
  • 外壁・屋根・天井または床の断熱改修
  • エコ住宅設備(太陽熱利用システムや高効率給湯器など)の設置

また、上記の3工事と同時に「バリアフリー改修」「子育て対応改修」「防災性向上改修」などの工事を行うと、こちらも補助の対象となります。

補助金額は、それぞれの工事ごとに上限金額が決められています。
同一の住宅で複数の工事を行う場合は、それぞれの工事で申請が可能ですが、一戸あたりの申請額には上限があり、リフォームの場合は「一戸あたり20万円」です。

ただし、子育て世帯(申請時点で2005年4月2日以降に生まれた子がいる世帯)や若者夫婦世帯(申請時点で夫婦であり、夫婦のいずれかが1983年4月2日以降生まれの世帯)の場合、もしくは長期優良住宅の認定を受けた場合は、補助額の上限が以下のように引き上げとなります。

世帯要件 リフォーム種別 上限補助額
子育て世帯または若者夫婦世帯 既存住宅を購入しリフォーム 60万円/戸
長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合 45万円/戸
上記以外のリフォーム 30万円/戸
その他世帯 長期優良住宅の認定(増築・改築)を受ける場合 30万円/戸
上記以外のリフォーム 20万円/戸

出典: 国土交通省「子育てエコホーム支援事業 リフォーム 対象要件の詳細」

先進的窓リノベ2024事業

先進的窓リノベ2024事業」とは、断熱窓リフォームに対する補助金制度です。
2023年11月2日以降に着工した住宅が対象で、対象となる工事は下記の4つです。

  • ガラス交換
  • 内窓設置
  • 外窓交換(カバー工法・はつり工法)
  • ドア交換(カバー工法・はつり工法)

補助額は、住宅の種類(戸建・マンション)や設置する窓の性能および大きさ、設置方法に応じて細かく設定されています。上限額は、一戸当たり200万円まで。上限を超えない限り何回でも申請可能です、一方で、申請額が5万円に満たない場合は、補助の対象から外れます。

工種 戸建て住宅・低層集合住宅 中高層集合住宅
ガラス交換 5,000~55,000円 5,000~55,000円
内窓設置 23,000~112,000円 23,000~112,000円
外窓交換(カバー工法) 58,000~220,000円 43,000~266,000円
外窓交換(はつり工法) 46,000~183,000円 62,000~266,000円

出典:環境省「先進的窓リノベ 2024 事業 対象工事の詳細」

給湯省エネ2024事業

給湯省エネ2024事業」は、住宅に一定の性能を満たす高効率給湯器を設置したときに利用できる補助金制度です。2023年11月2日以降に着工した住宅が対象で、補助額は導入する高効率給湯器に応じて以下のように上限が決まっています。

設置する給湯器 補助額 補助上限
ヒートポンプ給湯機(エコキュート) 8万円/台 戸建住宅:いずれか2台まで
共同住宅等:いずれか1台まで
電気ヒートポンプ・ガス瞬間式
併用型給湯機(ハイブリッド給湯機)
10万円/台
家庭用燃料電池(エネファーム) 18万円/台

参照:環境省「給湯省エネ2024事業 事業概要」

リフォーム減税制度(所得税)

補助金だけでなく、リフォームを行った人に対する税制優遇の制度も用意されています。

所得税の控除の対象となる工事は、耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、長期優良住宅化、三世代同居と多岐にわたります。2024年からは子育て対応改修も新たに控除対象に加わりました。

控除の上限額は工事の種類によって異なりますが、控除率はいずれも「標準工事費用の10%」です。
なお標準工事費用とは、国土交通省が定めた「この工事にかかる標準的な金額」のことです。実際にかかったリフォーム費用ではありませんのでご注意ください。

限度額を超過した分についても、標準工事費用の5%が控除されます。さらに対象工事と同時におこなったその他のリフォーム工事についても、同じく5%が控除されます。

補助対象例として、次のような工事があります。

  • 窓の断熱改修工事(省エネ)
  • 床・壁・天井の断熱改修工事(省エネ)
  • 木造住宅の耐震改修工事(耐震)
  • 通路や出入口の幅を拡張する工事(バリアフリー)
  • キッチンの増設工事(同居対応)
  • 対面式キッチンへの交換工事(子育て対応)
  • 収納設備の増設工事(子育て対応)

リフォーム内容ごとの工事限度額や最大控除額は次の通りです。

出典:既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充・延長(所得税)(出典:令和6年度 国土交通省税制改正概要)

出典:既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充・延長(所得税)(出典:令和6年度 国土交通省税制改正概要

なお、控除を利用するためには、工事後の性能で一定の基準を満たすことや、床面積などの要件を満たす必要があります。各工事で規定が細かく決まっているので、控除を利用したい方は、施工業者と工事内容をよくご相談ください。

控除の申請は、確定申告で行います。所定の工事証明書が必要となりますので、申告前に施工業者を通じて入手しましょう。

リフォーム減税制度(固定資産税)

所得税のほか、固定資産税の減額制度もあります。所得税控除との併用が可能ですので、所得税控除を利用する際はこちらも併せて申請を検討しましょう。

対象となる工事は、耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、長期優良住宅化の4つです。所得税控除の必須工事から三世代同居と子育てを抜いた形です。
各々の工事の減税額は次の通りです。

対象となる工事(必須工事) 軽減率
耐震 2分の1
バリアフリー 3分の1
省エネ 3分の1
長期優良住宅 3分の2

出典:平成6年度国土交通省税制改正概要

申請は、工事終了後3ヶ月以内に、所定の書類を市区町村に提出して申告します。必要書類は自治体によって異なる場合があるため、ご利用の際は自治体にご確認ください。

既存住宅における断熱リフォーム支援事業

既存住宅における断熱リフォーム支援事業」は、15%以上の省エネ効果が見込まれる高性能建材(断熱材やペアガラス・高断熱サッシなど)を用いた断熱リフォームを支援する事業です。

断熱材・窓・ガラスを用いて住まい全体の断熱改修を行う場合だけでなく、「居間だけ断熱」等も補助の対象となります。支援の適用範囲が広い事業です。断熱リフォームと同時に設置する熱交換型換気システム、戸建住宅では蓄電システムや蓄熱設備(エコキュート)も補助の対象となります。

補助額は、リフォーム費用の1/3以内。ただし上限額が決まっており、戸建は最大120万円、マンションは一戸当たり最大15万円(玄関ドアも回収する場合は最大20万円)と設定されています。
トータル断熱の場合も、居間だけ断熱の場合も、補助率・上限金額は共通です。

申請期間は2024年3月18日(月)~年6月14日(金)です。ただし予算上限に達し次第、受付は終了となります。

既存住宅における断熱リフォーム支援事業(出典:公益財団法人 北海道環境財団「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」)

既存住宅における断熱リフォーム支援事業(出典:公益財団法人 北海道環境財団「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」

長期優良住宅化リフォーム推進事業

長期優良住宅リフォーム推進事業」は、既存住宅の長寿命化や性能向上につながるリフォームを支援する補助金制度です。

要件は、インスペクション(建物状況調査)を行うことと、耐震性・劣化対策・省エネルギー性を一定の基準まで向上させるリフォーム工事を実施すること。
また、それと同時に行う「三世代同居対応(台所やトイレ・浴室、玄関の増設)」や「若者・子育て世帯向け改修(キッズスペースの設置、フェンスの設置、見守りのため対面型へのキッチンリフォーム)」、「防災・レジリエンス性の向上改修(瓦の交換や止水板の設置など)」も補助対象となります。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助対象(出典:国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」)

長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助対象(出典:国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」

交付金額はリフォーム後の性能に応じて決まります。
長期優良住宅に認定されると最大160万円。認定基準には至らずとも、一定の性能向上が認められる場合には、最大80万円が補助されます。
三世代同居工事、ZEH基準相当の省エネ、若者や子育て世帯、「中古を買ってリノベーション」の場合は、さらに50万円上乗せされます。

リフォーム後の住宅性能 補助限度額
  • 三世代同居対応工事を実施
  • ZEH相当の省エネ工事を実施
  • 若者世帯
  • 子育て世帯
  • 中古を買ってリノベーション
長期優良住宅認定を取得 210万円/戸
認定は取得しないものの一定の性能向上 130万円/戸
その他の場合 長期優良住宅認定を取得 160万円/戸
認定は取得しないものの一定の性能向上 80万円/戸

出典:国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」(https://www.kenken.go.jp/chouki_r/

申請期間は、2024年度4月15日(月)~12月23日(月)。また工事完了時にも報告が必要で、完了報告期間は2024年6月17日(月)~2025年2月21日(金)。
ただし、上記の期間中であっても、予算上限に達したら受付は終了します。

省エネ住宅の4つの要素

そもそも「省エネ住宅」とは、具体的にどのような性能をもった住宅なのでしょうか。
省エネリフォームを計画する際、どの場所をどのようにリフォームすれば省エネ性能を高められるのか、基本の考え方を押さえておきましょう。

断熱性能・気密性能

断熱性能を高めるためには、壁・床・屋根・窓などを通して部屋の中と外の熱が移動するのを少なくすることがポイントとなります。たとえば夏場であれば、クーラーで涼しくなった冷たい空気を外に逃さないようにし、外の熱が中に侵入しないようにする、といったイメージです。

冬場であれば、暖かいリビングから寒く感じる脱衣所へ向かい、服を脱ぎ、熱いお風呂に入ることで、血圧が短時間で大きく上下します。最悪の場合「ヒートショック」による心筋梗塞や脳内出血を起こすことも。特に高齢になるほど、ヒートショックのリスクは高まります。こういった家庭内の事故を防ぐためには、暖冷房の効果を下げず、室内の温度を一定に保つために無駄な隙間を減らす工夫を施すことがポイントです。

気密性能を高めるには、部屋の中と外の空気が移動することによる熱の移動を少なくすることが重要になります。しかし、隙間がなく完全に密閉された空間にしてしまうと、室内の空気循環などが悪化してしまうため、必要な換気量は確保する必要があります。

断熱性能や気密性能を高めることで空調の効きが良くなり、より少ないエネルギーで温度調節を行うことが可能になります。エネルギー消費量が少ないということは光熱費も安くなるということ。断熱材や高性能な窓を使用する分のイニシャルコストはかかりますが、光熱費の削減分で十分にカバーすることが可能です。

また、ヒートショックなどを防ぎ、健康を維持することができれば医療費の負担も減ります。結果的に、経済的なメリットを得ることができるのです。

このような直接的な省エネルギー以外のメリットを、「NEBノン・エナジー・ベネフィット)」と呼びます。

日射遮蔽

室内の温度が上がってしまう要因は、外気の温度だけではありません。実は、窓から差し込む日射熱の影響が最も大きいのをご存知でしょうか。

冬は暖かな日差しを室内に取り込み、温度の上昇に役立てることができますが、夏は全くの逆です。夏場はしっかりと外からの日射を遮蔽し、室温の上昇を抑えることで無駄なエネルギー消費をしないようにすることがポイントとなります。

一次エネルギー消費量

「UA値」と「一次エネルギー消費量」という言葉をご存知の方もいるのではないでしょうか。これらは、省エネ住宅の話をするとき、必ずといっていいほど出てくる言葉です。

UAは「外皮平均熱貫流率」といって、断熱性能を表す単位。この数値が小さいほど熱が伝わりにくく、断熱性が高いということになります。

※かつては「Q値(熱損失係数)」という単位が主に使われており、今でもQ値で断熱性を表すこともあります。Q値とUA値は、算出法に違いはありますが、数値が小さい=断熱性が高いことを表すという意味合いは同じです。

一次エネルギー消費量は、電気やガスなどの消費量を、石油・石炭や原子・水力・太陽光などの資源に換算したものです。単位は熱量を表すJ(ジュール)。設備機器のエネルギー消費量は、一次エネルギー消費量として表されます。

エアコンや給湯器など、よりエネルギー効率のよい設備機器を導入することで、一次エネルギー消費量を抑えることができます。壁・床・窓などの断熱性能・気密性能を高めることと、高効率の設備機器を採用してエネルギー消費量を抑えること、この両輪により住まいの省エネ性能を高めることができるのです。

省エネリフォームのポイント

住宅の中でエネルギーを使うものとしては、冷暖房や給湯、照明、生活家電などがあげられます。とくに冷暖房は、家庭のエネルギー消費の約3割を占めており、多くのエネルギーを消費していることがわかります。

出典:環境省「エネルギー白書2018」 (https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-2.html)

世帯当たりのエネルギー消費原単位と用途別エネルギー消費のグラフ(2016年度)
出典:環境省「エネルギー白書2018 第2節 部門別エネルギー消費の動向

冷暖房の効きをよくし、使うエネルギーの量を減らすカギになるのが断熱性です。
断熱性を理解するには、魔法瓶を想像するとわかりやすいでしょう。熱いお湯を魔法瓶に入れておけば、冬の屋外でも温度が保たれます。反対に、氷水を入れても氷はなかなか溶けません。これは、魔法瓶が熱を伝えにくい(=断熱性が高い)構造になっているから。

住宅も、魔法瓶のように断熱性を高めると、室温の保持がしやすくなります。また、エアコン自体の出力や台数も少なくて済むのも嬉しいポイントです。断熱性を上手く活用すれば、住宅全体を6畳用のエアコン1台で空調する……そんなことも可能になるのです。

開口部の気密性

開口部窓や玄関ドア)は、もっとも重要なポイントです。住宅の中では一番熱の出入り多いのが開口部で、屋内から逃げる熱、屋外から入ってくる熱の5割から7割は開口部経由だと言われています。
「断熱リフォームをしたいけど、予算に余裕がない……」そんな方は、まず開口部の性能向上を優先しましょう。

窓は、複層ガラスLow-Eガラス(複層ガラスの内側に特殊な膜を張り、より熱を伝えにくくしたもの)を使ったり、樹脂や木など熱が伝わりにくいサッシを使うことで、断熱性を高めることができます。玄関ドアも、断熱性の高いものに交換するのがベストです。

ただし、樹脂や木のサッシは防火の観点から使えない地域があったり、マンションの場合は管理規約でサッシの交換ができないことがほとんど。その場合、室内側に取り付ける内窓インナーサッシ)などを使う方法や、アルミ樹脂サッシカバー工法(既存の窓枠の上から断熱性の高いサッシを被せる工法)であればOK、というマンションも多いです。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「家庭向け省エネ関連情報 省エネ住宅 省エネルギー住宅を建てるには」 (https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index02.htmll)

窓の断熱リフォーム例
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「家庭向け省エネ関連情報 省エネ住宅 省エネルギー住宅を建てるには

断熱材の選び方

壁や床、基礎、天井、屋根の断熱性を高めるには、断熱材を施工する必要があります。グラスウール、セルロースファイバー、ウレタンフォーム……さまざまな断熱材があり、それぞれにはメリット・デメリットがあります。材料の断熱性も大切ですが、住宅の構造、使う部位、予算なども考慮して、専門家(リフォームの場合は、設計担当)と相談しながら選びましょう。

また、断熱と同時に気を付けたいのが気密性です。
壁などにすき間がたくさんあると、そこから室内の熱が逃げたり、屋外から熱が入りやすくなってしまうため、冷暖房の効きが悪くなってしまいます。そのうえ、大きな温度差が発生してしまうことで、内部で結露が発生しやすくなります。カビが生えたり、木造なら柱や梁が腐る原因にもなりかねません。

マンションはもともと気密性が高いので神経質になる必要はありませんが、断熱のポイントとして、ぜひ覚えておいてください。

窓廻りの日射対策

夏は強い日差しが窓から入ってくると、室内の温度が上昇してしまいます。

Low-Eガラスならいくらかは防げますが、窓そのものだけで完全に日射の影響を遮ることは困難です。また、冬は夏とは逆で、できるだけ日射を取り込むことが省エネにつながります。夏は日射を遮蔽し、冬は日射を利用できるようなつくりにすることがポイント。

戸建住宅なら、軒の出(庇)を深くすることも有効でしょう。軒を出せるだけのスペースがないとき、もしくはマンションの場合、外付けのシェードやブラインドを利用して日差しの強さに合わせて開け閉めしましょう。昔ながらのすだれを窓にかけておくのも良い方法です。

エアコンや給湯器は最新機器を

いくら高断熱といっても、最低限の冷暖房機器は必要です。また、お風呂やキッチンでの家事に欠かせない給湯も、たくさんのエネルギーを使います。それらをどうしたら省エネにすることができるのか。その答えは「最新の機器を選ぶ」こと。

エアコン・給湯機ともに、年々省エネ化が進んでおり、新しい機種ほど効率がよくなっています。例えば、エアコンのエネルギー消費効率(APF)の推移を見てみましょう。新しい機種ほど効率がよくなっているのがわかりますね。

出典:環境省「省エネ性能カタログ 2017年度冬版」   (https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/more/pdf/winter2017.pdf)

[エアコン]APF(通年エネルギー消費効率)推移
出典:環境省「省エネ性能カタログ 2017年度冬版

リフォームやリノベーションのタイミングで設備を交換したり、家電を買い替えたりする方も多いと思いますが、あまり難しく考えることはありません。その時の最新機種を選べば心配はありません。とくにエネルギー消費量の多い給湯器は、エコキュートエコジョーズハイブリッド式などの高効率タイプがおすすめです。
(※給湯システムは、他の設備の有無や敷地、地域などにより選択肢が制限される場合があります)

まとめ

省エネという言葉の認知拡大とともに、「省エネ住宅」の数も多くなってきました。
国も力を入れている、省エネ住宅の普及。昭和55(1980)年に「旧省エネ基準」が国によって制定されて以来、その内容は年月の経過とともに強化されてきました。
具体的には、外壁や屋根・天井・床・窓といった住宅を包む部分の断熱性能を高めるよう、強化されたことが特徴です。
その結果、年間暖冷房エネルギー消費量は、下図のような結果になりました(※実測ではなく試算)。

省エネ基準は改正ごとに順次強化されてきた(出典/国土交通省資料より)

年間暖冷房エネルギー消費量の試算。省エネ基準は法改正のたびに強化されてきた。
出典:国土交通省資料省 「エネルギー基準改正の概要

省エネリフォームは、補助金や優遇税制の恩恵が受けられることもメリットです。子育てエコホーム支援事業、先進的窓リノベ事業、給湯省エネ事業の「住宅省エネ2024キャンペーン」三事業をはじめ、リフォーム減税による所得税・固定資産税の減税といった制度が用意されています。フラット35の

省エネ住宅は、地球環境にも住まい手であるわたしたちにも優しく快適な空間を与えてくれる存在です。インテリアなどで住まいを彩ることも家づくりの楽しみのひとつですが、この機会に環境のことを考えながら、お得な優遇を受けられる「省エネ住宅」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

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記事監修

大宮 良明(一級建築士、既存住宅状況調査技術者)

一級建築士、既存住宅状況調査技術者の有資格者。木造建築の構造計算をはじめ、安全性に配慮した設計を得意としている。「住まいのデザインは見た目のカッコよさはもちろんですが、それ以上に暮らしやすさや安全性が大切だと考えています。長い目で見て『こうして良かった』と思える家を、いっしょにつくっていきましょう」

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