
古い住宅は断熱材が入っていないことが多く、冬の冷え込みが厳しかったり、冷暖房の効きが悪かったりして、お世辞にも快適だとは言えません。
根本的に解決するためには、断熱リフォームが有効です。快適な環境が手に入るだけではなく、住む人の健康や建物の寿命にも好影響があるのです。
今回は、断熱リフォームのメリットや、具体的な手法をご説明します。
目次
1.断熱リフォームのメリット
2.断熱リフォームの方法・費用・工期
3.内断熱と外断熱
4.断熱リフォームで使える補助金制度
5.まずは断熱診断を!
断熱リフォームのメリット
断熱リフォームには、次のようなメリットがあります。
冬は暖かく、夏は涼しく
断熱性能の高い住宅は、室内の熱が外に逃げにくく、室温が屋外の温度に及ぼす影響を最低限に抑えます。
冬、暖かいのはもちろん、夏も外の暑さが室内に侵入しにくくなり、室温を一定に保ちやすくなります。
また、室温が変化しにくいので、冷暖房の効きも良くなり、光熱費も安くなります。高断熱住宅なら、エアコン1台で家全体の空調をまかなうことも不可能ではありません。
健康に良い
人間の血管は、寒いと収縮し、血圧が上昇します。
冬、暖房の効いた暖かい部屋から、寒い廊下や脱衣室を通って、熱いお風呂に入ると、短時間で血圧が大きく上下し、入浴中に失神、溺死してしまう人が後を絶ちません。これを「ヒートショック」といい、交通事故以上の死者を出しているとして問題視されています。
また、高血圧は心筋梗塞や不整脈、脳梗塞、脳卒中など、さまざまな病気のリスクを高めます。寒い家は、病気になりやすい家でもあるのです。
最近では、断熱性と健康の関係について研究が進んでおり、断熱性の高い家に住む人は、年間を通して血圧が安定していることが明らかになっています。

起床時※の血圧の季節差
(室温安定群と不安定群別)
出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)」
断熱リフォームをすることで、病気のリスクを小さくでき、快適で健康に過ごせるようになります。
冬の結露を解消
冬、暖房をつけている時期につきものの結露。
結露は、暖かい空気が、窓から伝わる冷気によって冷やされ、空気中の水蒸気が水滴になることで起こる現象で、窓の周りにカビが生えたりする原因になります。
断熱リフォームで外の冷気が伝わりにくくなれば、結露が起こることもありません。
建物の劣化を防ぐ
室内の暖かい空気は、壁や天井、床のすき間から少しずつ構造部の中に流れ出ていきます。
そこに、外壁側から冷たい空気が入り込むと、窓のように結露が発生(壁体内結露)。木造住宅では柱や土台が腐る原因になりますし、カビが生えれば室内の空気環境を悪化させる原因になる恐れも。
気密シートを施工し、気密性を高めることで、熱の動きをシャットアウトしつつ湿気の侵入を防ぐすることで、壁の中の結露を解消し、建物が劣化する原因をなくします。
断熱リフォームの方法・費用・工期
ひとくちに断熱リフォームといっても、部位や施工法は多種多様。かかる費用や工期も大きく異なります。
床に断熱材を施工
床下から断熱材を施工する工法と、床を一度剥がして断熱材を充填する工法の2通りあります。ボード状の断熱材を使うことが多いですが、床下から施工する場合は吹き付けタイプもしばしば使われます。
壁に断熱材を施工
壁を剥がして、柱の間に断熱材を施工するか、外壁の上にボード状の断熱材を施工することで壁の断熱性をアップさせます。
天井に断熱材を施工
屋根裏に上がって、天井裏にグラスウールなど繊維系の断熱材をすき間なく敷き込んだり、セルロースファイバーなどを吹き込む(ブローイング工法)ことで断熱します。
窓を高性能なものに交換
窓は最も熱の出入りが大きい部分。ガラスをペアガラスに変えたり、サッシそのものを高性能なものに交換して断熱性を高めます。
既存のサッシをそのままに、内窓(インナーサッシ)を取り付けるのも良いでしょう。ガラスやサッシを交換するよりも安価で、工期も短くて済みます。
どの部位、工法でも、断熱材(特にグラスウールなどの繊維系断熱材)は、すき間なく施工し、湿気が躯体内に侵入しないよう、防湿シートを施工するなどの注意が必要です。
内断熱と外断熱
断熱工法には、内断熱と外断熱の2つの工法があります。
内断熱は、壁の中、柱の間に断熱材を施工する工法。充填断熱とも言います。

充填断熱
出典:硝子繊維協会「断熱工法の種類」
外壁を剥がして外から施工するか、あるいは壁を解体して室内側から施工します。リビングだけ、など、部分的な断熱リフォームが可能ですが、工事は大掛かりに。耐震改修など、大規模なリフォームと合わせて検討するのがいいでしょう。
外断熱(外張り断熱)は、既存の外壁の上に断熱材を施工し、その上に新たに外壁を張ります。

外張り断熱
出典:硝子繊維協会「断熱工法の種類」
家全体を断熱材で包んでしまうので、気密性が高く、断熱性も高めやすい工法です。
既存の外壁に、断熱材の重さを支えるだけの強度がなくてはいけませんが、解体工事はほぼ不要。室内に手を加えなくても工事ができるので、住みながらのリフォームも可能です。
内断熱とした壁の上に、さらに外張りの断熱材を施工する工法も。これをダブル断熱や付加断熱工法と呼びます。
断熱リフォームで使える補助金制度
断熱リフォームは、さまざまな補助金や優遇制度の対象になっています。賢く使って、お得にリフォームをしましょう。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
既存住宅の長寿命化・性能向上リフォームを対象にした補助金制度。
劣化対策、耐震性、省エネ性(断熱性)の基準を満たすリフォーム工事に対し、100万円~300万円を交付します。リフォーム後の性能が高いほど、補助額も多くなります。
申請は、工事を行う工務店やリフォーム会社が行いますが、事前に事業者登録をしていることが条件になります。2020年度の申請期間(申請書の提出期限)は来年1月29日まで(郵送必着、前倒しの可能性あり)。
高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業(断熱リノベ)
断熱材やペアガラス・高断熱サッシなどを使い、「15%以上の省エネ効果が見込める」断熱リフォームの補助金です。
補助率は、対象経費(建材の購入費用と工事費の合計)の1/3で、戸建は120万円(窓のみの改修は40万円)、マンション(戸別)は15万円が上限となります。
使用する建材は、事前に登録された製品を使うことが条件。申請は住宅の所有者が行いますが、見積書や平面図、改修前の写真、エネルギー計算書などを用意する必要があります。また、期日までに工事を完了させ、実績報告も必要です。
※2020年度の公募は終了しています。
次世代省エネ建材支援事業(次世代建材)
断熱材一体型のパネルや、潜熱蓄熱建材を使うリフォームが対象。断熱材や高性能窓・玄関ドア、調湿建材も、同時に施工すれば補助対象になります。
こちらも、登録済の製品を使わらなければ補助金はもらえないので注意。
補助対象経費が合計40万円以上の工事に対し、補助対象経費の1/2を補助します。上限額は戸建200万円、集合住宅125万円。下限は20万円です。
断熱リノベと同様、見積書や図面、断熱性能の証明書などを揃え、住宅の所有者が郵送で申請しなくてはなりません。
※2020年度の公募は終了しています。
リフォーム減税
省エネリフォームをした住宅は、所得税の控除と固定資産税の減額措置を受けることができます。所得税減税(投資型)で対象になる工事は次の4パターン。
- 全ての居室の全ての窓の断熱改修
- 床、天井、壁の断熱改修
- 太陽光発電設備の設置
- 高効率空調機、高効率給湯器、太陽熱利用システムの設置
所得税の控除額は、投資型減税で最大25万円(太陽光発電を同時に設置すると35万円)、ローン型減税は最大62.5万円(12.5万円× 5年間)。適用期限は2021年3月31日まで。
固定資産税の軽減率は1/3。適用期限は2022年3月31日までとなります。
所得税の控除を受ける場合は、工事が終わった翌年、増改築等工事証明書を添えて確定申告を行ってください。固定資産税の減額措置は、工事完了から3カ月以内に、市区町村へ要件を満たすリフォームを行ったことを申告する必要があります。
まずは断熱診断を!
断熱リフォームをするには、まず現在の断熱性能がどれくらいなのかを判断することが大切です。断熱以外のリフォームもそうですが、現況がわかってこそ適切なプランが立てられるのです。
ひかリノベでは、赤外線サーモカメラなど専門的な機器を使い、住まいの断熱性能をデータ化する「断熱診断」を行っています。
- 断熱材の欠損
- 壁や床・天井の隙間(気密性)
- 壁や窓の外気の影響の受けやすさ(熱貫流率)
- 省エネ法における現在の断熱性能のレベル
- 断熱リフォーム前後の光熱費のシミュレーション
の5つの指標から、今の断熱性能を見える化し、必要なリフォーム工事を診断します。
自宅の寒さや暑さがきつい、カビや結露に悩んでいる、光熱費が高い、など、住まいの断熱性でお悩みの方は、ぜひひかリノベまでご相談ください。
【記事監修】大宮 良明(一級建築士、既存住宅状況調査技術者)
一級建築士、既存住宅状況調査技術者の有資格者。木造建築の構造計算をはじめ、安全性に配慮した設計を得意としている。「住まいのデザインは見た目のカッコよさはもちろんですが、それ以上に暮らしやすさや安全性が大切だと考えています。長い目で見て『こうして良かった』と思える家を、いっしょにつくっていきましょう」
ご自宅のリフォームをご検討の方へ
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