夫婦や親子で住宅ローンを借り入れる「ペアローン」。単独でローンを組むよりも高額の借入が可能で、住宅取得の可能性が大きく広がります。
しかし、離婚や死別といったもしもの場合の返済など、注意点も存在します。
また夫婦の収入を合算して借りる住宅ローンは、ペアローンのほかに「連帯債務型ローン」「連帯保証型ローン」といった商品があります。これらとペアローンの違いとは?
この記事では、ペアローンのメリット・デメリットを解説。連帯債務型ローン・連帯保証型ローンと比較しながら、あなたのライフプランに合ったローンを選ぶヒントをお伝えします。
目次
ペアローンとは
ペアローンとは、共働き夫婦向けの、二人で組む住宅ローンをいいます。夫婦だけでなく、親子で利用することも可能です。
夫と妻、それぞれが契約者となってローンを組み、各々自分が借りた分を返済していきます。
たとえば4000万円の住宅を購入するにあたり、夫が2000万円・妻が2000万円のローンを契約するようなイメージです。
このとき、夫は妻の・妻は夫の連帯保証人となってお互いの返済を保証し合います。
単独ローンでは連帯保証人は不要なケースが多いですが、ペアローンでは連帯保証人は必須です。
物件の所有権はどうなる?
夫の名義でローンを組んだ住宅は、原則夫の所有物となります。妻の名義なら妻の所有物です。
夫婦でお金を出し合うペアローンの場合、それぞれの負担に応じた持分を所有します。
たとえば4000万円の住宅を夫2000万円・妻2000万円のペアローンを組んで購入した場合、持分比率は夫50%:妻50%となります。
では、頭金1000万円を夫が出し、残り3000万円のうち夫2000万円・妻1000万円のペアローンを組んだ場合はどうでしょう? この場合、夫が3000万円・妻が1000万円を負担したことになりますから、持分比率は夫75%:妻25%となります。
なお、単独名義のローンで購入した住宅であっても、任意でパートナーに持分を分けることは可能です。ただし、これは「贈与」とみなされ、贈与税がかかります。
ペアローンのメリット
ペアローンは、単独で組む通常の住宅ローンとはどのような違いがあるのでしょうか。
まずはメリットから見ていきましょう。
審査で二人分の収入を合算できる
住宅ローンの審査では、年収に応じて融資可能金額が決定されます。年収によっては、購入したい物件の価格に届かない場合もあるでしょう。
ペアローンの審査は、夫婦二人分の年収の合計金額で行われます(収入合算)。仮に夫婦の年収が同程度だとしたら、単純計算で2倍のお金を借りられることになります。
(※実際のローン審査では、限度額は年収だけでなく勤務先や勤続年数などさまざまな要素によって決定されます)
住宅ローン控除を二人で受けられる
住宅ローンを利用して住宅を購入すると、一定の条件下で所得税の控除を受けることができる「住宅ローン控除」。
ペアローンは契約上2本のローンになるので、二人とも控除を受けることが可能です。
新築 | 中古 | |
控除率 | 年末ローン残高の0.7% | |
控除期間 | 13年間 | 10年間 |
最大控除額 | 年間21万円(認定住宅は35万円) | 年間14万円(認定住宅は21万円) |
借入限度額 | 3,000万円(認定住宅は5,000万円) | 2,000万円(認定住宅は3,000万円) |
主な要件 |
|
|
– | 新耐震基準 |
金利タイプや返済期間を別々に設定できる
金利タイプや返済期間・方法をそれぞれ設定できるのも、ペアローンの特長です。
夫のローンは固定金利、妻のローンは変動金利にして、妻は金利に応じてローンを借り換える――こうすれば、ひとつのローンで変動金利にするよりも安定した返済計画を立てられ、かつ固定金利よりも総返済額を抑えることも可能でしょう。
人生設計に応じた返済計画を、よりフレキシブルに立てられることも、ペアローンのメリットのひとつだと言えるでしょう。
ペアローンの注意点
ひとりでは借りられない金額が融資可能となったり、夫も妻も住宅ローン控除を請けられたりと、メリットも多いペアローン。逆に、注意するべき点はあるのでしょうか。
手続き費用が二倍かかる
夫婦それぞれでローンを契約するということは、契約手続きもそれぞれ行わなくてはいけないということ。必要書類も2通必要になりますし、事務手数料・登記手数料・印紙税などの諸費用も二人分かかってしまいます。つまり、単独名義のローンの2倍の諸費用がかかるということ。
ペアローンとよく似たローンで、「連帯債務型」や「連帯保証人型」といったローン商品がありますが(くわしくは後述)、こちらは夫婦で収入を合算しているとはいえ、契約上の主債務者はいずれか一人のため、出費も一人分で済みます。
ただし、保証料は「借入額の何%」と設定されている場合が多いので、この場合ペアローンでも単独名義のローンでも最終的に支払う金額は変わりません。
金利の安さや、いくら借りられるかだけを見て選んでしまうと、予想外の出費を強いられることもあるかもしれません。ローンを選ぶときは、手数料や保証料も忘れずチェックしましょう。
ライフスタイルの変化を見込んで
ローンを組む段階では共働きで、二人とも一定の収入を得ていたとしても、返済中にライフスタイルが変わる可能性もあります。
たとえば妻が妊娠・出産を機に退職した場合や、産休・育休期間中は収入が減ってしまうというケース。あるいは病気を理由に仕事をセーブすることになった、転職して収入が下がった、といった事態もありえます。
こうした場合、ペアローンで高額の融資を組んでいると、ひとりの肩にふたり分の負担がのしかかることになります。
また、収入がなくなると、所得税も発生しません。すると住宅ローン控除による節税の恩恵も失われてしまいます。
離婚や死別、もしものときはどうする?
あまり考えたくないことではありますが、離婚や死別といったもしもの場合、ペアローンの返済はどうなるのでしょうか。
まずは離婚したケースで考えてみましょう。
ペアローンで購入した住宅は、夫婦それぞれに持分(所有権)があります。離婚しても、所有権が双方にあることは変わりませんが、住宅は簡単には分割できません。
簡単なのは、双方の同意のもと、その住宅を売却してしまうことです。住宅を売って得たお金でローンを一括返済すれば、その後の返済で揉める心配もありません。
売らずに所有し続ける場合は、ローンの残債をどうするかを考えなくてはなりません。
夫、妻のどちらかにローンを一本化するなら、ローンを借り換える必要が生じ、新たに金融機関の審査を受けなくてはなりません。2人分の収入の合計で借りたお金を1人で返すとなれば、条件は当然厳しくなります。
そのまま2人で物件を所有し、ローンも各々が返済し続けることもできますが、初めにも述べたように、ペアローンは相手の連帯保証人になっていることが前提。もし相手の返済が滞ったり、返済不可能な状況に陥ると、否が応でも自分で返済しなくてはいけなくなります。
続いて、どちらかが死亡したケースです。
住宅ローンを借り入れる際は通常、団体信用生命保険(団信)に加入します。これは契約者が返済期間中に死亡した、あるいは高度障害になった場合、保険金でローンの残額を返済する制度であり、万が一の場合でも家族にローンが残らない仕組みです。
ペアローンを組む際は、夫婦それぞれが団信に加入します。
たとえば夫が返済中に亡くなった場合、夫のローン残額は夫が加入した団信の保険金でまかなわれます。一方、妻のローンはそのまま返済を続けることになります。
つまり、残された方は、自分が組んだ分の返済だけを行えばいい、という形になります。
うまく利用すれば、より理想に近い住まいを手に入れられるかもしれないペアローンですが、このようにデメリットもないわけではありません。「より多くの資金を調達できるから」という理由だけで安易に選ぶのではなく、ご自身、そしてご家族のライフプランに沿った返済ができるローンを選びましょう。
連帯債務型ローンとペアローンの違い
ペアローン以外にも、夫婦ふたりで住宅ローンを借り入れる方法があります。
ひとつは「連帯債務型」と言って、夫婦の収入を合算し、共有名義で住宅ローンを組む方法です。ペアローンと同様、収入合算によって単独ローンよりも大きな金額の借入ができます。住宅ローン控除についても、夫婦それぞれに適用されます。
ペアローンとの違いは、夫婦のいずれかが主債務者となり、パートナーは連帯債務者となる、という点。
団信は、基本的に主債務者のみが加入します。そのため主債務者が亡くなったときは団信の保証が受けられますが、連帯債務者が亡くなったときは返済免除にはなりません。
とはいえ、金融機関によっては「夫婦連生団信」といって、連帯債務者にも適用される団信が用意されている場合も。
ペアローンの団信は各々の借入額に適用されますが、連生団信は全額に適用されます。保証範囲が広いので、保証料は通常よりも高めに設定されています。
連帯債務型ローンを組める金融機関は限定されています。代表的なのは、住宅金融支援機構のフラット35、ろうきん、三井住友銀行など。
もっとも、最近は共働きが多数派となり収入合算の需要が高まっていること、それに伴い連生団信の需要も増していることから、連帯債務型の商品を用意する銀行も増えているようです。
連帯保証型ローンとペアローンの違い
もうひとつが、「連帯保証」型のローンです。ペアローンと同様、収入合算によって単独ローンよりも大きな金額の借入ができます。
ペアローンとの違いは、契約者はあくまでひとりである、という点。たとえば夫を契約者とした場合、妻が連帯保証人となります。
契約者が返済不能となったら、連帯保証人がかわりに返済義務を負います。
連帯債務型ローンと違い、連帯保証人は団信に加入できず、住宅ローン控除も受けられません。
契約者が亡くなったときは団信の保証を受けられますが、連帯保証人が亡くなった場合は返済免除にはなりません。
住宅ローン控除による節税効果も単独ローンと変わらないため、メリットはさほど大きくないと言えます。
まとめ
ペアローン・連帯債務型・連帯保証型の違いをまとめると、下の表のようになります。
契約者(ローンの名義) | 物件の所有権 | 住宅ローン控除 | 団信 | |
ペアローン | 夫と妻のどちらも契約者 | 各々の負担に応じた持分 | 夫と妻双方に適用 | 夫と妻のどちらも加入 |
連帯債務型 | 主債務者は一人 | 主債務者の所有 | 夫と妻双方に適用 | 主債務者のみ加入 もしくは連生団信 ※フラット35は夫婦で機構団信に加入可 |
連帯保証型 | 契約者は一人 | 契約者の所有 | 契約者のみ適用 | 契約者のみ加入 |
ペアローンに向いているのは、
- 夫婦ともに安定した収入がある
- 妊娠・出産・育児休暇後も共働き
- 夫婦共に健康で、団信に加入できる
ペアローンは団体信用生命保険にそれぞれ加入できるのもメリットですが、夫婦どちらかの健康状態が良好でない場合、加入することができないことを覚えておきましょう。
連帯債務型に向いているのは、
- ペアローンでは二人分かかってしまう諸費用を抑えたい
- 収入合算で借入額を増やしたい
連帯債務型ローンは、主債務者は一人ですが、夫婦で連生団信に加入する選択肢もあり、万が一の場合にも安心というメリットが。
ただし、連帯債務型を取り扱っている金融機関は少ないため、確認が必要です。
連帯保証型ローンは、収入合算をして借入額を少しでも増やしたいという方には向いているかもしれません。しかし、契約者でない方は団信に加入できない・住宅ローンの控除を受けられない、といったデメリットがあります。
それぞれのローンにメリット・デメリットがあります。ご自身のライフスタイルや希望の借入額をよく検討した上で、利用したいローンの形を選びましょう。
住宅リノベーションのひかリノベでは、物件探しからリノベーション、資金計画までワンストップでお住まいづくりをサポートいたします。住宅ローン・資金計画の不安も遠慮なくご相談ください。
現在、ひかリノベのサービス概要をまとめたパンフレットと施工事例集のPDFデータを無料で配布中です。下記ダウンロードボタンより、どうぞお気軽にご覧ください。