法律で定められた基準を満たしていなかったり、設計図通りにつくられていない住宅のことを「欠陥住宅」と呼びます。
耐震偽装問題、杭打ちデータ改ざん問題など、社会的な問題に発展したものもありますが、それ以外にも設計や施工の小さなミスが積み重なり、結果として欠陥住宅が生まれてしまうこともあります。
新築マンションは、完成前に売り出されることが多く、欠陥があっても避けることが困難です。その分、中古は購入前の内覧で、建物の状態や管理状況を実際に目で見て確かめることができます。
欠陥マンションは、どこでどう見極めればいいのでしょうか。
2016年2月27日初出→2021年5月10日更新
なくならない欠陥マンション問題
そもそも、欠陥住宅とはどんなものを指すのでしょうか。
一般的には、建築基準法などの法規に違反しており、安全に住むために必要な性能が十分ではない建物(住宅)のことを表します。
欠陥住宅とは、「通常有すべき安全性を欠いた住宅」と定義することができます。 ここにいう「安全性」とは、居住者の生命・身体・健康に対する安全性であり、具体的には、構造上の安全性、耐火・防火上の安全性、健康に対する安全性などがあります。
出典:欠陥住宅ネット「欠陥住宅・欠陥住宅問題とは」(http://www.kekkan.net/kekkan/)
また、法律違反はないが、生活に支障をきたしたり、健康に害を及ぼすような住宅も、欠陥があるとみなされます。シックハウス、雨漏り、結露、防音が不十分、排水不良など、さまざまな事象が欠陥として挙げられますね。
マンションに絞ると、これまで次のような問題が発生しています。テレビのニュースや新聞で大きく取り上げられ社会問題になったり、法律が改正されるきっかけになった“事件”も少なくありません。
住民全員を巻き込むことになったり、裁判に発展するケースもしばしば見られますね。
また、近年は設計や施工の問題だけではなく、部材でもデータの偽装などが発覚した事例も。
年度 | 事件 | 内容 |
2015 | 杭打ちデータ偽装事件(旭化成建材) | 横浜のマンションで不具合が発生し、デベロッパーが調査すると杭が地盤に到達していないことが分かった。この工事を請け負った旭化成建材に工事のデータ提出を求めると、現場管理者が虚偽のデータを使用したことが発覚。旭化成建材が過去10年の実績を調査すると、データが偽装された杭は合計70本に及ぶことが判明した。 |
2014 | パークシティlala横浜 | 横浜のマンションで窓枠のゆがみや壁のヒビが見られたため、管理組合が施工記録の提出を求めたが拒否された。やっと提出された施工データは改ざんされたもので、杭が支持層に到達していない等の施工ミスが分かった。これは複雑な下請けの多重構造が原因と見られる。メディアによって明るみになったことで、建て替えや引っ越し費用・慰謝料の支払いに応じた。 |
2014 | 三菱地所レジデンス南青山問題 | 三菱地所レジデンスが手掛けた高級マンションで配管を通すためのスリーブが設計図面通りに入っていない不具合が見つかる。契約を解除するとともに建物は解体された。 |
2009 | 大津市欠陥マンション問題 | 新築で入居間もなく最上階での雨漏りなど計850カ所の不備が発生。耐震構造に重大な欠陥があることが分かり、住民側はマンションの建て替えを求めるが、施工業者の誠意ある対応は見られず賠償金支払の判決が下る。 |
1997 | ベルヴィ香椎六番館 | 新築入居後2年で壁のひび割れが発生。調査によると建物の傾きは建築時からで、あるはずの構造スリットが施工されていなかったり杭が支持層に到達していないことが発覚。いまだ解決には至っていない。 |
ここで取り上げた偽装や改ざんのように、悪質なものではなくても、不動産会社やデベロッパー、元請の建設会社、下請のサブコン、さらにその下で働く職人と、企画・設計から施工に至るまでたくさんの人が関わるマンションでは、ミスやトラブルが起こりやすく、結果として欠陥マンションが生まれる可能性もあります。
少子高齢化、オリンピック直前の建設ラッシュによって人手不足も深刻化しているので、人為的なミスのリスクはますます高まっていくのかもしれません。
マンションの欠陥はここで見抜く
欠陥は、新築マンションだけの問題ではありません。時間の経過によって発覚する問題もありますし、経年劣化によって性能が低下することもあります。
中古マンション、あるいは新築でも完成済みのマンションなら、いくつかポイントを抑えて内見に挑めば、専門家でなくとも、欠陥の有無を見抜くことはさほど難しいことではありません。
建物全体・共用部分
まずチェックしたいのは、建物や共用部。次のようなポイントに注意してみましょう。
建物全体・共用部分のチェックポイント
- コンクリートのひび割れはないか
- 塗装にひびや剥がれがないか
- 鉄部(手すりなど)のサビがないか
- 雨漏りの痕跡はないか
- 屋上の防水にふくらみなどはないか
- 外壁のタイル等の剥がれがないか
コンクリートのひびは、深いと建物の強度に直接影響する部分。ひびから水が入ると、中の鉄筋がさびて膨張し、コンクリートが割れて(爆裂)しまうことも。こうなると、割れたコンクリートの破片が落下する可能性もあり、大変危険です。
コンクリートや塗装のひびから、サビ汁が流れ出ているような場合は要注意です。
また、雨漏りや防水も、建物の耐久性に直結する要素です。雨漏りの痕跡や、劣化の度合いをしっかり見ておきましょう。
劣化しても、適切に修繕されていれば問題はありませんが、長期間そのまま放置されていると、そこから水が浸入して劣化が進む原因になります。
住戸内・専有部分
住戸内や専有部では、次のような点に気を付けてください。
住戸内・専有部のチェックポイント
- 床や柱が傾いていないか
- 窓やドア、戸の建て付けは良いか
- 床の浮き沈みや軋みはないか
- 振動はないか
- 内装のクロスなどにしわや亀裂がないか
- 天井、壁に雨漏りの跡がないか
- 水まわりの配管から臭いがしないか、水の流れはスムーズか
傾きは、ピンポン玉やゴルフボールなどを床に置いてみるとよくわかります。
窓やドアがスムーズに開閉できない、歩くと床の浮き沈みを感じる、軋みがひどい、といった点も、床の傾きを判断する材料になるので、実際に窓やドアを開けてみたり、室内を歩き回って確認しましょう。
近くに通行量の多い幹線道路や、鉄道の線路が通っていると、振動が気になることがありますが、マンション内の設備の振動が伝わってくることもあります。
中身の入ったペットボトルなどを使うと、揺れの具合が簡単にわかりますよ。
躯体や下地に歪みがあると、クロスや床のフローリングにも歪みが出やすくなります。
内装の仕上げをチェックするときは、共用部と同じく、雨漏りの跡も同時にチェックしましょう。天井や壁だけはもちろん、収納の中など、目につきにくいところも忘れずに。
雨漏りのチェックには、カメラを使うのもおすすめです。フラッシュを使って撮影すると、人間の目では見えにくい雨漏りの跡が写ることがあります。
配管は、中古物件では特に気を付けたい部分です。できれば実際に水を流して、臭いや流れ方をチェックしましょう。
中古特有の問題「経年劣化」~管理状態をチェックする
新築にはない中古物件特有の問題に「経年劣化」があります。
新築時、どんなにしっかりつくられていても、時間が経てば、多かれ少なかれどこかが傷んだり、不具合が出てきてしまいます。
放っておくと、取り返しがつかない事態になってしまう恐れもあるので、必要に応じてメンテナンスや修繕を実施しなくてはいけません。
管理状況は、マンションによって差があり、必ずしも管理が十分に行き届いているマンションばかりではありません。
管理が不十分なマンションは、今は良くても、将来大きな問題を引き起こすかもしれませんし、普段の生活にも支障をきたすことも考えられます。
管理状況の良し悪しは、以下のようなポイントで判断しましょう。
管理状況のチェックポイント
- 共用部分にゴミが落ちていたり、ものが散らかっていたりしないか
- 長期修繕計画がきちんと立てられているか
- 計画通りに大規模修繕が実施されているか
- 修繕積立金は十分な額が積み立てられているか
日常的な管理の質は、共用部の状況からある程度判断することができます。駐輪場やゴミ捨て場の利用マナーが守られているかも、ちゃんと確認しておきましょう。
大規模修繕(外壁の塗装や防水処理など)は、10年から12年周期で実施するのが一般的。できれば、今後20年、つまり次々回までの計画が立てられているのがベターです。
計画通りに修繕が行われているかも忘れずに確認しましょう。
1回の大規模修繕には、1戸当たり100万円が必要ともいわれます。
ですから、積立金の口座に、それ以上の残高があることが望ましいですね。前回の大規模修繕からそれほど時間が経っていないの場合は、どうしても残高が少なくなっていますから、修繕前の残高を確認したり、延滞者の有無や数を確かめてみるのもいいでしょう。
おわりに
高額な対価を、長いと35年ローンを組んで手に入れ、長期に渡る生活の場となるマイホームですから、あなたやご家族の安全を脅かすような物件は避けたいもの。
とはいえ、時間にも限りはありますし、「自分で問題が見抜けるか不安…」という方もいるでしょう。
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