
マンションを売却し利益が出ると、税金を支払わなければならないということを知っていますか?
あらかじめ税金がいくらかかるということを知らないと、マンション売却やお住み替えの資金計画も立てられませんよね。
自分が住んでいるマンションの売却する際には、さまざまな特例や軽減措置があるので、節税することが可能です。
そこでこの記事ではマンションの売却にかかる税金と計算方法・軽減制度について解説します。
02016/9/8初出⇒2023/1/11更新
目次
売却時に課税される5つの税金と納税時期
自宅マンションを売却した際にかかる税金には、必ずかかる税金と利益(譲渡所得)にかかる税金があります。
印紙税・登録免許税は、全ての売主に課税されます。
所得税・住民税・復興特別税は、購入時よりも高く売れたときだけ課税されます。
税の種類 | 支払い時期 | 支払い方法 | |
必ずかかる | 印紙税 | 売買契約時 | 印紙で納付 |
登録免許税 | 抵当権抹消手続時 | 印紙で納付 | |
利益が出た場合にかかる | 所得税 | 確定申告時 | 振込・振替 |
住民税 | 翌年6月頃から4分割で納付 | 納付書で現金納付 | |
復興特別税 | 確定申告時 | 振込・振替 |
それぞれの金額の目安を、くわしく見ていきましょう。
印紙税
まずは、印紙税から詳しく解説していきます。
印紙税とは、契約書や領収証に貼る収入印紙の代金のこと。
不動産を売買する際は、売買契約書に収入印紙を購入して貼ることで、税金を納めます。
印紙税の金額は、物件価格によって次の表のとおり決まっています。
2020年から2022年3月31日までに作成されるものについては軽減税率が適用されます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
参照:国税庁 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm)
登録免許税
マンションを購入する際、住宅ローンを組んだ人は、土地・建物が抵当に入っています。売却する際は、これを外さなければなりません。
つまり、ローンを完済し、抵当権抹消登記の手続きをとるわけです。
登記を行うと、登録免許税が課税されます。マンションの抵当権抹消登記の場合、通常土地で1,000円・建物で1,000円合わせて2,000円が課されます。
※別途司法書士報酬等(数万円)が必要になります。
所得税・住民税
買ったときよりも高い価格で売れて、譲渡所得を得た人に課される税です。
税率は売却のタイミングによって変わります。
- 購入後5年以下
- 購入後5年を超えるもの
この2通りです。
所得税・住民税の計算方法
- 5年以内に売却(短期譲渡所得):譲渡所得×39%(所得税30%+住民税9%)
- 5年を超えた場合(長期譲渡取得):譲渡所得×20%(所得税15%+住民税5%)
参照:国税庁 土地や建物を売ったとき(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm)
復興特別税
復興特別税は、2011年3月11日に起きた東日本大震災に対する、復興支援を目的とした税金です。
こちらも所得税・住民税と同様に、買ったときよりも高い価格で売れて、譲渡所得を得た人に課せられます。
2037年までは、譲渡所得の確定申告時に2.1%を併せて納付します。
復興特別税の計算方法
復興特別所得税=(譲渡所得×所得税率)×2.1%
マンション売却で得た利益「譲渡所得」とは
譲渡所得とは、売却によって得た利益のこと。買ったときに比べて「どれくらい高く売れたか」ということです。
ただし、諸費用である、仲介手数料・登記費用・各種税金なども考慮して算出します。
売却価格から購入価格や売買に伴う諸費用を差し引いたものが譲渡所得になります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得=売却価格 − (取得費用+譲渡費用)
参照:国税庁 建物の取得費の計算(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm)
取得費用には、マンションの購入代金はもちろん、諸費用(仲介手数料・登記費用・各種税金など)のほか、リフォーム・リノベーションをした場合、その費用も含まれます。
譲渡費用も同様で、売却代金のほか、諸費用(仲介手数料・登記費用・各種税金など)が含まれます。
ここで注意したいのが、建物は古くなるにつれて価値が下落していく(減価償却)ことも考慮しなくてはいけない、という点です。
したがって取得費用は、購入価格から減価償却分を差し引いて計算します。
RC造のマンションは、税法上の法定耐用年数を70年と定めています。
つまり、1年に0.015%ずつ価格が下がっていくことになります(償却率)。
マンションの減価償却の計算方法
減価償却費 = 取得価格×0.9×償却率×経過年数
※有形固定資産の残存価格(スクラップ価格)は取得原価の1割と定められているので0.9をかけます。
※減価償却は、建物代金のみが対象となります。土地代金は対象外。
参照:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数(https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html)
では、実際に譲渡所得や減価償却を算出し、課税額を計算してみましょう。
例題
4,000万円(建物2,000万円・土地2,000万円)の新築マンションを購入した。諸費用は200万円かかった。10年後、このマンションを4,500万円で売却した。このときの諸費用は150万円だった。この場合、所得税・住民税はいくら課税されるか?
計算方法
マンションの減価償却は、2,000万円×0.9×0.015×10年=270万円。
よって、築10年時点の建物価格は、2,000万円-270万円=1,730万円。
マンションの取得費用は、建物1,730万円+土地2,000万円+諸費用200万円=3,930万円。
譲渡所得は、4,500万円-(3,930万円+150万円)=420万円。
購入後、5年超の年数が経過してからの売却なので長期譲渡所得に該当
所得税: 420万円×15.315=643,230円
(復興特別所得税は15%×2.1%=0.315%を含む)
住民税:420万円×5%=21万円
合計で課税金額は853,230円になります。
※本内容は机上概算につき実際とは異なる可能性があり、税務署等への確認が必要になります。
共有物件の譲渡所得は誰のもの?
いまは共働きの家庭が増えて、住まいも夫婦の共有とするケースが多くなっています。
この場合、譲渡所得も持分に応じて分け合うことになります。
たとえば、夫婦で半分ずつ共有している自宅を売却し、500万円の譲渡所得を得られた場合、夫250万円・妻250万円と分け合うことになるのです。
また、このあとで説明する減税制度の3,000万円特別控除や10年超所有軽減税率といった特例も、夫と妻、それぞれ控除を受けることができます。
ですから、もし仮に5,000万円の譲渡所得があったとして、夫の単独名義だった場合は控除額の上限は3,000万円ですが、夫婦の共有であった場合は、実質6,000万円まで控除を受けられるのです。
ペアローンにおける住宅ローン控除と同様ですね。
関連記事:ペアローンとは?
- 同じ物件について2人以上の人が、それぞれに住宅ローン契約を組んでお互いに連帯保証人になる借り入れ方法。それぞれが住宅ローンを受けられるので節税ができますが、事務手数料などの費用はそれぞれに必要。またどちらか一方に万が一のことが起こった場合には、その分債務免除になります。
知らなきゃ損する? 軽減制度
譲渡所得にかかる税金については、売却したマンションが自宅であった場合に限り、特別に軽減措置が用意されています。
自宅を売却した場合の譲渡所得税の軽減措置
- 所有期間が10年超のマイホームの軽減税率の特例
- 3,000万円の特別控除
- 買い換え特例
所有期間が10年超のマイホームの軽減税率の特例
10年を超えて所有したマイホームを売却する場合、軽減税率が適用されます。
10年超所有軽減税率の要件
- 売却した年の1月1日時点で、10年を超えて所有していること
- 前年・前々年とこの特例を受けていないこと
- 買い換え特例や繰り越し控除の特例など、他の特例をいっしょに受けていないこと
- 以前に住んでいたが、いまは住んでいない家を売る場合、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
参照:国税庁 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm)
この特例を受けた場合の課税額は、つぎの表のとおりです。
所有期間が10年超のマイホームの軽減税率
- 譲渡所得のうち6,000万円以下の部分:譲渡所得×14%(所得税10%+住民税4%)
- 譲渡所得のうち6,000万円を超える部分:譲渡所得×20%(所得税15%+住民税5%)
譲渡所得が6,000万円を超えることはめったにありませんので、基本的に「所有期間が10年を超える場合、譲渡所得にかかる所得税・住民税は14%」と覚えておけばよいでしょう。
また、所得税額が安くなるのにともなって、復興特別所得税の金額も安くなります。
3,000万円の特別控除
実は自宅を売る場合、譲渡所得が3,000万円を超えない限り税金はかかりません。
譲渡所得が3,000万円を超えることはめったにありませんので、実際には多くの人がこの特例によって所得税・住民税の支払いを免除されることになります。
3,000万円の特別控除の要件
- 自分が居住する家であること
- 前年・前々年に、この特別控除や買い換え特例、繰り越し控除の特例を受けていないこと
- 収用等による特別控除など、他の特例をいっしょに受けていないこと
- 以前に住んでいたが、いまは住んでいない家を売る場合、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること
- 親子や夫婦など、特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
参照:国税庁 マイホームを売ったときの特例(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm)
ここで注意したいのが、この「3,000万円の特別控除」と住宅ローン控除との併用はできないということです。
つまり、この特例を受けると、新居を購入する際に住宅ローン減税が使えなくなってしまいます。
譲渡所得が少額である場合、あえて特別控除を受けず、新居の購入に住宅ローン減税を使う方がお得になる場合もあります。
まずは2章であげた計算方法で、譲渡所得によって課税される所得税・住民税を算出し、10年間で受けられる住宅ローン減税の総額と比べてみましょう。
関連記事:住宅ローン控除とは?
住宅ローンを利用してマイホームを購入したり、リフォームしたりした場合に適用になる控除。一定の条件を満たすことにより、住宅ローンの年末残高の0.7%が10年間ないし13年間、所得税と住民税から控除されます。
新築は年間最大21万円(長期優良住宅は35万円)が13年間、中古は年間最大14万円(長期優良住宅は21万円)が10年間控除されます。
買い換え特例
住宅の買い換えをする際に、新居が売却したマンションの価格より高い場合、譲渡益に対する課税を、次に売却するとき迄繰り延べできます。しかし課税を免れるわけではなく、先送りができるということです。また買い換えた住宅の方が安価な場合は、売却価格との差額が収入金額となり課税されます。
買い換え特例の要件
- 売却する家に、その年の1月1日時点で10年を超えて居住していること
- 売却価格が1億円以下であること
- 新居の土地面積が500平米以下、床面積が50平米以上であること
- 新居は築25年以内であるか、新耐震基準に適合していること
- もとの家の売却の前年〜翌年の間に、新居を購入すること
参照:国税庁 特定のマイホームを買い換えたときの特例(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm)
この特例を受けた場合、課税対象となる譲渡所得は、買い換えによって得た利益です。
つまり、家の売却で得たお金が、新居の購入費用を上回った分となります。
買い換えの場合の譲渡所得の計算方法
譲渡所得=収入金額−必要経費
収入金額とは、売却したマンションの売却価格と新居の購入価格の差額です。
また必要経費とは、買い換えに要した費用全般をいいます。
収入金額の計算方法
収入金額=売却した家の取得費用−新居の購入価格
必要経費の計算方法
必要経費=(売却した家の取得費用+売却の諸費用)×収入金額÷売却価格
とはいえ、実務では課税自体が免除される3,000万円特別控除を使われる方が多いでしょう。
買い換え特例も、3,000万円特別控除と同様、住宅ローン減税との併用は認められませんので、「住宅ローン減税を使うために3,000万円特別控除をあえて受けないことにした」という方にもマッチしません。
もとの家を親族に売却した場合など、この特例が検討されるケースは、実際にはやや限定的になります。
住宅ローン控除との併用は不可
譲渡所得が発生した場合、住宅ローンと節税系の特例を併用することはできません。併用できる特例とできない特例を一覧表にすると次表のようになります。
制度名 | 使用の不可 |
1.所有期間10年超のマイホームの軽減税率特例 | 2と併用できる |
2.3000万円の特別控除 | 1と併用できる |
3.買い替え特例 | 併用できない |
4.住宅ローン控除 | 併用できない |
3,000万円の特別控除と住宅ローンのどちらかを利用したら得かは条件によって異なってきます。したがって一つずつシミュレーションすることが大事です。
なお売却損が出た場合には、「住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と住宅ローン控除を併用できます。この特例については次章で説明しましょう。
損失が出た場合の救済措置
住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
自宅マンションを売却して損失が出た場合の救済措置。売った年の所得より譲渡損失が大きい場合は、その他所得と相殺して(損益通算)所得税や住民税を減らすことができます。なお控除しきれなかった分は、翌年以降3年間にわたって所得税と住民税から控除できます。
譲渡損失の繰越控除の要件
- 売った年の1月1日時点で5年を超えて所有していること
- 売却の時点で住宅ローンが残っており、その残額が売却価格を超えていること
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に売ったものでないこと
- 年間所得が3,000万円以下であること
参照:国税庁 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3370.htm)
上記を満たす場合、譲渡損失またはローンの残債、いずれか少ない方と同額が年間所得から控除され、所得税・住民税が安くなります。
譲渡損失の計算方法
売却価格−(取得費用+売却費用)
実際に例をあげて、計算してみましょう。
例題
取得費用4,000万円のマンションに10年住んだあと、2,000万円で売却した。このときの売却費用は70万円。
ローンの支払いは、残り3,000万円。
この場合、譲渡損失の繰越控除により所得税・住民税はいくらになるか。
なお、年間所得は600万円とする。
計算方法
譲渡損失は、2,000万円-(4,000万円+70万円)=▲2,070万円。
ローンの残債は、2,000万円-3,000万円=▲1,000万円。
したがってローンの残債の方が少ないので、こちらを年間所得から差し引く。
年間所得は600万円なので、この年の所得は600万円-1,000万円=▲400万円となり、所得税・住民税は課税されない。
実務では、会社員の所得税・住民税は給与から源泉徴収されるため、払いすぎた分が年末調整で還付される、という形になります。
※本内容は机上概算につき実際とは異なる可能性があり、税務署等への確認が必要になります。
投資目的の場合は消費税がかかる
はじめから転売目的で入手した物件・賃貸に出して家賃収入を得ている物件(自宅として居住していた物件を、転勤等が理由で賃貸に出した場合も含む)は投資用と見なされ、税制も自宅を売却する場合とは異なります。
もっとも大きな違いは、売却代金に消費税が課税されるということです。
ただし、利益の小さいサラリーマン大家さん等は「免税事業者」といって、支払いが免除されています。
ボーダーラインは、2年前の課税売上が1,000万円を超えているか否かです。
課税業者の場合、売却益が出たかどうか(買値より高い売値がついたかどうか)に関わらず、売却価格に対して消費税が課税されます。
とはいえ、課税対象となるのは建物価格だけ。土地は対象外です。
なお売却によって譲渡所得を得たときは、所得税・住民税が掛かるのは既述のとおりです。
相続した物件の相続税・所得税・住民税
相続した物件は、いわばタダで手に入れたことになるため、売却代金がまるまる譲渡所得として計上されると考えやすいのですが、実際はそうではありません。
相続によって亡くなった方(被相続人)の取得費用も引き継ぐことになるため、当時の購入価格をもとに損益を計上します。
また所有期間についても、被相続人がその物件を取得した日からカウントされます。
もし30年前に、当時3,000万円で購入した物件を相続した場合、取得費用は「3,000万円から30年分の減価償却をした価額」となります。
所有期間は30年。たとえ相続して間もなくても、30年間所有し続けていたものと見なされるのです。
このように、引き継いだ取得費用を計上して、なお売却益がみとめられた場合は、所得税・住民税が課税されます。
「相続税もとられたのに、さらに所得税もとられるの!?」と思う人もいるかもしれません。
そこで政府は、相続物件を売却したタイミングが、相続税の申告期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月間)から3年以内であった場合には、納めた相続税額の一部を取得費用として計上できる、という軽減措置を用意しています。
ここまで、様々な算出方法などをお伝えしてきましたが、状況によって税率が軽減されたりと、ちょっとややこしいなと思われる方が多いかもしれません。
ひかリノベでは自宅の売却のサポートも行っておりますが、その場合種々の税金がいくら掛かるのか、どの軽減措置を利用するのが一番ムダがないか、減税制度との兼ね合いも含めてご案内しています。
自宅の売却をお考えの方は、売却個別相談会を開催しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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※本内容は2023年1月11日時点での内容になります。税制改正等により実際とは異なる場合もございますので、最新情報は税務署等へご確認ください。