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意外と限定的!中古マンション『瑕疵担保責任』の認定ライン

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中古マンションを購入して1ヶ月。夢のマイホーム生活に毎日ゴキゲンのAさんでしたが、ある日天井からポツンポツンと雨漏りが……。
Aさんは「こんな家を売るなんてひどい! 売主さんは責任をとって修理費用を負担して欲しい」と憤慨。
しかし、売主Bさんは雨漏りがあるなんてまったく知りませんでした。
それでもBさんは支払いに応じなくてはいけないのでしょうか?

住まいは大きな買いものです。売主は何千万円という代金を受け取る以上、物件の品質には一定の責任が求められます。
しかし、不動産取引のプロではないBさんのような人に、あまり大きな責任を求めるのも酷ですよね。
それでは、売主は引き渡した物件の瑕疵にどこまで責任を負うべきか?――今回は、そんな『売主の瑕疵担保責任』のお話です。

1.引き渡し後も買主を守る『売主の瑕疵担保責任』

『売主の瑕疵担保責任』とは、中古マンションを購入し、引き渡されるまで気付かなかったけれど、実は物件に隠れた瑕疵があったという場合に、買主は売主に「責任をとれ!」と迫ることができる――という法律上の決まりです。
ここでいう「責任」とは、具体的には……

  • 瑕疵を補修する
  • 損害賠償を支払う
  • (瑕疵がきわめて重大で、補修しても住めない場合)契約を解除して、売買をなかったことにする

民法では、原則的に「買主が瑕疵を発見してから1年以内に申し出れば、売主はこれらの責任を負わなくてはならない」と定められています。
ただし「引き渡しから10年」を過ぎれば時効となり、買主は売主に「責任をとれ!」とはいえなくなります。
この原則をそのまま当てはめると、売主は引渡後10年にわたって補修や、損害賠償や、契約解除といった買主からの請求に応じなくてはいけない――ということになります。
しかし建物は10年も経てば経年劣化していきますし、引き渡しから10年後になって「契約をなかったことにして!」というのは、売主にあまりにも酷ですよね。

そこで個人が自分の持ち家を売却する場合は、契約時に特約をむすんで、売主が責任を負う期間を「引き渡し後3ヶ月間」としたり、あるいは築古物件(築20~30年以上)であれば「瑕疵担保責任を負わない」と取り決めることもできます。
他方、不動産会社(宅建業者)が自社で買い取った物件を再販する場合は、責任を負う期間を「引き渡しから2年以上」とするように宅建業法で決まっています。責任をまったく免責したり、買主の利益を一方的に害する契約は、消費者契約法で禁止されています。

またもう一点注意したいのは、瑕疵担保責任がみとめられる範囲は「引き渡されるまで気付かなかったけれど、隠れた瑕疵があったという場合」に限られる――ということです。
『瑕疵』とは「住宅として備えているべき品質や性能を欠いている」つまり、そのままではとうてい住めないような状態をいいます。
『隠れた瑕疵』とは、売買契約をむすんだ時点で買主は知らなかった・知り得なかった場合(善意無過失)をいいます。内覧や重要事項説明などを通じてすでに知っていた場合や、ちょっと注意して見たら分かるような内装の汚れやキズ、経年劣化による付帯設備の故障は『隠れた瑕疵』とはいえません。

瑕疵があることを知っていて契約したのなら買主の自己責任ですし、「内覧でよく見ていなかった」とか「そんなにすぐ壊れると思わなかった」とかいう言い分は認められない。中古マンションの売買は、あくまで『現状有姿渡し』が原則である――ということですね。
過去の裁判例や慣習から、一般に瑕疵担保責任の対象とみとめられるのは……

  • シロアリ被害
  • 雨漏り
  • 給排水配管の水漏れ
  • 事件・事故・自死など心理的瑕疵
  • 暴力団事務所・組員の居住など環境的瑕疵

なお、売主が瑕疵の存在を知っていたかどうかは問われません(無過失責任)
瑕疵担保責任は「売主が買主をだましていたから罰を与える」という主旨ではなく、「代金をもらって売る以上、物件の品質には最低限の責任を負いましょう」といっているのです。

売主が瑕疵の存在を知っていながらあえて買主に黙っていた(悪意)とか、ふつうに暮らしていれば分かりそうな瑕疵を放置していた(重過失)という場合は、責任を負う期間を短くしたり、あるいはまったく免責するといった特約は無効となります。
つまり「売主は瑕疵があることを知っていながら、その責任を免れようとして特約をむすんだのでは?」と推察されるので、そんな悪質な特約は無効だ――というわけです。
したがって悪意の売主は民法の原則にしたがい、引渡後10年にわたって補修や、損害賠償や、契約解除といった買主からの請求に応じなくてはいけません。

2.ケーススタディで学ぶ、請求が認められるボーダーライン

以上が瑕疵担保責任の概要ですが、実際にいざ購入した物件の瑕疵を目の当たりにすると「売主に修理費用を負担してほしいけれど、認められるかしら」と不安に感じられるものです。
また売主としても「こんなことまで売主が責任をとらなくちゃいけないの?」と感じられるケースもあることでしょう。

そこで、この章では実際によくあるトラブル例から、責任が認められる場合・そうでない場合を解説していきます。
とくに、いままさにトラブルの渦中にあって「困っている」という方は、ご自分と似たケースをよくチェックなさってくださいね。

Case1

買主です。引渡後すぐ、フローリングのキズに気が付きました。
内覧のときは売主さんが居住中だったので、家具の下になっていて見えなかったんですね。
売主さんに修理費用を負担してほしいのですが、認められるでしょうか?

「家具等で隠れていた内装のキズは隠れた瑕疵といえるか?」という問題ですね。
その答えは……「いいえ。隠れた瑕疵とはいえません」

中古マンションは売主がずっと住んでいたのですから、内装のキズや汚れは「当然あるもの」として考えなくてはいけません。
だからこそ中古は新築よりも価格がお安めに抑えられているのです。

Case2

買主です。内覧したのは土曜の昼間で、とても静かだったんです。ところが実際に暮らし始めたら、夜間の騒音がひどい! 上階の足音や、シャワーの音が気になって眠れません。契約を解除して、購入をなかったことにしたいのですが。

「隣戸の生活音は瑕疵といえるか?」「契約解除がみとめられるか?」の二点が問題ですね。
その答えは、どちらも「NO!」

隣人の生活音程度なら「うるさい」と感じる方と「気にならない」と感じる方がいるため、瑕疵とはいえません。誰もが「このままでは住めない」と感じる状態でなければ、損害賠償や契約解除はみとめられないのです。
とくに契約解除は「瑕疵がきわめて重大で、補修しても住めない場合」でないとみとめられませんから、基準はより厳しくなります。

CASE3

買主です。築20年のマンションを買って1ヶ月。とつぜんお湯が出なくなりました。これではお風呂に入れません。売主さん、給湯器の交換をお願いできませんか。

「給湯器の老朽化は瑕疵にあたるか?」という問題ですね。
その答えは、「いいえ。瑕疵にはあたりません」

経年劣化による付帯設備の故障は瑕疵とはいえません。築年数に応じてそれなりに消耗しているのが「当たり前」と考えられるためです。
一般に、給湯器の寿命は10~15年。築20年なら「いつ故障してもおかしくない」と考えなくてはいけませんね。

CASE4

買主です。入居してから気付いたのですが、玄関ドアのドアクローザーから油漏れしています。売主さんに交換をお願いできますか。

「玄関ドアの故障は、売主の瑕疵担保責任の対象となるか?」という問題です。
その答えは、「いいえ。売主ではなく、管理組合の責任です」

玄関ドアは共用部分ですから、故障があればマンションの管理組合が補修します。そのためにオーナーは管理費を払っているのです。
ですからこの場合、売主ではなく管理組合にいって直してもらいましょう。

CASE5

買主です。リフォーム済み物件を購入しました。リフォーム箇所は内装一式と水回りということでしたが、入居まもなくトイレから水漏れ! 売主に修理を要求できませんか?

「リフォームの施工不良は、売主の瑕疵担保責任の対象となるか?」という問題です。
その答えは、「いいえ。売主ではなく、リフォーム業者の責任です」

リフォーム工事の施工不良や、リフォームで入れた住宅設備の故障については、多くのリフォーム会社が保証を用意しているはずです。
たとえば私たちひかリノベでは、竣工後2年間の工事保証、10年間の設備保証の他、適合R住宅やリフォームかし保険といった第三者機関の保証・保険もご用意しています。

売主が宅建業者で、自社で買い取った物件にリフォームを施して再販したという場合は、保証対応をお求めになってください。
売主が個人で、売却にあたってリフォームをしたという場合は、まずは仲介業者を通じて「リフォームの施工不良があるので、保証をつかえないか」と売主に確認しましょう。

CASE6

買主です。売主は不動産会社(宅建業者)です。契約時に「古い物件なので、瑕疵担保責任はなしで」と言われました。たしかに築20年近い物件ですが、そんなことってアリなんでしょうか?

「売主が宅建業者なのに、瑕疵担保責任を免れることはあるのか?」という問題ですね。
その答えは、「いいえ。宅建業者は、瑕疵担保責任を免れることはできません」

宅建業法と消費者契約法により、宅建業者は最低2年間の瑕疵担保責任を負わなくてはいけません。
契約時に担保期間を2年未満に狭めたり、免責の特約をむすんだとしても無効です。
そのような違法な業者にあったら、地域の宅建協会にご相談ください。宅建協会では、管轄エリアの宅建業者にかかわるトラブルや、不動産取引についての疑問・相談を受け付けています。

CASE7

売主です。長年住み慣れたマンションを売却し、引き渡しから8ヶ月が過ぎました。先日、とつぜん買主さんから連絡が。「配管から漏水したから、修理費用を支払って欲しい」というのです。契約では「瑕疵担保責任の期間は引渡後3ヶ月間」と取り決めたはず。それでも支払わなくてはいけませんか?

「契約で決めた責任範囲を超える請求に、応じなくてはいけないか?」という売主さんからの相談です。
その答えは、「いいえ。契約の取り決めを超える請求には、応じる必要ありません」

個人売主の場合、責任を追う期間を限定したり、まったく免責とすることもできます。
買主も納得したから契約したわけで、あとからその契約にない請求をされたとしても、応じる必要はないのです。

とはいえ、そのような取り決めを契約書に明記せず「口頭だけで合意した」というケースでは、特約をむすんだ証拠がなく「言った・言わない」の争いになりがちです。
あとからトラブルに発展することを防ぐためには、瑕疵担保責任をいつまで・どこまで負うかを契約書にハッキリと記載しておきましょう。
たとえば「シロアリ被害・雨漏り・給排水配管の水漏れにつき、売主は引渡後3ヶ月間の瑕疵担保責任を負う」というのが、ポピュラーな書き方ですね。

CASE8

売主です。築30年を超える築古ですから、瑕疵担保責任は免責で契約しました。しかし、実は寝室の一角に雨漏りがあるんです……。内覧の日は幸い晴れていましたし、分からないだろうと思って、買主さんには黙ったままです。もし引渡後に買主さんが気づいたら、やっぱり賠償しなきゃダメですか?

「物件に瑕疵があることを売主は知っていながら、瑕疵担保責任を免責とする特約をむすんだ場合、この特約は有効か?」という売主さんからの相談です。
その答えは、「いいえ。悪意の場合、免責特約は無効です」

内覧ではふつう気づけないような「隠れた瑕疵」があるのに、それを買主に伝えないまま売却し、さらにその責任を免れようとして免責特約をむすんだ。そんな悪質な特約は認めるわけにいきません。
このような場合、特約はなかったものとして、民法の原則にしたがいます。つまり「買主が瑕疵を発見してから1年以内に申し出れば、売主はこれらの責任を負わなくてはならない」ということです。

というと、売主さんとしては「雨漏りがあるなんて本当に知らなかったのに、実は知っていたんだろうと言われて賠償を求められた!」なんてことになったらどうしよう——と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし「売主が実は知っていた」「ふつうに生活していれば気づいたはずだ」と証明するのは、損害賠償や契約解除を求める側=買主の方です。
「知らない・やってない」ということを証明するのはとても困難ですものね。ですから、売主さんは「知りませんでした」と事実をいうだけでOKですよ。

CASE9

売主です。契約も無事終わり、あとは引き渡しの日を待つばかりでしたが、この間地震があったでしょう。テレビが倒れて、フローリングが大きく凹んでしまったんです。このまま買主さんに黙って引き渡すのは、やっぱりまずいですよね。直してから引き渡すべきでしょうか。

「契約〜引き渡しの間に、売主のせいでも買主のせいでもない事情で物件が損壊した場合、売主は修復の責任を負うか?」という相談です。
その答えは、「はい。一般的に、引き渡しの前日までは売主が修復の責任を負います」

契約前のキズなら「内覧で確認できたでしょう」と言えますが、契約後に起こったことは買主は知りようがありません。
それなのに高い代金を支払って、キズものを引き渡されるのでは、買主さんにとってあまりに酷ですよね(買主の危険負担

そこで、不動産取引では「引き渡しの前日までに、天災地変その他売主または買主のいずれの責にも帰すことのできない事由によって物件が毀損したときは、売主が修復して買主に引き渡す。修復が著しく困難な場合は、買主は契約を解除できる」という特約をむすぶのが慣例です。

この特約は、瑕疵担保責任とは別個に成立します。ですから、瑕疵担保責任を免責としている場合でも、引渡前に生じたキズは、売主が責任持って修復する必要があります。

CASE10

売主です。クロスの汚れや、建具がちょっとガタつくといった理由で、買主さんから損害賠償を請求されています。でも、すべて内覧で確認したことばかりなんですよ。「最初から分かっていたはずでしょ」と反論したいのですが、仲介業者が買主側の味方なんです。こんなとき、誰に相談したらいいんでしょう。

「買主から無茶な要求をされているが、仲介業者がフェアな解決をしてくれない。誰に助けを求めたらいいか?」という相談です。
その答えは、「地域の宅建協会に相談しましょう」

契約前に知っていた・ちょっと注意して見れば分かるような内装のキズや汚れ、経年劣化による付帯設備の消耗などは、売主さんが責任を負うべき「隠れた瑕疵」ではありません。
仲介業者は不動産取引のプロとして、そのことを買主さんに諭さなくてはいけない立場ですが、本来の仕事を果たしてくれないのですね。
このような場合は地域の宅建協会や、その仲介業者が加盟している業界団体に相談しましょう。
宅建協会などの団体は、加盟企業がかかわるトラブルの相談窓口を設けています。

3.もしもの備えに……『既存住宅売買かし保険』

このように、引き渡し後に瑕疵担保責任が問題となるケースはさまざま。
しかし宅建業者が自社で買い取った物件を再販する場合はまだしも、個人が自宅を売却する場合は、売主さんも不動産取引に慣れている方ばかりではありませんし(むしろ「最初で最後」という方が多いのではないでしょうか?)無事引き渡しが済んでホッとしていたところに損害賠償や契約解除を求められたら、たいていの方が「すぐには対応できない、困った!」とお感じになることでしょう。
買主さんとしても、売主さんの資力が足りないために保証が受けられないのでは困りますよね。

そこで登場したのが『既存住宅売買かし保険』。
中古住宅を売買したあとで瑕疵が見つかった場合に保険金が下りて、補修費用を賄うことができる――という保険です。
保証の対象は建物構造の耐力性能・雨漏り・給排水配管の漏水の三点。
保険期間は最長5年で、保険金の支払い限度額は最大1,000万円です。

既存住宅かし保険に加入するには、国交省指定の保険法人による住宅検査(インスペクション)に合格しなくてはいけません。
申し込み~検査~保険証発行の一連の手続きは、売買契約をむすんでから引き渡しまでの間に終わらせる必要があります。
申し込むのは売主さん側でも買主さん側でも構いませんが、制度の設計上、被保険者となるのは仲介業者(またはインスペクションをおこなう検査機関)です。

ですから売主さん・買主さんは、まずご自分の仲介業者に「既存住宅売買かし保険に加入したい」と申し出てください。
あとは仲介業者が手続きを進めることになりますから、あなたは必要な書類をそろえたり、現地調査に立ち会ったりと、都度言われたことに協力すればOKです。

検査の合格基準は、きわめて技術的な話になるのでここでの言及は避けますが、ポイントとなるのは「新耐震基準を満たしているか」。
したがって買主さんは「昭和56年6月1日以降に建築確認を受けたマンション」もしくは「耐震診断や耐震改修をおこない、新耐震基準に準拠しているとみとめられたマンション」を選ばれることをおすすめします。

民法改正で『瑕疵担保責任』が変わる!

2020に民法が大幅改正される、というニュースを耳にされた方も多いでしょう。
この改正で『売主の瑕疵担保責任』の考え方も大きく変わります。
簡単にいいますと、『瑕疵担保責任』という概念はなくなり、『契約不適合責任』という考え方に変わるのです。

まず隠れた瑕疵に限らず、引き渡された物件が「契約内容に沿わない」状態であれば、売主は『契約不適合責任』を問われます。
具体的には修理や損害賠償・契約解除の他、代金の減額を買主から請求されることになります。
ただし、売主に落ち度がない場合は、これらの請求に応じる必要はありません。

代金減額請求が可能になること、売主の帰責性が要件に追加されること、この二点が改正のポイント。

 

大切な住まいを売り買いするということは、契約したら・引き渡したら「ハイ、終わり!」というわけにはいきません。
売主さんは何千万円という代金を受け取る以上、引き渡す物件の品質には最低限の責任が求められます。
他方、買主さんは中古マンションを購入する以上、ある程度のキズ・汚れ・古さは「当たり前」と考えて、内覧等で確認できることはしっかりと確認し、納得した上で契約する。お互いに責任を負うべき範囲をよく理解して契約にのぞむことが、のちのトラブルを防ぎます。

【執筆】高橋 千晶(ひかリノベ 広報)


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