2022/4/5
眺望を守る様々な規制~用途地域・日照権とは?~
皆さんは、何を決め手に住まいを選びますか?
価格、駅からの距離、通勤時間、お子さんの学校の区域などなど……
様々な条件がある中で、優先順位は高くないかもしれませんが、
『バルコニーや窓からの眺め』が決め手になることもあるかと思います。
近くの森や公園が見える、街並みが一望できる、海が見える等、毎日良い景色が眺められると素敵ですよね。
ただ言うまでもないことですが、
景色は借景であるため、すぐ前に高いビルが建ってしまい、せっかくの景色が台無しになるということもあり得ます。
今回は、眺望を守る権利についてご説明します。
ほどんと認められない眺望権
景色や眺望を、他の建物に妨害されることなく眺望できる権利のことを、眺望権といいます。
ただこの眺望権は、裁判等ではほとんど認められないようです。
あたりまえと言えばそれまでですが、他人の土地にどんな建物が建つかは外部の人間は基本的に口出しできません。
ただ、全て自由に建てられるかと言うとそういう訳でもありません。
現在の日本には建築基準法があり、また法律での規制がない場合でも、好き勝手に建てられないケースがあります。
目の前が公園や神社の場合は安心?
では、好き勝手に建物が建てられないケースにはどのようなものがあるのでしょうか?
最初のケースは、目の前の土地が公園や神社などの場合です。
公園はふつう、市(自治体)のもので、各地域ごとに均等に配置されています。
そして災害の際の緊急避難場所に指定されている場合が多く、そう簡単に公園を潰して何かを建てるということはありません。
ただ、なかには自治体所有でない公園もあります。その場合は公園が無くなってしまうケースもあるようです。
また神社は、壊されたり移転をする可能性が低いため安心だと言われていました。
ただ最近では、神社の敷地だった敷地に高いビルができる場合もあるようです。
なかには、その高いビルの屋上に神社が移ったという例もあります。
とはいえ、公園や神社は他の土地と比べると残る確率は高いため眺望が守られる可能性も高いです。
目の前が、工場やショッピングセンターや駐車場の場合は危ない?
逆に、眺望が変わる確率が高いのはどのような場合でしょうか?
それは目の前が工場・ショッピングセンター、駐車場の場合です。
工場が建てられる土地というのは、法律の規制が緩く、どんな建物でも建てられるケースが多いです。
また工場は世の中の景気に左右されやすいため、潰れて大きなマンションが建つ事はよくあります。ショッピングセンターも同様です。
そういった建物が前にあるマンションの場合、「将来その建物が壊されて別の高い建物が建つかもしれない」と思っていた方がいいかもしれません。
また駐車場も建物が建てられる可能性が高いです。しかし用途地域により、小さな建物しか建てられない場合もあります。例えば駐車場が用途地域の低層住宅専用地域(住宅地の中の小さな駐車場)内にあれば、戸建ては建てられますが、高いビルは建てられません。
用途地域とは?
用途地域というのは、エリアによって建てられる建物を分ける決まりです。
この用途地域は行政(市区町村)が決めており、市役所のホームページから”用途地域”と検索すれば、気になるエリアの用途地域が調べられます。
例えば「第一種低層住居専用地域」というエリアならば、基本的には2階建てまでの建物しか建てられません。
逆に「商業地域」や「準工業地域」は高い建物が建つ可能性が高いです。
日照権とは?
用途地域とあわせてよく聞く言葉に、「日照権」や「斜線規制」「日影規制」があります。
斜線規制は、空中に架空のラインを引き、そのラインから上に建物をはみ出して建てはいけないという規制。
日影規制は、北側の土地に影を作るような建物を一定程度制限しますよという規制です。
そして日照権とは、上記の用途地域に関連する規制で、斜線制限と日影規制の総称です。
建物の規制が厳しい低層住居系の用途地域(駅から離れた閑静な住宅地)は建物の日照権を得やすく、規制の緩い商業系・工業系用途地域(駅前や幹線道路沿いなど)は日照権はほぼ得られません。
景観権とは?
また「景観権」も、景色を守る重要な役割を果たしています。
景観権とは、その地域の自然や歴史や文化的な景観を守る権利です。
これは、その街全体の価値ある景観を守るため、それにそぐわない建物を建ててはダメという権利です。
特定の地域に限定された権利で、どの街でもあるという訳ではありません。
景観権がある地域は神社や仏閣が多い地域で、タワーマンションや派手な商業施設は制限されます。
まとめ
マンションのバルコニーからの良い眺めが、維持されるかどうかは、その前の土地がどのような用途地域や規制があるかによります。
これから何十年も住まわれるマンションであれば、用途地域をご自身で調べてみるのも良いかもしれません。
もちろん、購入前に不動産屋さんが教えてくれたり、またマンションなどの販売広告に”〇〇地域”と載っていて、すでに知っているという方も多いかと思います。
市役所のHPで用途地域を調べると、単に用途地域だけでなく、災害の際の避難場所や防火地域の有無、将来の将来の計画道路予定、その他にもいろいろな事がわかるかと思います。
また落とし穴として、目の前の土地の建物はそのままとしても、景色の方が失くなるということもあります。
例えば、花火大会の打上げ地点が移転する・花火大会自体が無くなる、桜が老木になり採されてしまうといったような形です。
今回は、眺望にまつわる様々な規制について書いてみました。
私は花火が好きなのですが、おととし・去年と花火大会はほぼ全滅で、寂しい限りです。
今年こそはコロナがおさまり開催してほしいものです。