以前はマンションを購入するとき、頭金として現金で代金の一部を支払っておくことが一般的でした。
しかし最近では、頭金を払わず、全額を住宅ローンでまかなう「フルローン」を選ぶ人も増えています。
頭金ありの場合に比べ、フルローンを組むことにはいろいろな難しさがあります。中古住宅ならではの事情もあります。
この記事では、中古マンションをフルローンで購入する際の注意点などを解説します。
目次
フルローンとは
フルローンは、住宅購入にかかる全ての費用を、住宅ローンを利用して支払うことを指します。
以前は、購入費用の全額を融資してくれる金融機関は少なく、融資率(物件の購入価格に対する融資額の割合)は8割とする銀行が一般的でした。残りの2割は、貯金をしたり、親・祖父母から贈与を受けるなどして用意し、購入時に現金で支払っていました。これが「頭金」です。
今でも、購入費用の1~2割程度、頭金を支払っている人が多いようです。
ところが最近では、全額融資OKとする銀行が増えており、頭金なしでローンを組むこともさほど難しいことではなくなっています。
購入時の諸費用もローンで払える?
住宅を購入するときには、物件の代金のほか、税金・登記費用、各種の手数料が発生します。これらをまとめて「諸費用」と呼びます。
例えば、次のようなものが諸費用に当たります。
おもな諸費用
- 印紙税:売買契約書に貼る印紙代(物件価格1000万円~5000万円なら2万円
- 不動産取得税:不動産を取得したときにかかる地方税)「固定資産税評価額」×標準税率4%)
- 登録免許税:登記簿への登記にかかる国税(新築は評価額の0.4%、土地および中古住宅は評価額の0.2%)
- 司法書士への報酬:登記の代行を司法書士に依頼する場合の対価
- 固定資産税、都市計画税:中古住宅の場合、売主が既に支払った固定資産税、都市計画税を精算する必要がある。固定資産税評価額の1/6に相当する額の1.4%(標準税率)を、日割りで計算
- 仲介手数料:不動産会社などが仲介している物件を購入するとき、不動産会社に支払う(法定金額は「物件価格の3%+6万円+消費税」)
また、住宅ローンを組む時にも、契約書に貼る印紙代、事務手数料、保証会社の保証料・事務手数料、団体信用生命保険金(団信)の保険料などがかかります。
また、物件の引き渡しを受けてからは、引っ越し費用や火災保険料も必要です。
一般的に諸費は、新築マンションで物件価格の5%、一戸建て・中古マンションは10%と言われています。
フルローンの審査は厳しい?
住宅ローンを組むときには、銀行の審査を受けなくてはなりません。
銀行は年齢、収入や勤続年数、健康(病気の有無など)、個人信用情報(過去にローン返済やクレジットカードの支払いの遅れなどがないか)を確認し、きちんと貸したお金を返済してもらえると判断した相手にだけ、融資を実行します。
これは頭金ありの場合も、フルローンを組む場合でも同じですが、フルローンは頭金ありに比べ、審査が厳しくなる傾向にあります。なぜでしょうか?
フルローンはどうしても借入金額や返済負担率が大きくなる、というのがひとつ目の理由です。
また、ローンを組んで購入した住宅や土地には、銀行が抵当権を設定し、もし返済に支障が出たときにはその家や土地を売って融資したお金を回収します。
借入金額の多いフルローンは、物件の売却額をローンの残債が上回る(全額を回収できない)事態が起こりやすく、そのために審査も厳しくなりがち…というわけです。
中古マンションでもフルローンは組めるのか
購入するのが中古マンションでも、審査自体は新築と変わりませんが、物件の評価が融資額に大きく影響する点には注意が必要です。
先ほど説明したように、ローンを組んで購入した物件は金融機関が抵当権を設定します。
中古物件の場合、築年数や建物の状態をもとに、金融機関がそれぞれ査定して担保価値を評価するので、評価結果が物件の販売価格と、必ずしもイコールにならない可能性があります。築年数に制限を設けている銀行もあります。
販売価格3,000万円の物件でも、銀行が2,500万円の価値しかないと判断したら、融資額も2,500万円となり、全額を借り入れることはできません。
築年数の浅い物件や立地条件の良い物件であれば銀行からの評価は高まりますし、借入額が低ければ審査にも通りやすくなります。
中古マンションを、フルローンで購入希望の人は、物件の価値にも気を付けましょう。
フルローンを組むことのリスク・デメリット
厳しい審査に通ってローンが組めたとしても、フルローンにはいくつか特有のリスク・デメリットが存在します。フルローンを組む際には、次のような問題があることをまず理解しておきましょう。
金利が高い
頭金(自己資金)の有無や額によって、借入金利を変える銀行・商品があります。頭金なしの場合、たいていはありの場合に比べ金利が高く設定されます。
例えば住宅金融支援機構の【フラット35】は、融資率が9割以下・9割超、つまり頭金が物件価格の1割あるかないかで金利が変わります。
2023年2月時点でのフラット35の借入金利は下記の表のとおりです。
融資率 |
金利 |
もっとも多い適用金利 |
9割以下 |
年1.880%~年3.270% |
年1.880% |
9割超 |
年2.140%~年3.530% |
年2.140% |
返済の負担が大きい
借入額が大きくなるので、月々の返済額は高額になります。3,000万円の物件を、金利1.9%・返済期間35年のローン(ボーナス払いなし)で組んだとして計算してみましょう。
|
フルローン |
頭金1割 |
頭金2割 |
頭金 |
0円 |
300万円 |
600万円 |
借入額 |
3,000万円 |
2,700万円 |
2,400万円 |
返済総額 |
4,110万円 |
3,699万円 |
3,288万円 |
毎月の返済額 |
9万8,000円 |
8万9,000円 |
7万9,000円 |
フルローンは、頭金を2割用意した場合に比べて総支払額は800万円、毎月の返済額にして1万8,000円も多くなります。結構な差が出ますね。
フルローンは金利が高くなることを踏まえると、差はもっと大きくなることも考えられます。
また、返済期間もフルローンは長期化しやすくなります。金利変動の影響も受けやすくなり、総返済額が変わる可能性もあります。
オーバーローン(担保割れ)になりやすい
物件の担保評価額を、ローンの残高が上回ってしまう状況を「オーバーローン」「担保割れ」と呼びます。
建物は時間が経つほど資産価値が下がっていきますが、借入額の大きいフルローンでは返済のスピードがそれに追い付かず、「ローンの残債が2,500万円なのに物件の評価額は2000万円」といった状況が起こりやすいのです。
上記のケースで、もし物件を売却する必要が生じた場合、差額の500万円を現金で売主が支払わなくてはなりません。
売却しづらい、というのもフルローンのデメリット。将来、住み替えが必要になりそうな方などは、特にこのリスクを頭に入れておくべきでしょう。
フルローンを組むことのメリット
しかし、悪い面ばかりでもありません。フルローンを組むメリットも存在します。
フルローンなら頭金を用意する(貯金する)時間が不要で、すぐに住宅を購入できます。貯金の少ない若い世代ではフルローンを選ぶ人も多いようですし、中古マンションでお気に入りの物件を見つけたときも、買い逃す可能性を小さくできます。
頭金に充てるお金を手元に残せるのも、メリットのひとつと言えます。医療費や教育費が、予想以上の支出になることも人生ではありますが、手元のお金は大きな安心材料になるはずです。
また、今は超が付くほどの低金利。フルローンで借りても、金利の差額はまだ小さく抑えられます。あるいは、利率の良い投資先があれば、投資に回すほうが経済的には安定するかもしれません。
住宅ローン減税をフルに使う
毎年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除するのが、住宅ローン控除(住宅ローン減税制度)です。
中古住宅の場合、借入限度額2,000万円(認定住宅等は3,000万円)・控除期間10年間です。最大で1年あたり14万円(同21万円)、10年間で140万円(同210万円)の控除が受けられます。
借入額の大きいフルローンは、住宅ローン控除を最大限に活用できます。
2022年から、中古住宅の築年数要件が緩和され「昭和57年以降に建築された住宅」、つまり新耐震基準に適合していればOKになりました。
中古住宅でフルローンを組む場合は、ぜひ住宅ローン控除を利用しましょう。
適正な予算の考え方
結局のところ、いくらまで借り入れていいかの判断は、あなたやご家族のライフプランから考えるしかありません。
フルローンで借り入れられたとしても、返済の負担が、家計への大きな打撃になるならそれはやめた方がいいでしょう。頭金があったとしても同じことです。
逆に若くて返済期間の余裕もあり、月々の返済も大丈夫そうなら、フルローンを組むのも十分「あり」な選択肢になるかもしれません。
とはいえ、自分一人で考えるのはなかなか難しいもの。プロの意見を聞くことをおすすめします。
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