
リフォーム・リノベーションには、補助金や減税制度など、種々の優遇制度があります。
制度によって条件は違いますし、同じ内容のリフォーム工事でも制度によって給付される補助金の額が異なったりもします。同じ制度で同じ工事でも、もらえる補助金の額が違うことも。
どの補助制度や税制優遇が使えるのか、一番補助額が大きいのはどれか、よくわからない方もいらっしゃるのでは?
今回は、2022年度に実施予定のリフォーム・リノベーション支援制度を、工事の内容別にまとめてご紹介します。お住まいのリフォーム・リノベーションをお考えの方はぜひご参考に。
※各補助制度・優遇制度の内容や給付額は、2022年4月時点の情報です。実施時には内容が変更になることもあります。利用時は各制度のホームページを見たり、事業者に問い合わせたりして確認してください。
2017/4/27初出→2022/11/17更新
目次
1.省エネリフォーム
2.耐震改修
3.バリアフリーリフォーム
4.中古住宅を買ってリノベーション
5.その他の支援制度
6.制度の併用はできる?
7.申請する際の注意点
省エネリフォーム
断熱材の施工や開口部(窓)の性能を高める省エネリフォームに対する補助金は、数も多く制度の内容もさまざまです。
リフォームの内容に合わせて、利用する制度を検討しましょう。
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
環境省が「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」の一環として実施する制度で、15%以上の省エネ効果が見込まれる高性能建材(断熱材やペアガラス・高断熱サッシなど)を使った断熱リフォームを対象にした補助金です。
断熱リフォームと同時に設置する熱交換型換気システム、戸建住宅では蓄電システムや蓄熱設備(エコキュート)も補助対象になります。

出典:(公財)北海道環境財団「既存住宅の断熱リフォーム支援補助金について」
(http://www.heco-hojo.jp/yR03/danref/doc/danref_pamphlet.pdf)
補助率は、対象経費(建材の購入費用と工事費の合計)の1/3以内。戸建は最大120万円、マンション(戸別)は最大15万円です(2021年度)。
熱交換換気システムの設置、蓄電システム、エコキュートの設置は定額制で、熱交換換気とエコキュートは20万円、蓄電システムも同じく20万円が給付されます。
次世代省エネ建材の実証支援事業(次世代建材)
断熱リノベと同じく、断熱リフォームの補助金で断熱材一体型の断熱パネルや潜熱蓄熱建材、調湿建材などの付加価値を有する省エネ建材を使うリフォームが対象です。
室内からの内張り断熱材や高性能窓・玄関ドア、調湿建材なども同時に施工すれば補助対象になります。

出典:(一社)環境共創イニシアチブ「令和4年度 経済産業省による次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介」 (http://www.heco-hojo.jp/yR03/danref/doc/danref_pamphlet.pdf)
2021年度の補助額は補助率1/2以内で、最大で戸建200万円、集合住宅125万円(下限は20万円)。
さらに、21年度からは外壁外張り断熱工法による戸建住宅の断熱改修も対象になりました。
補助率は同じく1/2で、最大で300万円が補助されます。

出典:(一社)環境共創イニシアチブ「令和4年度 経済産業省による次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介」(http://www.heco-hojo.jp/yR03/danref/doc/danref_pamphlet.pdf)
長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の長寿命化・性能向上リフォームを支援する補助金制度です。
補助金の交付を受けるには、事前にインスペクションを行い、リフォーム後の耐震性、劣化対策、省エネルギー性の基準の各性能が一定の基準を満たすことが必要です。
リフォーム後の性能が高くなるほど、交付金額も多くなります。2022年度の補助限度額は評価基準型で最大100万円、認定長期優良住宅型は最大200万円(条件により50万円の加算措置あり)。
今年度から高度省エネルギー型(認定長期優良住宅型+20%の省エネ)がなくなりますが、代わりに一次エネルギー消費量を20%削減(いわゆるZEH基準相当の省エネ性)するリフォームには、50万円が加算されるようになります。

出典:(独)建築研究所「令和4年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業に関する説明資料」(https://r04.choki-reform.com/doc/summary_doc_all.pdf)
性能向上リフォームと同時に行う「三世代同居対応(台所やトイレ・浴室、玄関の増設)」や「若者・子育て世帯向け改修(キッズスペースの設置、フェンスの設置、見守りのため対面型へのキッチンリフォーム)」、「防災・レジリエンス性の向上改修(瓦の交換や止水板の設置など)」も補助対象となります。

出典:(独)建築研究所「令和4年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業に関する説明資料」(https://r04.choki-reform.com/doc/summary_doc_all.pdf)
三世代同居工事を行う場合、または若者(40歳未満)や子育て世帯(18歳未満の子どもがいる世帯)が既存住宅を購入した場合、そして上記のように20%の省エネを実現する場合は、補助額が50万円上乗せされます。
長期優良住宅化リフォーム推進事業には、期間中ならいつでも申請できる通年申請タイプと、事前の公募で採択された住宅のみを対象とする事前採択タイプの2通りの申請方法があります。
通年申請タイプの申請期間は5月9日~12月23日。ただし、事前に事業者登録と住宅登録が必要です。依頼先のリフォーム会社が事業者登録をしているか、あらかじめ担当者に確認しておきましょう。
リフォーム減税
2014年4月1日以前に建てられた住宅で一定の要件を満たした省エネリフォームを行うと、所得税の控除、および固定資産税の減額措置を受けることができます。
減税の対象になるのは、次の4パターンの工事です。
- 窓の断熱改修
- 床、天井、壁の断熱改修
- 太陽光発電設備の設置
- 高効率空調機、高効率給湯器、太陽熱利用システムの設置
所得税の控除については、昨年度までの投資型減税・ローン型減税が統合され(耐震やバリアフリー、三世代同居、耐久性向上も同様)、翌年の所得税から10%を控除します。控除対象の工事費は最大250万円(太陽光発電を搭載する場合は350万円)です。
加えて必須(対象)工事の限度額超過分、および同時に行うその他リフォーム工事費用(必須工事の標準工事費と同額まで)の5%も控除対象になります。
控除額は、その他工事との合計で最大62万5000円。太陽光発電を搭載すると最大67万5000円の控除を受けられます。
また、耐久性向上と省エネリフォームか耐震改修を同時に行う(長期優良住宅化)場合も同様。耐久性・省エネ・耐震の全てを満たすリフォームは、工事費の上限500万円(太陽光搭載の場合600万円)で、最大75万円(同80万円)が控除されます。
固定資産税は、1/3が軽減されます。所得税は2023年12月31日、固定資産税は2024年3月31日まで控除を受けられます(耐震やバリアフリーも同様)。
所得税の控除を受けるには確定申告が必要になります。固定資産税の控除は、工事終了後3カ月以内に自治体に申告してください。
こどもみらい住宅支援事業
2021年度の補正予算により、新たな補助金制度「こどもみらい住宅支援事業」が創設されました。子育て世帯や若者夫婦世帯の新築住宅購入、および住宅の省エネリフォームを支援するのが目的です。
新築・リフォームのいずれも、2021年11月26日以降に契約した住宅が対象。リフォームは、子育て世帯・若者世帯でなくとも利用可能です。
新築は、最低でも省エネ基準に適合していることが条件で、省エネ性能が高いほど補助額も高くなります。
リフォームでは、グリーン住宅ポイント制度などと同様、断熱改修(開口部、床、壁、屋根・天井)かエコ住宅設備の設置がマスト。合わせて、子育て対応改修やバリアフリー化、耐震改修等の特定のリフォームを行うと、そちらも補助対象に算入できるようになります。
補助額は、リフォームで最大30万円。子育て世帯・若者夫婦世帯(上限45万円/戸、既存住宅購入を伴う場合は60万円/戸)や、安心R住宅を購入して行うリフォーム(上限45万円/戸)などは、上限額を引き上げる特例も。

出典:国土交通省「こどもみらい住宅支援事業の概要」
(https://kodomo-mirai.mlit.go.jp/assets/docs/kodomo-mirai_outline.pdf)
申請の期限は、2023年3月31日まで。利用者が多いと、締切が早まる可能性もありますので注意してください。
こどもみらい支援事業は、住宅を新築・リフォームした個人ではなく、リフォーム会社・工務店・ハウスメーカー等が申請するので、利用するには事業者登録した会社に依頼することが条件です。同事業のホームページで登録事業者が検索できます。
耐震改修
地震大国・日本では、とりわけ重要なのが住まいの耐震性です。補助金を上手に活用して、安心・安全な住まいを手に入れましょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
省エネリフォームでもご紹介した、長期優良住宅化リフォーム推進事業。耐震性能(新耐震基準)は、同事業の必須条件になっています。
古い木造の一戸建て住宅をリノベーションする際に、耐震改修も同時に行いたいという方は、まずこの補助金を利用することを考えましょう。
リフォーム減税
耐震改修でも、所得税の控除や固定資産税の減税措置が適用されます。
所得税の控除は、最大62万5000円(その他工事費からの控除を含む)。「自ら居住する住宅」で、かつ昭和56年5月31日以前に建てられた住宅の改修工事が対象となります。
固定資産税の減額措置は、昭和57年1月1日以前から所在する住宅で、工事費用が50万円以上の改修工事が対象。減額率は1/2です。
リフォーム後に長期優良住宅(増改築)の認定を受けると、減額率が2/3となります。
自治体の補助・助成制度
多くの都道府県、市区町村が、耐震診断・改修に対する支援制度を設けています。
国からの補助金や税制優遇とも併用しやすいので、一度お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。自治体が、地域の事業者を紹介してくれることもあります。
バリアフリーリフォーム
老後のための住まいを購入する方、または高齢のご両親と同居を考えている方などは、あらかじめバリアフリーリフォームを行い、高齢期に備えた住環境を整備しておくのがおすすめです。
リフォーム減税
所得税は、最大60万円(その他工事費からの控除含む)を控除します。固定資産税も1/3が軽減されます。
次の8通りのバリアフリー改修が対象です。
- 通路等の拡幅
- 階段の勾配の緩和
- 浴室改良
- 便所改良
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 出入口の戸の改良
- 滑りにくい床材料への取り替え
また、所有者・居住者の年齢(51歳以上)、床面積(50㎡以上)などの要件もあります。
介護保険
バリアフリーリフォームは、介護保険制度の対象にもなっています。
「要支援」または「要介護1~5」の認定を受けた人が住む住宅で、手すりの取り付けや段差の解消、扉やトイレの交換を行うと、リフォーム費用の9割の額が支給されます。
工事費の上限は20万円なので、最大で18万円が受け取れることになりますね。
介護保険制度をバリアフリーリフォームで利用する場合、担当ケアマネージャーとの打ち合わせなどの手順を踏む必要があります。
利用をお考えの方は、まず市区町村の担当部署に相談してください。
自治体の補助・助成制度
耐震改修と同じく、バリアフリーリフォームにも補助を実施している自治体はたくさんあります。
例えば、東京都では要介護・要支援とは認定されない高齢者など、介護保険の対象外となるバリアフリーリフォームに対し、区市町村を通じて費用の一部を補助しています。
▼東京都福祉保健局「住宅改善事業(バリアフリー化等)区市町村別事業概要一覧」
実施されている事業は区市町村によって異なるため、制度の有無、対象になる工事や補助額については、お住まいの自治体の役場などにお問合せください。
中古住宅を買ってリノベ
中古住宅市場の整備・活性化は行政的な課題にもなっており、補助や税制優遇は年々充実してきています。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
基本的な条件は前述の内容と同じですが、既存住宅を購入してリフォームする場合は補助の上限額を50万円引き上げる特例が適用され、補助額は最大250万円となります。
フラット35の金利引き下げ
フラット35にも、中古住宅向けの金利優遇策があります。
フラット35リノベは、中古住宅を購入して一定のリフォーム・リノベーションを行う人に対し、金利Aプランは10年間、金利Bプランは5年間、金利を0.5%引き下げるとしています。
対象になるリフォームは省エネ性、耐震、バリアフリー性、耐久性・可変性の4項目(いずれか1項目でOK)。Aプランについては今年10月から基準が、以下のように改正されます。
- 省エネルギー性=断熱等性能等級4以上・一次エネルギー消費量等級6、または断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級4か5
- 耐震性=耐震等級2以上、または免震建築物
- バリアフリー性=高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
- 耐久性・可変性=長期優良住宅、または劣化対策等級3・維持管理対策等級2以上
インスペクションやリフォームかし保険への加入、住宅履歴の利用なども利用の条件になります。

出典:住宅金融支援機構「2022年4月版 ずっと固定金利の安心【フラット35】リノベ」(https://www.flat35.com/files/400354546.pdf)
その他の支援制度
住宅ローン減税
所得税から(額によっては住民税からも)毎年の住宅ローンの残額の一定割合の額を控除するのが、住宅ローン減税制度です。
2022年度から制度の内容が変わり、控除率0.7%・控除期間10年間が原則に。新築は、住宅の性能に応じて控除期間が13年まで延長されますが、中古住宅購入やリフォームは「0.7%で10年間」で統一されます。

出典:国土交通省「令和4年度住宅税制改正概要」
(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001447132.pdf)
中古住宅では、築年数の要件(木造20年・RC造25年)を「新耐震基準に適合していること」に変更。1982年1月1日以降に建築された建物(登記簿上の建築日付)を、新耐震基準適合として要件とします。
なお、住宅ローン減税とリフォーム減税は、併用できませんのでご注意ください。
贈与税の非課税措置
自己資金に加えて、両親・祖父母など直系の尊属から贈与で購入資金を取得する場合、一定の額までは贈与税を免除する特例措置が実施されています。
2022年度税制改正で、この特例措置も2年延長が決定。非課税限度額は「良質な住宅」(省エネや耐震性、高齢者対策がなされている住宅)は1000万円、通常の住宅は500万円までが非課税になります。
制度の併用はできる?
今回紹介した制度の中には、併用できるものも、併用できないもの(たとえば住宅ローン減税とリフォーム減税など)もあります。
原則として、国からの補助金同士は(省が違っても)併用不可。補助金と減税は併用できます。

補助金同士の併用表
申請する際の注意点
ここまで、各制度の内容や併用の可否について解説してきました。
ご紹介した補助金制度や減税については、税金で賄われていることもあり、予算や申請の期間が設けられています。
利用する際は、以下の2点にお気をつけ下さい。
着工前に申請が必要
リフォームに関する制度(補助金、助成金)の利用を希望する場合、申請のタイミングが重要になります。リフォームの着工前には申請を完了していなくてはいけません。
工事が始まってしまってから、または工事が終わった後に申請をしても受け付けてもらえないため、注意しましょう。
また、工事の日程にも注意が必要です。例えば、制度の利用に際し「◯月◯日までに工事を完了させてください」といった条件がついているケースも多くあります。
予算の上限がある
先述の通り、補助金や減税の制度は税金で賄われていることから、予算の上限が設けられています。
大抵は予算の上限に達した時点で、申し込みが締め切られてしまうのが通常。まだ受付期間中だからと安心せず、早めに申請手続きをする必要があります。
このように、申請の際に注意しなければならない点や制度併用の可否、そして利用のための細かな要件のチェック、さらに「どの制度が使えるのか?」「最大でどれくらいの補助が受けられるのか?」といった判断は、専門知識がないと難しいことも多くあります。
ひかリノベでは、みなさまの要望や資金計画に合わせて最適な制度をご案内いたします。リフォーム・リノベーションに関するお金のご相談も、ぜひひかリノベにおまかせください。
【記事監修】三浦 英樹(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー)
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーの有資格者。中古不動産購入からリノベーションの設計・施工、インテリアコーディネートまでワンストップで理想の住まいを提供する『ひかリノベ』代表。「住宅は立地や景観、環境のよい『場所』で選び、購入と同時にリフォームやリノベーションを施すことで、自分らしい暮らしをリーズナブルに取得することが可能となります。住宅ローンの返済に縛られることのない、豊かなライフプランの実現を、家探し、家づくりを通じてサポートいたします」