酒器コレクションを嗜む
エリア | 東京23区エリア |
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家族構成 | 二人暮らし |
面積 | 70.35㎡ |
間取り | 3LDK → 1R |
テイスト | モダン |
特徴 | バリアフリー, , エコカラット , 間接照明 |
リノベ費用概算 | 12,000,000円 |
しまいこんでいた酒器を主役に
K様は酒器のコレクションが趣味。
しかし、いままでは食器棚に並べるだけで「魅せる収納」とは言い難く、不満を感じていたそう。
「賃貸では棚を造作したり、間接照明をつかったりといった見せ方は、現実的に難しいでしょう。でも、リノベーションなら造作も、照明プランも、賃貸とは比べ物にならないくらい自由が利きます。せっかくなら、集めたコレクションを主役にしたいと思ったんです」
間接照明で作品に光の演出を
美術館や博物館では、作品を際だたせるために照明を効果的に使っています。
K様邸では間接照明を用いて、コレクションをより美しく見せる演出をしました。
キッチンの腰壁はダイニング側に飾り棚を設け、下から上にやさしく光が立ち上がるような間接照明を設置。ガラスの酒器が光を受けてキラキラと輝く、この小さなショーウィンドウは、K様もお気に入りのコーナーです。
トイレ用の手洗器には、上から光が注ぐような演出を。
背面に貼ったタイル(エコカラット)の凹凸が浮かび上がると同時に、手洗器の茶褐色の地肌がより引き立ちます。
こちらの手洗器、じつは以前よりK様が愛用していた器の作家に、器と同じデザインで特別に注文した備前焼の手洗器なんです。いわば、これもまたK様のコレクションの一つです。
暗くなりがちな玄関にはFIXの室内窓を設け、向こう側の部屋に入る自然光を間接的に取り込みます。
室内窓のガラスは、中に和紙をはさんだ合わせガラスで、障子を透したようなほんのりとした光がやさしい印象です。
もちろん、ここにもK様のコレクションから選ばれた器が飾られています。
「間接照明を入れたいと最初に希望したのは私たちですが、作品がもっとも美しく見えるように、どちらから、どのように光を当てれば効果的か、緻密に計画していただきました。おかげで作品の新しい一面が引き出されたというか……、ずっと眺めていたい感じです」
デザインテーマは「モダン+和」
インテリアの主役である酒器が『和』の雰囲気をもっていることもあり、内装にも『和』のエッセンスを取り入れました。
「日本的なデザインは落ち着きますね。といっても昔ながらの和室にしたいというわけではなく、あくまでも現代の洋室をベースに、今まで使い続けてきた家具と調和し、酒器にもマッチする『和』の要素を取り入れられたらと」
白木に黒をイメージしたカラーコーディネートは、モダンでありながら日本的。
さらにニッチ棚にあしらった瓦のモザイクタイルや、炭を思わせるマットな質感のタイル壁、イタヤカエデのフローリングなど、質感で『和』のエッセンスをプラスしました。
「明るい色のフローリングを希望していて、なんとなくメープルがいいかなと思っていたんですが、設計の目黒さんから『和の雰囲気を出すなら』と、このイタヤカエデのフローリングを紹介されました。メープル以上に木目が独特なので、最初に見たときは正直『派手すぎないかな?』と不安もありましたが……(笑)仕上がってみると、私たちがイメージしていた部屋にピッタリで、家具ともよく調和していました。家の中でもとくに気に入っている部分です」
キッチンをコミュニケーションの場に
K様夫妻は二人とも料理好き。「二人でキッチンに立てるよう、作業スペースを広くしたい」と希望していました。
「二人ともおいしいお酒や食事が好きで、「食」に関わる時間を大切にしたいと思っています。二人で料理をしたり、一方がキッチンでおつまみをつくりながら、一方がカウンターでお酒をつくっている、その間にお喋りをして笑い合う時間が、何気ないけれど大切なひとときなんです」
既存のキッチンはリビングダイニングから独立した間取りで、二人でキッチンを使うにはスペースも狭く、一方がリビングダイニング側にいるときはコミュニケーションがとりづらい、という問題がありました。
リビング・ダイニング・キッチンを一体化した間取りへと変更するにあたり、課題となったのは配管経路の確保です。
排水配管は通常、床下を通って、PS(パイプスペース)に繋がります。排水をスムーズにするため、配管には充分な勾配をつける必要がありますが、PSから遠くなればなるほど、床下を広くとるために、床の高さを上げる必要があります。
一方で、K様邸では「段差のない、バリアフリーの床」も優先事項の一つでした。
そこで床の高さを変えないため、キッチンとPSまでの距離を既存とほぼ同じくらいになるよう、向きを変えて配置することで、配管の問題をクリアしました。
また、毎日使うキッチンだから、油はねや水はねなど、日々のメンテナンスのしやすさを考慮して、あえてコンロ前に壁をつくるI型のキッチンを提案しました。
I型キッチンでも周辺壁から離して配置すれば、アイランド型キッチンのように回遊できるので、作業動線も増えます。
通路幅も90cm以上確保し、二人が並んでもスムーズに動けるキッチンです。
「『こうしたい』という希望は伝えましたが、ただそれを形にするだけでなく、フローリングや瓦のタイルなど、『こんなのもあるんだ!』と私たちだけでは思いつかなかった提案をしていただきました。その結果、思い描いていた理想の家が出来上がったと思います。これからもずっと、この家を大切に使い続けていきたいです」