2015/7/24
高齢者に配慮した設計
今日はバリアフリーの話をしたいと思います。
日本は2007年にはすでに、超高齢社会(65才以上の人口が全国民の21%以上占める)へ突入しました。世界一の長寿国でもある日本は、高齢者の身体機能低下に合わせた生活をデザインしていく必要に迫られています。
将来、歳をとっても安心して生活できるように、視力の低下や難聴、触覚や嗅覚の鈍化、さらには、筋力の低下などを考慮した住まいの設計が求められています。
各部屋ごとのポイント
玄関
玄関はなるべく広くします。車いすがある方はスロープの設置やフットレスト(足のせ台)が必要です。
また、高齢者が靴を脱ぎ履きする際に、転倒を防止するために、ちょっと腰掛けられるようなベンチやいすを置くと安心です。荷物置きにも使えます。
廊下
将来手摺を設けることを考えて、廊下の幅は900mm以上したほうがゆとり感が出ます。
手摺の高さは、床面から750mm程度を標準とします。また、手摺の直径は30~40mmが握りやすいとされています。
トイレ
ドアの取っ手は、床上900mm程度の位置にします。レバーハンドル、棒状など、持ちやすいものを用います。
できれば、ドアにガラスブロックを使うことをおススメします。チラリと見るだけで電気の消し忘れがすぐにわかりますし、何かあったら時も外から気付きやすくなります。
洗面室
洗面室の洗面器の水栓はシングルレバー式、感知式などにすると操作が楽です。
床は適度に弾性のある素材を選ぶと良いでしょう。滑りにくく、かつ、転倒したときの危険防止にもなります。
浴室
浴室に入ったときの急激な温度変化を避けるためには、浴室暖房乾燥機がおススメです。
温度差が大きくなると、身体が温度変化にさらされて血圧が急変するため、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こすおそれがあります。要注意です。
建具は出入りしやすい引戸が便利です。配管の理由で、どうしても浴室に段差が残る場合には、仕上げ材料の色を変えたり、点状ブロックを設けるなどして注意喚起する必要があります。入口にマットを置く場合はできるだけ埋込式にして、滑らないようにしっかりと固定しましょう。
リビング&寝室
全室の床材は転倒した場合に衝撃の少ない材料とし、滑りにくい加工を施すことがおススメです。
老化による視力低下に配慮して、できるだけ黄色いを避け、白地に赤または黒などの視認しやすい配色をします。各部屋のドアはできるだけ引戸にします。ドアより遮音性や気密性は低くなりますが、開閉に要する力が少なくて済みます。
まとめ
アメリカの建築家ロン・メイスが、すべての人にとって使いやすい「ユニバーサルデザイン(快適に生活できる公平性を目指しそうとするデザイン思想から生まれたもの)」を提唱しました。高齢者や障害者が日常生活を自力で行うことのできる環境を整えることはもちろん、将来のことを考え、より利便性及び安全性が高い生活環境作りを意識することは、今後ますます重要になっていくことだと思います。