日本の伝統と暮らす「古民家」リノベーション術


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昔ながらの暮らし方や、その地方の気候に応じた家づくりを現代に伝えてくれる「古民家」。民家をリノベーションした宿泊施設や飲食店も増え、日本を訪れる外国人観光客らの人気を集めています。民泊サイトでも、古民家をリノベした物件がたくさん紹介されていますね。

また日本国内でも、地元に帰るUターンはもちろん、子育てや、リタイア後のセカンドライフの場として地方に移り住むIターンなど、地方移住が注目を集めていますが、地方での新たな住まいとして古民家を選ぶ人、古民家暮らしを希望する人は後を絶ちません。

一方、古民家のつくりは現代の住まいと大きく異なっており、いざリノベーションしようとなると、住まい手はもちろん、住宅や建築のプロでさえ戸惑うことも多いのが実情です。古民家をリノベーションして住むには、どのような点に注意すればいいのか、どんなコツがいるのかをお伝えします。

また、リノベーションした古民家に住みたいけどそれは難しい……という人もいるでしょう。そんな人でも古民家を味わえる「古民家風リノベーション」についても紹介します。

2016/2/25初出→2019/4/23更新

「古民家」ってそもそもどんな家?

「古民家」には、実は具体的な定義はありません。とはいえそれでは話を進めにくいので、一般社団法人全国古民家再生協会が掲げている定義を前提にすることにしましょう。

(略)「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。

出展:一般社団法人古民家再生協会「『古民家』の定義について」
http://www.g-cpc.org/%E3%80%8C%E5%8F%A4%E6%B0%91%E5%AE%B6%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6

この記述の中にある「伝統構法」(「伝統工法」と表記することもあります)という言葉が、古民家か否かをわけるカギだと言ってもいいでしょう。

木だけでつくるのが日本の伝統

現代の木造住宅は、主に耐震性を高めるために、基礎と柱や、柱や梁、桁を接合金物と呼ばれる金具で固定することが、建築基準法で定められています。これは伝統構法と区別して「在来工法」と呼ばれます。
また、アメリカから導入されたツーバイフォー工法という、壁を主体とした構造もあります。

一方、伝統構法は、地域による差はいくらかありますが、基本的には大工さんが手作業で「仕口」や「継手」と言われる凹凸の加工を柱や梁に施し、組み合わせることだけで構造体をつくります。
柱も、基礎となる石を地面に埋め込み、そこに立てるだけ(固定しない)の「石場建て」(「独立基礎」や「玉石基礎」とも)が用いられ、筋かいや土台も使いません。

「そんなつくりで地震には耐えられるの?」と思うかもしれませんが、伝統構法は、地震の揺れに対して柔軟性を持たせることで地震の力を吸収するのです。
古民家とは対極的な存在に見える超高層ビルの設計にも、伝統構法の知恵が活用されているといいます。決して古いだけの存在ではないのです。

現代の在来工法木造住宅の軸組と、伝統構法(京町家)の軸組

各部 在来工法(建築基準法) 伝統構法
基礎・柱脚 コンクリート基礎上に土台・柱脚を金物で緊結する 一般に土台を設けず、柱脚を磁石に乗せただけの石場建ても多い
接合部 必要な柱と横架材の接合部を金物補強する 仕口・継ぎ手は、木を生かした「木組み」であり、金物は用いない
耐震壁 筋かいや構造合板、石膏ボードなどを用いる 壁は、土塗り壁や板張りの前面癖・小壁(垂れ壁、腰壁)が多い
木材 人工乾燥木材の他、合板、集成材など木質系工業製品を多く使う 丸太や製剤など天然乾燥木材を多く使う

出典:内閣府 規制改革推進会議農林ワーキング・グループ「伝統的構法木造建築物の建築基準法における問題」
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/nourin/20180216/180216nourin01-1.pdf

構造=デザインが大きな魅力

古民家のもうひとつの特徴が「真壁」。

在来工法では、接合金物と同様、耐震のために強度の高い構造用合板などを、柱の上から張ることがほとんど。
これを「大壁」といい、柱は合板や、内装の下地になる石膏ボードに隠れてしまいます。

一方、伝統構法は柱の間に「小舞」と呼ばれる下地を作り、その上に土を塗ったりして壁をつくるので、柱が覆われず、外にあらわれた状態になります。これが「真壁」です。
柱のラインが目に見えるので、構造がそのまま内外装のデザイン性を決める要素になりますね。
石場建てもそうですが、木材が絶えず外気に触れているので湿気がたまりにくく、腐りにくいというメリットもあります。

その他にも、縁側とそれを覆う深い軒の出、むき出しの梁や桁、茅葺き屋根、独立した玄関とは違う、出入り口と台所、仕事場など複数の役割を兼ねる土間、「田の字プラン」と呼ばれる間取りなど、いろいろな特徴が思い浮かぶでしょう。

これらは、夏の強い日差しを遮る、室内で火を使った時の煙を逃がすなど機能的な理由や、その地域で手に入れやすい材料を使った結果であったりするのですが、同時にデザイン的な魅力にもなっているのです。

伝統構法による古民家の例。真壁や剥き出しの梁が特徴的。

魅力はリノベのネックでもある

現代の工業化された、均質な家づくりとは全く異なる、職人の技や地域の特性を生かしたつくりが魅力の古民家。
ですが今、古民家を購入してリノベーション、となると、かなり大きなハードルが目の前に立ちはだかります。

まず問題になるのが、建築基準法上の扱いです。
今、伝統構法の建物をつくろうとすると、構造計算を行い、現在の法規が求める耐震性を持っていることを証明しなくてはなりません(在来工法の場合、2階建てまでならほとんどの場合は不要です)。リノベーションでも、確認申請が必要な規模ならば構造計算が必要です。

断熱性能も現代の住まいには欠かせない要素ですが、土壁や茅葺屋根をそのまま残そうとした場合、断熱材を施工することはかなり困難。できなくはありませんが、かなりの手間やコストを要します。

正しく古民家をリノベできる業者を探そう

伝統構法を正しくリノベーションできる設計者や職人・工務店が、決して多いとは言えないのも、大きな問題です。

設計図をもとに、あらかじめ工場で木材を加工するプレカットの普及や工具の進歩、各種建材の工業化などの理由から、伝統構法では必須だった刻み(木材を手作業で加工すること)や墨付け(加工に必要な木材へのマーキング)が、大工には求められなくなり、経験がないという大工も今や珍しくはありません。

もしあなたが古民家を、伝統構法のままフルリノベーションしたい、と思っているなら、まずは伝統構法をちゃんと理解し、適切な設計や施工ができる設計事務所や工務店を探すことが第一歩。

とはいえ、伝統構法に対応できる設計者や大工・職人は「どう探せばいいの?」という方が多いのではないでしょうか。
そんな悩みに応えられるのが、ひかリノベのリノベーションの仕組みです。
物件購入からリノベーションの設計・施工まで、すべてひかリノベが窓口となって、住宅の工法やリノベーション内容に合わせ、最適な設計者や大工・職人を手配します。
リノベーションをお考えの方は、まずは各ショールームで開催している相談会にてご相談くださいませ。

古民家リノベ、相場はいくら?

そして、やっぱり気になるのは「お金」、つまりリノベーション費用のことではないでしょうか。

もちろん、傷んだところの修繕、設備の交換、スケルトン状態にしてのフルリノベ――規模や内容によって、コストには大きな差が出ます。
ですが、インスペクションや耐震診断、構造計算(多くの設計事務所や工務店は外注)などの費用がかかることから、伝統構法の古民家リノベーションは、在来工法の住宅よりも高額になる傾向があります。

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出典:パナソニック 住まいの設備と建材「古民家再生のリフォーム費用の相場・目安」
http://sumai.panasonic.jp/sumai_create/hiyou/kominka/

ボリュームゾーンは500万円から2000万円の間というところでしょうか。
3000万円超も15%を占めており、かなり大規模なリノベーションを行っている人が多いと予想されます。

古民家で暮らすには

そもそも、古民家はどうやって探せばいいのでしょうか。
実家が築100年以上の古民家だ、なんて人もいるでしょうが、多くの場合、まず物件を探すことがスタートになるでしょう。これは中古マンションを買う場合や、賃貸物件を探すのと同じですね。

まずは、どこに住みたいかを決めましょう。古民家に住みたいという人の中には、地方への移住を考えている人も多いでしょうが、縁もゆかりもない土地に移り住むこと自体が、物件探し以上のハードルになります。

そこでおすすめしたいのが、各地の自治体などが主催している「移住体験ツアー」。短期間でもその地域を経験することで、その土地が自分に合っているかどうかを判断する材料になるでしょう。

古民家購入のステップ

古民家を探すには、ネットの不動産ポータルサイト、地元の不動産業者、知人からの紹介など、いくつかの方法が考えられます。
「古民家住まいる」「田舎ねっと.日本」のように、古民家や地方移住に特化したサイトもあります。
また、移住先の自治体が「空き家バンク」を開設していたら、ぜひ覗いてみましょう。掘り出し物が見つかるかもしれません。

なお、ひかリノベは長野県松本市に拠点があり、首都圏からの移住を検討中の方向けに、物件紹介を行っています。
両国・五反田・横浜・湘南の各ショールームで、首都圏にいながら現地の物件情報を閲覧したり、リノベーションの相談も可能です。

このゴールデンウィーク中は、4/30に五反田、5/6に横浜のショールームにて、移住セミナーを開催します。長野県(富士見町・原村・諏訪市~松本市・安曇野市エリア)への移住をお考えの方は、ぜひお気軽にご参加ください。

当然ながら築数十年以上が経過しているものなので、購入する際には、インスペクションを行うことをおすすめします。
ひかリノベでは、ご希望の方に、購入前のインスペクションを実施しています。古屋のご購入をお考えの方は、どうぞお気軽にお申し付けください。

「古民家風」リノベのススメ

ここまで、簡単ではありますが古民家リノベーションのコツを紹介してきましたが、そもそも「今住んでいるところから離れたくない」「予算や場所など、ちょうどいい物件が見つからない」という人も多いでしょう。

それでも古民家の暮らしを味わいたい、という人には一般的な中古物件を購入して「古民家風」にリノベーションすることをおすすめします。
古民家は、デザイン的な特徴が豊富ですから、インテリアコーディネートにそのテイストを盛り込みやすいのです。

また、インテリアだけならRC造のマンションだって、日本の伝統を感じさせる空間をつくることができます。
各種の補助金や優遇制度も、耐震性などの条件を満たしている物件ほど利用しやすくなりますし、築浅物件ならメンテナンスの負担も小さくなります。

古材で古民家らしさを演出

古民家風ですから、ベースは当然和風のインテリアということになりますね。
ひかリノベでは、和風のデザインを基本スタイルのひとつとして用意しています。

そこに古民家のテイストを加えるには、「古材」を使うのがおすすめ。解体された古民家の柱や梁、あるいは床だった木材は、新しい木材にはない色合いや風味を持っています。それを使うだけでも、長い年月を経た古民家の雰囲気にぐっと近づきます。

例えば、壁に柱だった古材を薄く切って取り付け、壁をしっくいなどの左官仕上げにすれば、コンクリートの平らな壁が真壁風に早変わり。加工して照明を取り付けたり、家具に作り替えたりするのもありでしょう。サイズが合えば、古い建具をそのまま使うこともできます。

ひかリノベが過去に手がけた施工事例にも、実際に古材を利用したものがあります。こちらのお宅では、キッチンのカウンターと吊り棚、洗面室のニッチ棚に古材を使用しました。
年季を重ねてきた木材がもつ深い色味と風合いは、近年とくに人気があります。

また新しい木材だって、塗装や仕上げ方次第で古材のように見せることも可能です。

古民家は確かに大きな魅力を持っていますし、資源を有効に使うという意味でも、古民家をリノベーションして住むことには大きな意義があると言えましょう。しかし、予算や地域などの制限も現実問題として存在するのもまた確かです。

そこで「古民家風」を取り入れることによって、限られた条件の中でも、日本の伝統的な住まいを味わうひとつの方法になるのではないでしょうか。

古民家に興味があるけれど、現実的に難しいという悩みを抱えている方は、マンションの「古民家風」リノベもぜひ選択肢に入れてみてください。あなたのライフスタイルを変えるきっかけになるかもしれませんよ。

 

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【執筆】荒井 隆大(ライター)
【監修】 三部 浩一(宅地建物取引士)

 

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