勇者のファンファーレ

「トランペットの演奏室をつくりたい」――。これまでは防音仕様の賃貸マンションに住まわれていたA様。ただ防音物件は立地が不便で、家賃は高額。それでも人気が高いためすぐ埋まってしまいます。それなら自分の家を買って防音室をつくろう、とひかリノベにご相談にいらっしゃいました。

「防音室」というと、大きさが決まった箱型のような既成の防音ルームをお部屋の中に設置する、という方法が一般的です。今回取り入れた防音室は、「自由設計の防音室」。壁紙も床も自由に選べるため、一見普通の部屋と変わりがありません。A様邸の防音室は、鮮やかなブルーの壁がフォーカルポイント。また廊下側の壁面には室内窓を設け、閉鎖的になりがちな防音室の圧迫感を軽減するとともにオシャレな空間に仕上げています。

A様邸の特徴は防音室だけに留まらず。某有名ゲームの大ファンというA様。お部屋はその世界観を表現した空間になっています。玄関扉を開けると、中世の古城を連想するドア『バーンドア』を採用。異世界の空気漂う廊下空間を抜けると、コンクリートとタイル、木に囲まれた迫力ある大空間リビングがあらわれます。天井と壁の一部をコンクリートあらわしに。キッチンを中心にレンガをワイルドに貼りつめました。リビング正面の壁は、木・コンクリート・レンガが連なり、城門を思わせる意匠。キッチンは、I型キッチンとカウンターテーブルを組み合わせた、L字型。I型キッチンと造作テーブルを組み合わせ、バーのような雰囲気に仕立てました。

またリビング後方は一転、和の空間が広がります。掘りこたつを囲う小上がりの畳、壁には隣室の照明が月の光のようにこぼれる円窓（まるまど）も。この円窓は、隣室の壁に小さな障子を取り付け、それに合わせて壁を丸くくり抜いた仕掛けです。小上がり空間の壁はリビングと異なり、塗壁風に。リビングの前後でテイストは異なりますが、色のトーンを合わせているため、ちぐはぐな印象は受けません。
小上がりの隣は、洗面室。こちらも造作の木の洗面台を使用した、和モダンテイストとなっています。また洗面室にクローゼットを配置。普段着用されないものや、季節ものの衣類は寝室のウォークインクローゼットに収納しています。

ドアやスイッチのプレートまで某ゲームの世界観を反映したA様邸。ユニークなアイデアを、上質な色と素材で作り込むことで、決して奇抜すぎず、大人の遊び心を感じられるお部屋に仕上がりました。施主様はもちろん、ゲストも心が躍る空間です。