耐震補強で木造戸建て住宅の安全・安心を守る

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地震の怖さは、いつ、どこで起こるか予測できないところにあります。あなたやご家族の身の安全を守るためにも、日頃から備えておくことが大切です。

住まいも、事前の対策が重要。倒壊すれば命に係わりますし、助かってもその後の生活への影響は決して小さくはありません。
木造の一戸建て住宅・鉄筋コンクリート造のマンションといった構造、あるいは築年数によって、地震に対する強さは異なりますが、特に古い木造住宅は耐震性が低いものが多く、耐震補強の必要性は高いと言えるでしょう。

理想の間取りやインテリアを考えるのも楽しいものですが、せっかくリノベーションをするなら、安全に暮らすことも同時に考えてみませんか?

耐震性は築年数でわかる

大地震が起こると、古い木造住宅の被害がニュースなどで取り上げられます。

例えば、2016年4月に起きた熊本地震では、古い建物ほど全壊の割合が高くなり、1981(昭和56)年5月より前に建てられたものは、3割近くが倒壊しました。

出典:国土交通省「『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』報告書のポイント」 (https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf)

出典:国土交通省「『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』報告書のポイント」 (https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf

1981年6月の建築基準法改正を境として、それ以前の耐震性の基準を旧耐震基準、改正後は新耐震基準と呼ぶことは、ご存知の方も多いでしょう。
熊本地震の被害状況を見ると、新耐震基準に比べて旧耐震基準の住宅のほうが、大きな被害を受けていることがよくわかります。

1981年以前に建てられた住宅にお住まいの方は、大地震が起きた時のリスクが非常に高いため、建て替えや耐震補強を検討したほうがいいかもしれません。

2000年も耐震性の判断基準

また、1981年以降の新耐震基準でも、2000(平成12)年以前と以降で、被害の程度に差があることにお気づきでしょうか?

2000年6月に建築基準法が改正され、地盤、耐力壁、接合部(梁や柱、土台などのつなぎ目のこと)の基準が明確化されました。
2000年より前は、新耐震基準といえど正しい作り方が不明瞭だったので、耐震性が不足することもあったのです。

とくに「中古を買ってリノベーション」をお考えの方は、リフォーム前に耐震診断を受けてみるのも良いでしょう。
耐震診断の評点が1.0(建築基準法レベル)未満、特に倒壊の恐れが高いとされる0.7未満だった場合は、リノベーションで耐震補強をしておくと安心です。

1.5以上

倒壊しない

1.0以上〜1.5未満

一応倒壊しない

0.7以上〜1.0未満

倒壊する可能性あり

0.7未満

倒壊する可能性が高い

耐震性を左右するポイント

木造住宅が地震で倒壊する、言い換えると耐震性が不足する原因はどこにあるのでしょうか。代表的なポイントとして、次のような要素が挙げられます。

  • 接合部
  • 壁量
  • 壁や柱の位置のバランス
  • 躯体の劣化

接合部

木造住宅は、ほぞと呼ばれる突起を一方の材につくり、もう一方に穴(ほぞ穴)をあけて差し込むというやり方で柱や梁、土台をつないで造ります。
つないだ材同士は、接合金物で補強しますが、接合金物が外れたり、ちゃんと取り付けられていないと、地震の揺れでほぞがほぞ穴から抜けてしまったり、ほぞ穴が壊れてしまうことがあります。

壁量

壁も、耐震性を左右する重要な要素です。それも、間仕切り壁のようなただの壁ではなく、耐力壁と呼ばれる、筋交いや構造用合板で構成された壁がどれだけあるかが肝心です。
耐力壁の量が不十分だと、いくら梁や柱を頑丈に作っても、十分な耐震性を確保できない可能性があります。

壁や柱の位置のバランス

南側に大きな窓をつくったりすると、窓の部分には耐力壁を配置できません。他の部分に耐力壁を配置すれば量は補えますが、バランスよく配置することが望ましいです。
柱は、地震の力を逃がす経路になるため、1階と2階で位置を揃えること(柱や壁の直下に柱がある割合を「直下率」といいます)が大切。2階を増築した住宅などでは、柱や耐力壁の位置が不ぞろいになっていることも多いので、要注意です。

躯体の劣化

木造住宅の柱や梁、土台は、腐ったり、シロアリの発生によって傷むことがあります。躯体の劣化が、耐震性の低下につながることは言うまでもないですよね。
一般的に、築年数が経過するほど、躯体が劣化するリスクは高まります。ですが、新しい住宅であっても、雨漏りや壁の中、床下の結露などが起こっていれば、腐朽やシロアリが発生可能性は高くなります。

耐震補強の施工方法

もし住まいの耐震性に問題があったときは、どのような種類の工事をすればいいのでしょうか? 接合部や壁といった構造の補強だけではなく、基礎や屋根も耐震性を高めるには重要な要素です。

  • 接合部の補強
  • 壁の補強
  • 基礎の補強
  • 劣化の補修
  • 屋根の軽量化

接合部の補強

地震の揺れで柱や梁のほぞが抜けないよう、接合金物で補強(緊結)します。
土台も、基礎に埋め込んだアンカーボルトに、ホールダウン金物でがっちり固定します。アンカーボルトが施工されていない場合は「あと施工アンカー」を用い、固定します。

壁の補強

筋交いを入れたり、構造用合板・耐力面材などを張って耐力壁をつくり、耐震性を高めます。ただし、やみくもに補強すればいいというわけではなく、建物全体でバランスが良くなるような耐力壁の配置を考えて補強する必要があります。
外壁を剥がして外から補強工事をすることもありますし、室内側から施工することもあります。

出典:江戸川区ホームページ「耐震で安心」 (https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e004/kuseijoho/kohokocho/kohoedogawa/h28/201608/280820/280820_1.html)

出典:江戸川区ホームページ「耐震で安心」 (https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/19038/280820.pdf

基礎の補強

基礎にはコンクリートが使われているため、経年劣化によってひび(クラック)が入ることがあります。入ったひびは、エポキシ樹脂などを充てんして埋めます。
また、古い住宅の基礎は無筋(鉄筋が入っていない)のものもあり、布基礎も多いので、鉄筋を施工して基礎を増し打ちします。

劣化の補修

腐ったり、シロアリに食べられてぼろぼろになった材は、交換が必要です。まるごと取り換えることもありますが、根継ぎという手法で、傷んだ部分だけを新しい木材に交換することもあります。

屋根の軽量化

屋根が重いと、地震の揺れが増幅されます。瓦のように重い屋根材を使っている場合は、軽い金属製の屋根材などに葺き替えると、地震で倒壊するリスクを軽減することができます。

耐震リフォームの費用の目安

安全な暮らしのためには欠かせない耐震性とはいえ、リフォームにいくらお金がかかるか気になる方も多いでしょう。
住宅の状態や築年数、補強の工法によってもかかる費用には違いがあります。

日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)の調査(2018年8月)によると、耐震補強工事にかかった費用の平均は約164万円でした。
旧耐震の住宅は、200万円オーバーが平均という年代もあるのに対し、新耐震以降の住宅は全体の平均値を下回っています。
築年数が浅くなるほど、費用は少なくなる傾向にあるようです。

出典:日本木造住宅耐震補強事業者協働組合「木耐協 耐震診断結果 調査データ《耐震補強工事 実施者はどんな人?》」 (http://www.mokutaikyo.com/dcms_media/other/tyousa_1808.pdf)

出典:日本木造住宅耐震補強事業者協働組合「木耐協 耐震診断結果 調査データ《耐震補強工事 実施者はどんな人?》」 (http://www.mokutaikyo.com/dcms_media/other/tyousa_1808.pdf

新耐震では6割近くが150万円未満で済んでいますが、旧耐震になると150万円以上の割合が半数を超えています。

出典:日本木造住宅耐震補強事業者協働組合「木耐協 耐震診断結果 調査データ《耐震補強工事 実施者はどんな人?》」 (http://www.mokutaikyo.com/dcms_media/other/tyousa_1808.pdf)

出典:日本木造住宅耐震補強事業者協働組合「木耐協 耐震診断結果 調査データ《耐震補強工事 実施者はどんな人?》」 (http://www.mokutaikyo.com/dcms_media/other/tyousa_1808.pdf

築年数が経過すると、もとの耐震性が低いことに加えて、構造材、外壁や屋根材の劣化が進み、補強以外の工事を同時に行う必要があるケースが増えていきます。
「中古を買ってリノベーション」の場合、古い住宅は価格も安いですが、リフォームの費用も見込んでおく必要がありそうですね。

耐震リフォームの費用は、施工方法により大きく変わってきます。
ポイントは、費用は効果に比例するというよりは、工法によって決まるということ。
費用が高いと感じられたら、別の会社(工法)で再度、見積もりをとることをおすすめします。
会社によっては、不必要な工事や、効果の薄い工事をすすめる“悪徳リフォーム会社”もありますから、注意が必要です。

ひかリノベでは、綿密な現況調査と構造計算によって、最適な工法をおすすめしています。もちろん、必要のない工事を「このままだと倒壊しますよ」などといって無理にすすめることもありません。耐震補強をご希望の方は、担当設計までご相談ください。

どこまで補強するべきか

理想を言えば、新耐震基準(建築基準法、耐震診断の評点1.0)に合致するレベル以上まで耐震性を高めるのが望ましいとはいえます。
しかし、予算にも限りがあるでしょうし、状況によっては新耐震基準まで耐震性を引き上げられないこともあり得ます。

新耐震基準に達しないとしても、耐震性を高めることには意味があります。
もともとの耐震性がとても低ければ(耐震診断の評点が0.7未満など)、新耐震未満だとしても、地震発生時の危険をかなり減らすことができるでしょう。

家全体を改修できなくても、リビングや寝室など長い時間を過ごす部屋だけ、あるいは2階建てで1階だけの補強でも、あなたのお住まいはかなり安全になります。

自治体の助成や補助金制度

木造住宅の耐震診断・改修に対しては、国や自治体が助成金・補助金制度を設けています。

国の制度では、長期優良住宅化リフォーム推進事業などのリフォーム関連の助成制度を、耐震リフォームに活用することができます。

また減税制度も、有効に活用したいものですね。
住宅耐震改修特別控除は、旧耐震基準の住宅を現行基準に適合させる耐震改修が対象の減税制度。250万円(2021年12月31日まで)を上限として、工事費用の10%が、所得税から控除されます。固定資産税も、50万円以上の耐震改修を行うと、翌年から1年間、半分に減額されます(2022年3月31日まで)。

日本は特に地震の多い国です。首都直下地震や南海トラフ地震は、近いうちに必ず起こると言われていますし、それ以外の地域でも大地震が何度も起こっています。
住まいの耐震補強も含めて、ご自身の地震対策を常に見直し、考えることが大切です。

当社ひかリノベは、オーダーメイドのリノベーションと中古マンション・中古戸建の売買仲介サービスをご提供しています。
家探しからのリノベーションをご希望の方は、物件探しから設計・施工まで。居住中のご自宅のリノベーションは、工事中の仮住まい探しから設計・施工まで、ワンストップでおまかせいただけます。

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記事監修

大宮 良明(一級建築士、既存住宅状況調査技術者)

一級建築士、既存住宅状況調査技術者の有資格者。木造建築の構造計算をはじめ、安全性に配慮した設計を得意としている。「住まいのデザインは見た目のカッコよさはもちろんですが、それ以上に暮らしやすさや安全性が大切だと考えています。長い目で見て『こうして良かった』と思える家を、いっしょにつくっていきましょう」

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