2022/1/18
このリノベーション、じつは法律違反かもしれません!! (戸建て編)
コロナ禍も3年目となり、自宅にいる時間が増えた事で、自宅のリフォーム・リノベーションに目を向ける方も多くなったかと思います。
ただ「ここを直したい!」と思っていても、法律的に手を加えられない箇所があります。
そこで今回は、「実はコレ法律違反かも」という主な戸建てのリフォーム・リノベーションをご紹介致します。
窓を無くす・小さくする・移動する
最初に、洋室をキッチンにリノベーションしたい場合を考えてみましょう。
リノベーションしたい洋室には、大きな窓があります。
そこにキッチンを設置するには窓が大きすぎるため、窓を小さくするor位置をずらすというプランを考えました。(構造上出来ない場合もありますが、今回は技術的に出来るとします。)
この「窓のリノベーション」で問題になってくるのが、「建築基準法」の「採光基準」です。
採光とは光を採るということ。窓から室内に取り入れる光の量と窓の大きさには「最低限このくらいないとダメ」という基準があります。
これは単なる面積だけの問題ではありません。
窓の取付高、上部の庇や屋根、窓から隣の家までの距離など様々な要因を元に計算する、採光計算によって基準が定められているのです。
採光数値が高い窓は、すぐ前に隣の家の壁がある窓より、広い庭が広がっている窓・1階より2階にある窓・上に庇がない窓が挙げられます。
こういった数値の高い窓を、小さくしたり無くしたりすると法的にアウトになるケースが多いです。
逆に、窓を大きくする・窓を増やすことは採光の基準的に大歓迎!
ただ窓が大きいと冷暖房の効きが悪くなるため、断熱性能を改めて考える必要があります。
天井高を高くする・勾配天井にする
高い天井は、開放感があり憧れる方も多いのではないでしょうか?
1階の天井裏は、直上に大きな梁やキッチンダクトがあったりするため、高い天井にするのは構造的に難しい場合が多いですが、2階の場合は屋根まで天井裏がある場合が多いため、天井を高くして勾配天井にしたいと考える方もいらっしゃるかと思います。
しかしこの天井のリノベーションも、建築基準法が問題になってきます。
建築基準法には、各部屋の体積と、換気扇などの排気量を計算する「換気計算」により、「24時間換気して、1時間当たり各部屋合計体積の半分の空気量を換気する」という条件をクリアしなければならない、という決まりがあります。
部屋の体積は、天井を上げれば上げるほど大きくなるため、高い天井は換気するのが難しくなります。
そのため高い天井にする際は、換気計算して大きな排気量の換気扇に変えなければいけない場合があります。
この換気計算を知らずにリノベーションしてしまうと、法律違反になってしまうかもしれません。
階段の位置を替える
間取りを変更しようとすると、階段の位置も変えたくなります。
建築基準法には、階段の1段当たりの奥行(踏面)や高さ(蹴上)や巾にも決まりがあります。
ただ戸建住宅の室内階段の場合は、階段勾配の角度でいうと56°までならOKとなり、よほどの急角度の階段でない限りこの条件はクリアしています。
そのため階段の位置を変えるリノベーションで問題になるのは、建築基準法というより建物の構造にあります。
階段は1階床から2階床まで渡しますが、2階床からすると階段部分の2階は、床に大きな穴が空いている状態です。
つまり階段を移動することは、2階床の大きな穴を移動することになります。この移動が難しいのです。
床には直下に梁や大引という木材が縦横にまわしてあり、床下のベニア板も大概は構造用合板という物で、簡単に取ってはいけない(構造的にダメ)モノになります。
階段の移動は、出来たとしても位置はかなり限定され、どこでも自由に動かすことは出来ません。
屋根付きの駐車場を設ける
駐車場なら、建物と直接関係ないし問題ないだろうと思われがちです。
しかし屋根がつくと、基本的には建物とみなされ、建ぺい率が絡んできます。
つまり、敷地の面積によって、建てる事が出来る建物の大きさ(面積)が決まってきます。
例えば100㎡の敷地で、建ぺい率50%なら、100×0.5=50で、50㎡まで建てられるという具合です。(地域によって緩和策があり、2本の柱の簡易なカーポートは建ぺい率から除外というケースもあります)
首都圏は土地が高く、一戸建てはその土地の建ぺい率の限度一杯に建てる事が多いです。
車1台の駐車場スペースはあるものの、ガレージを建ててしまうと建ぺい率オーバーになり、法的にアウトになってしまうケースがあります。
また、上記の簡易なカーポートの場合はOKとする地域もあると書きましたが、それは建ぺい率に関して問題ないということであり、引っかかってしまうおそれのある法律がもう一つ存在します。
それは防火に関しての法律です。
街には防火・準防火地域というエリアがあり、東京23区内のほとんどが該当します。
またこの地域に該当していなくとも、22条指定区域という防火に関するエリアがあり、これは首都圏のほとんどが該当します。
このエリアに該当する地域は、燃えやすい素材で建物を建てることが禁止されています。
簡易的なカーポートの場合、 ”ポリカ” と呼ばれる半透明の素材が使われますが、これは燃えやすい素材に該当します。
ただ外構の業者さんは、それを知ってか知らずか、ほとんどの場合気にせず建ててしまいます。
そのため現実に、建ぺい率違反・防火違反のガレージ・カーポートはかなり多いです。
玄関ドア・窓の性能を気にせず新しくする
ドアや窓の大きさ・位置はそのままで、ただ新しいモノに交換するだけで問題になるケースがあります。
古いドアを新しくするだけで、なぜ問題になるのでしょうか?
その理由は、法改正にあります。
前述の防火に関わりますが、例えば都内23区では、30年前は、防火準防火地域外のエリアが多かったですが、今ではほとんどが区域内です。30年前に建てられた家の玄関ドアは、防火ドアではありませんが、それを今替えようとすると、防火性能のドアに替えなくてはなりません。窓も同じです。
これも業者さんは、既存と同じ性能のドアをすすめる場合が多いです。やってはいけない工事ですが、現実にはこのパターンも多いです。
まとめ
今回は、よくある5例をピックアップしました。
こういった違法なリノベーションをしても、行政から是正の指導がくる、という事は実際にはあまり無いようです。
しかし、だんだんと法律やルールにシビアな世の中になっているような気がします。
例えば火災が発生し、カーポートも巻き込まれた場合、それが違法なモノだと保険や責任問題で著しく不利になるかと思われます。「これが法律違反とは知らなかった」「業者も一切言ってくれなかった」といった場合でも建築主や所有者の責任は無くなりません。知らなくても責任はのしかかってきます。
ひかリノベでは、そういった法律面も踏まえて、リノベーションを考えていきます。