ドアは音漏れの原因になりやすい箇所です。部屋の防音性を高めるためには、ドアの選び方がとても重要になります。
「防音ドア」と一口に言っても種類や性能はさまざま。自宅でのWEB会議時に話し声が漏れることを防ぎたい、家族の眠りを妨げずに夜の映画鑑賞を楽しみたい、楽器演奏用にしっかり防音したいなど、目的もそれぞれ異なるでしょう。
住まいの環境やライフスタイル、防音する目的に合ったドアを選ぶことが大切です。
この記事では、防ぎたい音に合わせた防音ドアの選び方のポイントを解説します。
目次
ドアから音漏れがしやすい理由
窓やドアといった開口部は、部屋の中で最も音が漏れやすい場所といわれます。どのような理由でドアから音が漏れるのか、まずはそのメカニズムを理解しましょう。
壁よりも厚みがない
ドアは、設置してある壁と比較しても厚みがないため音を通しやすく、遮音性が低い場所です。
音は振動が空気を伝わることで私たちの耳に入ってきます。
壁が薄かったり、ドアの厚みがないと振動が伝わりやすく、結果として音が室外に漏れたり、外からの騒音が室内に入りやすくなってしまうという訳です。
したがってドアの防音性能を向上するには、ドアに厚みを持たせる必要があります。
またドアに密閉性や遮音性を持たせるためには、ドアの材質も重要です。中が空洞になっている木製のドアよりは、鉄製やコンクリート製など単位面積当たりの質量が大きな素材の方が、遮音性能が優れています。
隙間ができやすい
ドアはその役割ゆえ、隙間ができやすいのが特徴です。
扉を左右にスライドさせて開閉する引き戸では、壁とドアの間に隙間が生じます。
手前や奥に開く開き戸では、ドアの上下や丁番が付いている側、ロックをかける側に隙間が生じやすくなっています。
ドアと床・壁との隙間があると、空気と共に音も漏れてしまいます。
そのためドアの防音性能を高めるためには、ドアと壁との間に隙間を作らない工夫が必要となります。具体的には、ドアと壁や床との間にゴムパッキンを使用するなどして、隙間を極力なくすような対策です。
この音は何デシベル?人の声、テレビ、楽器
会話の声やテレビの音、楽器の演奏音など、音の種類によって、音の大きさ・響きやすさは異なります。
家で過ごす中で聞こえてくる音は、どのくらいの大きさなのでしょうか。下表を参考にいくつか例をみていきましょう。
音の強さは、音圧レベルの値を示すdB(デシベル)で表現されます。
日常でよく耳にする生活音では、通常の声の大きさでの会話や、テレビの音が60dB程度。
楽器の音は100dBを超えます。100dBは、なんと地下鉄の電車内の音と同程度です。
そのため楽器演奏用の防音室は、とくに高い防音性能が求められます。
日常の音 | 小さな寝息 | 20dB |
静かな図書館内 | 40dB | |
通常の会話 | 60dB | |
目覚まし時計の音 | 80dB | |
地下鉄の電車内 | 100dB | |
楽器の音 | ピアノ | 90~100db |
ボーカル | 100~110dB | |
ドラム | 110~120dB |
目的別・必要な防音性能の考え方
上述のとおり、音によって音の大きさや響きやすさが大きく異なることがわかりました。このように「防音リフォーム」とひと口にいっても、目的に応じて必要とされる性能は変わってくるのです。
防音リフォームを計画するとき、防音ドアを選ぶ際の具体的な基準となるのが「遮音等級」です。
遮音等級とは、建物の壁・床・窓サッシ等の遮音性能を示す指標です。
壁や建具の遮音等級は「Dr値(D値)」で表現されます。これは隣接する部屋同士の音圧レベル差を示した指標で、「D-○○」という数値で表現されます。
D-60とは、60dBの音を遮ることができる、という意味になります。
もうすこし具体的に見てみましょう。下表は、テレビや人の話し声(60dB程度)とステレオやピアノの音(100dB程度)が、D値ごとにどの程度遮られるかをまとめたものです。
遮音性能 | テレビ・ラジオ・人の話し声 | ステレオやピアノなどの大きな音 |
D-55 | 通常では聞こえない | かすかに聞こえる |
D-50 | ほとんど聞こえない | 小さく聞こえる |
D-45 | かすかに聞こえる | 聞こえる |
D-40 | 小さく聞こえる | 曲がはっきりわかる |
D-35 | 聞こえる | よく聞こえる |
D-30 | 話の内容が分かる | 大変よく聞こえる |
D-25 | はっきり内容が分かる | うるさい |
防音リフォームを計画する際のポイントは、完全に遮音する必要はないということです。生活音に紛れる程度に抑えることができれば、通常の生活で「うるさい」と感じることはありません。
楽器演奏用の防音リフォームの場合、例えばピアノ演奏室ですと、D-55以上が目安となります。
このように何を防音したいのか、防音するにはどのくらい遮音ができたらいいのかを検討して、防音リフォームを計画しましょう。
開き戸と引き戸、防音性が高いのは?
住宅のドアには、大きく分けて「開き戸」と「引き戸」の二種類があります。
防音性能が高いのは、開き戸と引き戸、どちらでしょうか。
ドアは壁との隙間にゴムパッキンを使用して音漏れを防いでいます。このときゴムパッキンをドアの周囲にただくっつけただけでは不十分で、パッキンをつぶすようにして密着させることで空気を遮断します。
引き戸の場合、ゴムパッキンをドアの圧力でつぶし続けることが難しいため、開き戸のほうが基本的に防音性能は高いといえます。
防音性能を高めた引き戸製品もありますが、開き戸よりもバリエーションが少なく、価格も高いので、こだわりがない場合は開き戸をおすすめします。
防音室のドア選びのポイント
ピアノ・管楽器・ドラムなど、楽器の音は大きく響きやすいもの。したがって楽器演奏用の防音室には、高い遮音性能が求められます。楽器演奏室の防音ドアは、どのように選べばよいのでしょうか。
素材~おすすめは「スチール製」
楽器演奏を想定した防音室のドアは「スチール製」がおすすめです。
音は空気を振動させることで私たちの耳に入ってきますが、音の性質として、質量が重ければ重いほど振動の伝達に抵抗が生じます。つまりコンクリートや鉛といった質量が重い材質ほど、音を遮断しやすいという訳です。
スチールは鉛よりも価格が安く、コンクリートよりも劣化しにくく加工しやすいため、防音室のドアに多く採用されています。
意匠性にこだわる方ですと、「木のドアにしたい」と要望される方もいらっしゃいます。木製の防音ドアも販売されていますが、厳密な遮音性が求められる楽器演奏用防音室のドアとしては、やはりスチール製をおすすめします。
ハンドル~おすすめは「グレモンハンドル」
ドアハンドルの形状や種類も、ドアの防音性能に影響します。
防音室のドアハンドルに適しているのは「グレモンハンドル」と呼ばれるローラー締まりのハンドルです。「グレモン錠」と呼ばれることもあり、ドアを閉めてハンドルを回すとドア枠とパッキンの付いたドアが多点で密着し、高い気密性を保つことができます。
また、グレモンハンドルはハンドルとロックが連動しており、レバーの上げ下げだけでロック操作が可能です。構造が単純なので壊れにくいというメリットもあります。半面、ピッキングされやすいという弱点もありますが、室内扉なら防犯上も問題ありません。
ドアにゴムパッキンを付けても、通常のドアハンドルではパッキンをギュッと押し切ることが出来ません。より高い精度が求められる楽器演奏室では、ドアパッキンを締め付けられてしっかりとドアを固定できるグレモンハンドルがおすすめです。
まとめ
防音室工事は壁や床天井だけでなく、ドアや窓などの開口部の防音対策が欠かせません。
簡易的な防音ドアなら30㏈ほど、本格的な防音ドアは50~60㏈も音をカットしてくれます。オプションで二重ガラスが入った覗き窓や鍵を追加できるような商品もあります。ご自宅の環境やライフスタイル、防音する目的に合わせて、ドアを選びましょう。
防音リフォームには、通常の建築の知識だけでなく、楽器の音の響き方や建物への音の伝わり方に関する専門的な知識と経験が必要です。防音室リフォームをする場合は、必ず防音工事に特化した業者に依頼して下さい。
この度ひかリノベでは、防音工事のスペシャリストである昭和音響さんと提携しました。昭和音響さんは一般住宅だけでなく、ライブハウスなど高い防音技術が必要な現場での実績も豊富。
防音室を新設するには、家の骨組みまで露にするスケルトンリノベーションのタイミングがベストです。マンション、一般住宅の防音室リフォームは、是非ひかリノベにお任せください。
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