
建築年数の古いマンションは価格も安く、新築よりも立地条件の良い物件が多くあります。
一方で、建物の老朽化や耐震性など、不安を感じる方も少なくありません。
そもそもマンションの寿命とはいつなのでしょうか。
「築30年以上のマンションを購入することに問題はないの……?」
そんな疑問を抱える方に、中古マンションを購入するメリットや気をつけるべきポイントをご紹介します!
2017/2/23初出⇒2023/1/25更新
目次
築30年のマンション、あと何年住める?
「築古物件はいつまで住めるの?」 という心配の声がよく寄せられます。
「鉄筋コンクリート造(RC造)マンションの耐用年数は、47年」と聞いたことはありませんか。
これは税法上の扱いにおける年数であり、実際の建物の寿命とは異なります。
じつは、マンションの躯体に使われているコンクリートの寿命は100年以上。
一方で、これまでに建て替えや取り壊しとなったマンションの多くが、築50年より新しい物件です。
その理由は躯体の老朽化ではなく、給排水配管にありました。
高度経済成長期に普及した鋼管は、耐用年数が20~30年ほど。
しかし当時の建物は、配管交換を想定した設計になっていなかったため、配管の経年劣化とともに住宅として住無ことができなくなってしまったのです。
(※現在は配管交換の容易な設計が主流となっています)
このように躯体は丈夫でも、「実際に住宅として住めるのは何年なのか?」は住宅設備を含めた管理状態に左右されます。
管理状態は、新築マンションの場合は未知数ですが(建てられたばかりなので!)、中古の場合は「これまでの実績を確認できる」という利点があります。
中古マンションの管理状態は、これまでの修繕記録やこれからの修繕計画といった書類のチェックや、毎月の修繕積立金の金額、共用部の使用状況を内覧でチェックする等で知ることができます(※詳細は後述)。
築30年のマンションは新耐震基準?
マンションの寿命と同じく気になるのが、建物の耐震性です。
「昔の建物だと、大きな地震が来たら倒壊するのでは……」と心配される方も少なくありません。
しかし築30年前後のマンション、1981年6月以降に建築確認を受けたすべての建物は、現行基準と同じ耐震基準(新耐震基準)が適用されています。
つまり2023年現在、築42~43年以内のマンションは、すべて「新耐震基準」に適合しているのです。
新耐震基準では、「震度5の地震ではほとんど損傷しない」「震度6~7の地震が起きても倒壊しない」レベルが求められます。
関連記事
新耐震基準については、以下の特集記事で詳しく解説しています。
「新耐震基準が適用されている物件は本当に安心なの?」と不安に感じている方は、ぜひご参考になさって下さい。
築古物件ならではのメリット
築年数を重ねたマンションには、築古物件ならではのメリットもあります。
築古物件ならではのメリット
- 価格が安く、資産価値も安定
- 立地の良い物件が豊富
- 敷地が広く、土地の持分が大きい
価格が安く、資産価値も安定
築年数が古いマンションの魅力は、なんといっても物件価格が安価であること。
マンションの価格は新築時がもっとも高く、築20~25年頃で約半額まで下落します。そして築25年を過ぎると、価格の変化はゆるやかになります。
すなわち、築30年のマンションは購入時に手頃な価格であるだけでなく、将来もし売却することになった場合にも「損が出にくい」ということ。
資産価値の安定は、新築や築浅にはないメリットです。

出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」(http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202102.pdf)より 中古マンションの築年帯別平均価格
立地の良い物件が豊富
立地の良い物件が多いことも、築古ならではの魅力です。
立地条件を優先して物件を探すのであれば、築古物件ほど選択肢が多くなります。
駅近や都心へのアクセスが良いといわれる場所はすでに開発されていて、新築マンションを建てる余地はまずありません。
また立地は、マンションの資産価値にも大きく影響します。
建物の価格は築年数の経過とともに下落していきますが、土地の価格は経年によって変わりません。
とくに都心エリアでは、建物価格の下落を補って地価が上昇している物件もあります。
敷地が広く、土地の持分が大きい
土地がたくさんあった時代に建てられたマンションは敷地がたっぷりとしており、設計にゆとりがあることも特徴です。
マンション自体の敷地が広ければ、区分所有者の土地の持分面積もそれに応じて大きくなります。
立地が良いうえに持分も大きければ、値崩れのリスクはさらに小さくなります。
築古物件を選ぶ際の注意点
実際に築30年前後のマンションを選ぶとき、どんな点に注意すればいいのでしょうか。
物件選びのポイント・注意点をまとめました。
築古物件選びのポイント
- 大規模修繕は計画的に実施されているか
- 修繕積立金は適切か
- 日常の管理業務は適切に行われているか
- 建て替えの可能性(※とくに築45~50年以上の場合)
- 将来的な売却は可能か
大規模修繕は計画的に実施されているか
中古マンションを選ぶとき、ポイントとなるのが管理状態。
とくに「計画的に大規模修繕が行われているのか?」という点です。
外壁塗装や防水処理などが主な大規模修繕にあたりますが、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」によると、これらを12年に一度のペースで定期的におこなうよう推奨しています。
ところがガイドラインは法的拘束力がないため、残念ながらすべてのマンションが計画的にメンテナンスをしているわけではないのが現状です。
過去の修繕は「修繕履歴」で、また今後の予定は「修繕計画」で確認できます。
しかし、なかには履歴も計画もつくっていないマンションもあるようです。まずは、修繕履歴と長期修繕計画の有無を確認してみましょう。
当社ひかリノベでは、物件探しの際、お客様に代わって修繕履歴や長期修繕計画といった書類の取り寄せ・調査を行っています。
内覧のたびに関連書類をご自身で取り寄せ、内容のチェックを行うのは現実的には難しいもの。プロの手にぜひおまかせください。
修繕積立金は適切か
修繕資金は、区分所有者が毎月納める修繕積立金によってまかなわれます。
大規模修繕は1回につき、一戸あたり100~120万円の費用がかかります。
したがって、修繕積立金はマンション全体で100~120万円×総戸数相当の貯蓄が必要です。
大規模修繕を終えたばかりの物件の貯蓄は目減りしていると思いますが、次回への繰り越し分が残っているかという点はチェックしておくと良いでしょう。
1回目の大規模修繕は、外壁塗装や屋上防水が中心となりますが、2回目はさらに貯水槽や配管類の交換が検討されます。3回目は、各住戸の玄関ドアや、窓ガラス・サッシといった建具の交換も必要になるかもしれません。
築年数の経過とともに修繕箇所も多くなるため、余裕を持った積立ができているかがポイントとなります。
毎月納める修繕積立金の金額は、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、10階建ての中規模マンションの場合、8,400~15,900円が目安となっています(※専有面積60㎡の場合)
月々の負担は少ない方が嬉しいですが、設定金額が安すぎると大規模修繕の直前に一時金が徴収されたり、予定していた工事ができないといったリスクが生じます。
修繕積立金の金額は、物件情報に掲載されています。
高すぎないかと気にされる方は多いですが、安すぎないかという観点でご覧になる方は少ないようです。
ガイドラインを参考に、安すぎないかもぜひ注意してご覧になってみてください。
日常の管理業務は適切に行われているか
管理状態は書面だけでなく、実際に現地を見てみることも大切です。
共用部の美観が保たれているかどうかは、管理の実態を見極める良い指標となります。
駐輪場やゴミ捨て場などの共用部はキレイに使用されているか、エントランス前に自転車や雨傘が放置されていないかなど、把握しておくことをおすすめします。
共用部が雑然としている、清掃が行き届いていない、といった問題があるマンションは、管理組合が正常に機能していない可能性が高くなります。
管理組合が機能していない物件は、居住空間が快適に保たれないだけでなく、管理費・修繕積立金の管理にも不安があります。
管理費や修繕積立金の支払いは区分所有者の義務ですが、なかには滞納してしまう人もいるようです。
一時的な延滞が数件出てしまうのは、さまざまな状況がある中でやむを得ない部分もありますが、滞納が重なって修繕資金が不足すると、毎月の積立金額の増額や一時金の徴収が必要になる場合もあります。
そのような事態に陥らないよう、長期間にわたって滞納している所有者がいないか確認しておきましょう。
ひかリノベでは、これらマンションの管理状態について、お客様と一緒に調査をおこなっています。
買主様としては、内覧時にチェックしたいことは管理状態以外にもたくさんあるはず。そんな中でも見落としが無いよう、プロの目でしっかりチェックしていきますので、どうぞご安心ください。
建て替えの可能性(※とくに築45~50年以上の場合)
築30年以上のなかでも、とくに旧耐震の物件(築45~50年以上の物件)は、建て替えが検討されているかもしれません。
まだ充分住める状態であっても、以下のようなさまざまな動機から補修や改修よりも建て替えの方が良いと判断される場合もあります。
- 耐震性を高めたい
- エレベーターがなくて不便なので付けたい
- 高齢の住民もいるのでバリアフリー化したい
建て替えが議論されるということは、建物の維持管理に関心が高いということであり、決して悪いことではありません。
将来は建て替えられた新しい建物に住めるからと、あえて建て替えが議論されている物件を選ぶという方も中にはいらっしゃいます。
ただ、購入後にリフォームやリノベーションをおこなう場合、数年で建て替えになってしまうのはもったいないですね。
築古物件を購入される方は、リノベーションで間取りや内装を作り直すことを前提にお考えの方も多いことと思います。
その場合、近年中に建て替えの予定がないか、確認しておく必要があるでしょう。
また、建て替えには多額の費用が掛かります。
建物を高層化するなどして新たな住民を増やすことで、一人ひとりの負担を軽く出来るケースもありますが、これは容積率や建ぺい率に余裕がないと出来ないことです。
建て替えが議論されている場合は、住民が負担する費用はいくらになるのか、必ず確認しましょう。
建て替えの議論がはじまっていない場合でも、将来に備え、容積率や建ぺい率に余裕のある物件を選んでおくと安心です。
将来的な売却は可能か
転勤や子どもの成長など、時間の経過とともにさまざまな理由から、将来は売却を検討することもあるかもしれません。
「築年数が古い物件は売れにくい」と思われがちですが、実際は築年数に関わらず立地がよければ買いたいという人は多いものです。
価格面でも、建物の市場価値は築年数の経過とともに下がっていきますが、土地の価格は経年によって変わりません。
「都心にアクセスしやすい」「再開発による人口流入が見込める」「最寄り駅まで徒歩15分以内」といった条件を満たす物件は、築古でも一定の価格で売却できる可能性が高くなります。
ですが、専有面積が極端に狭い物件は家族で住むには適さないため、買主が限られてしまいます。
ある程度の広さ(少なくとも50㎡以上)がある物件の方が、将来売却できる可能性は高くなるでしょう。
リノベーションで理想の住まいに
前の居住者の生活感、古くなった内装や設備、現代の暮らしにそぐわない間取り――こうした課題は、リノベーションでまとめて解決することができます。
築年数の古い中古マンションに関する具体的なお悩みには、以下のようなものがあります。
- 新築マンションは間取りや設備が画一的で、収納が足りない
- 部屋数が多いのは良いけれど一室が狭い
- なかなか自分好みの部屋が見つからない
中古マンションを買ってリノベーションすれば、間取りやデザイン、機能などすべてを思い通りに決めることができます。
とくに築30年前後のマンションは、物件価格が手頃な分リフォームやリノベーションに予算を回しやすいため、リノベーション向きの物件だといえます。
リノベーション前提のマンションの選び方
では、リノベーションを前提に築30年以上のマンションを選ぶ場合、具体的にどんな点に注意したら良いのでしょうか。
リノベーション前提の物件選びのポイント
- 壁式構造のマンションは思い通りに間取りを変更できないことが多い
- 水回りの間取り変更ができない物件もある
- 天井高は大幅には変えられない(高くできない)
古いマンションは構造上、間取りの変更が制約されるケースもあるため、注意が必要です。
近年はラーメン構造という柱で支えるタイプの建築が主流ですが、昭和50年代頃までは壁式構造という壁で支えるタイプの建築が多数派でした。
壁式構造のマンションは、住戸内の間仕切り壁の中に建物の構造上壊せない壁(構造壁)があり、思うような間取りに出来ないケースがあります。
そのため、構造壁の位置が自分が変えたいと思う間取りの邪魔をしていないかをチェックする必要があるのです。
また、水回りの間取り変更は、給排水配管の経路がネックになることも。
床が二重構造になっていて床下で配管を切り回せることができれば問題ないのですが、物件によっては直床といって床下の空間がない場合もあります。
こうした物件は、キッチンや浴室など水回り部分の床だけ躯体に凹みがあり、その中に配管を通しているため移動ができないのです。
天井の低さも、築古物件によく見られる課題です。
現し天井といって、通常は天井裏に隠しておく配線や配管をむき出しにするデザインで開放感を演出するという手法もありますが、そもそもの天井高は劇的には変えられません。
とくに背の高い方は、圧迫感を感じないか内覧で必ず確認しましょう。
間取りの変更や水回りの移動は、あらかじめリノベーションプランを決めておくことで、購入後の後悔をなくし、物件の選びやすさも格段にアップします。
ひかリノベでは、まずリノベーションプランの概要を決定し、そこからプランに合わせた物件を選ぶという方法をとっています。
家探しからのリノベーションをお考えの方は、物件のご紹介から物件選びのサポート、リノベーションの設計・施工までワンストップのひかリノベにぜひご相談ください。
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