マンションの購入を検討するにあたって、管理費や修繕積立金が毎月いくらかかるのか、多くの人が気になるポイントではないでしょうか。
これらの費用はマションの維持管理に直接影響するだけでなく、住民の生活の質にも影響を及ぼします。とくに修繕積立金は、将来的に値上がりする可能性もあるので要注意。
この記事では、マンションの「管理費」と「修繕積立金」の相場、金額の決まり方や修繕積立金の値上がりの可能性について詳しく解説していきます。
目次
「管理費」と「修繕積立金」の違い
マンションの「管理費」は、共用部分の清掃やエレベーターの保守点検、管理人の人件費といった、日常的なマンションの管理運営に用いられます。
一方の「修繕積立金」は、外壁塗り替えや防水処理などの大規模修繕に備えて積み立てられている資金です。
毎月支払う管理費と修繕積立金の金額は、合わせて2~3万円程度が平均的な金額です。つまり、ローンの支払い以外に、毎月2~3万円のランニングコストがかかります。
管理費や修繕積立金は「安い方が良い」と考えがちですが、快適な住環境や資産価値を維持するためには、ある程度の金額が必要です。では、適正な管理費・修繕積立金の金額は、一体いくらになるのでしょうか。
管理費の相場と金額の決まり方
まずは管理費について、くわしく見ていきましょう。
マンションの日常管理には、先ほどあげた清掃業務のほか、館内の警備、植栽や庭の手入れ、エレベーターや自動ドア・電気・給排水設備の保守・運転などがあります。またプールやフィットネスジムなど共用施設がある物件では、その運営といった業務があります。
マンション運営の基本は「住民自治」ですが、実際にはこれらの煩雑な業務をすべて住民自身がおこなっている(自主管理)という物件はまずありません。ほとんどは管理会社に業務を委託し、派遣されてくる管理員に任せています(委託管理)。
したがって、管理費の6~7割は、管理会社に支払われる委託業務費にあてられます。
そのほか共用廊下やエントランス・エレベーター・自動ドア等の光熱費、電気・給排水設備の保守点検費といった支出も。これらの費用は、マンションの規模や共用設備・共用サービスによって必要な金額が変わってきます。
管理費の相場~戸数・階数・物件価格による金額の目安
国交省「マンション総合調査(令和5年度版)」によると、管理費の相場は戸数・階数・物件価格と相関関係があるようです。
下記のグラフは、戸数別・一戸当たりの管理費の比較。戸数が多いほど、一戸当たりの管理費は安くなっていますね。
20戸のマンションでも、100戸のマンションでも、管理人の人件費に差はありません。したがって戸数が多ければ多いほど、一戸当たりの負担は少なくなります。
ただし、大規模タワーマンションはハイグレード物件が多く、共用施設やサービスも豪華です。プールやフィットネスジムがあったり、24時間対応のコンシェルジュが荷物の預かりやクリーニングの手配をしてくれたりするので、運営コストも高めになります。
もっとも負担が抑えられる戸数は、151~200戸。30戸を切る小規模マンション、あるいは501戸以上のタワーマンションでは、逆に高くなっています。
総戸数規模別・一戸当たりの管理費の平均金額(出典:国土交通省「マンション総合調査(令和5年度版)」)
階数についても、戸数と同じことがいえます。
階数が低いマンションは、一戸当たりの負担が大きくなるのが一般的です。ただし戸数が多くても、タワーマンションの場合は共用施設やサービスの対価がかさみます。
もっとも負担が抑えられる階数は、11~19階建て。20階建て以上の超高層マンションでは、逆に高くなっています。
形態別・一戸当たり管理費の平均金額(出典:国土交通省「マンション総合調査(令和5年度版)」)
下のグラフは、スタイルアクト社の調査の結果を図解したもので、物件価格(新築時の分譲価格)と管理費の相関関係を表しています。わかりやすいよう、一戸70㎡として戸当たりに換算しました。
管理費は、新築時の分譲価格と比例します。ハイグレード物件は、共用施設やサービスも充実しているので、その分管理費もかさむためです。
新築時の物件価格別・一平米当たり管理費の平均金額(出典:スタイルアクト社「分譲マンション管理費 4つの特徴」)
管理費が抑えられやすいマンションとは?
上のデータを総括すると、管理費が安くおさえられるマンションの条件は次の3つ。
管理費の負担が小さいマンションの条件
- 戸数は151~200戸
- 階数は11~19階建て
- 新築時の分譲価格は3,500万円以下
中規模かつ中層、共用施設やサービスがシンプルな物件ほど管理費は安くなる、ということですね。この場合の管理費相場は、先ほどのデータから平均値を計算すると10,662円です。
共用施設はフィットネスジムやキッズルーム、ラウンジバーなど近年ますます多様化していますが、とくに「水」をつかった設備(プール・スパ・庭の噴水など)は維持費がかさみやすいです。管理費を節約するため、これらの施設を廃止するマンションもあります。
管理費を適正化するには?
管理費の主な用途は、管理会社への業務委託費です。
マンションの多くは、日常の管理業務を管理会社に委託しています。業務委託費には、館内清掃や警備の必要経費・管理員の人件費・管理会社の利益分などが含まれています。
たとえば管理員常駐(住み込み)物件であれば、日勤(毎日通い)または巡回(週に何回か通い)に変える。コンシェルジュ付き物件は、受付時間を短縮する。プールや噴水は維持費がかさみやすいので、思い切って廃止してしまう……このようにサービスや設備を削っていけば、管理費は安くおさえられます。
とはいえ、これらのサービスや設備はマンションのクラス感を左右する部分でもあります。削減を検討するに当たっては、入居者の意見や、実際の利用状況をよく検討する必要があります。
修繕積立金の相場と金額の決まり方
つづいて修繕積立金についても見ていきましょう。
修繕積立金の主な用途は、10~12年ごとに実施する大規模修繕です。
大規模修繕とは外壁の塗り替えや屋上の防水処理など、建物を維持するための大規模なメンテナンス工事をいいます。
国交省の調査によると、一回の大規模修繕に掛かる工費は、一戸当たり100~120万円以下が最多で、110.2万円が中央値です。
大規模修繕は、あらかじめ修繕計画によって「いつ・どこを直すか」が決められています。しかし、予測できない天災や事故によって計画外の修繕が必要になる場合もあります。管理組合は、そんな場合に備えた金額を積み立てていく必要があるわけです。
修繕積立金の相場~戸数・階数・築年数による金額の目安
先ほども引用した国交省の調査によると、修繕積立金の相場も、戸数・階数・築年数と相関関係があるようです。
下記のグラフは、戸数別・一戸当たりの管理費の比較です。戸数が増えるごとに毎月の修繕積立金は安くなっていきますが、300戸を超えるとまた高くなりはじめます。
その理由は管理費と同様、小規模マンションは一戸当たりの負担が重くなるため。建物が大きくなれば総工費も高くなりますが、外壁塗装の塗料などは大量発注すれば単価は安くなります。そのため、ある程度の規模のマンションの方が一戸当たりの負担は軽くなるのです。
ただし、大規模タワーマンションは共用施設が充実している物件が多く、とくにプールやスパなど「水」をつかった設備があると、防水処理に費用がかさみます。また、背が高い建物は外壁塗装の足場組みも大掛かりになりますから、その分費用がかさみやすくなります。
総戸数規模別・一戸当たりの修繕積立金の平均金額(出典:国土交通省「マンション総合調査(令和5年度版)」)
階数についても、戸数と同じことがいえます。
階数が低い=戸数が少ないので、一戸当たりの負担が大きくなります。ただし、20階建て以上のタワーマンションは、共用施設の維持や、外壁塗装の足場組みにも費用がかさみやすくなります。
形態別・一戸当たりの修繕積立金の平均金額(出典:国土交通省「マンション総合調査(令和5年度版)」)
下のグラフは、築年数と修繕積立金の金額の相関関係を表したもの。令和2年以降築の物件が突出して安く、1万円を切っていますね。その理由は、多くのマンションで築年数が経つにつれて修繕積立金を値上げする「漸増(ぜんぞう)式」が採用されているため。
新築分譲時はより多くの買い手を集めるために、デベロッパーは修繕積立金をなるべく安く設定します。しかし、地震や台風によって突発的な修繕が必要となったり、物価の変動により当初見込まれていたよりも高額の修繕費用が必要になったりする場合も考えられます。そのため「段階的に値上げをして、適正金額に近づけよう」という方針をとるマンションが多いのです。
完成年次別・一戸当たりの修繕積立金の平均金額(出典:国土交通省「マンション総合調査(令和5年度版)」)
修繕積立金が抑えられやすいマンションとは?
以上のデータを総括すると、毎月の修繕積立金の支払いが安くおさえられるマンションの条件は次の2つ。
修繕積立金の負担が小さいマンションの条件
- 戸数は201~300戸
- 階数は11~19階建て
この条件下での修繕積立金の相場は、先ほどのデータから平均値を計算すると、12,055円です。
修繕積立金を適正化するには?
修繕積立金の適正金額は、国交省がガイドラインを示しています。
下表は、そのガイドラインの金額をまとめたものです。
たとえば総戸数100戸・階数10階建て・床面積7,000㎡のマンションで、専有面積70㎡の住戸に住んでいる場合、月々の修繕積立金の目安は11,900~22,400円となります。
階数/床面積 | 月額・一戸当たり/㎡(許容幅) | |
20階未満 | 5,000㎡未満 | 335円(235~430円) |
5,000~10,000㎡未満 | 252円(170~320円) | |
10,000㎡~20,000㎡未満 | 271円(200~330円) | |
20,000㎡以上 | 255円(190~325円) | |
20階以上 | 338円(240~410円) |
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
ただし、機械式駐車場を有するマンションの場合は、次の金額が加算されます。
機種 | 修繕工費 月額/台 |
2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円 |
3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円 |
3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円 |
4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円 |
エレベーター方式(垂直循環方式) | 4,645円 |
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
たとえば50台分の2段(ピット1段)昇降式駐車場を有するマンションであれば、修繕工費は月当たり6,450円×50台=322,500円。
所有権の持分が1/100とすると、一戸当たりの負担は322,500円×1/100=3,225円です。
先ほどの修繕積立金と合わせると、15,125~25,625円となります。
この許容幅を超える、あるいは安すぎるようなら、見直しが必要となるでしょう。
上記の表をみると、床面積5,000~10,000㎡の20階建て以下のマンション(一般的な中層マンション)では、一戸当たり月々170~320円/㎡、つまり専有面積70㎡とすると11,900~22,400円が適正金額です。
一方で国交省の調査によると、現状、修繕積立金額の平米単価の平均値は181.9円/㎡、専有面積70㎡とすると12,733円、全国平均は13,054円となっています。
じつはいま、多くのマンションでは修繕資金が足りていません。修繕資金が不足すると、雨漏りや、非常階段の手すりが折れた等の事故のリスクも。堅牢なコンクリート建築も、手入れを怠れば、快適な住環境を保てず、資産価値にも影響します。タイルの欠けや塗装剥げが放置されている物件を、誰がすすんで買いたいと思うでしょうか?
もちろん、修繕積立金は不当に高すぎても問題です。近年「修繕工事の指揮を執る設計業者が、施工業者と結託して不当に高い工事費を請求している」といった事件も明るみになり、社会問題となっています。修繕積立金の使途が不明瞭な場合は、早急に改善が必要です。
修繕積立金が値上がりする理由は?
修繕積立金は、前述のとおり「漸増式」を採用しているマンションが多く、長期的には値上がりの可能性があります。
国交省のデータによると、漸増式を採用している物件は全体の47.1%。全体傾向として、完成年次の新しいマンションほど、漸増式を採用しています。
デベロッパーとしては、マンション分譲時に空室を作らないため、修繕積立金の金額もなるべく低く抑えたいのが本音です。その結果、経年とともに積立金額が不足し、住民負担を徐々に増やす必要が出てくるというわけです。
分譲時に修繕積立金を安く設定されているほど、今後の値上げを意識する必要があります。
先ほど修繕積立金の平均額は「平米単価181.9円/㎡、専有面積70㎡とすると12,733円、全国平均は13,054円」と述べましたが、この金額より安価に設定されている場合は、将来的に値上がりする可能性が高い、と考えた方が良いでしょう。
売主が管理費・修繕積立金を滞納していた場合は?
もしも売主が管理費や修繕積立金を滞納していた場合、支払義務は買主に継承されます。
とはいえ、管理費や修繕積立金の滞納の有無は、重要事項として購入時に説明が義務づけられています。そして通常は、決済のときに売却代金から精算されます。
中には「そんな説明はされていないのに、入居後に管理組合から支払い請求がきた!」という方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、滞納していた売主に支払いを請求できます。また仲介会社に対しても「説明を怠った責任を追及できる」とした判例があります。
まとめ
誰でも余分な出費は押さえたいもの。管理費や修繕積立金も、安くなるほどうれしいようですが、きちんと管理がなされているのか不安も残ります。
マンションの管理状態をはかる指標として、管理費や修繕積立金の適正金額を知ることはとても重要です。この記事では、管理費と修繕積立金の相場について解説しました。マンション購入を考えている方は、ぜひこの記事を参考になさってくださいね。
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