
東京都内で子育てしやすい街はどこなのでしょうか?
子育ては住まい選びに大きく関係する要素。子どもが健やかに成長できる環境も大事ですし、自治体の子育て支援も充実しているほうが嬉しいですよね。
もちろん日常生活や通勤の利便性、家賃や住宅ローンの支払いもきちんと考えて、住まいや住む街を選びたいところです。
この記事では、東京の子育てしやすい街を、23区内・都下市部にわけて選び、保育園の利用しやすさや子育て支援策の充実度を、独自の視点から解説します。
目次
23区内の子育てしやすい街(区)
ここでは東京23区内の子育てしやすい街として、日経xwoman/日本経済新聞社「共働き子育てしやすい街ランキング」(24年12月13日発表)でも上位の街、板橋区・豊島区・新宿区・中野区・練馬区の5自治体の取り組みを紹介しましょう。
各自治体の子育て支援や共働き支援のポイントと、住まい探しの参考として「中古マンション価格の相場」「賃貸住宅の家賃相場」を紹介します。
板橋区
板橋区は2024年ランキングでは総合編3位、東京都の自治体に限っては豊島区と並んで1位となっています。
複数の鉄道路線が乗り入れており、池袋・新宿・渋谷・大手町など、都内主要駅へのアクセスが良いのが特徴。その一方で、物件の価格相場や家賃が手ごろでもある地域です。
大小約300の公園や100か所の商店街があり、利便性と豊かな自然を兼ね備えたバランスの良い街でもあります。
板橋区では子育て・教育に関して利便性の高いサービスが充実しています。
区内ほぼすべての認可保育園・公立小学校・区立学童保育で、保護者との連絡ができるICTシステムを導入。区立保育園に関しては、緊急情報を発信する「お知らせ配信システム」を運用しています。
2023年からは区内にある37か所の区立保育園で、紙おむつやおしりふきのサブスクリプションサービスを行っています。さらにすべての区立学童保育では、夏休みなど長期休業中に昼食を提供しています。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築5年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| 7,327万円 | 4,080万円 | 21.41万円 | 22.97万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
豊島区
豊島区は2024年ランキングでは総合編3位、東京都の自治体では板橋区に並んで最高位です。
23区の北西に位置し、大型商業施設などが集まる池袋と、目白・雑司ヶ谷など閑静な住宅街が混在する街です。池袋駅には全8路線が乗り入れており、交通アクセスも抜群。隣県の埼玉や神奈川方面へのアクセスにも優れています。
かつては消滅可能性都市として名指しされたこともある豊島区ですが、今は「子どもと女性にやさしいまち」を区の最重要課題として子育て支援や少子化対策に積極的に取り組んでおり、2020年以降、待機児童数ゼロ人を連続達成しています。
豊島区では、学校の教室や校庭の放課後利用、長期休業中に利用できる「放課後子ども教室」を運用。また区内すべての認可保育園に看護師を配置し、棒児保育にも対応しています。
他にもショートステイ事業やファミリー・サポート・センターなど、共働きの子育て世帯に便利なサービスが充実。
このような取り組みにより、豊島区では「隠れ待機児童」の数も減少しています。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| 1億503万円 | 6,301万円 | 23.85万円 | 30.87万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
新宿区
新宿区は2024年ランキングでは総合編12位、東京都の自治体のみでは3位にランクインしています。
世界一利用客が多い駅として知られる新宿駅や、東京一の繁華街・歌舞伎町を有する街。一方でオフィス街という側面や、千駄ヶ谷・落合・中井は閑静な住宅地としても知られています。
新宿区は様々な機能や特徴を持つ区ですが、子育て支援にも力を入れている街です。
ユニークな取り組みとしては、所得制限のない「入学祝金」。小中学校入学時、小学一年生に5万円、中学一年生に10万円ずつ支給されます。
「産後ケア事業」は母子の体調管理に関するサポートや、助産師による健康指導・育児相談が受けられるサービスです。ショートステイ型(宿泊)とデイサービス型(通所)のどちらかを選ぶことができる点が新宿区の特徴。
子供の預け先に悩んだ際に頼れる制度も複数用意されており、「子どもショートステイ」や「トワイライトステイ」、「ひろば型一時保育」がいずれも利用可能です。
子どもの発達について相談したいときには「子ども総合センター発達支援コーナー(通称:あいあい)」で相談が可能。通所クラスや訪問支援などもあるので、子どもの発達支援の助けにもなるでしょう。
新宿区の子育て支援策は、子育て応援サイト「はっぴー子育て」で網羅的にまとめられており、情報の解りやすさも魅力のひとつです。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築3年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| 1億5,307万円 | 6,724万円 | 31.93万円 | 40.48万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
中野区
中野区は2024年ランキング総合編では12位、東京都の自治体では新宿区と並んで3位です。
中野駅周辺を中心として再開発が進み、北口周辺には中野サンプラザや中野区役所、明治大学をはじめとする教育施設が整備され「大学の街」としての顔を持っています。
南口周辺には高層マンションが建ち、新たな人の流れができつつあります。一方で区の北部には上鷺宮や江古田、江原町といった閑静な住宅街があるのも特徴。
中野区では、「妊娠・出産・子育てトータルケア事業」として心して子育てができるよう、切れ目のないサービスを提案。妊娠中には「産前家事支援事業」が利用でき、子どもが生まれたら産後ケア事業の一環として、宿泊を伴うショートステイや日帰りのデイケア、助産師訪問などの支援が利用可能。
共働き世帯に特にうれしいのは「病児・病後児保育事業」や休日保育、年末保育などです。保護者の入院など、やむを得ない事情で子どもの世話ができないときなどは「子どもショートステイ」や「トワイライトステイ」が利用できます。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築5年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| 1億2,482万円 | 5,550万円 | 25.21万円 | 25.00万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
練馬区
練馬区は2024年ランキングでは総合編12位、東京都の自治体では新宿区、中野区と並んで3位にランクインしています。
新宿や池袋といった都心部へのアクセスがよく、区内には大規模な繁華街や歓楽街がないのも子育て世帯には安心な要素。ベットタウンとしての役割が大きく、犯罪発生率も0.38%(文京区や杉並区に次ぐ3位/23区中)と、治安の良さが特徴です。
また公園の数も大小合わせて690か所と23区内で最多。子育て世帯の住環境が整っているといえます。
子育て支援策としては、育児用品や家電製品・子育て関連サービスを申し込める事業「出産応援ギフト(5万円相当)」「子育て応援ギフト(10万円相当)」を展開。
さらに「子育てスタート応援券」を利用すれば、「育児支援ヘルパー事業」や「乳幼児一時預かり事業」といった区内の子育て・家事支援サービスを受けられます。
第三子以降の子どもを出産すると、子供1人につき10万円の「第3子誕生祝金」が受け取れる制度も。
共働き世帯にうれしいのは、「子どもトワイライトステイ」と呼ばれる夜間一時保育です。残業などで子どもをお迎えに行けないときなどは、午後5時~10時まで専用施設に預けることが可能。
小学生の子どもを持つ親へのサービスとしては、児童の成長に合わせて選べる「ねりっこひろば」や「ねりっこ学童クラブ」があります。学校をそのまま学童施設として利用することで、安心・安全に子どもを預けることができます。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| 6,621万円 | 4,824万円 | 19.39万円 | 22.76万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
都下市部の子育てしやすい街(市)
23区外の都下市部の街を見ていきましょう。
ここでは前述の「共働き子育てしやすい街ランキング」で3位にランクインした福生市、そして日経BP「シティブランド・ランキング ―住みよい街2024―」より「評判と実績で見る『自治体子育てランキング』」にランクインした武蔵野市と稲城市の子育て・共働き支援を詳しく紹介していきます。
中古マンション価格の相場や賃貸住宅の家賃相場も紹介するので、住まい探しの参考になさってくださいね。
福生市
福生市は共働きランキング総合編で3位、東京都の自治体では板橋区、豊島区とならんで最高位にランクインしています。
福生市は都心から西へ40キロの場所にあり、武蔵野台地の西端に位置しています。市の東側には米軍の横田基地があり、米ドルが使える商店街やベースサイド・ストリートなど国際色が豊かな街。一方で玉川上水が流れる市西エリアでは、酒造や養蚕の歴史があり、水と緑の街でもあります。
福生市では、小学校卒業まで続く子育て支援が特長。市内7つの小学校すべてで、学童クラブを運営しています。学童クラブは小学校6年生まで利用でき、午後7時までの延長利用も可能です。
幼児保育については、市内の保育所等のすべてで医療的ケア児の受入れ体制を構築しています。また保育士不足解消を目的として、市内の認可保育園等に勤務する保育士を対象に、 JKK東京(東京都住宅供給公社)の住宅を優先的にあっせんする事業も行っています。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| データなし | 2,073万円 | 9.48万円 | 14.07万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
武蔵野市
武蔵野市は、「評判と実績で見る子育てしやすい自治体ランキング2024」で22位。
東京都のほぼ中央に位置し、23区への通勤に便利なベッドタウンとしてだけでなく、JR中央線が走る武蔵境駅・三鷹駅・吉祥寺駅のそれぞれに個性があるのも特徴。市街地を少し離れると豊かな自然があり、井の頭恩賜公園をはじめとする公園も充実。子育てにも適した街といえます。
武蔵野市では子育て・共働き支援として、「子育てショートステイ」をはじめとする子ども家庭支援や相談事業、産前・産後支援ヘルパーなどの事業を行っています。
また4歳までの乳幼児がいる家庭を対象としたベビーカー貸し出しサービス「ベビ吉」や、食を通じて子どもの学習支援や居場所づくりをする「子ども・コミュニティ食堂」など、幅広い子育て支援事業を展開。
こうした施策は武蔵野市の子育て応援サイト「むさしのすくすくナビ」や0~5歳児の子育て支援情報誌「すくすく」、小学生以上の子育て支援情報冊子「むさしの子ども応援BOOK」にまとめられており、情報の解りやすさも魅力です。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| データなし | 5,099万円 | 23.29万円 | 27.50万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年5月現在
稲城市
稲城市は、「評判と実績で見る子育てしやすい自治体ランキング2024」で29位。
多摩ニュータウンの東の入り口で、多摩丘陵の緑と多摩川の清流に囲まれた豊かな自然が特徴。それでいて、新宿から電車で25分というアクセスの良さも魅力です。水資源を活かした梨の栽培や、美しい景観を楽しめるサイクリングロードで有名ということで、便利さとのどかさが共存する街でもあります。
稲城市独自の子育て支援の取り組みとしては、市内に住む子育て世帯を対象に公園駐車料金無料券1時間分を、1年で12枚を配布。
また市内に6か所ある児童館と図書館では、親子で参加できる各種イベントを実施しています。不妊治療を行っている市民を対象に、先進医療や自費診療にかかる医療費の助成制度もあります。
| 中古マンション価格相場 | 賃貸マンション家賃相場 | ||
| 築浅(築10年以内) | 築古(築20年以上) | 2LDK | 3LDK |
| データなし | 2,899万円 | 13.63万円 | 13.43万円 |
※データ出典:LIFULL HOME’S 2025年6月現在
子育てしやすい街を見極める「4つの条件」とは?
子育てしやすい街とひと口にいってもさまざまな指標があります。
ここでは日経xwoman・日本経済新聞社「共働き子育てしやすい街ランキング」でも重視されている「待機児童数」、「自治体の子育て支援制度」、「治安の良さ」、「周辺環境」の4つに着目し、それぞれのポイントを解説します。
待機児童数
共働きの子育てファミリー層にとっては、子どもが保育園に入れるかどうかが最も重要なポイントではないでしょうか。
待機児童が多いほど保育園に入園しづらいため、その自治体の待機児童数を調べることで、保育園への入りやすさを判断することができます。
2024年4月1日時点の、東京都の待機児童数は361人。2023年の286人から比べると微増となっていますが、一時期の数字に比べると全体的に保育園に入りやすい状況が継続しています。

東京都の待機児童(出典:東京保険局「都内の保育サービスの状況について 保育所等利用待機児童等の状況」)
自治体別のデータを見ると、24年は新たに7自治体が待機児童ゼロ人を実現。
待機児童が最も多いのは世田谷区の58人。次いで荒川区33人、町田市28人と続きます。
このうち世田谷区は、24年は10人でしたから、大幅に数が増えています。荒川区も、昨年0人を達成しましたが、今年は数を増やしました。
隠れ待機児童は高止まりの状況です。「隠れ待機児童」とは、「特定の園を希望している」「育児休業を延長している」などの理由により、待機児童としてカウントされないものの、入園希望が叶っていない児童のこと。民間団体「保育園を考える親の会」(東京都豊島区)の調査(全国の政令市と南関東の計100市区を対象に実施)によると、認可保育施設の利用申請をしたのに入れなかった子どもは、24年4月時点で4万3392人。国が集計した100市区の待機児童606人と大きな差があり、「国の待機児童は減少しているが、都市部では入園状況は悪化している」と指摘しています。
自治体の子育て支援制度
子育ては体力も費用もかかります。共働き世帯が当たり前になっている今、夫婦だけで子どもを育てるのは大変です。
そこで注目したいのが、自治体が展開している子育て支援制度です。経済的な支援(補助金や無償化など)はもちろん、医療・保育に関するインフラやサービスの拡充や質の向上に、数多くの自治体が取り組んでいます。
上記「共働き子育てしやすい街ランキング」でも、自治体の子育て支援策を総合的に評価したうえで、ランキングの順位をつけています。こうしたランキングも参考にしつつ、実際に住みたい街が決まったら、自治体のホームページなども調べて、どのような施策が展開されているかを把握しておきましょう。
治安の良さ
大切な子どもが犯罪に巻き込まれ、被害者になってしまうのは絶対に避けたいもの。
大人、特に20代~30代の子育て世代な女性にとっても、仕事で夜遅く帰宅するときや、出張や旅行で留守にするときなど、不安な場面は多々あるはず。安心して家族みんなで過ごせるようにするためにも、街の治安は必ず確かめたいところです。
警視庁の統計によると、2024年(令和6年)に東京都内で発生した犯罪の件数は94,752件。窃盗が最も多く、6割以上を占めています。

全刑法犯の発生状況(出典:警視庁「東京の犯罪(令和6年版)」)
警視庁はインターネット上で、都内区市町村の犯罪発生件数を、罪種別や手口別にまとめた統計資料や、地図上で犯罪発生状況を確認できる「犯罪情報マップ」を公開しています。
引っ越しの際には、これらを事前にチェックしてみましょう。現地に実際に行けるなら、交番などで聞いてみるのもいいかもしれませんね。
周辺環境
どんなに自治体の子育て支援が手厚かったり、自然が豊かでも、日常生活が大変では元も子もありません。
交通の利便性(電車の駅の数・近さ、バス路線の充実度、通勤通学にかかる時間)、小学校・中学校の場所や教育の質、病院や公園・公共施設、大型スーパーマーケット、ショッピングモールの数や立地、人によっては自然の豊かさなども、日常生活の質を大きく左右します。
また、エリアの特性によってはファミリー向けの間取りの物件が少ないことも。
もちろんGoogleマップなどでも駅までの距離や、お店や施設の数は調べられますが、できれば現地へ行き、自分の目で周辺環境を確かめてみることをおすすめします。
まとめ
治安や周辺環境は自治体が位置するエリアによって変わりますが、少子化が進む中、子育て支援は、あらゆる自治体にとって重要課題となっています。
今回取り上げた自治体も、地域や住民の特性に応じた子育て支援策を展開しており、待機児童もゼロ人、あるいは減少を実現しています。
自治体にとっても、子育て世帯や子どもが増えることは、運営する上でのメリットが大きいため、今後ますます子育て支援は充実していくと考えられます。また、物価上昇が続く中、経済的な支援策も増えていくでしょう。
都内の街8つを紹介しましたが、「ここなら子どもも自分も快適に過ごせそうだ」と思えた街は見つかったでしょうか。あなたやご家族にとって良さそうな街が見つかったら、次は住まい探しです。
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