世界有数の地震大国である日本。加えて近年は、豪雨や台風による大規模な被害も各地で多発しており、命を落としたり厳しい環境での生活を余儀なくされている方が後を絶ちません。
しかし、自然災害は人間の力では避けようのないこと……。
もしもの時に、あなたやご家族の命を守るには「防災」のための日頃の備えや訓練が不可欠です。
マンションは、歴史的に見れば比較的新しい住まいのかたちです。今回は、マンションだからこそ存在する「防災のポイント」もご紹介します。
安心・安全なマンションライフのための防災知識を一緒に学びましょう!
2019年10月1日初出→2020年9月2日更新
目次
マンションで地震が起きたらどうなる?
地震が来たらマンションは倒壊するのか
1981年に耐震基準が改正される前は、「震度5程度の地震が起きても倒壊しないこと」というのが基準でした。(旧耐震基準)
しかし、現在の「新耐震基準」では、許容応力度計算(構造部材がどれだけの力に耐えられるかを計算すること)、保有水平耐力計算(水平方向の強さの計算)を行い、「震度5の地震ではほとんど損傷しないこと」「震度6~7の地震が起きても倒壊しないこと」といった基準に変わっています。
実際に起きた巨大地震の中でも、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などは震度7を記録するものもありました。現在の耐震基準は、それらの揺れに対して、倒壊することがないだけの耐震性を持たせることが義務付けられています。
マンションは戸建よりも揺れる?
戸建てに比べると、中・高層のマンションは、上階になるほど揺れが大きくなる傾向があります。
大規模な地震は長周期地震動(ゆっくりとした大きな横揺れが10分間ほど続く)が発生しやすく、高層の建物はとくに影響が大きいと言われています。
建物が大丈夫でも、揺れによって室内の家具・家電が倒れる、落下する、棚の中のものが飛び出す、窓ガラスが割れる……など、さまざまな被害が発生します。
揺れが増幅される上階ほど、こうした被害は大きくなると予想され、実際に熊本地震では、負傷したマンション居住者の4割が家具類の転倒によってけがをしたというデータもあります。
新耐震基準の適用により、大きな揺れが起こった場合でも建物が倒壊することはありませんが、家の中の落下物の防止対策や家具の配置などには配慮する必要があります。
地震が起きてしまったときするべきこと
では、実際に災害が発生したら、どうすればいいのでしょうか。
災害発生時、第一に考えるべきは「身の安全を確保すること」です。
大きな地震が起きたら、柱や手すりにつかまり、揺れで体が投げ飛ばされないようにしましょう。倒れたり落下しそうな家具からは離れ、クッションや布団などで頭を守ることも忘れずに。
部屋の中にいる場合も、地震によって扉が歪み、自分の部屋や玄関の外に出られなくなる可能性があります。家具の転倒などに気を配りつつ、戸を開けて出口を素早く確保することも重要なポイントです。
また、地震の影響で停電することも十分考えられます。電気が供給再開した時に、オーブントースターや電気ストーブなどが再び動き出すことで、通電火災が起こるのを防ぐためにも、必ずブレーカーを落としてから避難するようにしましょう。
エレベーターに乗っていたら?
もしも、揺れが起こった時にエレベーターに乗っていた場合は、全ての階のボタンを押して止まった階でエレベーターから降りてください。
動いているからと言って、再び乗り込むのはやめましょう。
火を消すのは揺れが収まってから
突然大きな揺れが起こると、「ガスの火を消さなきゃ!」という考えが頭に浮かび、火の元に向かってしまうという方多いのではないでしょうか。しかし、それは間違いです。
今は、地震の揺れを感知して自動でガスの供給を停止してくれる、ガス漏れ遮断器が設置されているご家庭がほとんど。
慌てずに、地震の揺れが収まってから火の元を確認しに行くようにしましょう。
日ごろから備えておく
ここからは、地震が起きる前にやっておくべき防災対策をお伝えします。
家具の転倒防止
マンションで地震時の安全性を高めるには、揺れで大きな家具が倒れないようにすることが重要。家具を固定するだけで、地震による転倒のリスクを大きく軽減できます。
たんすや本棚のような大型の家具は、L字金具やつっぱり棒、転倒防止板(ストッパー、家具の下に差し込むもの)で確実に固定しましょう。
このうち、つっぱり棒や転倒防止板だけでは転倒した事例が報告されており、最も効果的とされるL字金具や、複数の器具を組み合わせて使うことをおすすめします。
テレビやパソコンの脚の下に耐震シートを敷く、戸棚のガラス戸にフィルムを張る、キッチンの吊戸棚の開き戸に留め具(耐震ラッチ)をつけるなどの対策も、忘れずに行います。
これからリノベーションをするなら、転倒防止金具を取り付けられるように下地を補強することも検討しましょう。
さらに、揺れで扉が開かない機能のついた収納、建物自体が損傷しても開閉できる耐震型のドア枠、揺れを感知して火を微動的に消すコンロなど、災害時の安全性を高める部材・設備を採用するのが望ましいと言われています。
ライフライン寸断に備える
災害が発生すると、停電や断水がしばしば発生します。交通網も寸断されたり混乱が生じるため、生活必需品の入手も困難になります。
復旧までには一定の時間を要するので、生活に必要なエネルギーや水、食料を確保しなくてはいけません。
最近では、管理組合が中心となって飲料水や非常食、工具やヘルメット・軍手、担架、医薬品、発電機などを備蓄しているマンションが増えています。
あなたがお住まいのマンションに防災倉庫があるのなら、何がどれくらい備蓄されているのかを日頃から知っておくことが大切です。
とはいえ、防災倉庫の備品はマンション住民の共有物。けがをしてしまったり、年齢や体の状態から行動に制約のある方もいるでしょうから、自分でも防災用品や非常食の備蓄をしておくべきです。
食料の備蓄量は「10日分×家族の人数」が目安と言われます。懐中電灯やラジオのように電池を使う機器は、予備の電池を用意しておいたり、手巻き式など電池が不要なタイプを選びましょう。
また、水道が止まっていないなら、浴槽やペットボトルに水をためておくのも有効。
トイレを流したりする場合などに使用できます。
(自宅のトイレを災害時に使う場合、配管の破損には注意してください)
住民同士の助け合いで被害を減らす
「共助(きょうじょ)」という概念があります。公的な機関による支援ではなく、住民同士の助け合いによって、安心な暮らしをつくろうとする考え方です。
多くの人が集まって暮らすマンションでは、より重要な考え方だと言えるでしょう。
自主的に防災活動を行う、いわゆる「自主防災組織」を規約で定めているマンションも存在します。
消防法では、マンション(共同住宅)においては年1回以上、消防避難訓練を行うことが定められています。
管理組合や管理会社にとって訓練の実施は義務ですが、住民が参加してこそ意味があります。
東京都の調査によると、地域の防災訓練への参加率は年々上昇してはいるものの、3割程度にとどまっており、コンスタントに参加している人は1割にも満たないという現状もあります。
災害の被害は、同時多発的に発生するため、発生直後は警察や消防の救助が来るまでに時間がかかる可能性も……。
そんな状況で被害を最小限に食い止めるには、住民による初期対応が欠かせません。定期的に訓練に参加しておけば、もしもの時に取るべき行動がわかります。
自分や家族の身を守ることにも繋がるので、積極的に参加しましょう。
マンションによっては、管理組合が独自の防災マニュアルを作成していることも。あれば各世帯に配布されているはずですので、日ごろから内容をチェックしておきましょう。地域の避難所や、給水拠点も確認しておくとベターです。
避難経路を確認
最近、日本国内の防災意識の高まりから「ハザードマップ」という言葉を耳にする機会が増えましたね。ハザードマップは、水害や土砂災害・津波・液状化が、どのくらいの確率で発生するのか、どのくらいの規模になるのかを想定し、地図上にあらわしたものです。
多くの自治体が、ホームページ上でハザードマップを公表しています。地震に備えて、お住まいの地域のマップを確認し、避難経路をイメージしておきましょう。
また、自宅から一番近い避難場所も確認しておくことをおすすめします。学校や体育館などが指定場所になっていることが多く、家族全員で一緒に確認しておくとで、離れているときの災害にも備えることができますよ。
防災のキホンは物件選びから
地震のエネルギーは、建物に大きなダメージを与えます。
木造に比べ、鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)は地震に強いといわれていますが、2016年の熊本地震(最大震度7)では、19棟のマンションが全壊の判定を受けました。
RC造のマンションでも、柱が折れたりすれば、そのまま住み続けることは不可能です。ローンが残っていても、新たな住まいを探さねばならず、いわゆる二重ローンで苦しむことにもなりかねません。
中古マンションの場合、耐震性が低い、経年劣化が進んでいるなどの理由で、新築よりは地震時の被害が大きくなるリスクが、少なからず付きまといます。
物件選びの段階で地震に強い物件を選ぶことが、あなたの身の安全を左右すると言ってもいいでしょう。
1981年が境に。新耐震基準と旧耐震基準
不動産屋さんなどで「新耐震」や「旧耐震」という言葉を聞いたことはありませんか?
大地震が起こるたびに法が改正され、耐震性の基準はどんどん引き上げられてきました。
現在の基準は、1981年の建築基準法改正で定められたもので、これを新耐震基準(新耐震)といい、それ以前の建物は旧耐震基準(旧耐震)と呼ばれます。
旧耐震基準でも頑丈な建物もある
旧耐震がすべて地震に弱い、というわけではありません。旧耐震でも大地震に耐えた、頑丈な建物もたくさんあります。また、旧耐震でも新耐震基準を満たしている物件もあります。
逆に、新耐震でも地盤が弱いと危険な場合もあります。新耐震、つまり1981年以降に建てられたかどうかは、ひとつの目安にはなりますが、立地も含めて総合的に判断することが大切です。
免震、制震とは?
最近では「免震」や「制震」という建物もあります。
免震は、建物の下に特殊な装置を組み込んで、地震の揺れが建物に伝わらないようにする仕組みです。
制震は、揺れを吸収する装置を付け、建物の揺れを軽減する造りのこと。
いずれも、新しい建物でなければ採用例は少ないですが、知識として知っておくとベターです。
おわりに
地震への備えは、住宅選びの際にとくに重視している方も多いポイントでしょう。
新耐震基準に則っているからといって必ず地震に耐えうるとは言い切れませんし、地震は揺れそのもののほか、津波や火災といった災害も伴うケースが少なくありません。
水や電気がつかえない期間が長引けば、それにどう備えるかも考える必要があります。
マンションはたくさんの人が暮らす集合住宅という性質上、そうした場合の備えも充実している物件が増えてきています。
物件選びのひとつの観点にもなりえるのではないでしょうか。
当社ひかリノベは、オーダーメイドのリノベーションと中古マンション・中古戸建の売買仲介サービスをご提供しています。
家探しからのリノベーションをお考えの方は、物件のご紹介から物件選びのサポート、リノベーションの設計・施工までワンストップのひかリノベにぜひご相談ください。
現在、ひかリノベのサービス概要をまとめたパンフレットと施工事例集のPDFデータを無料で配布中です。下記ダウンロードボタンより、どうぞお気軽にご覧ください。