注文住宅よりもお手頃な価格で一戸建てを手に入れられるのが、建売住宅の大きな魅力です。
しかし、間取りや仕様があらかじめ決まっていて変更できなかったり、使われている建材や設備のグレードが低いことも多く、いざ住んでみるとどうも満足できない、というケースも少なくありません。
建売住宅で後悔しないためには、何に気を付ければいいのでしょうか?今回は、建売住宅選びの際に注目したいポイントをご説明しましょう。
目次
建売購入でありがちな失敗とは?
建売住宅には、価格の安さはもちろん、打ち合わせの手間や時間が少なくて済む、実物を見て購入できる、購入後すぐに入居できるなど、いろいろなメリットがあります。
土地と建物がセットになっているので、一括でローンを組めるのも大きな利点ですね。
一方、間取りや仕様が既に決まっているので、注文住宅のように要望を反映させることはできません。いざ住んでみると、家のつくりが自分たちのライフスタイルに合わず、生活しづらく不満がたまる、なんてケースも。
コストを抑えるため、建物性能を低くしていることもあるので、寒さや暑さが気になったり、結露に悩まされることも少なくないようです。
また、施工のプロセスを見ることができない点にも要注意。見えない部分に不具合があっても、それを見付けられる機会がなく、トラブルのリスクが多少大きくなるかもしれません。
適正価格って?物件の価格は何で決まる?
建売住宅が注文住宅に比べて安価なのには、いくつか理由があります。
まず、土地や建物も規模が小さめで、土地代や建築費が安く済むのがひとつめの理由。さらに、建売住宅は同じ設計・仕様でたくさんの棟数を建てるので、一棟ずつデザインする注文住宅より、設計にかかる手間やコストを圧倒的に削減できるのです。
建材や設備機器も、同じものを大量に発注することで、仕入れ価格も抑えられます。使用する部材のグレードもそれほど高くないうえ、断熱性や耐震性も、必要最低限のレベルにとどめていることが多いようです。
建物のバリエーションが少ないので、土地代が価格に占めるウェイトが多くなると言えるでしょう。
都市部など、立地が良くて地価の高いエリアでは、当然価格も高くなります。
一方で、高価すぎると注文住宅やマンションと差がなくなってしまいますので、ターゲット層の年収なども価格設定に反映されます。
東京カンテイの調査によると、2020年10月度の新築一戸建て平均価格は首都圏で3757万円。東京都内に限ると4445万円でした。
この1年ほど、首都圏では3600万円から3700万円前後で推移しています。
なお、土地は消費税が非課税ですが、建物は課税対象となります。
通常、土地の代金と建物の価格は分けて売買契約書に記載するので、建物にかかる消費税は売買契約書で確認できます。
住宅の性能をチェック
安全性や快適性に関わる断熱性や耐震性も、できれば高い住宅を選びたいですよね。しかし、建売住宅はコストダウンのため、性能が低い物件も少なくはないのが現状です。
住宅性能表示制度に基づく性能評価書を取得し、等級が表示されていれば、性能を知る有力な手がかりになります。
耐震性(耐震等級)と断熱性(断熱等性能等級)は必ずチェックしたいところです。それぞれの等級が、どれくらいのレベルを表すのかを知っておくと参考になるはず。
耐震等級 | 等級1 | 建築基準法で定める耐震性 |
等級2 | 建築基準法の1.25倍の耐震性 | |
等級3 | 建築基準法の1.5倍の耐震性 | |
断熱等性能等級 | 等級1 | 昭和55年省エネ基準未満 |
等級2 | 昭和55年省エネ基準相当 | |
等級3 | 平成4年省エネ基準相当 | |
等級4 | 平成28年省エネ基準相当 |
また、不動産会社やビルダーによっては、長期優良住宅の認定を取得している物件もあります。
耐震性や断熱性(省エネ性)に加え、バリアフリー性、耐久性やメンテナンス性など、長く住み続けるために必要な性能の基準を設け、基準を満たした住宅を認定する制度です。
性能表示制度に当てはめると、耐震性は等級2、断熱性能は等級4が長期優良住宅の基準となります。
認定を取得した住宅は、住宅ローン控除の控除限度額が拡充されるなど、税制上の優遇措置を受けられるのもメリットです。
ただし、長期優良住宅の基準だけを利用し、実際は認定を取得していない住宅もありますので、事前にちゃんと認定を取得しているかを確かめておきましょう。
周辺環境も性能のひとつと考えよう
建売住宅(分譲住宅)は、建物と土地がセットで販売されるので、周辺の環境も選ぶことができません。
ですから、建売住宅選びの第一歩は周辺環境を知ることだと言ってもいいでしょう。特に、以下の3点は、今後の暮らしに大きく関わるので、入念にチェックしましょう。
- 立地:公共交通機関の状況や最寄り駅までの時間、主要な道路の混雑の度合いなど
- 生活の利便性:スーパーやコンビニ、病院、学校、公園の有無や距離
- 環境の良さ:自然の多さ、治安の良さ、騒音など
100%希望に沿った物件を見つけるのはかなり困難です。物件選びの際は、何を重視するのか、譲れないのは何か、ご自身で優先順位をはっきりさせておきましょう。
内覧のポイント
家族構成やライフスタイルにマッチしない住宅を購入してしまうと、後々住みづらさを感じてしまうことにもなりかねません。事前に内覧ができる、建売ならではのメリットを生かし、あなたにピッタリな住まいを見つけてください。
実際の生活をイメージすることが大事
間取りにしても、実際の生活を想像しながら選ぶことが大事です。家族の暮らしだけではなく、知人が訪ねてきたとき、ご両親が泊まりに来たとき――さまざまな日常のシーン、あるいは子どもが生まれる、両親と同居する、子どもが独立して夫婦2人になる、など、ライフステージによる暮らしや家族構成の変化の可能性を想定して、その間取りで対応できるかを考えてみてください。
同じ4LDKでも、部屋の配置が同じとは限りません。家事動線、日当たりや通風も大きく変わります。ご自身のライフスタイルを考慮しながら、実際に家の中を歩いてみて、照明を消したり、窓を開けてみたりしながら確かめるのがベストです。
加えて、収納の多さや、キッチンカウンターの高さ、コンセントの位置・数など、細部にも注意を払いましょう。
収納は多すぎても持てあましてしまいますし、キッチンのカウンターは高すぎても低すぎても使いにくいもの。これも、ご自身の暮らしに当てはめながら確認してください。
品質や性能に関わる部分としては、外壁や窓を見てみましょう。新築なのに、外壁にひびが入っていたりすれば、雨漏り等のリスクがあります。また、窓がアルミサッシにシングルガラスの物件は、断熱性が低く、結露が起こるかもしれません。
新築でもインスペクションは有効
工事の様子を見られない建売住宅は、施工の品質が気になる方もいらっしゃるかもしれません。
工事は下請けの業者任せで、現場監理が不十分な会社も、なくはないのが現状です。もし施工ミスでもあれば、雨漏りなどの不具合が起こるかもしれませんし、耐震性や断熱性が低下するリスクもあります。
不安な方は、契約前にインスペクション(住宅診断)を行うのも良いでしょう。
インスペクションというと、中古住宅を購入する前に行うものと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、新築でも建売や分譲マンションの品質を確認する手段としては、とても有効です。
不動産会社の選び方
建売住宅も販売する会社には、不動産会社、デベロッパー、パワービルダー(ローコストの建売住宅を大量に供給している建築会社)など種類がありますが、どこから買うにしても、業者の質が重要です。
必ず確かめたいのが、アフターサービスや保証の有無・内容です。
住み始めてから不具合が発覚することもあるかもしれません。加えて、住まいはとても長い時間使うものですから、いずれは点検やリフォームが必要になります。
引き渡し後に不具合やトラブルが見つかったとき、販売、施工した業者がきちんと対応してくれるのか、アフターサービスの内容は事前に調べておきましょう。引き渡し後、いつまで対応してくれるのか、どの程度まで対応するのか。対応の窓口はどこかなども知っておくと、ベターですね。
あらゆる新築住宅には、住宅瑕疵担保履行法で10年間の瑕疵担保責任が義務付けられていますが、加えて、独自の保証制度を設けている不動産会社も見受けられます。
瑕疵担保責任では対象外の設備機器などの不具合をカバーしてくれるものもあるので、担当者に有無や内容を聞いてみましょう。
無償で保証を付けていることもあれば、別途保証料がかかる場合もあります
引き渡しの際には、図面などと一緒にアフターサービスや保証に関する書類を受け取り、保管しておくことも忘れずに。
資金計画の考え方
どんな住宅を購入するとしても、住宅ローンを組んで、長期間返済を続けていくわけですから、資金計画が大事なのは変わりません。
かつては「年収の5倍」が借入額の目安だとも言われていましたが、最近では超低金利の影響もあり、年収の6~7倍の額を借り入れている人も増えています。
金融機関は住宅ローンの借り入れに際し、年収や年齢、勤続年数、個人信用情報などを調べて、融資するかを決め、返済負担率(年間返済額が年収に占める割合)から、利息を含めた借入可能額を判断します。
主要な都市銀行やフラット35では、返済負担率の上限を35%(年収400万円未満は30%)としています。
頭金や諸費用は現金で用意
住宅購入時には、買主が売主に対し、頭金や手付金を支払うことがあります。
最近では、頭金なしのフルローンを組む人も増えていますが、建売住宅ではキャンセル防止のため、一定の頭金(100万円以上)の支払いを求めることが多いようです。
また、売買契約の締結や、ローンの借入といった手続きには、登記費用や手数料などの諸費用が必要になります。頭金や手付金と合わせて、お金を用意しておく必要があります。
(手付金については、融資実行時に手付金分を上乗せすることで通帳に戻ってきます)
建売住宅を購入する際にかかる諸費用としては、次のようなものが挙げられます。
建売住宅の諸費用
- 仲介手数料(売主から直接購入する場合は不要)
- 印紙税(売買契約書や住宅ローン契約書に貼る印紙代)
- 登録免許税(建物の所有権保存登記や土地の所有権移転登記、抵当権設定登記に課される税金)
- 登記手続き料金(司法書士への報酬)
- 住宅ローン事務手数料
- 住宅ローン保証料
- 団体信用生命保険の保険料(住宅ローン借入時に加入が義務付けられている場合が多い)
- 火災保険、地震保険の保険料
諸費用の目安は、物件価格の5%から10%程度と言われています。3000万円の物件なら、150万円から300万円が必要です。
また、購入後は不動産取得税、固定資産税や都市計画税といった税金が発生します。いずれも税額は、固定資産評価額によって算定されます。
リフォームの可能性
リフォームというと、中古物件や、ある程度時間が経ってから行うものとお考えの方も少なくないと思いますが、実は築浅のうちにリフォームした人もかなり多いのです。
リフォーム推進協議会の調査では、築後5年未満にリフォームした履歴のある住宅の割合は50%を超えています。
リフォームの動機を見てみると、築年数が経過した住宅では設備の老朽化が多いのに対し、築10年未満の新しい住宅は、ライフスタイルやライフステージの変化に伴うものが増えています。
しかし、購入直後行うリフォームは、どうしても資金がネックになりがち。リフォームローンを組めば、住宅ローンとの二重ローンになってしまいます。さらにリフォームローンは金利も高く、期間も短いので、返済の負担も大きくなります。
そこでおすすめしたいのが「購入と同時にリフォーム」です。
住宅ローンで、物件の購入費用とリフォーム費用を一括で借り入れれば、返済計画も立てやすく、金利や返済の負担も軽くなります。
注文住宅よりも費用を抑えながら、あなたやご家族のライフスタイルに合った住まいを手に入れることができるのです。
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