楽器演奏や動画配信、ホームシアターを楽しむため、 自宅の一室を防音室にリフォームしたいというご要望をいただくことが増えてきました。どれくらいの費用がかかるのか? どのような工事が必要なのか? お悩みの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、マンションや戸建て住宅の防音室リフォームの費用相場、目的別の工事方法、注意点を詳しく解説します。
自分が必要としている防音室はどんな工事が必要で、費用はいくらかかるのか、この記事を読めばわかります。
目次
防音室リフォームの費用相場
防音室のリフォーム費用は、防音室の広さと、もともとの建物の構造によって変わってきます。
一般的に、建物自体の気密性や防音性が低いほど、防音工事の費用は高額になります。
建物は、躯体に使用している建材の重量が重ければ重いほど、音を通しにくい特徴があります。
つまり、重さのある鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)が一番音を通しにくく、防音工事にかかる費用は最も安くなります。
次いで鉄骨造(S造)が費用を抑えやすく、もっとも費用が高くなるのが木造住宅です。
具体的な金額は下表のとおりです。もっとも費用を抑えられるRC造と、もっとも費用が嵩みやすい木造で、6畳・7畳・8畳の防音室を設けた場合の金額をまとめました。
木造住宅とRC造を比べると、木造のほうが2割ほど工事費用が高くなります。
RCマンション | 木造住宅 | ||
防音性能 | 専有区画外・躯体スラブを合わせた複合遮音性能(開口部を除く) | 建物外への遮音性能(開口部を除く・打楽器系以外) | |
D(Dr)値 | 65~70 | 65~70 | |
既存面積ごとの価格 | 6畳 | 390万円 | 410万円 |
7畳 | 420万円 | 440万円 | |
8畳 | 440万円 | 450万円 |
防音室に必要な性能~「吸音」と「遮音」
防音工事には「遮音」と「吸音」二つの方法があります。
吸音とは、音を吸収して反響させないようにすることです。
音楽室や音楽スタジオの壁に貼られている、小さな穴がいくつも開いたパネルを想像すると分かりやすいでしょう。穴の開いたパネルは「吸音パネル」といい、穴が音を吸収することで室外に音が漏れるのを防ぐ役割があります。同時に、音の反響を抑える効果や音質をクリアにする効果もあるため「大きな音を外に漏らしたくないが、出た音をクリアに聞きたい」という場合によく用いられます。
しかし、これだけでは、楽器演奏などを想定した防音室としては不充分です。
遮音とは、音を遮断すること。室内の大きな音が外にもれたり、外の騒音が室内に入らないように音をシャットアウトします。
リフォームで防音室を作る場合に重要なのがこの「遮音性能」。遮音性能が高いほど、すぐれた防音室だと言えます。
遮音性能は「D値」や「Dr値」で表されます。「D値」は日本建築学会で使用されている値。「Dr値」は日本工業規格(JIS)で用いられている値。表記は異なりますが、どちらも「遮音等級」という意味では同じです。
D(Dr)値は、大きければ大きいほど遮音性能が高いことを表しています。下表は、遮音等級と実際の聞こえ方のイメージをわかりやすく示したものです。
遮音等級の値が高いほど、聞こえる音は小さくなります。
遮音性能 | テレビ・ラジオ・人の話し声 | ステレオやピアノなどの大きな音 |
D-55 | 通常では聞こえない | かすかに聞こえる |
D-50 | ほとんど聞こえない | 小さく聞こえる |
D-45 | かすかに聞こえる | 聞こえる |
D-40 | 小さく聞こえる | 曲がはっきりわかる |
D-35 | 聞こえる | よく聞こえる |
D-30 | 話の内容が分かる | 大変よく聞こえる |
D-25 | はっきり内容が分かる | うるさい |
防音室の種類~ユニットタイプとリフォームタイプ
防音室には、部屋の一角に設置する既成の「ユニットタイプ」のものと、自由設計で防音室をつくる「リフォームタイプ」があります。
(この記事で主に扱うのは後者です)
「ユニットタイプ」は、専用部材を組み立てるだけで防音室ができるので、大がかりなリフォーム工事が不要な点がメリットです。
なかには自分で組み立てられる商品もあり、ガラスがはめ込まれていて、閉塞感があまりない商品もあり、賃貸でも設置が可能です。
工事費用も比較的安価で、価格相場は大きさに応じて約50万~300万円ほどです。
ただし遮音性能はそれほど大きくなく、最大でもD-35~40程度のため、実際に使ってみたら思ったよりも音漏れするという問題が起こりがちではあります。
「リフォームタイプ」は、自由設計で、購入した自宅の一室を防音室とする方法です。
天井や床、壁や窓廻りなど部屋を構成している部分すべてをオーダーメイドで設計・施工するため、お好みのデザインや性能の自由度が高いことが特徴です。
施工内容次第で、D65~75という高い遮音性能を実現できますが、工事費用は高めになります。費用の目安は、1章でお伝えした通りです。マンションに6畳の防音室をつくる場合、390万円~が目安です。
目的別・防音室リフォームの工事方法
リフォームタイプの防音室を計画する場合、ピアノやドラム・ギターなど何の楽器を演奏するのか、あるいはホームシアターや動画配信が目的なのか、用途によって必要な防音性能や適した工事方法は異なります。
ここでは音源別に、必要な防音性能と工事方法を紹介します。
ピアノ演奏を目的とした防音室
ピアノを演奏する場合に必要な防音性能は、吸音と遮音の両方です。
遮音等級でいうとD-55以上が必要です。
具体的な施工方法は建物の構造によっても異なりますが、「壁や天井を厚くして、グラスウールや石こうボードといった防音材で仕上げる」「防音扉や防音窓を設置する」工事が必要です。またペダルを踏んだ際の振動も防ぐため、床には防音ゴム付きの建材を使用します。
ドラム演奏を目的とした防音室
ドラム演奏を想定した防音室をでは、ピアノや管楽器以上に高い遮音性能が求められます。
ドラムは打楽器です。床や壁が振動することで聞こえる音(個体伝播音)が発生します。そのためピアノ用の防音室のような壁の遮音施工に加えて、床や壁の振動を外に漏らさない工夫も必要になります。
また、防音室内で自分の耳に届く音をクリアにするための工夫も必要です。響きすぎると音が粒立って聞こえません。室内の残響時間を適度に短く、吸音率を設定する必要があります。
ホームシアターを目的とした防音室
ホームシアターでは、外への音漏れのほか、外部騒音をいかに遮るか、という観点が重要になってきます。映画の世界に没入している最中に、足音やペットの鳴き声などの日常の騒音が外から入ってきてしまうと、急に現実世界に引き戻されてしまいますよね。
ホームシアター用防音室として適切な遮音性能は、D-60~70前後が目安です。
窓がある部屋の場合は内窓を設置したり、部屋の中にダクトなどがある場合は音が入ってこないような対策が必要です。
ホームシアターで音楽も聴くという人や、オーディオルームを希望の場合は、オーディオの音質を損なわないよう、吸音率を0.3~0.4にするといいでしょう。
防音室リフォームの注意点
リフォームで防音室をつくる際の注意点について解説します。
換気対策
防音室は密閉空間です。室内は気密性が高くなるため、換気対策やエアコンの設置も検討しなくてはいけません。ただ壁に穴を開けるとなると、そこから音が漏れ出る心配があります。
なるべく隙間を作らず、しかし一方では新鮮な空気を出し入れしやすい設備を設置しなければならないのです。
こうした計画は、DIYや一般のリフォーム会社では難しいのが現状です。楽器演奏やホームシアターを想定した本格的な防音室を計画する際は、かならず防音室の専門業者に依頼しましょう。
(マンションの場合)管理規約による制約
マンションにお住まいの場合、管理規約によって思い通りの防音工事ができないとか、管理組合の承認が必要という可能性があります。
逆に管理組合の承認が得られれば、窓サッシのような共有部分にも一部手を加えられる場合があります。
まずはマンションの管理規約をチェックして、自分のしたい防音工事をするにはどんな手続きが必要か確認しましょう。
業者選びのポイント
防音工事には、通常のデザインリフォームとは異なる専門的な知識と工法を実施する高い施工技術が必要です。そのため防音工事に特化した専門業者に相談することが重要ですが、その中でも業者を比較検討する際は、ぜひ「防音室の性能保証があるか」をチェックしてください。
性能保証とは、完成後の防音室の遮音性などを保証する制度のこと。工事が全て完了した後で騒音計を使った性能測定をして、その数値をもとに防音室の性能を満たしたという保証をお施主様に対して行います。防音室工事で性能保証があるかどうかは大切なポイントの一つです。
防音工事後に発生する最も多いトラブルが、「引き渡し後に防音室から音が漏れていて、お隣さんから苦情が来た」「目標とする遮音性能が保たれていなかったことが発覚した」とったケースです。性能保証がある業者を選ぶことで、引き渡し後のトラブルを防ぐことができます。
住宅リノベーションのひかリノベでは、防音工事のスペシャリストである昭和音響さんと提携。目的や要望に応じた防音工事を、マンションのフルスケルトンリノベーションにも取り入れることが可能です。
防音室リフォームや間取りの変更リノベーションをお考えの方や、防音室付きのマンションのご入居希望の方は、ぜひひかリノベにご相談ください。物件探しからリノベーション、資金計画までワンストップでお住まいづくりをサポートいたします。
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