マンションはそれぞれの世帯を壁一枚で区切っていますから、どうしても生活音が隣戸に伝わりやすいもの。足音や話し声にも気を遣いますね。
マンションで楽器やスピーカーなど大きな音が鳴る物を使用する場合は、戸建て以上に防音をしっかりとする必要があります。
こちらの記事では「マンションに防音室は作れる?」をテーマに、目的別の防音室の性能比較や、防音室リフォームの工事費用の目安、実際の防音室リフォームの事例を詳しく紹介します。「マンションの一室に防音室を作りたい」と検討中の方は、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
目的によって異なる「防音室に必要な性能」
防音室に必要な性能は、室内でどのような音を出すかによって変わってきます。
たとえばピアノやドラムといった楽器の演奏と、ホームシアターに適した防音性能は異なります。
防音室の性能を語るうえで、前提知識として知っておきたいのが「遮音等級」です。
遮音等級とは建物内の遮音性能を表す指数のことで、壁や窓についての遮音性能と、床の遮音性能の2種類があります。
ここでは壁やサッシ窓の遮音性能を示す「D(Dr)値」を主に見ていきます。
下表はピアノなどで90デシベル程度の音を出した時の遮音等級と聞こえ方の一覧です。基本的に遮音等級の値が大きければ大きいほど、遮音性能が高くなります。
遮音等級 | 聞こえ方 |
D-15 | 大変うるさい |
D-20 | かなりうるさい |
D-25 | うるさい |
D-30 | 大変よく聞こえる |
D-35 | 良く聞こえる |
D-40 | 曲がはっきり分かる |
D-45 | かなり聞こえる |
D-50 | 小さく聞こえる |
D-55 | かすかに聞こえる |
D-60 | ほとんど聞こえない |
D-65 | 通常では聞こえない |
ピアノ演奏におすすめな防音室の性能
ピアノなどの楽器を室内で演奏する場合に必要な遮音性能はD-55以上と言われています。
前述の表でいうと、D-55とは90デシベルのピアノの音が「かすかに聞こえる」程度です。
具体的なリフォーム方法は、既存壁の内側に新たに固定式の遮音壁を設けます。
窓には防音サッシを使用し、床は二重の浮き構造にすることで建物の躯体に音が伝わらないようにする場合もあります。
壁や床、天井に厚みを持たせることで、ピアノ本来の響きや鳴りを調整します。
もう一つの方法は、ユニットタイプの防音室を設置する方法。
自由設計で防音室を設計施工する場合に比べ簡単にできますが、デザインの選択肢はあまりありません。
大きさ(サイズ)は選べますが、グランドピアノを置く場合は最低でも3畳以上が必要です。
ピアノ防音室については特集記事がありますので、より詳しく知りたい方はぜひ下記も併せてご覧ください。
ドラム演奏におすすめな防音室の性能
ドラムなどの大きな音や振動が出る打楽器の場合、ピアノ以上に高い防音性能が求められます。
具体的には、前述の表でいうとD-65以上の防音等級が必要で、部屋の壁・天井・窓などの材質を全て音が伝わりにくい・防音効果が高い部材に変更しなければなりません。
壁や天井に厚みを持たせた強固な防音室の重量に耐えられるようにするためには、床の工事が必要になることも。
また、外に音漏れしないことだけでなく、室内の音の響きにも配慮したいところ。
ドラムの音をはっきり出すためには、残響時間を短め(デッド)に設定することが重要です。
具体的には、並行した反射面は壁の形状を変形させたり、内装材に吸音効果のあるものを使用するなど。
ドラム防音室についても特集記事があります。より詳しく知りたい方はぜひ下記も併せてご覧ください。
ホームシアターにおすすめな防音室の性能
音楽や映画を大音量で鑑賞できるホームシアターにも、防音室リフォームがおすすめです。
ホームシアターとする部屋の間取りや隣室の使用目的などによっても必要な遮音性能は変わってきますが、一般的にD-60~70前後の遮音性能が必要とされています。
具体的な工事内容は、ドアやサッシを二重にしたり、それぞれの建具の間に空気層を設けることで、開口部の防音性能を高める工事を実施します。
また音楽や映画を楽しむために、室内の調音設計にもこだわりたいですね。
天井面に吸音性の高い内装材を使用するなど、天井・床・壁の仕上げ部材やドアに吸音性能・遮音性能に優れた音響専用のものを採用することで、没入感を高められます。
防音室リフォームの工事費用の目安
こちらはRCマンションに防音室を設置した時の費用の目安です。開口部を除いた複合遮音性能はD-65~70となっています。
既存面積が大きければ大きいほど工事費用も上がります。
既存面積(畳) | 既存面積(㎡) | 価格(円) |
3 | 5.0 | 280万 |
4 | 6.6 | 330万 |
5 | 8.3 | 360万 |
6 | 9.9 | 390万 |
7 | 11.6 | 420万 |
8 | 13.2 | 440万 |
※部屋の形状、建具・サッシのサイズや仕様などにより金額は変動します。実際の工事にかかる費用は個別に見積もりが必要です。
マンション管理規約に注意
マンションの一室を防音室にリフォームする場合は、マンションの管理規約に注意が必要です。
マンションには管理規約で定めた生活のルールがあり、その規定によりリフォームができない場合や、工事内容に制約が生じる場合があるためです。
賃貸物件はもちろん勝手に工事するのはNGですが、分譲マンションであっても、リフォーム前に必ず管理規約を確認しましょう。
マンションには持ち主が自由に手を加えられる「専有部分」と、勝手に手を加えられない「共有部分」があります。
窓や配管、躯体のコンクリートは共有部分に当たるため、勝手にリフォームできません。
また専有部分で完結する工事であっても、躯体に影響が出る可能性があるなら事前に管理組合と相談が必要です。
たとえばドラム対応の防音室では防音室の部材として非常に重い建材を使用するため、マンション床の耐荷重では対応できない可能性があります。
「一階の部屋には施工できるが、二階以上は認められない」という場合もあります。
工事の内容によっては、「禁止ではないが、管理組合へ事前の届出や申請が必要」という場合も。
いずれにせよ防音室リフォームの工事は、管理組合に一切の確認・許諾・届出等せずに施工可能というケースは稀です。
防音室リフォームの施工事例
ここでは実際の防音室リフォームの施工例をご紹介します。
置き型の既成防音室ではなく、いずれも自由設計の防音室です。
グランドピアノの演奏室
マンションの一室を、グランドピアノの演奏を想定した防音室にリフォームした事例です。
将来的なピアノ教室の運営に向けて、もともとは和室だった空間全体に防音施工を行いました。
床や天井・壁は遮音壁とし、さらに二重の浮遮音構造で躯体に振動が伝わらない仕様に。
サッシは防音サッシに変更。廊下側とリビング側の二か所から出入りできるよう木製の防音ドアを設置しました。
上下左右階に住んでいる方からも「全く音が気にならない」と好評です。
ピアノ室として使用しない時はオーディオルームとして使用できるよう、配線用の配管を壁と天井の両方に埋め込みました。
電子ドラムと電子ピアノの演奏室
マンションの一室を、電子ドラムと電子ピアノの演奏を想定した防音室としました。
マンションでは人が歩く足音も騒音トラブルになりかねません。振動による固体伝播音が発生する打楽器の演奏は、管楽器や弦楽器よりもさらに防音には工夫が必要です。浮遮音構造で、床や壁の振動を外に漏らさない設計としました。
防音ドアは鋼製。一枚扉でも充分な防音性を備えたものを採用しました。従来は大きな音の出る楽器の演奏室の場合二重扉にするのが一般的でしたが、二重扉は部屋が狭くなる・開け閉めが面倒というデメリットが。遮音性能の高い一枚扉が登場したことで、利便性と防音性能を両立できるように。
この防音ドアにはFIX窓を設け、居室空間との繋がりを残しています。防音室は中で危険があった場合に声を上げても外に聞こえづらいため、安全性の観点から、どこかに窓を設けることをおすすめしています。
こちらの自由設計防音室について詳しく知りたい方は、下記の事例紹介ページをご覧ください。
おわりに
防音室リフォームでは、使用する目的によって適した防音性能が異なってきます。また防音室の広さに応じてリフォーム工事の相場金額が変動します。
マンションで防音室工事をする場合、管理規約を事前に確認することを忘れずに。防音室リフォームの工事内容は、管理組合との折衝が必要な場合がほとんどです。
そのため「マンションの防音工事の実績が豊富な業者に依頼する」ことが大切です。
ひかリノベではマンションのスケルトンリノベーションをはじめとして、お客様の要望に応じた様々なリノベーションを行っております。マンションの防音室リフォームも実績と経験があり、防音工事のスペシャリストである昭和音響さんと提携して目的や条件に応じた防音工事に対応しています。
マンションの防音工事を行うには、内部の壁や床、天井を解体するスケルトンリノベーションのタイミングが最も適しています。防音室リフォームはぜひひかリノベにお任せください!
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