住宅のリフォームやリノベーションの資金を両親や親族から援助してもらった場合、贈与税がいくらかかるのか、疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
リフォーム工事を含む住宅購入資金の援助の場合には、贈与税が非課税となる制度があります。
この制度は2023年末で終了予定でしたが、本年2024年の税制大綱により、2026年末まで延長が決まりました。
この記事では、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」をはじめ、リフォーム資金の贈与をめぐる優遇制度や利用条件について詳しく解説していきます。これからリフォームしようと考えている方、とくに親や親戚から資金を援助してもらう予定があるという方は、ぜひ参考になさってくださいね。
贈与税とは? どんな場合にかかる?
そもそも贈与税とは、どのようなときにかかる税金なのでしょうか。
「贈与税」とは、生きている人から財産的価値があるものをもらったときにかかる税金のことをいいます。
亡くなった人の財産を譲り受けた場合にかかる税金である「相続税」とは分けて考えましょう。
贈与税の納税義務があるのは「財産をもらった側」です。財産をあげた親の側が納めるものではありません。親からリフォーム費用を贈与してもらった場合は、子どもが贈与税を納めなければなりません。
財産をもらった相手が親子や夫婦、親せきであっても、贈与税の対象となります。現金はもちろんですが、マンションや家などの不動産、株式や貴金属など財産として換価価値(金銭的な価値)があるとみなされるものは、すべて贈与税の課税対象です。
年間110万円までは贈与税がかからない
贈与税は基本的に、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計額に対して課されます。このような課税方式を「暦年課税」といいます。
1年間に譲り受けた財産の合計額が110万円以内であれば、110万円の基礎控除があるので贈与税はかかりません。110万円を超えた場合は、超えた分に贈与税が課せられます。
例えば「4月に父親から50万円」「10月に叔母から50万円」の援助を受けた場合、1年間に受け取った財産の合計額は100万円なので贈与税はかからないことになります。
しかしさらに「12月に兄から20万円」の援助を受けると、1年間の合計120万円となり、基礎控除額の110万円を超えるため、オーバーした10万円分に対して贈与税が課されることに。
贈与税がかかる場合は、原則として翌年の2月1日から3月15日の間に確定申告をして、納税する必要があります。
贈与税の課税率は?
贈与税は、贈与してくれた人との関係性によって課税率が変わってきます。
18歳以上の成人が直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けた場合は「特例贈与」となり、特例税率が適用となります。
その他のケース……たとえば配偶者・兄弟姉妹・他人からの贈与や、18歳未満の子供が親や祖父母から贈与を受けた場合は「一般贈与」となり、一般税率が適用となります。
基礎控除後の課税価格 (110万円からオーバーした金額) |
一般贈与 | 特例贈与 | ||
税率 | 控除額 | 税率 | 控除額 | |
200万円以下 | 10% | – | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 | ||
600万円以下 | 30% | 65万円 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 55% | 400万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
住宅の購入やリフォームの資金に関しては、一定金額までは贈与税が非課税となる特例があります。これを「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」と呼びます。
この特例は2023年末で廃止となる予定でしたが、本年2024年の税制大綱により、2026年12月31日まで延長されることになりました。
特例を利用するにはいくつかの条件があります。
主だったものは4つで、
- 直系尊属(父母または祖父母)からの贈与であること
- (リフォームの場合)工事費用が100万円以上であること
- (中古住宅を買ってリフォームする場合)新耐震基準に適合した住宅
- 住宅の床面積が50㎡以上であること
配偶者の両親は「直系尊属」には当たらないので、資金援助を受けても特例は受けられません。ただし養子縁組をした場合は適用されます。
また4つめの床面積要件に関しては、贈与を受ける側の所得が1,000万円以下の場合には、40㎡以上に緩和されます。
非課税となる金額の上限は下表のとおり。この金額を超えた分は、上述のとおり贈与税の対象となります。
質の高い住宅 | 一般住宅 |
1,000万円 | 500万円 |
「質の高い住宅」とは、省エネ性能や耐震性能といった住宅の基本性能が高い住宅のこと。
リフォームや中古住宅の場合、「断熱等性能等級4/または一次エネルギー消費量等級4以上」「耐震等級2以上/または免震建築物」「高齢者等配慮対策等級3以上」のいずれかに該当するものをいいます。
(新築の場合は、断熱性能の基準がより厳しく「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」となります)
なおこの制度を利用する場合にも、前述の110万円の基礎控除が適用されます。
つまり、質の高い住宅の場合は1,110万円、一般住宅の場合は610万円まで、実質的には非課税となるということです。
相続時精算課税制度
住宅購入やリフォーム資金の贈与に利用できる特例は、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」以外にもあります。そのひとつが「相続時精算課税制度」です。
相続時精算課税制度は、18歳以上の成人が60歳以上の直系尊属(父母・祖父母)から贈与を受けた場合に利用できる制度。贈与財産の合計金額が2,500万円となるまで非課税となります。
この贈与財産の合計は1年間の合計(暦年課税)ではなく、複数年にわたる贈与全体の合計額です。贈与財産の使途や目的に制限はありません。
2,500万円から超えた場合は、超えた分に一律20%の贈与税が課せられます。
なお、相続時精算課税制度を利用する場合にも、前述の110万円の基礎控除が適用されます。つまり「年間110万円」までは、贈与税や相続税の対象にはなりません。
そこからさらに「累計2,500万円」までは、贈与税は非課税となるということ。
例えば、「昨年1,000万円親からもらい」「今年も1,000万円親からもらった」場合。
各年に基礎控除110万円が適用され、相続税の対象となるのは「昨年890万円」「今年890万円」です。累計1,780万円となり、2,500万円に満たないため、贈与税は非課税です。
しかし「翌年さらに1,000万円もらった」場合、基礎控除分を除いた880万円が1,780万円に加わり、累計2,660万円となります。
この場合、2,500万円からオーバーした160万円に対し、20%の贈与税が課せられることになります。
ただし、この制度は「課税されない制度」ではなく、相続が発生するときまで「課税を繰り延べする制度」なので注意が必要です。贈与してくれた父母や祖父母が亡くなり相続が生じたときには、相続時精算課税制度により贈与税の対象から外した財産を、相続財産に組み込まなくてはいけません。贈与税は非課税となっても、のちに相続税が課税される可能性があるのです。
上の例でいうと、親から「昨年1,000万円」「今年1,000万円」の贈与を受け、相続時精算課税制度を利用。この親が「翌年亡くなった」場合、故人の遺産が3,000万円だったとすると、「3,000万円+(基礎控除分を除いた)1,780万円=4,780万円」が相続財産となります。
相続時精算課税制度を利用する場合は、相続財産との兼ね合いを十分に考える必要があるでしょう。
なお、贈与や相続は現金だけでなく、不動産や車などを譲り受ける場合もありますね。財産の種類によっては(「小規模宅地等の特例」など)税額を抑えられる特例もあるので、相続時精算課税制度を使うべきか、それとも他の特例を選択すべきか、より慎重に検討する必要があります。実際に利用する際は、まずは専門の税理士に相談されることをおすすめします。
まとめ
小規模なリフォームを考えている人は、援助してもらう金額が110万円以内であれば、基礎控除により贈与税はかかりません。
大規模リフォームやフルリノベーションを検討中であれば、「住宅取得資金贈与の非課税特例」や「相続時精算課税制度」を利用すれば、数百万円~の資金援助を貰った場合でも贈与税を非課税とできます。
なるべく費用をかけずにリフォームするには、国や各自治体で実施しているリフォーム補助金や減税制度を利用するという方法も。近年はとくに省エネ住宅関連の補助金が手厚く用意されています。リフォーム補助金・減税については特集記事がありますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
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