東京都内で子育てしやすい街はどこなのでしょうか?
子育ては住まい選びに大きく関係する要素。子どもが健やかに成長できる環境も大事ですし、自治体の子育て支援も充実しているほうが嬉しいですよね。
もちろん日常生活や通勤の利便性、家賃や住宅ローンの支払いもきちんと考えて、住まいや住む街を選びたいところです。
この記事では、東京の子育てしやすい街を、23区内・都下市部にわけて選び、保育園の利用しやすさや子育て支援策の充実度を、独自の視点から解説します。
目次
23区内の子育てしやすい街(区)
ここでは東京23区内の子育てしやすい街として、日経xwoman/日本経済新聞社「共働き子育てしやすい街ランキング」(23年12月15日発表)でも上位の街、豊島区・板橋区・葛飾区・練馬区・新宿区・中野品川区の6自治体の取り組みを紹介しましょう。
各自治体の子育て支援や共働き支援のポイントと、住まい探しの参考として「中古マンション価格の相場」「賃貸住宅の家賃相場」を紹介します。
豊島区
豊島区は前出の「共働き子育てしやすい街ランキング2023」で総合6位(2022年は1位)、東京編では2位の街。
23区の北西に位置し、大型商業施設などが集まる池袋と、目白・雑司ヶ谷など閑静な住宅街が混在する街です。池袋駅には全8路線が乗り入れており、交通アクセスも抜群。隣県の埼玉や神奈川方面へのアクセスにも優れています。
かつては消滅可能性都市として名指しされたこともある豊島区ですが、今は「子どもと女性にやさしいまち」を区の最重要課題として、子育て支援や少子化対策に積極的に取り組んでいます。その成果か2023年4月時点での待機児童数はゼロ人で、認可保育園等の定員数は増える見通しです。
豊島区には、子育てのお手伝いができるご近所の方を「援助会員」として、子育ての手助けをして欲しい「利用会員」に紹介する「ファミリー・サポート・センター事業」を実施。短時間の子どもの預かりや送迎、保護者との共同保育を通して、子育てを援助してもらえます。
また豊島区には、子育てに関する相談ができたり一時保育を実施している「子ども家庭支援センター」が区の東西に2か所あります。
さらに「育児支援ヘルパー事業」として、育児や家事の手助けをしてくれるヘルパーを派遣。こちらの窓口も、子ども家庭支援センターとなっています。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築15年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
9,728万円 | 5,857万円 | 24.86万円 | 27.33万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
板橋区
板橋区は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」総合12位、東京編では3位となっています。
複数の鉄道路線が乗り入れており、池袋・新宿・渋谷・大手町など、都内主要駅へのアクセスが良いのが特徴。その一方で、物件の価格相場や家賃が手ごろでもある地域です。
大小約300の公園や100か所の商店街があり、利便性と豊かな自然を兼ね備えたバランスの良い街でもあります。
板橋区では「訪問型産後ケア事業」として、助産師が自宅に訪問。育児についての相談や授乳などのアドバイスを実施。
病児・病後児の保育施設が充実しているほか、体調が悪くなった子どもを保育園や幼稚園に保護者に代わって看護師がお迎えするサービスも行っています。
「すくすくカード事業」では、乳幼児を抱えるママの負担を軽減するために、区のさまざまな子育て支援サービスが受けられる利用券を配布しています。
他にも産前産後の家事支援や子育て支援が受けられる「ぬくもりサービス」や、育児支援ヘルパー派遣事業など、子育て世帯にやさしい支援が受けられます。
板橋区の子育て施策は「いたばし子育て情報ブック」にて網羅的に紹介されています。こうした情報の解りやすさも、施策の一環といえるのではないでしょうか。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
6,133万円 | 4,253万円 | 19.40万円 | 20.71万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
葛飾区
葛飾区は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」総合20位・東京編6位の街。
葛飾区柴又は映画「男はつらいよ」シリーズの舞台となっていて、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所(通称:こち亀)」でも下町ならではの魅力を存分に感じられます。
JR常磐線・総武線などのほか、京成電鉄や北総鉄道が乗り入れており、新宿方面や成田空港へのアクセスが充実。このようなアクセスの良さに対して、家賃や物件価格の相場が比較的手ごろな街でもあります。
葛飾区では物価の高騰による家庭の負担を軽減する目的で、区立の小中学校の児童生徒を対象に、2023年4月より給食費の完全無償化に踏み切っています。これは所得制限などを設けず、区が全額を負担するというもの。
また「出産応援ギフト」や「マタニティパス」、「子育て応援ギフト」、「1歳児子育て応援券」といった給付サービスが充実。それぞれのタイミングで使える商品券や現金、クーポンなどを受け取れます。
さらに令和5年度からは、「家庭保育の保護者への一時保育」や「子育て家庭家事サポーター派遣」など、家事育児支援利用料の助成制度もスタートしました。
区民参加型の会員制家事援助サービス「しあわせサービス」もユニークな取り組みです。ひとり親家庭や妊産婦のいる家庭、障害を持つ方や在宅療養者を対象に、協力会員による家事援助を中心としたお手伝い支援事業で、近くに頼れる友人や親族がいない人でも、安心して出産や育児ができるでしょう。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
4,547万円 | 3,427万円 | 19.10万円 | 22.81万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
練馬区
練馬区は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」総合20位・東京編6位(葛飾区と同率)という結果から分かる通り、子育てしやすい街です。
新宿や池袋といった都心部へのアクセスがよく、区内には大規模な繁華街や歓楽街がないのも子育て世帯には安心な要素。ベットタウンとしての役割が大きく、犯罪発生率も0.38%(文京区や杉並区に次ぐ3位/23区中)と、治安の良さが特徴です。
また公園の数も大小合わせて690か所と23区内で最多。子育て世帯の住環境が整っているといえます。
子育て支援策としては、育児用品や家電製品・子育て関連サービスを申し込める事業「出産応援ギフト(5万円相当)」「子育て応援ギフト(10万円相当)」を展開。
さらに「子育てスタート応援券」を利用して区内の子育て・家事支援サービスを受けられます。
第三子以降の子どもを出産すると、「第3子誕生祝金」が受け取れる制度も。
共働き世帯にうれしいのは、「子どもトワイライトステイ」と呼ばれる夜間一時保育です。残業などで子どもをお迎えに行けないときなどは、午後5時~10時まで専用施設に預けることが可能。このようなサービスがあるのは、東京23区のうちでも練馬区を含む14区のみです。
小学生の子どもを持つ親へのサービスとしては、児童の成長に合わせて選べる「ねりっこひろば」や「ねりっこ学童クラブ」があります。学校をそのまま学童施設として利用することで、安心・安全に子どもを預けることができます。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
6,476万円 | 4,361万円 | 16.13万円 | 20.05万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
新宿区
新宿区は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」総合27位、東京編でも8位にランクインしています。
世界一利用客が多い駅として知られる新宿駅や、東京一の繁華街・歌舞伎町を有する街。一方でオフィス街という側面や、千駄ヶ谷・落合・中井は閑静な住宅地としても知られています。
新宿区は様々な機能や特徴を持つ区ですが、子育て支援にも力を入れている街です。
ユニークな取り組みとしては、所得制限のない「入学祝金」。小中学校入学時、小学一年生に5万円、中学一年生に10万円ずつ支給されます。
「産後ケア事業」は母子の体調管理に関するサポートや助産師による健康指導・育児相談が受けられるサービスです。宿泊・通所・訪問と利用方法を選ぶことができる点が新宿区の特徴。
子供の預け先に悩んだ際に頼れる制度も複数用意されており、「子どもショートステイ」や「トワイライトステイ」、「ひろば型一時保育」がいずれも利用可能です。
子どもの発達について相談したいときには「子ども総合センター発達支援コーナー(通称:あいあい)」で相談が可能。通所クラスや訪問支援などもあるので、子どもの発達支援の助けにもなるでしょう。
新宿区の子育て支援策は、「新宿はっぴー子育てガイド」で網羅的にまとめられており、情報の解りやすさも魅力のひとつです。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
1億1,218万円 | 6,566万円 | 29.46万円 | 31.54万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
中野区
中野区は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」6で総合27位(新宿区と同率)、東京編でも8位という結果です。
中野駅周辺を中心として再開発が進み、北口周辺には中野サンプラザや中野区役所、明治大学をはじめとする教育施設が整備され「大学の街」としての顔を持っています。
南口周辺には高層マンションが建ち、新たな人の流れができつつあります。一方で区の北部には上鷺宮や江古田、江原町といった閑静な住宅街があるのも特徴。
中野区では、「妊娠・出産・子育てトータルケア事業」として、切れ目のないサービスを提案。妊娠中には「産前家事支援事業」が利用でき、子どもが生まれたら産後ケア事業の一環で、宿泊を伴うショートステイやデイケア、助産師訪問などの支援が利用可能。
共働き世帯に特にうれしいのは「病児・病後児保育事業」や休日保育、年末保育などです。保護者の入院など、やむを得ない事情で子どもの世話ができないときなどは「子どもショートステイ」や「トワイライトステイ」が利用できます。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
8,141万円 | 5,470万円 | 21.70万円 | 25.16万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
都下市部の子育てしやすい街(市)
23区外の都下市部の街を見ていきましょう。
ここでは日経BP「シティブランド・ランキング ―住みよい街2023―」より「評判と実績で見る『自治体子育てランキング』」にランクインした武蔵野市と三鷹市の子育て・共働き支援を詳しく紹介します。
中古マンション価格の相場や賃貸住宅の家賃相場も紹介するので、住まい探しの参考になさってくださいね。
武蔵野市
武蔵野市は「評判と実績で見る『自治体子育てランキング』」で総合23位になった街です。
東京都のほぼ中央に位置し、23区への通勤に便利なベッドタウンとしてだけでなく、JR中央線が走る武蔵境駅・三鷹駅・吉祥寺駅のそれぞれに個性があるのも特徴。市街地を少し離れると豊かな自然があり、井の頭恩賜公園をはじめとする公園も充実。子育てにも適した街といえます。
武蔵野市では子育て・共働き支援として、「子育てショートステイ」をはじめとする子ども家庭支援や相談事業、産前・産後支援ヘルパーなどの事業を行っています。
また4歳までの乳幼児がいる家庭を対象としたベビーカー貸し出しサービス「ベビ吉」や、食を通じて子どもの学習支援や居場所づくりをする「子ども・コミュニティ食堂」など、幅広い子育て支援事業を展開。
こうした施策は武蔵野市の子育て応援サイト「むさしのすくすくナビ」や0~5歳児の子育て支援情報誌「すくすく」、小学生以上の子育て支援情報冊子「むさしの子ども応援BOOK」にまとめられており、情報の解りやすさも魅力です。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
データなし | 5,071万円 | 20.89万円 | 28.00万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
三鷹市
三鷹市は「評判と実績で見る『自治体子育てランキング』」総合24位となった街。
市内にはJR中央快速や総武線など4路線が乗り入れ、新宿や渋谷方面へのアクセスが良いのが特徴です。駅周辺には商業施設があるものの、いわゆる繁華街ではないため、子どもがいる家庭でも安心して暮らせます。一方で緑豊かな自然やお出かけにおすすめなスポットもあり、利便性と自然のバランスが取れた街といえます。
三鷹市では産後ケア「ゆりかごプラス」として、宿泊や日帰りで出産後のサポートが受けられます。また育児支援ヘルパー事業もあり、1歳未満の子どもがいる家庭に、育児支援ヘルパーを派遣し家事や育児のお手伝いをしてもらえます。
三鷹市に3か所ある「子ども家庭支援センターりぼん」「すくすくひろば」「のびのびひろば」では、子どもと家庭に関する相談を受け付けています。ショートステイ事業などもあり、ショートステイの受付や相談、その他のサービスについての相談も可能です。
中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
築浅(築5年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
7,488万円 | 4,595万円 | 21.62万円 | データなし |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2024年1月現在
子育てしやすい街を見極める「4つの条件」とは?
子育てしやすい街とひと口にいってもさまざまな指標があります。
ここでは日経xwoman・日本経済新聞社「共働き子育てしやすい街ランキング」でも重視されている「待機児童数」、「自治体の子育て支援制度」、「治安の良さ」、「周辺環境」の4つに着目し、それぞれのポイントを解説します。
待機児童数
共働きの子育てファミリー層にとっては、子どもが保育園に入れるかどうかが最も重要なポイントではないでしょうか。
待機児童が多いほど保育園に入園しづらいため、その自治体の待機児童数を調べることで、保育園への入りやすさを判断することができます。
2023年4月1日時点の、東京都の待機児童数は286人。
21年(969人)から22年(300人)と大きく減った待機児童数は、23年も減少傾向が続いています。全体的には保育園に入りやすい状況になりつつあるといえそうです。
自治体別のデータを見ると、23年は新たに10自治体が待機児童ゼロ人を実現。
待機児童が最も多いのは国分寺市の38人。次いで日野市33人、町田市30人と続きます。
このうち町田市は、22年の待機児童数は75人でしたから、状況が改善しているといえそうです。
ただし、待機児童数が減少する一方で、「隠れ待機児童」の問題は解決したとはいえません。
「隠れ待機児童」とは、「特定の園を希望している」「育児休業を延長している」などの理由により、待機児童としてカウントされないものの、入園希望が叶っていない児童のこと。
日経クロスウーマン/日本経済新聞社「自治体の子育て支援制度に関する調査」によると、東京23区それぞれの隠れ待機児童数は下表の通りです。
人口の多い世田谷区や幼児人口が増加している港区が、とくに隠れ待機児童数が多く、入園事情が厳しい状況が見えます。
自治体の子育て支援制度
子育ては体力も費用もかかります。共働き世帯が当たり前になっている今、夫婦だけで子どもを育てるのは大変です。
そこで注目したいのが、自治体が展開している子育て支援制度です。
経済的な支援(補助金や無償化など)はもちろん、医療・保育に関するインフラやサービスの拡充や質の向上に、数多くの自治体が取り組んでいます。
上記「共働き子育てしやすい街ランキング」でも、自治体の子育て支援策を総合的に評価したうえで、ランキングの順位をつけています。
こうしたランキングも参考にしつつ、実際に住みたい街が決まったら、自治体のホームページなども調べて、どのような施策が展開されているかを把握しておきましょう。
治安の良さ
大切な子どもが犯罪に巻き込まれ、被害者になってしまうのは絶対に避けたいもの。
大人、特に20代~30代の子育て世代な女性にとっても、仕事で夜遅く帰宅するときや、出張や旅行で留守にするときなど、不安な場面は多々あるはず。安心して家族みんなで過ごせるようにするためにも、街の治安は必ず確かめたいところです。
警視庁の統計によると、2021年、東京都内で発生した犯罪の件数は7万5288件。窃盗が6割以上を占めています。
警視庁はインターネット上で、都内区市町村の犯罪発生件数を、罪種別や手口別にまとめた統計資料や、地図上で犯罪発生状況を確認できる「犯罪情報マップ」を公開しています。
引っ越しの際には、これらを事前にチェックしてみましょう。現地に実際に行けるなら、交番などで聞いてみるのもいいかもしれません。
周辺環境
どんなに自治体の子育て支援が手厚かったり、自然が豊かでも、日常生活が大変では元も子もありません。
交通の利便性(電車の駅の数・近さ、バス路線の充実度、通勤通学にかかる時間)、小学校・中学校の場所や教育の質、病院や公園・公共施設、大型スーパーマーケット、ショッピングモールの数や立地、人によっては自然の豊かさなども、日常生活の質を大きく左右します。
また、エリアの特性によってはファミリー向けの間取りの物件が少ないことも。
もちろんGoogleマップなどでも駅までの距離や、お店や施設の数は調べられますが、できれば現地へ行き、自分の目で周辺環境を確かめてみることをおすすめします。
まとめ
治安や周辺環境は自治体が位置するエリアによって変わりますが、少子化が進む中、子育て支援は、あらゆる自治体にとって重要課題となっています。
今回取り上げた自治体も、地域や住民の特性に応じた子育て支援策を展開しており、待機児童もゼロ人、あるいは減少を実現しています。
自治体にとっても、子育て世帯や子どもが増えることは、運営する上でのメリットが大きいため、今後ますます子育て支援は充実していくと考えられます。また、物価上昇が続く中、経済的な支援策も増えていくでしょう。
都内の街8つを紹介しましたが、「ここなら子どもも自分も快適に過ごせそうだ」と思えた街は見つかったでしょうか。あなたやご家族にとって良さそうな街が見つかったら、次は住まい探しです。
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