物件購入前に知っておきたい!二重床のメリット・デメリット

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マンション選びで意外と重要なのが、床の構法です。

マンションの床構法には二重床と直床の二種類があります。あまり意識はしないかもしれませんが、床の構法で住み心地は大きく変わります。

この記事では、メリットも多い「二重床」の仕組みと特徴、リノベーション時の注意点などを説明します。

二重床とは

二重床
スラブの上に、床材を支持するためのボルトを立てて、下地材を張ったうえにフローリングなどを施工します。
コンクリートスラブ(RC造やSRC造、S造の建物で、各階を区切るコンクリートの床となる部分)と、床材の間に空間をつくる構法を二重床といいます。

支持ボルトの根元には、振動がスラブに伝わるのを防ぐための防振ゴムが取り付けられています。

床下にできた空間は、給排水やガスの配管、電気の配線などを通すためのスペースとして使われます。

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が2000年に施行されてから普及した構法で、2000年以降に新築された物件に多い傾向があります。

二重床のメリット・デメリット

二重床には、どんな特徴があるのでしょうか。メリットとデメリットをそれぞれ見てみましょう。

二重床のメリット

二重床は、配管のメンテナンス性、可変性に優れているのがメリットです。

配管だって時間が経てば劣化が進み、水漏れなど重大なトラブルを引き起こす可能性があります。メンテナンスや、時には交換も必要ですが、二重床でスラブの上に配管が通してあれば、点検口から点検するのも楽ですし、交換も一部床を解体するだけでできます。

フルリノベーションでキッチン、トイレ、浴室など水まわり設備の位置を変える際も、二重床は有利です。電気の配線や、今ならインターネットの回線を、希望の部屋に引きたい場合も、二重床なら対応しやすいでしょう。

中古マンションのリノベーションだけではなく、将来、家族構成やライフスタイルが変わったときのリフォームにも、柔軟に対応できるはず。

二重床には、上下階に伝わる音を軽減する効果もあります。

スラブを介して伝わる音には、重量床衝撃(音床の上で飛び跳ねたり、椅子やテーブルを引いた時に出る、低く鈍い音)と軽量床衝撃音(スリッパで歩いたり、小さく軽いものを落としたときに出る高い音)の2つがあります。

そのうち軽量床衝撃音を遮るには、床材などが音を吸収することが大事。二重床は、空気層が音を吸収するので、一定の遮音効果が期待できます。

二重床のデメリット

一方、重量床衝撃音は、二重床だとかえって遮音性が低くなる可能性も。

重量床衝撃音は、固く重いスラブ床(骨組み部分の分厚いコンクリート床)ほど伝わりにくい性質を持ちます。

RC造のマンションの場合、遮音性能はスラブの厚さが大きく関係するので、床の構法ではそう大きくは変わりません。

ただ、振動が空気を経由してより広い範囲に拡散し、スラブに伝わった結果、下に音が響いてしまうことがあります。
これを、太鼓の一方の皮を叩いた時、もう片方の皮も振動することになぞらえて「太鼓現象」といい、二重床特有の問題となっています。

太鼓現象は、空気の逃げ場がないことも原因になるので、新しい物件では、空気の通り道をつくってスラブに伝わる振動を軽減している構法も増えています。
比較的古い物件では要注意ですが、全てダメというわけではありません。

そもそも、遮音には壁から伝わる音や、建材の経年劣化なども関わるので、床だけで判断するのは不十分。トータルバランスで考えましょう。

その他のデメリットとしては、二重床とするためには床の支持ボルトや下地材が必要になるため、物件価格やリノベーション費用も割高になること、また、リノベーションなどで後から二重床にすると、天井高が低くなりやすいことなどが挙げられます。

直床とは?二重床との違いは?

直床
余計な部材がないのでコストがかからず、遮音等級(「LL-○○」の表記)の高いフローリングなどを使えば、遮音性能も高められるでしょう。
コンクリートスラブの上に、直接床材を張る構法を直床(じかゆか)といいます。

とはいえ、管理規約で、床材の遮音性を指定していたり、そもそもカーペット以外は禁止としているマンションも少なくありません。契約する前、リノベーションの前には必ず確認してください。

直床の場合、水まわりだけスラブを低くして配管を通す構法も多いです。時期によっては、スラブに直接配管を埋め込んでいるマンションも存在します。

そのため、直床のままでは違う位置に配管を通すのが難しく、間取り変更、特に水まわりの移動ができません。中古マンションを購入して、フルリノベーションしたいとを考えている方は気を付けたほうがいいでしょう。

フローリングとスラブの間に、遮音性を高めるために緩衝材を施工するので、踏み心地が柔らかく感じられるかもしれません。中には気になる方もいらっしゃるかも?
また、1階の住戸ではスラブから冷たさが伝わりやすいので、床が冷たく感じられることもあります。

直床から二重床にできる?

結論から言えば、直床を二重床にリフォームすることは可能です。ただ、いくつか注意点があります。

まずは天井高。

二重床にして床が高くなった分、天井が低くなります。当然、躯体のコンクリートを削ることはできないので、十分な天井高が確保できるか、事前に確かめておくのを忘れずに。
特に、バリアフリー化を目的とする場合、高い方の床に合わせることになりますので、ある部屋だけ妙に天井が低い、なんてことにならないように注意しましょう。

加えて、配管経路にも注意が必要です。

排水のためには、配管に角度を付けなくてはいけませんが、もとが直床で一部、配管用のスペースが設けられているような物件では、きちんと水が流れるように配管の経路をつくるため、間取りなどに制限が出ることも考えられます。

二重床の見分け方

不動産会社が公開する物件情報に、二重床であることが記載されていることはほとんどないでしょう。二重床の物件がいい、となれば、内見等でそれを見抜かなくてはいけません。

最もわかりやすいポイントとして、ベランダ側の掃き出し窓をチェックしてみましょう。

サッシの下枠が、床(フローリング)と同じぐらいか、若干低い物件は二重床になっていることが多いです。
直床だと、施工上の問題もあり、サッシが床から10㎝以上高くなる傾向にあります。

また、ベランダの高さ=スラブの位置となっている建物が普通なので、床がベランダよりも高ければ二重床、同じぐらいの高さなら直床であることが多いです。
直床の場合、完成時からカーペット敷きの部屋があったり、クッション性のあるフローリングが使われたりもしていますので、床材を見たり、触ってみるのも参考になるかも。

ただ、専門的な知識がないと完璧に見抜くことは難しいので、できれば内見時など、専門家に同行してチェックしてもらうのをおすすめします。

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記事監修

大宮 良明(一級建築士、既存住宅状況調査技術者)

一級建築士、既存住宅状況調査技術者の有資格者。木造建築の構造計算をはじめ、安全性に配慮した設計を得意としている。「住まいのデザインは見た目のカッコよさはもちろんですが、それ以上に暮らしやすさや安全性が大切だと考えています。長い目で見て『こうして良かった』と思える家を、いっしょにつくっていきましょう」

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