2017/12/22
【平塚市O様邸・戸建リノベーションレポート③】建物状況調査(インスペクション)で、購入前に安心チェック
こんにちは。ひかリノベ湘南・施工担当の新井です。
中古住宅の取引は、建物の品質や状態について不安を感じるという方もいらっしゃるかと思います。今回はO様邸で実施いたしました建物状況調査(インスペクション)についてお話ししたいと思います。
インスペクションとは?
建物を見て「使いやすそう」とか「きれい」は割と判断できますが、「構造上の問題」や「日常生活において支障ないか」などはなかなか判断できないと思います。
注文住宅を新築で建てる場合でしたら工事過程を現場で実際に見たり、建築業者からの報告や写真などで確認できるのですが、中古住宅の売買の場合、工事過程を見ることは当然不可能ですし、写真も残っていないことが多いです。
そこで、建築士等の専門家がチェックシートをもとに、建物を壊すことなく目視を中心とした検査を行い、構造の安全性や、日常生活上の支障があると考えられる劣化がないかを調べることが出来ます。これをインスペクションといいます。インスペクションをおこなうことで建物の質を踏まえた購入判断や交渉が可能となります。また、劣化が見つかった場合も、それを修補することで既存住宅売買瑕疵保険の加入が可能となります。瑕疵保険に加入すれば、後々雨漏り等の瑕疵が発見されたとき、補修費用は保険金でまかなうことが出来ます。買主さまは無料で補修ができるので、安心して中古住宅を買うことができます。
O様邸も既存住宅売買瑕疵保険に加入すべく、購入前にインスペクションを実施しました。
実際のインスペクション手順
それでは、実際に現地でどのように調査が行われるのでしょう?
平成25年6月に国土交通省から発表されている『既存住宅インスペクション・ガイドライン』によりますと、「これを実施するためのコストが、利用者にとって一般的に負担可能な程度となること、また、短時間で手続きが進められる中古住宅売買時の流れの中で利用可能なものであること」という一文があります。
出来上がっている建物は、構造耐力上主要な部分である土台・柱・梁などはほとんど見えませんし、基礎も表面のコンクリートは確認できても中の鉄筋までは見えません。
本来であれば仕上げ材の床・壁・天井を撤去しなければ構造体は確認できないのですが、前述しました「利用者にとって負担可能」であり「中古住宅売買時の流れの中で利用可能」なものにするためには、建物を壊す大掛かりな調査は現実的ではなくなってしまします。
よって非破壊検査となるのですが、壁・床・天井の仕上げ材の傾きや不陸(表面に凹凸がある)、基礎のひび割れ、床下点検口や天井点検口からの目視といった、短時間で終了する調査をチェックシートに沿って確実に行えば、かなりの確率で隠れた問題点が見えてきます。
ではどのような手順で調査を進めるか見てみましょう。
まず外回りの外壁、開口部廻り、屋根等の雨漏りの原因となる事象や、すでに雨漏りした痕跡はないか、また、基礎のひび割れ等を確認していきます。
続いて天井点検口から小屋組みを見て著しい欠損、劣化やたわみ、雨漏れ跡がないか確認します。
バルコニーは著しいぐらつき、防水層の劣化、水切り金物・排水ドレンの不具合等を目視で確認。
建物内部は床・壁・天井仕上げ材のひび割れ、欠損、浮き、はらみ又は雨漏り跡を目視にて確認し、不陸や傾きはレーザー水平器等で計測していきます。
最後に床下点検口から内部基礎、土台、床組のひび割れ等と、腐朽、腐食、蟻害(シロアリ)がないかを確認します。
さらにオプションとして、キッチン等の住宅設備の調査をする場合もあります。
瑕疵保険への加入
以上の調査結果をもとに報告書を依頼者様へ提出すればインスペクションとしては終了ですが、今回は瑕疵保険へ加入するため、劣化事象等が見つかった場合それを是正しなけらればなりません。
こちらの建物は築年数を考えますと非常に良質な建物だったのですが、それでもいくつかの劣化が見受けられました。
その中のひとつをご紹介します。
基礎コンクリートのクラック(ひびわれ)から白華現象(エフロレッセンス)のような症状が見受けられます。コンクリートから白い液体が流れ出て、そのまま固まってしまっているのが見えますか?
ここはちょうど浴室がある場所。現在一般的になっているユニットバスではなく、タイル貼りの浴室でした。
ユニットバスの場合、止水性が大変高いためこのようになる可能性は低いのですが、タイルの場合、タイル目地(継ぎ目)や割れたタイルから浴室で使った水が浸透してしまいます。
またこちらの基礎は建築当時としては珍しくベタ基礎でした。ベタ基礎とは、床板一面が鉄筋コンクリートになっている基礎のこと。そのため地中に水が浸透せず、コンクリートの打継部分から染み出してきたものの思われます。
こちらを修補してゆきます。
クラックに沿ってVカットに表面を削り……
削ったところに樹脂モルタルを充填。
更にモルタルを充填し、
仕上のモルタルを塗って完成です。
細かいことですが、このように一つひとつ不具合を改善していくことで、建物の耐久性を向上することが出来ます。
そして宅地建物取引業法の改正によって、来年の4月から宅建業者は住戸住宅の売買の際、インスペクションの説明が義務化されます。
インスペクションを行うこと自体が義務化されるわけではないのですが、法改正によってますますインスペクションの利用が増えると思われます。
主に買主さまを保護する目的の法案ですので、もしかしたら売主様はインスペクションなんてやって不具合を見つけられたくない、と思われるかもしれませんが、買主さまの不安を取り除くことがかえって中古住宅取り引きの活性化につながります。
今後はインスペクションを行っていることが中古住宅購入の条件、というようになるかもしれませんね。