
ほとんどの銀行で、住宅ローンを組む際は団体信用生命保険(以下、団信)の加入が義務になっています。
健康状態が良くないと判断されると、団信に加入できず、結果的にローンが組めない可能性も。返済中に病気などで亡くなったり、重大な障害が残ってしまった場合、ローンの残債を保険金で返済するための保険が団信です。
団信に加入するには、治療中の病気や、過去の病歴を保険会社に知らせる必要があります。
団信に加入する際、注意が必要な病気や告知書の書き方、そして、保険に入れなかった場合の対処法をお教えします。
2018/2/20初出→2020/3/2更新
団体信用生命保険(団信)とは
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンを組む人専用の生命保険。
住宅ローンの契約者が、返済期間中に死亡した、または高度障害状態に陥った場合、保険金を残債の返済に充てる、というしくみの保険です。
住宅ローンの返済は長期に渡るので、返済中に万が一のことが起こった場合、残された家族が多額の借金を抱えることになります。
団信に加入していれば、もしものことがあっても、ご家族が返済について悩む必要はありません。
被保険者はローンの契約者で、保険金の受取人は銀行。ローンの契約者が加入条件を満たすか審査したうえで、銀行が保険会社と契約して保険料を支払います。
保険料は、銀行が負担したり、金利に含まれることが多いです。
最近では、死亡・高度障害状態以外にも、重大な病気で働けなくなった際の返済をフォローするため、金利に保険料を上乗せして保障を拡大する、がん保障や三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)保障といった特約付きの住宅ローンも増えています。
告知義務がある病気・症状
団信は、ローン加入者とそのご家族、そして多額のお金を融資している銀行、双方にとってのリスク回避策ではあるのですが、保険会社にとっては、多額の保険金を支払う事態はなるべく避けたいものなのです。
そのため、保険会社は被保険者からの「告知」をもって、持病があるなど、健康リスクが高い人の加入を謝絶することがあります。
つまり、健康状態が悪いと、審査に通らずローンが組めない可能性もあるのです。
団信加入時に必要な告知事項の内容は、以下の通りです。
AからCのひとつでも「はい」に該当する項目があれば、病名や症状、治療の経過、入院していたらその期間、服用している薬と服用期間を詳しく書かなくてはなりません。
- 過去3年以内に以下の病名で手術を受けたこと、または2週間以上にわたり医師の治療・投薬を受けたことがあるか?
心臓 | 狭心症、心筋梗塞、心筋症、不整脈、心臓弁膜症、先天性心臓病 |
脳 | 脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)、脳動脈硬化症 |
呼吸器 | 慢性気管支炎、ぜんそく、気管支拡張症、肺結核、肺気腫 |
胃腸 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、すい臓炎、クローン病 |
肝臓 | 肝炎、肝硬変、肝機能障害 |
腎臓 | 腎炎、ネフローゼ、腎不全 |
目 | 緑内障、網膜・角膜の病気 |
がん | がん、肉腫、白血病、腫瘍、ポリープ |
代謝異常・免疫疾 | 高血圧症、糖尿病、貧血症、膠原病、リウマチ、紫斑病 |
精神疾患・認知障 | 精神病、神経症、統合失調症、てんかん、うつ病、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症 |
婦人科系 | 子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺、卵巣のう腫 |
B、最近3ヶ月以内に、医師の治療・投薬を受けたことがあるか?
C、手・足の欠損または機能に障害があるか。または、背骨(脊柱)、視力、聴力、言語、そしゃく機能に障害があるか?
この3つのほかにも、健康診断や人間ドックで異常を指摘された経験の有無や、年齢が条件として課されることもあります。
夫婦でペアローンを組む場合、団信にはそれぞれ加入しますから、当然告知もそれぞれ行う必要があります。
夫婦どちらかが万が一の事態に陥った際、パートナーの残債も一括して保障する「連生団信」の仕組みを用意している銀行もあります。
告知書の書き方のポイント
保険金を支払う事態になったとき、保険会社は被保険者の通院歴や既往症について、詳細な調査を行います。
事前に告知しなかった病気が発覚した場合など、告知義務違反として契約を解除され、保険金が支払われない可能性があります。
ですから、告知書は抜けや漏れがないように。具体的には、次のようなポイントに注意してください。
告知義務のある病気は「3年以内」を全て記入
加入時に告知が必要な事項の3項目のうち、Aは「過去3年以内」に手術した、2週間以上の治療を受けた経験は、すべて告知しなくてはなりません。経過観察や、定期的に検査しているだけでも、まだ治療が続いているとみなされます。
完治(あらゆる治療が終わり、再発の恐れがない状態)から4年以上が経過して初めて、記入する必要がなくなります。
「3カ月以内」の病気も忘れずに
Aの一覧にない病気でも、直近の3カ月以内に医師の治療や投薬を受けたら、必ず告知書に記入しましょう。
風邪をひいて病院に行った、アレルギー等で薬をもらっている、など、軽い病気や日常的な通院だからといって、記入しないと告知義務違反になってしまいます。
障害者手帳があれば等級も記入する
また、Cに当てはまる方は、医師の治療の有無にかかわらず告知が必要。症状、日常生活に支障があるか、今後症状が変わる見込みがあるかを記入してください。
障害者手帳をお持ちの場合は、等級もあわせて記入します。
診断書が必要なことも
告知事項にかかる持病(特に心臓や脳の疾患、精神疾患、がんは厳しく見られやすい傾向があると言われます)があるからといて、必ずしも団信に加入できないわけではなく、病状や治療の状況などから総合的に判断されます。
保険会社から、病状や治療状況を確認するため、医師の診断書を求められることがあります。その場合は、治療を受けた医師に、住宅ローンの審査に利用する旨を伝えて、診断書を書いてもらいましょう。
がん保障、三大疾病保障などのオプションを利用する場合、健康診断書の提出が必要な場合もあります。
持病など、団信に入れない場合は?
「健康状態が理由で、団信に加入できなかった」。
そうなったら住宅ローンは組めないのでしょうか?いいえ、あきらめるのは早計です。団信に加入できなくても、ローンを組む手段はあります。
ワイド団信
持病があり、通常の団信には加入が難しい人を対象に、加入条件を緩和したのが「ワイド団信(加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険)」です。
高血圧症、糖尿病、肝機能障害、心臓・脳疾患、うつ病などを患っていても加入できることがありますが、通常の団信と同様、加入には告知が必要。病状によっては、加入できない可能性もあります。
年齢制限も狭く、上限は多くの保険会社で50歳(通常の団信は70歳前後)となっています。
保険料もその分割高になり、金利に0.3%前後が上乗せされます(銀行によって異なります)。金利が1.3%だとすると、ワイド団信に加入した場合は1.6%程度になります。
フラット35
住宅金融支援機構が提供する固定金利型のローン・フラット35は、団信に加入しなくても利用することができます。
団信に加入しない場合は、団信付きより金利が0.2%低くなります。
フラット35専用の団信(機構団信)があり、2017年10月からは三大疾病付きに介護保障がつくなど、より充実した制度になっています。
団信に加入しなくてもOKとはいえ、住宅ローンは借入金額も多く、返済期間も長いので、もしものことがあってもご家族が返済を続けられる、あるいは一括で返済できるような備えをしておくべきでしょう。
例えば、生命保険(団信と同じく、加入条件が緩和された「引受基準緩和型」があります)や勤務先の死亡保障、遺族年金などが考えられますね。
注意してほしいのは、生命保険では団信のようにローンの残債を全てまかなえる、とは限らない点です。
支払われる保険金には上限があり、保険金が高額になるほど毎月の保険料も高くなりますので、一般論としては、フラット35+生命保険よりも、ワイド団信のほうが結果的にはお得というケースが多いです。
ひかリノベでは、このような保険も含めて、みなさまの負担を軽くする資金計画づくりをご提案いたします。
どんなに小さなことでも、ご遠慮なくご相談ください。
【記事監修】尾高 等(ひかリノベ両国コーディネーター)
住宅ローンアドバイザー。住宅購入が目的ではなく、その後も続く人生のファイナンシャルプランを、長期的な視点から提案する。「かつては頭金が2割ないと住宅購入は難しく、多額の現金投資をしなければ理想の住まいはつくれませんでした。しかし歴史的な低金利や、100%融資も可能となった現在、マイホーム購入のあり方は多様化しています。新築、中古、マンション、戸建、いろいろな住居の選択肢がある中から本当に満足できる空間とは何なのか。一緒に探していきましょう。」
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