「デザイナーズマンションは住みにくい?」のウソ・ホント


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「一度は『デザイナーズマンション』に住みたいな」。そんな思いを抱いたことのある人は少なくないのではないでしょうか。立地やお金(家賃や月々のローン返済額)、生活の利便性など、住まい選びには大切なことがたくさんありますが、「かっこいい」「おしゃれ」だって、日々の暮らしに影響する要素です。できるならこだわりたい部分ですよね。

その一方で、「デザイナーズマンションは住みにくい」という意見もしばしば見かけます。暑さや寒さが厳しい、間取りが変で日常生活に支障がある――こうした欠点のある物件も、少なくはないのが現状です。

「おしゃれな部屋に住みたいけど、暮らしにくいのもイヤ」。今回はそんな人のために、デザイナーズマンションの基礎知識と選び方をお伝えしましょう。

デザイナーズマンションの定義

そもそも「デザイナーズマンション」とは、いったいどんな物件のことを指す言葉なのかご存知でしょうか? 実は、明確な定義は今もって存在しないのです。

例えばウィキペディアでは、「建築家のコンセプトが前面に表れた集合住宅(マンション)」となっています。
しかし、どんなマンションにもそれを設計した人、つまり建築家やデザイナーと言える人が存在していますし、何らかのコンセプトはあるはず。
それとデザイナーズマンションの違いがわからない、という人も多いでしょう。
具体的には、何をもって「デザイナーズ」と呼んでいるのでしょうか。

重要なのは「コンセプト」

一口にコンセプトといっても、内容はさまざま。
「ファミリー向け」や「高齢者が住みやすい家」、あるいは「ローコストで建てられる」など、わかりやすいコンセプトも多いですが、デザイナーズマンションの場合、抽象的な言葉で表現されることも少なくありません。
建築雑誌などで設計の意図やコンセプトが紹介されたりもしますが、読んでもよくわからなかった――そんな人もいらっしゃることでしょう。

さらに、インテリアはもちろん外観、周辺の環境との関係性など、あらゆる要素がひとつのコンセプトのもとに設計されていることが多いのも、特徴のひとつだといえるでしょう。
コンセプトが優れていて、なおかつそれがきちんと実現されていると、グッドデザイン賞に代表される建築・デザインの賞を受賞することもあります。
また、建築家の個性や考えが全面に現れていて、一目見ただけで誰が設計したかわかるような物件も多いです。

デザイナーズマンションのイメージ

ただし、これらは一般論であって、デザイナーズマンションと言われている物件すべてに当てはまるわけではありません。
普通のマンションよりもちょっと内装がおしゃれなだけで、デザイナーズマンションに分類されることもあります。
ポータルサイト等でデザイナーズマンションを探すときは、どのような定義で分類しているのかを確かめましょう。

特に賃貸のデザイナーズ物件をお探しの方は、「デザイナーズ」と謳っているのに、家賃が相場より安めに設定されている場合は要注意。
ありきたりな物件に、ちょっと凝ったインテリアリノベーションをしただけ、というものもあるからです。
家賃が安いことは確かに魅力的ですが、安い理由をちゃんと探りましょう。 

「デザイナーズ」のイメージは?

デザイナーズマンションのイメージといえば「デザインの統一感」や「打ち放しコンクリート」、「他にはない間取り」、「デザインのかっこよさ」などが多く挙がるのではないでしょうか。やや古いデータですが、不動産情報サイト事業者連絡協議会の「不動産広告に関するアンケート」(2012年)では、以下のような結果が出ています。

不動産広告に関するアンケート・デザイナーズマンションに対する印象

出典:不動産情報サイト事業者連絡協議会「一般消費者対象『不動産広告に関するアンケート』調査結果」(2012年)(https://www.rsc-web.jp/pre/img/120420.pdf

全体では「統一感のある空間」がトップですが、特に女性は「カッコ良さ優先」と回答した人が多く、ネガティブな見方をしている人も少なくないことが伺えます。もちろん、これらの点を魅力だと捉える人もいるでしょう。

打ち放しコンクリートはかっこいいけど …

ここからは、皆がイメージするデザイナーズマンションの実態に迫りたいと思います。いくつかの要素について、具体的に見ていきましょう。

デザイナーズマンションを象徴する、代表的な要素が「打ち放しコンクリート」。
日本では、木造建築を手掛ける大工さんが、コンクリートを流し込むための型枠もつくるようになった経緯から、世界に先駆けてコンクリート打ち放し仕上げ の技術が発達してきました。
日本を代表する建築家の一人、安藤忠雄さんも打ち放しコンクリートを多用することで有名ですね。

Times I・II 

安藤忠雄設計 タイムズ I・II(京都府京都市)

打ち放しは暑くて寒い?

打ち放しコンクリートの建物でよく言われるのが、「夏は暑くて冬は寒い」。
これは、コンクリートの「熱容量」は大きく、「熱伝導率」が高いという性質に由来するものです。
熱容量は、熱をどれだけ蓄えられるかということ。
これだけならまだいいのですが、問題なのは熱伝導率、つまり熱の伝わりやすさにあります。

コンクリートが熱せられると、コンクリート自体の温度が上がります。
熱は温度が高いところから低いところに移動する性質があるので、夏は冷房していても外気温が伝わりやすくなります。
反対に冬は、室内を暖めてもその熱が外に奪われてしまいやすいので、結果的に「夏は暑くて冬は寒い」ということになってしまうのです。

加えて、冬は結露も起きやすくなります。
暖房で温まった空気が、冷たい空気と触れて温度が下がると、空気中の水蒸気が水滴となって壁や窓につきます。
冷たい水をコップに注いで室内に置くと、コップの表面に水滴がつくのと同じ原理ですね。
結露を放置すると、カビが生え、健康を害する原因にもなるので要注意です。

このようなコンクリート特有の熱伝導率の高さを原因とする課題をクリアするため、打ち放しコンクリートの建物には、しっかりとした断熱処理が不可欠です。

大きな窓にはリスクもある

部屋の一面が全面ガラス窓というのも、デザイナーズマンションにはありがちなことです。
壁がなく、雨戸や障子で仕切るだけという、伝統的な日本家屋のつくりにも通じる要素もある、といえるかもしれません。

大きな窓は、眺めがいい、入ってくる日光が気持ちいいなど、メリットももちろんありますが、同時にウィークポイントにもなりがちなのです。

まず、影響が大きいのが室内の快適さ。
窓は、建物の中で最も熱の出入りが多い部位で、室内外に出入りする熱の7割は窓から出入りしていると言われるほどです。
夏場は、直射日光の影響も加わりやすくなります。

ゆえに、窓が大きいと、打ち放しコンクリートの部屋と同じように、夏は暑く冬は寒い、という状況になりやすいのです。
結露もまた、窓の周辺は温度差が大きくなるので起きやすくなります。
内窓の設置など、リフォームによる対策が必要なケースもある、と頭に置いておきましょう。

安全面でも注意が必要?

プライバシーや防犯の観点からも、大きな窓はデメリットになる場合があります。
例えば、道路や隣家に面した部分が全面ガラス張りだったとしたら、通行人や隣人からあなたの暮らしは丸見えになってしまいますよね。
もちろんカーテンをつければ視線は遮れますが、そもそもカーテンをつけにくいつくりになっていることもあります。

また、ガラスが簡単に割れてしまうことは、多くの方がご存知でしょう。
ガラスを破って部屋に侵入する空き巣の被害は後を絶ちません。
マンションの上層階に住んでいるからといって、安心はできません。
警視庁の侵入犯罪の手口に関する調査では、3階建以下では約3割、4階建て以上でも2割近くが「ガラス破り」によって侵入されています。

警視庁・侵入犯罪の手口に関する調査

出典:警視庁「住まいる防犯110番」 (https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/theme_a/a_d_1.html

近年は防犯システムなども発達していますから、それほど気にする必要はないかもしれませんが、ちょっと心配になりますよね。

なぜ「変わった間取り」にする?

間取りが一風変わっていたり、各部屋の仕切りがあいまいで開放的すぎる、など、建築家がコンセプトやデザインを優先させすぎているのではないか――これもデザイナーズマンションにつきものの意見です。だから住みにくいのだ、という声もよく聞かれます。

おそらく大多数の方は、ワンルームや2DK、4LDKなど、よくある間取りの部屋で生活してきた時間のほうが圧倒的に長いでしょう。
例えば狭いワンルームから、もっと広いLDKのある部屋に引っ越したら、はじめはその広さに落ち着かなかった、という人もいるでしょう。
他にはないような間取りの部屋への引っ越しなら、なおさら戸惑いは大きくなるでしょう。

住まいは暮らしを変える力を持つ

建築家はなぜ、変わった間取りの部屋をつくるのでしょうか。
理由は人それぞれ、と言ってしまえばそれまでですが、建築家が考える理想や、提案したい新しい暮らし方を、間取りを含めた住まいの形として表現する。そんなケースが多いように見受けられます。
住まいのあり方は、当然そこに住む人の暮らしを規定する大きな要素になるので、デザイン優先だからといって、必ずしも生活のことを考えていない、とは言い切れないのです。

もちろん、それが必ずしも暮らしやすいかと言われれば、そうとは限りません。
わざと部屋を狭くする、動線を複雑にする、普通は仕切られている部屋を開放的にする、など、かなり挑戦的なつくりになっている物件も少なくありません。

あえて挑戦的な物件を選んで、自分の暮らしを変えてみる、新しいライフスタイルにチャレンジする、という選択肢もあります。
一方で自分や家族のライフスタイルに致命的に合わない物件を選んでしまうと、「やっぱり住みにくい……」となってしまうリスクも存在します。

物件選びのポイントは「断熱」と「間取り」

ここまでお読みいただいた人の中には、「デザイナーズマンションに住みたかったけど、やっぱりやめようかな」なんて思ってしまった人もいるかもしれません。
逆に「やっぱりデザイナーズマンションがいい!」との思いをもっと強くした人もいるかもしれません。

最終的には、ご自身で選択し、決めていただくほかにはないのですが、いくつか参考になりそうなポイントをお伝えできればと思います。

「断熱」で熱の問題をクリア

打ち放しコンクリートも大きな窓も、室内の快適さを左右する熱の問題を抱えていることは、前に述べたとおりです。ですが、打ち放しコンクリートも窓も「断熱」がちゃんとされていれば、熱の問題はかなり解消できます。

鉄筋コンクリート(RC)造のマンションの場合、新築なら外側に断熱材を施工する「外断熱工法」が採用されていれば、室内側は打ち放しにすることができます。

一方、中古マンションを購入してリノベーションする場合、外側に断熱材を取り付けることはほぼ不可能。マンションの外壁は共用部ですから、個人が自由に手を加えることはできないのです。
必然的に室内側で断熱することになってしまうので、どうしても打ち放しの部屋に住みたいという人は、「外断熱」になっているかどうかを確かめてみましょう。

また、角部屋よりは上下左右に部屋があるほうが、室内からの熱の出入りは少なくなります。
角部屋は人気がありますが、外気に触れる面積も多くなるので、熱環境としては不利になることを覚えておくとよいでしょう。

窓は、ガラスが二重になっているペアガラスや、ペアガラスの間に特殊な膜が張ってある「Low-Eガラス」などを使えば、壁よりは楽に断熱性を向上できます。こうした高性能ガラスは近年かなり普及しています。
また、あとから短時間で付けられる専用の内窓を取り付けるのもいいでしょう。遮音や、防犯の面でも利点があります。

二重窓施工の例

二重窓施工の例(事例:https://hikarinobe.com/constructioncase/case_0031/より)

間取りはあとから変えにくいことも

一般的な間取りの部屋の場合、間仕切り壁が構造上必要なものにはなっていないことも多いので、大胆に間取りを変えることはさほど難しくありません。

しかし、デザイナーズマンションで特殊な間取りの場合、構造そのものがその間取りを実現するためにつくられていることもあるので、間取り変更は難しい場合があります。 

むしろ、一般的な間取りの物件を取得して、リノベーションで間取りを好きなように変えるほうが、デザインの面でも生活の利便性の面でも、ベターなケースもあります。
一度住み始めてしまうと、いざ間取りを変えたいとなったときに、仮住まいへの引っ越しが必要になるなど、小さくない負担を強いられます。
賃貸ならともかく、購入する場合はよく考えてから選びましょう。

デザインにこだわったリノベーションも、ひかリノベの得意分野です。
建築家とのコラボレーションによる「デザイナーズコラボ」で、お気に入りのデザイナーにリノベーションを依頼することもできます。オリジナリティのある部屋に住みたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

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【執筆】荒井 隆大(ライター)

 

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