日本社会が抱える問題のひとつが、高齢化社会です。65歳以上の人口は3600万人 を超え、総人口の約3割を高齢者が占めるまでになってきました。
暮らしの基盤となる住まいにも、高齢者の住みやすさが求められるようになっています。
これを読んでいる方の中には、第二の人生を送るための住まいをお探しの方もいるかもしれませんね。あるいは「親も歳をとってきたし、そろそろ同居しようかな」と考えている方もいるのではないでしょうか。
そんな方々に考えていただきたいのが、住まいの安全性を高める「バリアフリーリフォーム」です。ご自身、そしてご家族が一生安心して暮らせるよう、早めに備えておきましょう。
今回は、バリアフリーリフォームを検討している方にもわかりやすいよう、費用や工事についてポイントをまとめました。ぜひ、参考にしてみてください!
2019年7月29日初出→2021年9月9日更新
目次
バリアフリーリフォームの必要性
高齢化社会の中で、「バリアフリー」という言葉がたびたび使われるようになりました。住まいづくりにおいてもリフォームによるバリアフリー化や、新築マンションのエレベーターに車椅子が余裕で入れる広さのものを設置する……といった住宅が増えています。
バリアフリーとは、高齢者や障がい者にとっての「物理的な障害を取り除くこと」を指します。駅や公共施設において、車椅子を利用している人のために、エレベーターやスロープを設けたりするのもバリアフリーのひとつです。
住まいに潜む危険
加齢に伴い身体的な能力が衰えていくと、若いころは平気だったことが難しくなったりしますよね。住まいと関連する事柄としては、次のようなことが考えられます。
- ごくわずかな段差でもつまづきやすい
- トイレで立ち上がったりするのが困難
- 急な階段の昇り降りが足腰の負担に
- 入浴するとき、浴槽をまたぐのが大変
- 杖や車椅子が必要になる
もちろん、体の状態は人それぞれ。高齢になっても、上記にあげたことを難なくこなせる方もいるでしょう。
しかし、高齢者は筋力やバランス感覚の衰えによってつまずき・ふらつきが多くなり、結果的に転びやすくなる傾向があります。高齢者の転倒・転落事故は増加傾向にあり、家庭内の転倒事故が原因で亡くなる人も増えています。
下記のデータを参考にしてみても、転倒して大きなけがを負ってしまった結果、その後の介護が必要になってしまったというケースも少なくありません。
そういったことを防ぐために、高齢になっても安全・快適に過ごせるような環境をあらかじめ整えておくことが望ましいでしょう。
安心安全な住まいのポイント
バリアフリーな住まいは、高齢者だけでなく家族にとっても暮らしやすい環境を作り出します。早いうちからある程度のバリアフリー化をしておくことは、家族全員の暮らしもより安全・快適にしてくれるのです。
実際に住まいをバリアフリー化するにあたって、以下のようなポイントをおさえておくと良いでしょう。
- 段差の解消
- 手すりの取り付け
この2点が、バリアフリー化の代表的な施工箇所です。
もっとも大切なのは、住むひとの身体や生活動線に合わせた、細かな使い勝手の良さです。手すりの設置一つをとっても、位置や太さに配慮が必要になります。
また床の段差解消に関連してもう一つ、つまずき防止にはフラットであるだけでなく、床材が滑りにくいことも大切です。
キッチンや浴室・トイレ・リビングなどをワンフロアにまとめることも、動線の無駄がなく、生活のしやすさに繋がります。
バリアフリーリフォームの費用と期間
リフォームを成功させるには、信頼できる業者選びとプランニングが重要です。
工事する場所ごとに「どの程度の費用や期間がかかるのか?」といった疑問をお持ちの方も少なくないはず。
依頼するリフォーム会社や、使用する素材・設備の価格・期間によって差はありますが、ここではバリアフリーリフォームにかかるおおよその費用と期間についてご紹介したいと思います。
手すりの設置(玄関・トイレなど)
- 費用 数万円〜15万円
- 期間 3日前後
玄関やトイレの一部に手すりを設置する場合は、工事範囲が限定されているため3日以内に完成することが多いようです。
階段や廊下など、手すりをつける場所が広範囲になると1週間以上かかることもあります。
段差の解消(浴室・トイレなど)
- 費用 数万円〜100万円超
- 期間 1週間~数ヶ月
こちらも、段差を解消したい場所の範囲によって、費用と期間には差があります。
「水廻りの床の段差を解消し、室内ドアの見切りも取り払う」このような場合、家中の床に手を入れる必要が出てきます。
広さにもよりますが、場合によっては100万円を超える大規模工事となる可能性もあります。
スペースを広げる(浴室・トイレ・廊下など)
- 費用 40〜100万円超
- 期間 1ヶ月前後
車椅子のまま入れるようにスペースを広げる場合は、大がかりなリフォームになることがほとんどです。
とくに浴室は、ユニットバスのグレード・浴室の広さ・滑りにくい床材など、設備や素材によっても費用が大きく変動します。
浴室は室内温度に注意
日本人の暮らしに欠かせない、お風呂。高齢になっても、安全に入浴できるようにしておきたいものですね。
古い浴室はタイル張りの場合が多く、濡れると滑りやすくなっていることも多いため、濡れても滑りにくい、あるいはすぐに乾くような床にしましょう。
浴槽も高さがあるとまたぎにくくなります。
一般的に、またぎやすい高さは30〜40㎝程度だと言われています。高さを抑えるには、床に浴槽を埋め込むタイプ(半埋め込み式)のものがいいでしょう。
同時に、浴槽に入るときに腰掛けられるよう、縁が広めのものを選ぶとベターです。
浴室でもう一つ気を付けたいのが、温度。
冬、浴室や脱衣室の温度が低いと、熱いお湯につかったときに血圧が急激に上昇し、意識の低下や心疾患を招く「ヒートショック」を発症する恐れがあります。できれば断熱性を高め、温度差をなくすのがベスト。
現在、販売されているユニットバスは、浴槽も含めて高断熱化が進んでいるので、予算に余裕があれば高断熱型タイプを選びましょう。
また、浴室に暖房を設置するだけでも、ヒートショックのリスクを軽減できます。
乾燥機能付きの機器であれば、洗濯物を干したりするのにも役立ちますよ。
トイレは余裕のある広さに
トイレは一日に何度も使う場所だけに、できるだけ体の負担を減らすことが大切。
しゃがまなければ利用できない和式トイレは、洋式トイレに変更しましょう。
また、車椅子や介護が必要になったときのために、スペースの拡張や手すりの取り付けも検討しましょう。
可能ならばトイレの位置を寝室の近くに移動すると、夜中にトイレへ行くときの事故発生リスクを減らすこともできます。
階段・段差の負担軽減
必ずやっておきたいのが、室内外の段差解消です。部屋で床の高さが違う場合はもちろん、ドアのレールもつまずく原因になります。
床のレベル(高さ)は、基本的に高いほうに合わせることになります。床下には配管が通っているので、低くするのは難しい場合も多いです。
床のレベルを上げることで圧迫感が増してしまう場合は、スロープを設置して高さの違いを補う、という手法もあります。
またこのとき、床材選びも気にしていただきたいポイントの一つです。滑りにくく、柔らかめの床材は、転倒やけがのリスクを軽減することに繋がります。
階段は、途中に踊り場を設けたU字型の階段に変更すると安心です。
一直線の形状は、転倒した場合に下まで一気に転がり落ちてしまう危険性があります。U字型の階段であれば、そういった危険に対応することができます。
急すぎる階段の勾配は30〜35度程度に変更し、踏み板の幅も一枚あたり21cm以上を確保すると昇降が楽に。一段ごとの高さも23cm以下にするのが理想です。床材もできるだけ滑りにくい素材にしたり、踏面に滑り止めを施すことで、より滑りにくい階段にすることができます。
また夜間の移動には、転倒防止の意味でも足元に照明があると安心です。必要に応じて、フラットライトの設置も検討しましょう。
ドアは引き戸で開閉しやすく
ドアが開き戸の場合、車椅子では開閉することが難しく、出入りもしづらくなってしまいます。その場合、横にスライドして開閉できる「引き戸」にするのがベター。
床にレールをつけるタイプのものは、段差ができてしまうため避けましょう。
交換する際は、ノンレールタイプ(上吊り式)を選ぶのがおすすめです。
また引き戸であっても、レバーハンドルを取り付けることで高齢者や車椅子の方でもドアを掴みやすくなります。
同時に、「少ない力で開けられる」「手を放してもゆっくり閉まる」など、安全に配慮した仕様かどうかのチェックも重要です。
補助金や介護保険でお得にバリアフリーリフォーム
バリアフリーリフォームには、介護保険制度が利用できます。
介護が必要なひと(「要支援」または「要介護1~5」の認定を受けた)が住む住宅でバリアフリーリフォームを行う場合、リフォーム費用20万円までのうち9割、つまり最高で18万円が支給されます。
介護保険制度の対象になるリフォーム
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
介護保険を利用してバリアフリーリフォームを行う場合、担当ケアマネージャーとの打ち合わせなどが必要になります。まずは市区町村の窓口で相談してみましょう。
また、バリアフリーリフォームの標準的な費用(最高200万円)の10%を所得税から控除する「特定増改築等住宅借入金等特別控除」という制度もあります。
同制度は、「50歳以上」「もしくは介護保険法に規定する要介護または要支援の認定を受けている」「所得税法上、障害者である」「高齢者等の親族と同居している」のいずれかの条件に当てはまる、個人が行うバリアフリーリフォームが対象です。
※適用条件として、この他所得制限(3,000万円まで)や、「床面積が50㎡以上である」「工事費用が100万円を超えており、その1/2以上が自己の居住用部分の工事費用である」「改築後6ヶ月以内に入居する」等の要件があります。
その他、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」やリフォーム減税など、バリアフリーリフォームを対象とした補助制度や、独自の支援を行っている自治体もあります。
自治体によっては「高齢者住宅改修費支援制度」や「障害者住宅改造費助成制度」といった補助金・助成制度が用意されている場合も。
これらは各自治体によって制度の内容が異なります。適用となる工事の内容や適用条件には細かな違いがあるため、どの制度が利用可能かは設計担当にご相談ください。
ひかリノベでリノベーション行う際は、こうした制度の利用も可能です。利用を希望する場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
歳をとっても健康に暮らしたい――多くの方がそう願っていることでしょう。
食生活や運動だけでなく、生活の場として重要な住まいも、歳を取ったときのことを考えたつくりにしておくべきではないでしょうか。
「今は元気だから大丈夫」と安心せず、将来のために早めの対策をすることで、いつまでも安全・快適に生活していく基礎を得ることができるのです。
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