夫婦や親子で住宅ローンを借り入れる「ペアローン」。
夫、妻のどちらか一人でローンを組むよりも、多くの額を借り入れることができ、住宅取得の可能性が大きく広がります。ペアローン専用の商品をラインナップしている銀行もあります。
しかし、借入額の面で大きなメリットがある一方、もしもの時の返済など、デメリットも存在します。
また、夫婦の収入を合算してひとつのローンを借りる「連帯債務」「連帯保証」など、ペアローンとよく似たローン商品もあります。
それらとペアローンの違いとは……?
住宅ローンは、その後の暮らしを左右する要素のひとつ。
今回は、ペアローンの良いところ、悪いところを知って、あなたのライフプランに合ったローンを選ぶためのヒントをお伝えします。
2019年7月13初出→2023年1月11日更新
目次
ペアローンとは?
ペアローンとは、一定の収入がある夫婦のそれぞれが債務者となって、住宅ローンを組むことをいいます。簡単に言うと、夫と妻が1本ずつローンを契約して住宅購入資金を借り入れるのがペアローンです。(なお夫婦だけでなく、親子で利用することも可能です)
例えば、4000万円の住宅を購入する際に、夫が2000万円、妻が2000万円をそれぞれ借り入れる、ということになります。
住宅ローンは年収で借り入れられる額が決まるため、通常だと希望する額を借り入れられないことがあります。ですが、ペアローンであれば、夫・妻・各々の限度額を合計した額を借り入れることが可能になります。仮に夫婦それぞれの限度額が同じだとしたら、2倍のお金を借りられるという計算になります。
夫婦でペアローンを組む場合、夫は妻の、妻は夫の連帯保証人となって、お互いのローンの返済を保証し合います。
一人でローンを契約する場合は、連帯保証人が不要なことも多いですが、ペアローンでは必須です。この点をよく覚えておいてください。
メリットは住宅ローン控除
住宅ローンを借り入れている人は、一定の条件下で所得税の控除を受けることができます(住宅ローン減税制度)。
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新築 |
中古 |
控除率 |
年末ローン残高の0.7% |
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控除期間 |
13年間 |
10年間 |
最大控除額 |
年間21万円(認定住宅は35万円) |
年間14万円(認定住宅は21万円) |
借入限度額 |
3,000万円(認定住宅は5,000万円) |
2,000万円(認定住宅は3,000万円) |
主な要件 |
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– |
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ペアローンは契約上2本のローンになるので、夫、妻それぞれで控除を受けることが可能になります。
また、金利タイプや返済期間・方法をそれぞれ設定できるのも、ペアローンの特徴です。
夫のローンは固定金利、妻のローンは変動金利にして、妻は金利に応じてローンを借り換える――こうすれば、ひとつのローンで変動金利にするよりも安定した返済計画を立てられ、かつ固定金利よりも総返済額を抑えることも可能でしょう。
人生設計に応じた返済計画を、よりフレキシブルに立てられることも、ペアローンのメリットのひとつだと言えるでしょう。
ペアローンの注意点
一人では借入できない額を借り入れることができたり、それぞれが減税控除を受けられたりとメリットも多いペアローン。では逆に、注意するべき点を3つお伝えします。
ペアローンの注意点
- 手続費用も二倍
- ライフスタイルの変化を見込んで
- 離婚や死別、もしものときはどうする?
手続費用も二倍
夫婦それぞれでローンを契約するということは、同時に契約手続きもそれぞれ行わなくてはいけないことを意味します。必要書類も、基本的に2通必要になるということです。
勘のいい方はお気づきかもしれませんが、手続きに関わる諸費用も夫婦それぞれにかかってしまうのです。事務手数料・登記手数料・印紙税などは、それぞれが所定額を支払わなくてはいけません。つまり、単純計算で単独名義のローンの2倍コストがかかることになってしまいます。
ペアローンとよく似たローンで、「連帯債務型」や「連帯保証人型」といった商品がありますが(くわしくは後述)、こちらは夫婦で収入を合算しているとはいえ、契約上は1人が契約していることになるため、1人分の出費で済みます。
一方、保証料などは「借入額×〇%」で額を決めることも多く、この場合はペアローンでも単独名義のローンでも、支払う額は変わりません。
金利の安さや、いくら借りられるかだけを見て選んでしまうと、予想外の出費を強いられることもあるかもしれません。ローンを選ぶときは、手数料や保証料も忘れずチェックしましょう。
ライフスタイルの変化を見込んで
ペアローンを利用する場合は、返済計画の立て方も注意したいポイントです。
夫、妻がそれぞれローンを借りているということは、返済も各々に一定の収入があることを前提にしているということです。
ローンを組む段階では共働きで、夫婦どちらもある程度の収入を得ていたとしても、例えば妻が妊娠、出産を機に仕事を辞める、つまり収入がなくなることになったら……?
産休・育休を取得して職場復帰する方もいれば、子育てに専念したいという人もいるでしょう。
その他にも、転職したら収入が下がってしまった……なんて事態もありえますね。
こうした場合、ひとりで借りられる額以上のお金を借り入れることになるペアローンは、返済の負担がいっそう重くなってしまうことになります。
また、妻が専業主婦になったりして収入がなくなると、所得税も発生しません。当然ながら住宅ローン控除は受けられず、節税の恩恵が受けられないということになってしまいます。
離婚や死別、もしものときはどうする?
あまり考えたくないことではありますが、離婚することになってしまった、どちらかが亡くなってしまった……といった場合、ペアローンをどう返済していけばいいのでしょうか。
まずは離婚したケースで考えてみましょう。
ペアローンで購入した住宅は、夫婦それぞれに持分(所有権)があるということ。離婚しても、所有権が双方にあることは変わりませんが、住宅は簡単には分割できません。
簡単なのは、双方の同意のもと、その住宅を売却してしまうことです。住宅を売って得たお金でローンを返済すれば揉める必要もありません。
もし、売らずに所有し続ける場合は、ローンの残債をどうするかを考えなくてはなりません。
夫、妻のどちらかにローンを一本化するなら、ローンを借り換える必要が生じ、新たに金融機関の審査を受けなくてはなりません。2人分の収入の合計で借りたお金を、1人で返すとなれば条件は厳しくなります。
そのまま2人で所有し、ローンも各々が返済し続けることもできますが、初めにも述べたように、ペアローンは相手の連帯保証人になっていることが前提。
もし相手の返済が滞ったり、返済不可能な状況に陥ると、否が応でも自分で返済しなくてはいけなくなります。
続いて、どちらかが死亡したケースです。
住宅ローンを借り入れる際は通常、団体信用生命保険(団信)に加入します。これは契約者が返済期間中に死亡した、あるいは高度障害になった場合、保険金でローンの残額を返済する制度であり、万が一の場合でも家族にローンが残らない仕組みです。
ペアローンを組む際は、夫婦それぞれの加入が条件です。
例えば、夫が返済中に亡くなった場合、夫のローン残額は夫が加入した団信の保険金でまかなわれます。一方、妻のローンはそのまま返済を続けることになります。つまり、残された方は、自分が組んだ分の返済だけを行えばいい、という形になります。
うまく利用すれば、より理想に近い住まいを手に入れられるかもしれないペアローンですが、デメリットもないわけではありません。
「より多くの資金を調達できるから」という理由だけで安易に選ぶのではなく、ご自身、そしてご家族のライフプランに沿った返済ができるローンを選びましょう。
ペアローンの場合、物件の所有権は?
夫名義でローンを組んで購入した住宅は、夫の所有物とすることが普通です。妻名義なら妻の所有になります。
では、夫婦でお金を出し合う形になるペアローンで購入した住宅は、どちらの所有物になるのでしょうか?
これは、夫婦それぞれの支払(ローンの借入)額に応じた割合が、それぞれの持分になるというのが原則です。
はじめに述べた、4000万円の住宅を夫2000万円・妻2000万円のペアローンで購入するケースなら、持分は夫50%:妻50%の割合となります。
では、頭金1000万円を夫が出し、残り3000万円のうち夫2000万円、妻1000万円というパターンではどうでしょう?
この場合は、夫が合計3000万円を支払うことになりますから、持分は夫75%:妻25%となります。
持分比率と贈与税
単独名義のローンであっても、夫・妻の持分比率を任意に決めることは可能です。
ただし、この場合は税法上、贈与とみなされる点に注意してください。
夫の単独名義のローンで購入した住宅の持分を妻に配分する場合は、比率に応じた贈与税を支払わなくてはなりません。
夫婦でペアローンを組んだ場合、夫・妻の借入額が同じであれば、持分比率が50%対50%になるので、贈与税はかからないということになります。
連帯債務とペアローンの違い
ペアローン以外にも、夫婦ふたりで住宅ローンを借り入れる方法があります。
ひとつは「連帯債務型」と言って、夫婦それぞれの収入を合算したうえで、ひとつの住宅ローンを共有名義で借り入れる方法です。
名義上は、夫か妻どちらか一人が債務者となりますが、もう一人も連帯債務者という扱いになります。ペアローンと同様、収入合算によって通常のローンよりも多くの額を借りることができます。住宅ローン控除についても、夫婦それぞれが適用を受けることが可能です。
団信は基本的に主債務者のみが加入する形になります。
つまり夫が主債務者のとき、ローンの返済中に夫が亡くなった場合は残高がゼロになりますが、妻が亡くなったときは団信の保証の範囲外となり、夫はその後も返済を続けなくてはいけません。
しかし、金融機関によっては夫婦連生団信といって、連帯債務者が亡くなった場合にも、残高を保険金でまかなうことができる商品が用意されています。
(※ペアローンの場合、団信はそれぞれの借入額にのみ適用されるのに対して、連生団信は全額に適用されます)
保証の範囲が広いことから、連生団信に加入する場合は、保証料が通常よりも上乗せされます。ただし、連帯債務型ローンを組める金融機関は限定されているので注意が必要。
代表的なのは、住宅金融支援機構のフラット35、ろうきん、三井住友銀行などです。
もっとも、最近は共働きの夫婦が多くなったために収入合算の需要も高まっていること、またそれに伴い、もしもの場合の備えが手厚い連生団信の需要も増していることから、連帯債務型の商品を用意している銀行も増えているようです。
連帯保証(収入合算)とペアローンの違い
もうひとつ「連帯保証人」を立てるというやり方があります。
連帯保証人型は、あくまで一人がローンを契約した場合に使えるやり方で、夫がローンを契約したら、妻がその連帯保証人になる。もし夫がローンを返済できない状況に陥った場合は妻が返済を肩代わりすることになる、ということになります。
連帯債務型と違って、連帯保証型は住宅ローン控除を受けられず、また団信にも加入できません。夫婦どちらも一定の収入がある場合、節税効果は薄く、メリットはさほど大きくないと言えます。
まとめ
ペアローン・連帯債務型・連帯保証型の違いをまとめると、下の表のようになります。
契約者(ローンの名義人) | 持分(所有権の有無) | ローン控除の適用 | 団体信用生命保険への加入 | |
ペアローン | 夫、妻 | 夫、妻双方にあり | 夫、妻のどちらも適用 | 夫、妻のどちらも加入 |
連帯債務型 | 夫または妻のどちらか | 契約者のみにあり | 夫、妻のどちらも適用 | 夫、妻のどちらも加入(フラット35のみ) |
連帯保証人型 | 夫または妻のどちらか | 契約者のみにあり | 契約者のみ適用 | 契約者のみ加入 |
「夫婦ともに安定した収入がある」「妊娠・出産・育児休暇後も夫婦共に再び働くことができる」「夫婦共に団信に加入できる健康状態である」という方は、ペアローンに向いています。ペアローンは団体信用生命保険にそれぞれ加入できるのもメリットですが、夫婦どちらかの健康状態が良好でない場合、加入することができないことを覚えておきましょう。
「ペアローンでは二人分かかってしまう諸費用を抑えたい」「収入合算で借入額を増やしたい」という方は、連帯債務型に向いています。債務者は一人ですが、夫婦と夫婦連生団信に加入でき、万が一の場合にも安心というメリットもあります。ただし、連帯債務型を取り扱っている金融機関は少ないため、確認が必要です。
連帯保証型は、収入合算をして借入額を少しでも増やしたいという方には向いているかもしれません。しかし、契約者でない方は団信に加入できない・住宅ローンの控除を受けられない・契約者ではない方に万が一のことがあっても保障がない、といったデメリットも大きくなります。
それぞれのローンにメリット・デメリットがあります。ご自身のライフスタイルや希望の借入額をよく検討した上で、利用したいローンの形を選びましょう。
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