マイホームの購入にあたり、注文住宅と建売住宅のどちらがいいのか……悩まれる方も多いのではないでしょうか。
同じ戸建住宅ではありますが、ゼロから設計する注文住宅と完成物件を購入する建売では、それぞれ違ったメリット・デメリットがあります。
「注文住宅向きの人と建売向きの人、それぞれタイプが分かれる理由はなに? 」
「一般的によく選ばれているのはどっち?」このような疑問を感じている方へ。
今回は、マイホーム購入時のお悩みについて解説していきます。将来、マイホームを検討しているという方は、ぜひチェックしてみてください!
2020年9月28日初出→2022年1月20日更新
目次
注文住宅と建売住宅の違い
注文住宅とは
土地の選定から建物の詳細なプランまで、自由度の高い住宅を設計することができる建築方法です。一般的に、大手ハウスメーカーや設計事務所に依頼するケースがほとんど。
家族のこだわりを詰め込んだ、「世界に一つのマイホーム」という思い出、気持ち的な満足感を得たい方におすすめです。
こだわりを詰め込むことができる分、土地の購入にも建築業者と相談が必要だったり、建築プランによっては決定までに最低3ヶ月程度、毎週のように打ち合わせがあったりすることも珍しくありません。
施工期間についても、短くて4ヶ月〜通常半年ほどはかかります。さらに大規模であったり、RC造(コンクリート)の建物の場合は、8ヶ月〜1年ほどかかることもあります。
ですが、建売住宅と違って、注文住宅は設備や建物、メンテナンスに対する保証が充実するケースが多く、時間はかかるけど安心材料は多い方法といえるかもしれません。
建物に対するサービスの質といった面でも、いい意味で他社と差別化されているといえるでしょう。
以下に、注文住宅のメリット・デメリットをまとめました。
注文住宅のメリット
- 設計プランの自由度が高い
- 完成までの工程を細かく見ることができる(変更したい部分などが伝えやすい)
- 建物や設備、メンテナンスに関するサービスの質が高いことが多い
注文住宅のデメリット
- 建売住宅に比べて、施工費用(=建物費用)が高額になるケースが多い
- 土地購入から実際に住むまでの時間が長くかかる
- 完成品の見本がないため、完成時にイメージと異なる仕上がりになってしまう可能性もある
建売住宅とは
こちらは、不動産会社によってあらかじめ建てられた「土地付きの住宅」として販売されているケースです。販売のタイミングは、完成前から売り出していることがほとんど。
注文住宅に比べて、おおよその設計プランや仕様がすでに決まった状態で施工に入るため、入居までの時間が短いことも特徴です。
金額についても注文住宅より安価な傾向にあり、これは不動産業者が安く土地を仕入れることができるネットワークを持っていることに影響しています。
金額が安い分、設計プランの自由度は低めです。個性を出した家づくりは難しくなります。基本的には同じような住宅が立ち並ぶことが多いのですが、以前ほど周囲の住宅と「全く同じ」という訳ではなく、最近では色や素材など、多少のオリジナル性を取り入れることも可能になっています。
また、間取りもその時代に合わせたものを取り入れているため、余程のことがない限り「時代遅れで使いにくい間取り」になってしまうという心配はありません。
以下に、建売住宅のメリット・デメリットをまとめました。
建売住宅のメリット
- 注文住宅より安価で、予め資金計画も立てやすい
- 購入前に現物を見ることができる
建売住宅のデメリット
- 個性を出すことが難しく、オリジナル性に欠ける
- 理想の間取りや設備などに出会えるまで、時間がかかる可能性が高い
徹底比較! 注文住宅vs建売住宅
注文住宅と建売住宅(いずれも新築住宅)の違いについてみてきましたが、ここでさらに詳しく比較していきましょう。「費用面」「期間」「労力」といった金銭以外のコストをポイントにみていきます。
費用が抑えられるのは建売住宅
建売住宅は予め販売価格が明示されているため予算が立てやすく、後から予算オーバーしてしまうといった心配もありません。
対して、注文住宅は土地を選ぶところからスタートします。
注文住宅を選ぶ場合は、こだわりが強く、マイホームに対して高い理想を持っているパターンが多いです。格安で土地を手に入れたり、重要なこだわりポイントだけに絞って費用をおさえない限り、建売住宅の方が安くつくケースが大半でしょう。
さらに、注文住宅のオーダーを見越して購入した土地の地盤が弱い場合には、地盤改良工事という作業が必要になります。建築メーカーの基準にも左右されますが、実際に地盤確認作業をしてみないとわからないこともあり、土地を購入する人にとって必然的なリスクとなります。(通常は売買契約時にリスクが明記されるため、いわゆる瑕疵にはあたらず、その費用を売主に請求することは出来ないと考えたほうがベター)
さらに、建売住宅と同じように予め予算を決めて設計プランを立てますが、建物本体の工事費のほかに外構やカーポートなどの付帯工事費や設計料などが必要になるケースもあるため、より正確な予算の検討をつけることは建売より難しくなります。
入居までの期間・労力も建売住宅が低コスト
前章でもお伝えした通り、建売住宅の方が入居までの期間も短くスムーズです。
ここでは建売と注文、それぞれ入居までにかかる期間をチェックしてみましょう。
入居までの期間
- 建売住宅:完成後すぐ入居可能(建築開始から3~4か月ほどで完成)
- 注文住宅:土地購入後10ヵ月後程度が目安(3か月で設計から着工まで、半年で建築するイメージ)
注文住宅にかかる労力は、建売に比べると相当なものがあるのは確か。
ですが注文住宅を選んだ場合、マイホームづくりの過程にも価値や楽しみを感じているという方も多いもの。一概に「注文住宅の方が、労力がかかる」とはいえない部分もあります。
設計の自由度は注文住宅
注文住宅は、いわば完全オーダーメイド。間取りや内装・外装、設備、コンセントの数や位置といった細部まで、なんでも自由に決められることが最大のメリットです。
建売はどうしても「万人向け」のデザインや機能になりがちですので、こだわりの強い人ほど注文住宅を選んだ方が、満足度は高くなるでしょう。
一点だけ注意したいのは、注文住宅は施工主のイメージを他人に伝えて作り上げていくため、イメージの共有が不十分だと、実物が出来上がったときのギャップが大きくなり、「がっかりした」というケースもしばしば見受けられます。
(例:シンプルモダンに白黒トーンにしたつもりが、ただ薄暗い感じののっぺりした建物だった)
注文住宅に向いている人・建売住宅に向いている人
マイホーム購入にあたって重要なことは、「自分がなにを重要視するか」という点です。
そのため、一概に「注文住宅の方がいい」「建売の方がいい」というのは難しく、周りの意見や評判より、「自分はどちらに向いているのか?」を判断して選んだ方が、購入後の後悔は少なくなるでしょう。
下記に、それぞれの建築方法に向いている方の特徴を記載しました。注文住宅と建売住宅、どちらを選ぶか迷ったときの参考になさってください。
注文住宅に向いているタイプ
なんといっても「家づくりを楽しみたい」「こだわりを実現したい」といった方は、注文住宅に向いたタイプでしょう。
資金面の心配がそこまでないのであれば、自由でこだわりを詰め込んだ「自分だけの家」を完成させることができます。ただし、単に値段の高い安いといった話ではなく、建築業者や設計士との相性もポイントとなります。
資金面に多少の不安があっても、彼らのツテやアイデア次第では、安く理想を叶えることもできますし、反対に作りたいデザインのイメージ共有ができない相手だと、資金が十分でもイメージと違った家に仕上がる可能性もあるのです。ほかにも、土地の規制などに左右されて理想が叶わなかった……という可能性も考えられます。
マイホーム購入は、人生で一番大きな買い物という方も少なくありません。
「どんなことがあっても、世界で一つだけの自分の家を建てたい」という想いが強い方は、注文住宅を通じて大きな満足感を得られるはずです。
注文住宅に向いている人
- 理想としているこだわりのマイホームの形がある
- 資金面と時間に十分な余裕がある
- 設計士や建築業者との密なコミュニケーションが苦ではない
建売住宅に向いているタイプ
比較的若い年齢で住宅購入をする場合、仕事や子どもの進学に合わせて住宅購入をする場合には、建売住宅が有力な選択肢となるでしょう。
あくまで数字上の話しですが、実際に注文住宅よりも建売住宅を選ぶ人の方が圧倒的に多いというデータもあります。その割合は、戸建て購入者の7〜8割りを占めるともいわれています。
資金面でいうと、通常不動産の購入時には仲立ちをしてくれた不動産業者に仲介手数料(不動産価格の約3%+消費税)を支払うことになります。
しかし、建売住宅を購入する場合、不動産業者から直接購入することにより、この仲介手数料を支払わなくてよくなるのです。
たとえば、4,000万円の建売物件を買う場合の仲介手数料は、4,000万円×3%+6万円=126万円に消費税10%を加えて、138万6千円かかることになります。決して小さくない金額ですね。
建売住宅に向いている人
- マイホームに対するこだわりはがあまりない
- コスパ良く戸建て住宅を手に入れたい
- 購入を検討してから実際に住むまでの期間を短くしたい
どちらを選ぶ人が多い?
結果的には建売住宅を購入する方が多いですが、「出来るのであれば注文住宅を建ててみたい」という気持ちを持っている方も相当数いるようです。
家に対するこだわりは別として、現実問題の第一に資金面、第二にライフスタイル(子どもの進学や転勤などのタイミング)を検討した上で、注文住宅か建売住宅かを選ぶと失敗が少ない傾向にあるようです。
購入者の傾向には地域差も
高級住宅街といわれるエリアは、やはり注文住宅が多い傾向です。そもそもそういったエリアに住む人は年収が高く資産背景がある人が多いため、注文住宅を選択することに抵抗がない人が多いのです。
また、土地売り(更地で売ること)でもよく売れるエリアのため、地域の売主も不動産業者も、土地で売りに出すことが他のエリアよりも多い傾向にあります。
都市部と異なり、比較的大きな建物を建てることがスタンダードな田舎エリアでは、建売住宅と注文住宅のコスト差が小さくなります。田舎地域では、あまり大きな規模の建売住宅というのは作りにくいため、その数は少なくなります。半面、土地が比較的安価に取得できることから、注文住宅をオーダーしやすい環境となっています。
「都心は高くて買えないけど、通勤になるべく便利な場所で戸建てがほしい」
こういった人が住むようなエリアでは、自然と建売住宅が多くなります。
東京郊外や埼玉・千葉・神奈川の東京寄りの地域のような、いわゆるベッドタウンがこれに当たります。土地値もある程度の価格がつくため、コスパ良く建てたいというニーズがあり、かつ忙しい共働き世帯である場合も多く、必然的に建売住宅が主流となります。
まとめ
「理想を詰め込んだ家」を考えると、デザインや場所の自由度が高い注文住宅がいいことは間違いありません。しかし、住み替えるタイミング、コスト、場所などをトータルで考えた場合、なにが理想かは人によって異なってくるでしょう。
大切なのは、「自分(家族)にとって最も大切なことはなにか?」をじっくり考えること。最初から「建売でいい」「絶対に注文住宅」と決めつけず、複数の建売を見学しにいったり、ハウスメーカーに相談したり、色々な情報を集めてみると自分に合ったマイホームの条件が絞れてくるはずです。
「〇〇年までに家を買いたい!」といった目標時期が決まっている場合には、早めに動いて検討を進めておくことで、妥協した選択で後悔するのを防ぐことができます。
みなさんも、ぜひ素敵な住まい探しを楽しんでくださいね。