多くの人がひとつの建物で暮らすマンションでは、共用部の清掃や設備の点検、維持管理が生活の快適さを左右します。
こうした業務を担うのが「管理会社」。大部分のマンションには管理会社が入っており、もはや管理会社なくしてマンションライフなし――年々そんな状況になっています。
一方、「管理組合」という組織もマンションごとに存在しています。どちらも管理という言葉が含まれていますが、両者がどのような関係なのか、どんなことをするのか、詳しくご存知の方は意外と少ないのではないではないでしょうか?
この記事では、安全で快適なマンションを運営していくためには不可欠な管理会社について解説します。分譲マンションを購入する際の検討材料として、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
管理組合と管理会社
マンション管理会社は、一言でいうと「マンションの管理業務を専門とする会社」です。
ひとくちに管理業務と言われてもわからない……そんな声が聞こえてきそうですが、まずは管理会社とマンションがどんな関係なのかを知っておきましょう。
ほとんどのマンションには、管理組合があります。管理組合とは、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づいて、マンションの区分所有者全員によって構成される組織です。管理組合のあるマンションの一室を購入したら、あなたも管理組合の一員になるのです。
管理組合の役割は、敷地や付属施設を含むマンションの維持管理を行うこと。ただし、管理業務の内容は多岐にわたり、専門的な知識を要求するものも少なくはないので、管理組合だけで管理していくことはとても難しいのです。
ここで登場するのが管理会社です。管理会社は、管理組合から委託を受けて、マンション管理業務のすべて、または一部を組合に代わって実行してくれます。
ただし、一切を外部の管理業者に委託していたとしても、管理の主体はあくまで管理組合にあります。
たとえば、大規模修繕を管理会社に任せたとしても、管理組合は顧客の立場にはなりません。あくまでも管理組合が大規模修繕を代行する、請け負う、という形になるのです。
管理会社への委託方式
管理会社への委託方式には3つの方法があります。
それぞれの違いは、管理組合が管理業務のすべてを管理会社に委託する方法と、一部の業務だけを委託する方法、全てを自分たちで行う方法です。
それぞれの委託方式について紹介します。
全部委託
あらゆる管理業務を一括して管理会社に委託するやり方を「全部委託契約(一括委託管理)」と呼びます。
管理組合は意思決定と管理会社の業務チェックを行えばよく、組合の負担はもっとも小さくなります。
また、管理会社はその道のプロ。あらゆる管理業務をぬかりなく実施してくれるので、安全性や快適性は高いレベルを維持しやす点もメリットです。
一部委託
設備の維持管理や、清掃だけを専門業者に委託する方法もあります。これは「一部委託管理」という方法になります。
管理会社であっても、専門性に応じて外部の業者を使うことは珍しくありません。中間にある管理会社ではなく、専門業者と管理組合が直接委託契約を結ぶことで、余計な出費を抑えることができる点がメリットです。
ただし、組合の役員が業者と打ち合わせなどをしなくてはいけなくなるので、役員の負担が大きくなってしまう可能性もあります。
自主管理
外部の業者を一切使わず、管理組合が直接管理人を雇うなどして、自ら管理業務を行う「自主管理」方式もあります。
管理のコストは、外部に委託するよりもはるかに安くて済みますが、マンション管理に長けた人(管理会社に勤めているなど)が住人にでもいない限り、うまく回ることは少ないと言われます。また、お金の管理なども不透明になりがちといった問題もあります。
管理会社の業務内容
管理会社が実際に行う管理業務を具体的に見ていきましょう。
大きく分けると ①事務管理 ②管理員 ③ 清掃 ④建物や設備の維持管理 と4つの業務があります。
事務管理業務
マンションの管理組合は、管理費や修繕積立金を集め、かかる経費を支払ったり、将来に備えて貯めておいたりしますね。
管理会社は、区分所有者から徴収するお金の会計業務を、組合に代わって行います。
また、出納の記録をつける、年間の予算や決算の案を作成する、月次決算報告を作り提出するといった仕事も含まれます。
そのほか、管理費や修繕積立金を支払わない人への督促や、マンション管理組合と理事会の総会のサポート業務を行うこともあります。
管理員業務
管理員、というより管理人といったほうがイメージしやすいかもしれません。
業務の委託を受けたマンションに、管理会社の担当者が常駐し、日常の管理業務を行ってくれます。
具体的には、訪問者の応対や見回り、専門的な点検や工事などで業者が入る場合の立ち合いや管理組合への連絡、共用部分の鍵の管理や貸し出し、駐車場の無断利用などのルール違反の巡回取り締まりなどを行います。
清掃業務
読んで字のごとく、マンションの共用部を清掃することです。
廊下やフロアの清掃、ごみの回収など日常清掃もあれば、外壁や窓ガラスなど定期的に、大掛かりな清掃作業を必要とする部分もあります。
建物や設備の維持管理
建物は当然ですが、エレベーターや火災報知器・スプリンクラー、電機関連などの設備管理業務も、安全かつ快適な生活のためには欠かせません。
マンションの建物、設備は、建築基準法や消防法で何年に一度は点検しなくてはいけない、と定められています(法定点検)。
突発的にトラブルが起きた場合も、管理会社が対応してくれます。
法定点検の名称 | 周期 | 内容 |
特殊建築物等定期調査 | 6ヶ月~3年 | 行政庁が指定(例:階数5階以上、延べ面積1,000㎡以上)する建築物の敷地、構造及び建築設備の調査 |
建築設備定期検査 | 6ヶ月~1年 | 換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備、排水設備の検査 |
昇降機定期検査 | 6ヶ月~1年 | エレベーターの検査 |
消防用設備等点検 | 6ヶ月に1回、 総合点検は1年 |
消火器具、消防機関へ通報する火災報知設備など消防用設備の点検 |
専用水道定期水質検査 | 水質検査は1か月、 消毒効果の検査は毎日 |
給水用水槽(大型)の水質検査・消毒効果の検査 |
簡易専用水道管理状況検査 | 1年 | 給水用水槽(小型)の水質検査・水槽の掃除 |
浄化槽の保守点検、清掃、定期検査 | 保守点検は1週間~6ヶ月、 清掃は6ヶ月~1年に1回、 水質検査は1年に1回 |
排水を処理する浄化槽の保守点検・清掃 |
自家用電気工作物定期点検 | 月次点検は1ヶ月、 年次点検に1年 |
高圧受電設備の月次点検・年次点検 |
出典:(公財)マンション管理センター「マンションの法定点検 」(https://www.mankan.or.jp/12_member/tenken/2.pdf)
上記4つの業務以外にも、毎月の理事会に参加してコンサルタントのようにアドバイスをしてもらったり、長期修繕計画や大規模修繕の計画を立ててもらう場合もあります。業務範囲は契約内容によります。
管理費・修繕積立金は何のため?
マンションを購入すると、管理組合に毎月管理費・修繕積立金を支払うことになりますが、これらは一体なんのために支払うものなのでしょうか。
管理費は、事務管理や清掃、管理員の人件費といった「日々の生活を快適に保つ」ための費用になります。
修繕積立金は、外壁塗り替えや防水処理といった「建物や設備の維持管理」のための修繕費用として充てられます。
毎月支払うものなので、ランニングコストは少ない方が嬉しいものではありますが、安すぎると暮らしの安心安全を損なう可能性があります。必要十分な金額の相場を把握しておくことが大切です。
管理費・修繕積立金の金額の相場は?
月々の管理費・修繕積立金の相場は、合計2~3万円程度が目安になります。
修繕積立金については、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」に目安が記載されています。
これによると、たとえば10階建/延床面積8000㎡のマンションで、専有面積が80㎡である場合、11,200円~21,200円が相場になります。
管理費は、国交省「マンション総合調査(平成30年度版)」によると、戸数や階建によるものの、概ね10,000円~15,000円前後が相場となります。
(ただし、ハイグレードなタワーマンションでは3万円を超えるようなケースもあります)
それぞれの相場金額を合わせると目安は、合計2~3万円となります。
管理費・修繕積立金については下記の特集記事があります。より詳しく知りたい方は、ぜひこちらも併せてご覧ください。
おわりに
中古の分譲マンションを購入する場合は、立地や採光といった条件ももちろん重要ですが、「管理状態がポイント」とはよく言われることです。
管理がしっかりしていて、管理会社との関係が良好なマンションは、今後も資産価値が下がりにくいので、もし売却することになっても売却損が出にくいもの。反対に管理がおざなりなマンションは、今は安く購入できても、将来的に環境が悪くなることは容易に想像がつきますね。
中古マンションはすでに管理体制ができあがっているため、新築と比べ管理状況や体制を見抜きやすいのがメリットです。内見のときに共用部が汚れたり、散らかったりしていないか、植栽の手入れが行き届いているかを意識して見るだけでも、住民の管理への意識を読み取ることは十分にできます。特にごみ捨て場は要チェック。悪臭がする、未回収のごみが乱雑に積まれているようなマンションは、管理が行き届いていない可能性も高くなります。
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